競歩王

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334913076

感想・レビュー・書評

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  • 競歩王。
    2019.09発行。字の大きさは…小。

    スポーツ小説を読むのは、ほぼ始めてと思います。とても面白く読めました。
    読みながら時々笑いが出たり、右の拳を握って頑張れ、そこだと言っている自分にビックリしました(笑)。
    読める字の大きさの本がなかなか無いなか、読めることに感謝をしています。
    物語は、スランプに陥っている作家と、勝てない競歩選手がお互いを理解し、お互いを励ましあいながらオリンピックに向かって行く姿勢がいいです。

    額賀澪さんの本を読むのは始めてです。
    とても楽しく読めました。感謝。

    • seiyan36さん
      おはようございます。
      「競歩王」、昨日図書館で借りようと思いましたが、残念ながら貸し出し中でした。
      さて、松本清張の「雑草群落」の字の大...
      おはようございます。
      「競歩王」、昨日図書館で借りようと思いましたが、残念ながら貸し出し中でした。
      さて、松本清張の「雑草群落」の字の大きさの件ですが、2014年4月20日発行の文庫本なので、それなりの大きさです。
      2019/11/07
    • やまさん
      seiyan36さん、おはようございます。
      コメント有難う御座います。
      松本清張の「雑草群落」は、図書館で確認してみます。
      有難う御座...
      seiyan36さん、おはようございます。
      コメント有難う御座います。
      松本清張の「雑草群落」は、図書館で確認してみます。
      有難う御座います。
      2019/11/07
    • ありが亭めんべいさん
      やまさん こんにちは! 書評を読ませて頂き今日借り出してきました。なんだか面白そうですね♪
      やまさん こんにちは! 書評を読ませて頂き今日借り出してきました。なんだか面白そうですね♪
      2019/11/17
  • 青春スポーツ小説で、おもしろかった。

    スランプに陥った、元・天才高校生作家、榛名忍。
    夢だった箱根駅伝をあきらめ、競歩に転向した、八千代。

    内にこもって葛藤する男ふたりの話なのに、不思議と暗くなく、やりとりにどこかおかしみがある。

    強引で前向きで明るくて元気な新聞部の福本が、うまく引っかきまわしたり、後押ししたり。

    いいバランスの三角形。

    競歩メインの王道スポーツ小説ではなく、大学生たちの葛藤を描いた作品で、何度も泣けた。

    東京オリンピック2020イヤーにぴったりの作品。

  •  「天才高校生作家」としてもてはやされ,小説家デビューを果たした主人公,榛名忍。
     二作目,三作目……と次第に売上が減り,小説家としてスランプに陥る。

     そんななか,慶安大学図書館ラウンジの大型のモニターに映っていたのは,リオ五輪。競歩の中継。
     それを見つめ,人目も憚らず号泣している男がいた。
     慶安大学の陸上部の八千代篤彦であった。


     片や文学部の運動とは無縁な青年。片やスポーツ科学部で陸上部に所属する体育会系。
     縁がないように思われる二人。だが,それぞれ挫折した経験を持ち,自分の弱さを写し鏡のように相手に見出していたのだ。

     榛名忍は,小説家として在りたい姿からは程遠いと感じていた。書く小説が売れずもやもやしている。同時期にデビューし,売れ行きも良くて直木賞候補までとなった作家を羨んでいる。
     八千代は,陸上長距離で,箱根駅伝に出たくて慶安大に進学したけれど周囲の選手のレベルを知り,競歩に転向した。だが,なかなか競歩でも結果をあげられない。

     それぞれの心に住む嫉妬心,鬱屈した思いが本当に感じられた。
     なりたかった自分になれない。
     二人の理想との差に思い,悩む姿が痛いほど感じられる。

     オイラがここまで書いてくると,なんだか辛いことばかりの小説に見えてくる。
     けれども,それだけではないし,爽やかな筆致で書かれているので読んでいただきたい。

     決して王道の青春小説ではないと思うのだが,高校生ではない,100%青春だけともいえない年齢である大学生という年齢を絶妙に書かれているんではないかなと思っている。

  • タイトル見たら あの「陸王」を想起したけど、中身はかなり違っていて これも面白く読めた。メジャースポーツではない競歩に的を当てて、しかも箱根駅伝志望から転向を余儀なくされて競歩でもなかなか芽が出ない後輩の八千代と華々しく高校生作家デビューしたけどその後なかなか著作に苦労続きの先輩 榛名の大学生2人を主役に据えた物語。よくある青春スポーツ小説にならないように配慮して書かれていますね。それでも一味違う 痛いけど爽やかな物語になっていました♪ 面白くて一気に読みました。ちなみにドーハ世界陸上では まるでこの本に触発されたかのように、20㎞競歩も50㎞競歩も日本選手が金メダルでしたね!

