- 本 ・本 (300ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334913236
感想・レビュー・書評
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バブル景気に乗ってゴルフ場の芝管理の会社を経営する大西浩平と、病的にヒステリーな妻・悦子、そのせいで精神を病んだ娘・恵子、心療内科の問診シーンから始まる物語を読み始めてすぐに、これが既刊「ボダ子」の続編であることに気が付く。
浩平目線で描かれた前作では、父の自分勝手な都合で打ち捨てられる娘と、問題に直面すると言い訳ばかりしてとりあえず逃げることしか考えない、とことん糞のような父の姿が描かれていた。
娘・恵子の目線で描かれたこの作品を読むと、その浩平への印象がガラリと変わる。少なくとも、娘は父親にネグレクトされたとも酷い父親だとも感じておらず、それどころか自分思いの優しい父親と、とことん頼りにし慕っている。逆に、母・悦子への嫌悪は相当なもので、彼女の存在が娘の精神障碍を悪化させているとしか思えない。
恵子が心療内科医(←かなり胡散臭い男)にレポートを提出するように言われて書いた文章という体で描かれる物語を息を詰めて読んだ。
胃の中に熱い大きな石を飲み込んだような、何かがせり上がって来るような気分になりながらも、目を背けることができない筆力はさすがで、「ボダ子」に続いてこの作品も忘れられない作品になりそう。
だれでも自分の人生を描けば1作は小説を書けると言われるが、赤松さんは違う切り口で2作目で同じ家族が壊れていく過程を描きながら、まったく違う景色を見せてくれる。
前作を読んだ時は父・浩平に、今作では母・悦子に嫌悪感を抱いたが、きっと次は悦子目線でまた違う景色を見せてくれるのでは・・・と期待が膨らむ。
赤松さんからまだまだ目が離せないわ~詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いわゆるメンヘラー少女の描写がたいへん生々しい。メンヘラ母親の描写もリアルだと思った。お風呂で考え事してしまってお風呂あがりに文句を言うっての、入浴中悪いことを考えこんでしまうのはわかる。だからわたしもスマホや本を持ってじゃないと湯船につかれない・・・。そんな細かな描写は小説で初めて見た。もちろん恵子のことに関してもよめばよむほど、じぶんのことをつらくなるほど考えてしまう。じぶんの少女時代と親のこと、じわじわ苦しくなる。
この作品が何かを基にしてるかは不明だけれどこの父親(コウちゃん)、わたしも客観的には「いい父親だ」「うらやましい」と思うところはすごく多い。けれど恵子のモヤモヤもすごくわかる。"恵子のため"ならもっと恵子と向き合ってほしい。時間をかけていちから、結論に至らなくても恵子の話を聞いてほしい。けれど親も人間だ。親もどうしたらいいかわからないんだろう。子供に自傷やODされたら冷静に向き合うのはなかなかできなくなる。そのへん、セラピー先生は変態だったけれどところどころすごく的確なこと言ってたと思った。めちゃくちゃクズなのに、精神科医としてはプロなんだろうなってところが皮肉で面白かった。
終盤に差しかかって、これボタ子じゃ?とやっと気づいた。ボダ子目線なのかな。そう思い始めてからのラストシーンはすごく心を揺さぶられた。不器用な親子が柔らかな光にすら思える。おもしろかった。それにしても著者の赤松利市さん、まだ知って間もなく4作しか読んでないけどどれも傑作・怪作で素晴らしく魅了されてる。作品によって毛色が違うのにそれぞれ重厚でたまらなく引き込まれる。勢いのある繊細な描写は少女が書いているように錯覚することがあるほどだけど、大人や男たちの弱さや闇も重く叩きつけてくる。頭の中をぐるぐるさせられる疲労感がとても良い。ほんと素敵な作家さんを知られたことがうれしい。他の作品も楽しみです。 -
『ボダ子』『純子』『犬』につづく、著者の今年4冊目の小説(大藪春彦新人賞を受賞したデビュー作『藻屑蟹』が書籍化されたのも今春だから、それも含めれば一年で5冊目!)。
ハイペースで書き下ろし長編を連打する旺盛な筆力に驚かされる。
傑作『ボダ子』のスピンオフともいうべき作品だ。
『ボダ子』は、著者の分身である主人公・大西浩平と、境界性人格障害と診断された娘(「ボーダーライン」ゆえに「ボダ子」というニックネームで呼ばれる)の物語であった。
タイトルとは裏腹に、娘は主人公ではなかった。
それに対し、本作は娘・大西恵子の視点から、父・浩平との関係が語り直される。2作を併読することで、この親子の物語に新たな光が当てられ、深みが生まれるのだ。
①恵子の主治医となる精神科医の、恵子と浩平に対する「語り」
②恵子が精神科医に提出する「レポート」(自らの来し方を綴った文章)
③父・浩平が精神科医に送るメール(娘のレポートを読んでの感想)
――の3つが交互に登場し、それによって物語が進行していくという凝った構成が取られている。一種の「書簡体小説」になっているのだ。
『ボダ子』は100%実体験の「私小説」とのことであったが、本作も事実がベースなのだろうか? 15歳の恵子が少しずつ〝壊れていく〟描写が、痛々しい。
《ほなコウちゃん、なんでウチの気持ちが分かってくれへんかったん?
ウチはな、ウチはちっこいころから、ずっと危険信号出してたんやで――
喉まで出かかったけど、グッと堪えた》(156ページ)
客観的に見ればかなり〝よき父親〟である浩平だが、決定的な部分で恵子の心に対する理解を欠いている。その絶望的な〝ボタンのかけ違い〟が、物語の中で何度もリフレインされる。
相当にどぎつい性描写が頻出した『ボダ子』に比べ、本作は娘が主人公だけあって、そのへんは省略。父と娘の哀切な物語になっている。
一組の親子が、抗いがたい運命の波に呑み込まれ、ジワリジワリと破滅に近づいていくプロセスが、静謐な筆致で描かれていく。
『ボダ子』の迫力には及ばないものの、『ボダ子』を面白く読めた読者なら、本作も必読。不思議な魅力を持つ作品である。
あと、カバーデザインが素晴らしい。
使われている写真は〝ありもの〟のようだが、本書のために撮り下ろされたかのようにビシッとハマっている。 -
前作?「ボダ子」の、娘視点のような本。「ボダ子」よりは作品として構成されている分いくらかはマシな気もするが、「ボダ子」を読むと、この「女童」が作者の自己満足というか自慰のようなものとしか思えずやはり気持ち悪い。
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読後感がスッキリしない。気が重い。
最高です! -
かなり前図書館で予約。
中盤少し前まで読んで、なんだか気分悪!
なんだこ医者!!
…と前の記録を見れば『ボダ子』の続編だかなんだか。
それ見て読む気がなくなり、挫折というより放棄。 -
6月-2。3.0点。
ボダ子の続編かな。境界性心身症の女の子が主人公。
メンタルクリニックの先生とのやり取り手記と、父親とのやり取りが中心。
底辺の人々を描くのが上手い。 -
結局前作と同じ話をうだうだ言ってるだけの小説.おまけに精神科医がありえないほど最低.まさか実話ではないでしょう.
著者プロフィール
赤松利市の作品





