- Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334912338
感想・レビュー・書評
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中山七里は、また新しいヒーローを創造した。大阪地検の不破信太郎検察官である。どんな時でも、いっさい表情を変えず感情を見せない。ゆえに、能面検事と呼ばれる。被疑者にとってこれほど恐ろしい相手はいない。検事としての自分の流儀を貫き通し、自分自身だけでなく組織の保身、面子などいっさい考えない。よく考えてみれば、法律を扱う者としてあたりまえなのであるが、これができないから冤罪が生まれる。
警察が上げてきた事案をうのみにせず自分で調べ直し、思い込みによる杜撰な捜査をひっくり返し、大阪府警全体の不祥事さえも暴いてしまう。しかし、その不祥事には、さらに隠されていたことがあったのだ。それも見抜いてしまう。
研修を終えて不破付きの事務官になった惣領美晴の目を通して小説は進むが、この美晴は新人のくせに感情をむきだしにして、自分よがりの正義感で不破の行動を制御しようとしたり、よく考えもせずに質問を浴びせかけたりする。読んでいて、はっきり言ってうざくなってくる。こんな不遜な新人なんているのか、こんなに感情だだ洩れで検察庁でやっていけるのか、とぐずぐず思ってしまうが、そう思わせるのも作者のねらいかもしれない。
不破自身の人物造形については、諸手を挙げて賛美する。無駄な気遣い、忖度、手間は一切しない、全く理想的な人物ではないか。内面はまだまだ分からないのであるが、生き方としては私自身の参考にしたいくらいだ。 -
能面検事の不破、かなり個性強め。
ここまでの正論を無表情でぶつけられたら、容疑者も警察もそりゃ怖じ気づくわ。
新人事務官の惣領とキャラ設定が対照的で、このコンビがこれからどういう風に関わっていくのか楽しみ。
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大阪地検のエース、不破検事は、一切の感情を面に出さない鉄壁のポーカーフェイス。権力におもねらず、組織の論理にも無頓着、冷徹な言動を貫き通す不破は、影で〈能面〉と綽名され、検察内部のみならず警察からも敬遠される異端者。一方、不破に仕える新人事務官の惣領美晴は、喜怒哀楽を隠せない直情タイプで、不破の言動を理解できず振り回されてばかり。
ある殺人事件を担当した不破は、独自に再調査する過程で、証拠品の一部が警察の保管庫から紛失していることに気づく。
不破の現実離れしたユニークなキャラ設定、マンガチックでなかなか面白かった。美晴の新人らしからぬ生意気な言動もお愛嬌。
本作では、不破の過去やプライベートは殆ど明かされていない。第2弾も出ているようだが、シリーズ化されるのかな? -
『能面検事』中山千里著
主人公はタイトルの検事です。形容詞にあるとおり、能面、そう無表情の検事です。
そのようになったのには「理由」があります。
その背景まで丁寧に描かれています。
中山さんファンのひとには、お勧めです。
・主人公の魅力度☆☆☆☆☆
・エンド大逆転☆☆☆☆
・スピード感☆☆☆☆☆
【書籍より】
「憎むべきは罪であって人ではない」
「人間は群れをつくった瞬間、論理に縛られます。お互いを守ろうとするあまり、本当に護るべき人たちの顔が見えなくなる。」
【読み終えて】
自身の職務はなにか? 何を目的に職務を遂行するのか?
その理解と実行に曇りがないのが清々しい、羨ましい限りでした。
また、周りから浮く、周りからの評価を気にしないで、職務をすべての軸におく姿勢にも共感できます。
すべてをわかったうえでやっている、この小説を機会に検事という職に関心をもつ若い方も増えるかもしれません。 -
能面検事ー能面、何のために?
不破俊太郎は惣領美晴事務次官を罵倒するところから始まる
事務次官不適格だ!
被疑者並びにその関係者に証言を取るとき、相手は質問者の顔色を窺い洞察力、度量を推し量る
これしきで狼狽えるのは脆弱な姿を晒すのは不適格だ!