  • 一瞬、「陸王」をほうふつとさせるようなタイトル。著者の作品は以前「できない男」を読んだことがあり、これががなかなか面白かったな、という記憶があったので迷わず読んでみることに。

    主人公である榛名忍が競歩の選手なのかと思いきや、さにあらず、元天才高校生作家で今は大学生で、ちょっとスランプ気味。肝心の競歩は誰が? というと、同じ大学の陸上部の選手が駅伝を断念し競歩に転向したということで、二人ともに足りない何かを抱えている…。

    「できない男」もそうでしたが、ぱっと見、冴えない男性が主人公である点は共通していますね。本作でも競歩を題材にした小説を書くのか、書かないのか、なかなか踏ん切りがつかないまま、でもなんとなく取材もしながら日々を過ごすという、優柔不断っぷりが個人的には読んでてしっくりきます。このずるずる感、自分にも似たようなところがあるからでしょうか…。

    でも不思議とストーリーに暗さや卑屈さは感じられず、うじうじ悩みながらも、それでも少ずつ前に進もうとする、わずかばかりの意志の力が垣間見える、そんなところが読みどころかな、と思いました。

    競歩に打ち込む陸上部の八千代との関係も少しずつ深まってゆくわけですが、この二人の関係は「相手の中に自分を見たんじゃないかな」というラーメン屋での榛名のセリフに凝縮されていると思います。この作品を象徴しているともいえますし、逆になくてもよかったかも(むしろ作中から読み取るほうがおもいろいかも…)、とも思ってしまいます。

    で、競歩のほうはなかなか勝てないレースがつづき、20kmから50kmへ転向し、世界陸上への出場を賭けたレースに臨むラストの部分は結果が気になってしまい一気に読み切りました。その少し前、榛名が久々に書いた長編小説でも競歩を題材にしており、そっちのほうでは主人公の競歩選手が最後は勝てずに終わるという展開であっただけに、余計に結果が気になる! いや、おそらくハッピーエンドを迎えるであろうとわかっていてもやっぱ気になりますね、それまでのレースではこれでもか、というくらい勝てない日々が続きましたから。

    本作の刊行は昨年の夏、作中の榛名と同じく東京オリンピックに向けた作品になるはずが、まさかの延期となり、その点はちょっと残念といえます。ただ、個人的にはオリンピックの前にこの作品を読むことができ、「競歩」という競技がちょっと気になる存在になったのは間違いありません。

  • 酷く矛盾した競技だった。
    誰よりも速く、速く前へ進みたい。一番にゴールテープを切りたい。でも、走ってはいけない――

    競歩。オリンピックで微かに見た記憶がある。トイレに駆け込みたいのを我慢しながら早歩きしているような、どこか不自然なフォームの印象が強い。マラソンや駅伝のように華々しく取り上げられることもなく、どちらかというと地味で、その歩形からどこか滑稽にも見える競技。何故、彼らは「歩く」のだろう。何故、競歩という種目を選んだのだろう・・・。
    「走り」を題材にした小説は数多いけれど、珍しく競歩を描いたこの作品がその答えをくれるかなと読んでみた。

    箱根駅伝を目指し入学した大学の陸上部で自分の限界を知り、競歩に転向することを余儀なくされた八千代篤彦。天才高校生作家として華々しくデビューするも、その後の創作活動に行き詰まり、大学生活の多忙を言い訳にして燻っていた榛名忍。
    ひょんなことから競歩を次作のテーマにすると言ってしまった榛名が、同じ大学の八千代を取材対象にしたことから始まる二人のその後の4年間の物語。

    競技者として、作家として、それぞれの挫折と鬱屈を抱えながら歩む日々。
    箱根駅伝への夢に破れた八千代は、次に進むための新たな目標を胸に、結果が全ての厳しい世界で折れそうになりながらも一人黙々と歩き続ける。
    ライバル作家への嫉妬に駆られ、その作品が書店で平積みされているのを見ることにも苦痛を覚える榛名は、作家としての先が見えないなか、八千代を取材対象として支えながらいつしかその存在に自らが励まされている。

    2人が迷いながら、悩みながら、互いを拠り所としながら、だけど決して寄りかかることなく自らの道を求めていく姿が爽やかでいい。涙あり、笑いありの爽やか青春競歩小説でした。面白かった~。
    次のオリンピックでは絶対に競歩を見ようっと!

  • 天才高校生作家としてデビューしたがスランプ中の大学生作家と、箱根駅伝を目指していたが成績不振で競歩に転向した陸上選手の物語。

    榛名くんが競歩の知識を増やすに従い、八千代くんのレース展開に読者のこちらも熱くなってしまう。この作品は単純なスポーツ小説とも言えないけれど、こういうのは自然と応援してしまうから、面白いんだよね。レースを観戦している気分。
    一方で、全然違うフィールドの榛名くんの小説との向き合い方も、よく描かれていて興味深い。著者自身の体験も含まれているのだろうか。

