展望塔のラプンツェル

  • 光文社
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感想 : 100
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334913045

感想・レビュー・書評

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  • 展望塔が見下ろす町で生きる「子」を中心に描かれる物語。

    心まで殺される、そんな日常に晒されている子供達が今この瞬間に存在することを改めて突きつけられた思いだ。

    子は死ぬために生まれるわけじゃない…家族だから…それぞれの立場の言葉が次々とせつなく突き刺さる。

    自分の人生は自分のもの、自分の力で自分を救うしかない。それでも誰かを救ったり、救われるおとぎ話をそっと胸に生きる「晴れた海の渚」の思いに涙が止まらなかった。
    哀しみから驚きへ、展望塔が見下ろすから見守るへと変わるような読後感。
    ここに宇佐美さんらしい小さな魔法を感じた。

    • あいさん
      こんばんは(^-^)/

      ラプンツェル懐かしい。
      高校の時の英語の教科書にあったよ。
      内容は怖いね。
      ラプンツェルが絡んでくるの...
      こんばんは(^-^)/

      ラプンツェル懐かしい。
      高校の時の英語の教科書にあったよ。
      内容は怖いね。
      ラプンツェルが絡んでくるのかな?
      宇佐美さんは未読だけど面白いのかな?
      2019/10/14
    • くるたんさん
      けいたん♪おはよう♪

      これはラストは良かったんだけど、最初からきつかった。
      虐待に貧困と…けっこうつらい。
      でも最後まで読んで良かった作品...
      けいたん♪おはよう♪

      これはラストは良かったんだけど、最初からきつかった。
      虐待に貧困と…けっこうつらい。
      でも最後まで読んで良かった作品だよ。
      ラプンツェルのおとぎ話をちょっと絡めてあるところはせつない。

      宇佐美さんは「熟れた月」がけいたんにはおススメかな。ダークな部分もちょっとあるけど、ラストが良かった٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
      2019/10/14
  • この小説を読んだ方の
    ほぼすべての方が
    一食 一晩だけでもいいから
    虐待された子供たちの力になってあげたいと
    思うことでしょう
    どんな親であっても
    親と暮らしたいと思う
    そんな子供たちをよく理解した小説だと思います

  • 山本周五郎賞候補作にノミネートされた作品。児童虐待や不妊治療、貧困などの社会問題をテーマにしている点に興味を惹かれ、読了しました。
    多摩川市という架空都市で上記の3つの問題を抱えた人々の物語が並行していく。それぞれの物語は独立している話だが、所々で関係性を仄めかす伏線が張られており、最後にあっと驚く伏線回収を持ってくる辺りがとても良かった。章はじめの挿絵だったり、伏線回収のやり方から伊坂幸太郎に似たものを感じた。伊坂作品が好きな人にお勧めしたいですね。
    タイトルからはとても童話的な明るい話が想像できるが、社会問題をテーマにしているだけにダークな救いようのない雰囲気が好感を持てた。
    「子ども食堂」と言う存在はニュースで知ってはいたが、その背景までは理解していなかった。「そもそもこのご時世ご飯食べれない子どもなんているのか?」なんて主観的に考えていたけど、この本を読むことで粗悪な児童虐待、貧困、そしてその連鎖が関与していると背景を俯瞰的に知れたことはとても有意義であったと思う。

  • 最初からの辛い展開に、何とかみんな助かってと願いながら読んだ。
    最後はえっ、そういう事なの、と完全に思い違いをしていたけれどそれにより救われた部分もあった。
    虐待されていた子どもが大人になってまた…
    負の連鎖が止まらない場面が特に悲しかった。

  • 貧困・差別・虐待・暴力、読んでいてずっと
    暗くて苦しかった。
    いくつかの話は交差して絡んでると思い込んで読んでたら、時空を飛び越えている話もあって
    ほんの少しホッとしたので☆4つ。

  • 山本周五郎賞候補作。

    辛くてしんどくて痛くて悲しいこと満載。
    こんなにしんどいのに一気読み。

    そして最後ちょっとホッとする。

    でも、児童虐待も性暴力もネグレクトもなくならない。
    不妊治療における精神的なケアは出産後も必要な気がするし。
    人間はおろかで悲しい生き物だと思わされる、
    それでも、強くてしなやかで優しさも持っている。