それほどいうだけあって
検事はどんな相手とも、いかなる状況でも少しの人間的感情を見せない!まったく。能面そのもの。
正しくても、相手は腹を立てる
それさえ意に介さない、見事なくらいだ。
さてストーカーの犯人と目される谷田貝の冤罪を免れさせる
これが不破検事と警察四十二署、府警本部との壮絶な戦いの始まりであった。
たった一人での戦い、しかし本人は淡々と仕事としてこなす、驚異すら覚える。
今回警察の処分①懲戒②免職③停職④減給⑤戒告
内規処分、訓告、本部長注意、厳重注意、所長注意
に詳しくなったり
不起訴
①罪とならず
②嫌疑不十分
③起訴猶予
④嫌疑なし
それに検事の役職にも
検事総長
次長検事
検事長
検事
副検事
検事と副検事との区別も
よーくわかった。おまけ付き。「ご存知の方は多数ですが」
これでもか、これでもかと
不破は相手が警察であろうか何であろうが
顔色一つ変えず
業務をこなす。
この辺は少し弛れたが、後半一気に
なる程と、面白くなる。そこまで目新しくはないけど。
能面検事になる前の過去もチラッと垣間見ることができる
ここまで法廷もの、刑事物と
中山七里他にも読み続けた結果
少しはいろんなことがわかってきた。
もちろん犯人も「ピンポンイントてはないが」
少しは〜わかる〜
左脳ばかりの人間も、大変ですね。
幸いこんな人が周りにはいませんが。
こんな本ばかり読んでると、
警察不信ばかり増します。
中山七里はまた新たな個性を生み出したが
今までの
他の登場人物ほど魅力を感じなかった!
ここまで中山七里を読み続けたら最後まで!という感じかな「残すところあと何冊か!まったく膨大な量を書いてくださいますね。」
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『能面検事』。このタイトル、どうしても気になってしまう。読み始めて、この能面検事の不破の特異なキャラに目がいってしまうが、その実、しっかりとしたミステリを堪能できる。
検事の不破は、全く感情を表さないことで周りから能面検事と呼ばれている。そこに事務官として配属された美晴。美晴は何も教えてくれない不破に不満を感じながらも、次第に不破の仕事ぶりには全幅の信頼を寄せていくようになる。
ストーカー殺人事件が起こり、それに挑む不破。元々ストーカーをしていた男がアッサリと捕まり、事件は解決したかに思えたが、不破はその男のアリバイを証明し、不起訴処分とした。また、大阪府警の捜査資料紛失も暴き、大阪府警は色めき立つ。
そんな矢先、不破は何者かに撃たれ・・・
この作者、『カエル男』にしろ、この『能面検事』にしろ、ふざけたタイトルと本格的なミステリとは結びつかないのだが、これがそのタイトルを裏切るような本格的なミステリをぶつけてくる。
今回も不破と美晴の掛け合いを楽しんでいる間に、いつしかミステリの渦中に呑み込まれてしまっていた。
不破の過去も気になることだし、是非シリーズ化していただきたい作品だ。 -
ある事件をきっかけに表情、感情を表さなくなった検事と新米事務官。
彼らが様々な事件をきっかけに大阪府警のスキャンダルに発展し…。といった内容。
己の流儀、信念、正義を貫くこと。
そんな不破の姿勢は現実味がないくらいに極端だけど、敵は犯人だけじゃない。
そういったアプローチが変わって面白い作品でした。 -
思ったり考えたりしてる事、感情、全てが顔に出てしまう単純で残念な私は この「能面」に憧れを感じている。
不破検事が、「性分です」と言ったのと正反対で、身体の内面がダダ漏れなのも、私の「性分」なのだろう。
ラスト、全てが繋がって私的には予想外の事件の真相が明らかになる所は中山七里さんだなぁと感動すら覚えた。 -
無表情のエース検事と、新人事務官。
ちょっと気にはなっていたけど、「能面」というイメージからなんとなく怖くて手に取りにくかったシリーズ。ようやく。
冒頭からいきなり「出ていきたまえ」で唖然とする。でも話が進むにつれ、彼なりに信念や正義を持っていると知り、まぁストイックな仕事人間なのかなーくらいに思えて、あまり気にならなくなった。御子柴弁護士よりマシか。
でもこの人、大阪に来てから、今まで事務官つけてなかったのかな?一人でもこなしそうではあるけれど。
美晴の純粋さも、嫌いではない。
警察の問題って、読んでいて、あんまり気持ちいいものじゃないんだよな。警察も信じられないんだという気持ちにさせられるのが、ちょっとしんどい。 -
能面のように喜怒哀楽なく自分の仕事の為なら周りを顧みずどんなことでもする大阪地検検事不破俊太郎。そんな不破に付く新米事務官惣領は苦労する。不破は自分の流儀に則り、ストーカー殺人の真相を追い、大阪府警の暗部も曝してしまう。能面の不破、それに対する感情的な惣領、惣領の視点で物語は進んでゆき、なかなか面白い。不破は某捜査シリーズの竜崎さんを思い出したけれど、それ以上に我が道をゆく変わり者って感じ。犯人は実はこうでした的な大きなものはなかったけれど、不破の仕事っぷりで大阪府警の闇をも暴いてしまうのは痛快でした。
恐れ入りますね。熱烈ファンです。
恐れ入りますね。熱烈ファンです。