    この作品も、作中の「歩王」と同じ表紙にしてもよかったのになと、思った。かっこよさそう。
    「歩王」も読んでみたいし「アリア」も読んでみたい。

    前に競歩に少し注目したことがあったものの、詳しいルールなどは知らなかったので、これを読んで俄然興味が湧いた。

  • 競歩と小説、小説の中の小説。
    3つの世界が組み合わされて面白く感じました。
    でも、小説の中で小説を書くというのは自分は反則の様な気がしますね。

  • 競歩という競技がある。
    陸上の花形とされる100mやマラソンに比べるとマイナー競技である。
    身をくねらせる一種独特な姿勢で彼らは歩く。
    少しでも速く先へ進まなければならない。けれど走ってはならない。
    フォームには厳しい制約がある。反則は大きく2つで、「ロス・オブ・コンタクト」(両方の足が地面から離れる)と「ベント・ニー」(接地の瞬間から地面と垂直になるまでの間に前足の膝が曲がる)である。複数の審判がチェックし、違反の疑いがあればイエローの「注意」、明らかに違反している場合はレッドの「警告」を出す。3回「警告」が出ると失格である。
    審判の判定が選手に告げられるまでには、時に時間差があるから、場合によっては1位でゴールしたのに、レッド3枚で実は失格だったということもある。
    種目は20kmと50km。同じコースを折り返し何度も歩く。
    失格者が出るのは珍しいことではないし、気候条件によっては棄権も多く出る。
    世界一過酷な競技とも言われる。

    本書はこの「競歩」をテーマにしたフィクションである。
    スポ根か、というと単純にそうではない。
    競歩選手も主要登場人物ではあるのだが、主人公は、むしろ、競歩がテーマの小説を書こうとしている小説家の方である。彼、榛名忍は、高校生の時に鮮烈なデビューをし、天才高校生作家と呼ばれた。数作品はそこそこ売れたが、大学生になった今はある種、スランプである。書きたいもの、売れるもの、進みたい道、進める道、いろいろ考えて手詰まり気味。編集者に薦められてスポーツ小説を書くことになり、何となく競歩をテーマに据える。
    同じ大学に1人で競歩に取り組んでいる八千代篤彦がいた。榛名は彼を取材してみることにした。何となく取っつきにくい八千代に及び腰の榛名。しかし何度もグラウンドに通ううち、競歩という競技のおもしろさ・厳しさ、そして八千代がなぜ1人きりで取り組んでいるのか、事情も徐々にわかってくる。
    八千代は大学に入ってから競歩を始めたという。元々は長距離走選手で、箱根駅伝を目指していたのだ。だがその夢が潰えた。その代わりのように選んだのが競歩だったというわけだ。
    練習相手もいない。マネージャーもつかない。
    八千代は歩く。たった1人で歩く。
    成績もさほどいいわけではない。けれども彼には東京オリンピックに出るという目標がある。
    榛名はいつしか陸上部の選手たちよりも八千代に近しい存在になり、フォームの違いもわかるようになっていく。

    これはスーパースターが夢をかなえる物語ではない。
    榛名も八千代も才能はないわけではないが、ずば抜けた・飛び抜けたものではない。
    何を、どこを目指したらよいのか、悩みも多い。
    地を這うように、血を吐くように、彼らは苦闘する。
    そう、制約にがんじがらめになりながらも、それでも前に進む、競歩という競技自体のように。

    著者が用意した最後の舞台は、来年行われるはずの東京オリンピックの本番、東京の地である。
    執筆時には、まさかマラソンと競歩が札幌で開催されるなどというイレギュラーな事態は予想できなかったのだろう。
    それまで国内の大会や世界陸上、アジア大会など、実在の大会を舞台にして描いてきた物語のクライマックスがまったくの虚構のものとなってしまうのは若干残念ではあるが、もとより著者の落ち度ではない。
    虚構は虚構として、それぞれの答えを見つけた彼らの道はまぶしく光る。

    著者はおそらくかなり丹念にこの競技の取材を重ねたのだろう。
    ストーリーにはややもたつきを感じる部分もあるが、全般に、八千代を見つめる榛名、その榛名を見つめる著者の「誠実さ」が感じられる。
    読んだ印象でしかないのだが、著者は小説の中の一節に救われた・励まされたことがあり、自らも誰かのためのそんな一節を書くことを目指しているのではないか。
    生きづらさを抱える人の灯のような。
    そんなことを感じさせる作品である。

  • おもしろかった!
    応援したくなる物語っていいね。
    競歩や小説家の執筆とは多分真逆に、一気に突っ走って読み進めてしまいました(^^;

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著者プロフィール

1990年、茨城県生まれ。日本大学芸術学部卒業。2015年、「ウインドノーツ」(刊行時に『屋上のウインドノーツ』と改題)で第22回松本清張賞、同年、『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞を受賞する。著書に、『ラベンダーとソプラノ』『モノクロの夏に帰る』『弊社は買収されました!』『世界の美しさを思い知れ』『風は山から吹いている』『沖晴くんの涙を殺して』、「タスキメシ」シリーズなど。

「2023年 『転職の魔王様』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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