    そう思える作品でした。あー、泣いた。

    #NetGalleyJP

  • この手の叙述、いつも気持ちよく騙されてしまう。それも含めて読後感もすごく良かった。
    いや内容はすごい重いし考えさせられるんだけどね。虐待された子供を「家族の元に返すのが本当に幸せなのか?」という問題は児相とか福祉施設で働くの人達にとったら永遠の問題なんだろうな。
    虐待をされる人、差別をされる人、それぞれの立場で思うところとか、苦渋の決断があるのもしんどいね。そうするしか出来なかったと思うと……。
    ナギサの生い立ちが本当に辛かったんだけど、ナギサが自分の人生を生きられて良かった。ちょっと泣きそうになった。

  • 『羊は安らかに草を食み』以来、2冊目の宇佐美まことさん。

    ベイビュータワーが建つ多摩川市南部地域は、多国籍な住民や低所得層の家庭も多く、治安が悪く非行や反社会勢力などの温床となっていた。この街を舞台に…

    児童相談所の職員・松本悠一
    17歳の海と那希沙
    不妊治療中の落合郁美

    年齢も立場も全く異なる3人のお話が交互に描かれていきます。

    ネグレクト、性的虐待、貧困、人種差別、暴力団…これでもかというほど壮絶で悲惨な出来事が起こり、読んでいて何度も目を背けたくなるんですが、ぐいぐいと引き込まれてしまいました。

    3つのお話がどこでどう繋がるのか、こんなにもひどい状況から果たして救いはあるのか…いやぁ〜すごかったです。重く苦しいテーマなんですが、読ませる筆致と展開はさすがです。藤岡陽子さんの『空にピース』を読み終わった時と同じような充足感でした。

    貧困にしても虐待にしても、負の連鎖を断ち切るにはどうしたら良いんでしょうね。簡単には答えの見つからない難しい問題ですよね…。

  •  虐待の連鎖や貧困の連鎖という負の連鎖が胸に刺さる。社会の歪みといって片付ける程、簡単に割り切れないものを感じる。ページをめくる手がゆっくりとなり止まってしまうほどに子供の虐待が描かれ遣り切れなさをおぼえる。そこには合理的な思考もなく、ただ単に感情のままに暴力がはけぐちとなる現状がある。それが日常になっていくことに違和感を感じないことこそが負の連鎖のもたらしたものだ。この連鎖を断ち切るラプンツェルになるのは容易ではない。が、人の意志こそが希望へとつながる。我々は諦めるわけにはいかないのだ。ヘヴィーな展開が最後まで続くが、3つの物語が溶け合っていく最後の最後で救いと希望が見えて読んでよかったと思えた。

  • 大まかに3つの方向から描かれた話。
    一つは児童相談所に勤める人々。
    そして、虐待される少年、少女。
    不妊に悩む夫婦。
    彼らが住むのは「ラーメンタワー」と揶揄される、この町の成功者が建てた塔のある町。
    そこは低所得層の住む町で、問題のある家庭が多い。
    子供は親に虐待され、将来はヤクザになったり、同じように自分も自分の子供を虐待する大人になっていく。
    幼児が親から暴力を受け、よく行方不明になる。
    その子供を保護しようとする児童相談所の職員。
    そして、虐待される子供を心配している近くのマンションに住む主婦。
    自分たちも親や兄からひどい虐待を受けながらも、幼児に手を差し伸べる少年、少女ー。

    つながりがあるようでない、この3つの線がいつつながるんだろう?という思いで読まされる。
    そして、読んでいる最中、何だかこれって時代が古くない?昭和っぽい表現だけど・・・と思っていると、それもうまく結末につながっていたりした。

    とにかく、ずーっと、ひどい家庭環境で虐待されている子供たちの様子が書かれていて、読んでいて楽しい本じゃない。
    あまりに悲惨すぎて気分が沈んでしまった。
    特に、主人公の一人である少女の身の上は読んでいてつらかった。
    読後感は悪くないのが救い。

    ちょっと違和感があったのはラプンツェルが塔にいて、彼女が救いの手をさしのべるようなイメージでいること。
    むしろ、ラプンツェルは自分自身が閉じ込められた所から助けられる方なのに・・・と思った。

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著者プロフィール

(うさみ・まこと)1957年、愛媛県生まれ。2007年、『るんびにの子供』でデビュー。2017年に『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞〈長編及び連作短編集部門〉を受賞。2020年、『ボニン浄土』で第23回大藪春彦賞候補に、『展望塔のラプンツェル』で第33回山本周五郎賞候補に選ばれる。2021年『黒鳥の湖』がWOWOWでテレビドラマ化。著書には他に『熟れた月』『骨を弔う』『羊は安らかに草を食み』『子供は怖い夢を見る』『月の光の届く距離』『夢伝い』『ドラゴンズ・タン』などがある。

「2023年 『逆転のバラッド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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