女神のサラダ

著者 :
  • 光文社
3.88
  • (50)
  • (107)
  • (60)
  • (6)
  • (2)
本棚登録 : 787
感想 : 75
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334913397

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 農家や酪農家など、食材を生産する人たちを描いた、連作短編集。

    都会の仕事に疲れて、転職したり。
    一度は出た田舎に、出戻ったり。
    好きで選んだ道でも、順風満帆とはいかなかったり。

    悩んだり、もがいたりしながらも、最後は前向きになっていく。
    さわやかだったり、じーんときたり、読後感がよかった。

    フレッシュな食材の描写に、素材の味をいかすサラダが食べたくなる。

  • 8つの短編集だけどどのお話も温かくホロっときてしまいました。
    それぞれ完結のお話なのかと思ったら最後に女神のサラダになったんだ!と。
    野菜が大好きなので読んでいて食べたくなりました。農業って大変だけど改めて素敵な職業だと思いました。

  • 8篇の短編小説。北は北海道、南は長崎まで、全国各地が舞台で、共通点は農業や酪農に何らかの形で携わる女性が主人公であること。だが、年齢も置かれた境遇も様々だ。1話ずつ、それぞれが予想と異なる展開で良い意味で裏切られた。どの話もとても温かい読後感だった。人は、他人のことを100%正しく理解することは決して出来ないんだなと実感。他人の言動に一喜一憂しがちだし、この人はこんな人と断片的な言動を見ただけで決めつけがちだが、相手がどう考えているかは相手しか分からないと教えられた気がした。それぞれの場所の、壮大な自然も素晴らしかった。岩手県葛巻町の牧場、香川県小豆島のオリーブ畑、それに続く石川県小松市のトマト農家のお話が特に良かった。

  • 農業、畜産など、食卓にのぼるさまざまな食材の生産に携わる女性たちの8編の物語。
    最終章では、それまでに登場した日本各地の食材たちが、とびきり美しい『女神のサラダ』としてテーブルに供される。

    彼女たちはみな、食材や自然への愛情にあふれていて、その心にこたえてすくすくと育った野菜も動物も生産物も、みな健やかで美しく、滋味があふれている。
    もちろん彼女たちの心は、自分や家族や友人や恋人にも向けられていて、時には悩んだり反発したり、裏切られた思いに苦しんだり。
    それでも、自然を相手に、時に思うようにならないことも、手をかければそれだけこたえてくれる喜びも知っているからなのか、優しくて強くて魅力的。

    読後は、青空の下、ふかふかの土を踏んで歩き回ったり、新鮮な野菜や果物を手に取って、美味しい食事を楽しみたくなる。

    瀧羽麻子さんの、これまで読んだ作品の中では一番好き。

  • 農業が絡む短編集。アスパラガスの花束、レモンの嫁入り、月夜のチーズ、オリーブの木の下で、良かった!最後のトマトの約束のレストランのメニュー、いいよね、そういうの(笑) ほっこりする。植物や動物を、見知らぬ誰かの為に努力を惜しまず育てる素晴らしい産業、ありがたく毎日感謝して、いただきます!そう思う。

  • 主に野菜や果実の生産者たちの小話集。
    最後の章でそれらがまとまって女神のサラダとなります。

    どれもこれもみずみずしい野菜と同じくらい
    爽やかなお話が多かったです。

  • 農業は、人間にとって大切な「衣食住」に関わるすべての材料を生み出す。
    この本では、「食」に関わる農業と、女性の生き方が描かれる。
    農業というと、麦わら帽子をかぶった“カールおじさん”みたいなキャラを思い浮かべるが、最近ではイメージも変わってきたかもしれない。
    農業に、女性とくれば豊穣のイメージ。
    とてもふさわしく思われる。

    短編集だが、「女神のサラダ」というタイトルのお話はない。
    レタスをふんわりちぎってボウルに盛って、次々と野菜やチーズのお話が盛り合わされて、熟した黒オリーブ、赤いトマトをトッピング。
    読み終わったところで、女神たちのサラダが完成する。

    彼女たちは、種から今芽を出したばかりだったり、苗床で育ち始めたところだったり。
    酸っぱくて苦い思いをしたり、時間をかけて育ったオリーブの樹だったり。
    あるいは蜜蜂の羽音の中で交わされる幼い誓いだったり。
    みずみずしい命にあふれたお話ばかり。

    「オリーブの木の下で」が一番素敵だったかな。
    多分、読む人の年齢によって、お気に入りがちがうと思う。


    夜明けのレタス
     群馬県昭和村
    茄子とコーヒー
     岡山県備前市
    本部長の馬鈴薯
     北海道京極町
    アスパラガスの花束
     長崎県諫早市
    レモンの嫁入り
     和歌山県広川町
    月夜のチーズ
     岩手県葛巻町
    オリーブの木の下で
     香川県小豆島町
    トマトの約束
     石川県小松市

  • 書店で見かけて、カバーイラストに惹かれて購入。
    農業や畜産に携わる女性たちの物語。短編集。
    ひとくくりに、農業に携わる女性と言っても、女性たちの環境や悩みも様々だし、どの職業の女性たちとも悩みは変わらない。
    でも、自然を相手に仕事をしているからだろうか。
    優しくて強くて、悩みながらも前を向いている人ばかり。

    読み終わったあと、すべての物語が結び付いて、とても美味しい野菜を食べたかのよう。そして元気をもらえた。

  • 美味しそうな野菜がいっぱいの短編集。
    甘いトマト、食べたい~!

    同じ農家(+酪農家)でも、出てくる女性たちの生き方は様々。
    それぞれの家族との関わりも素敵。(うーん、本部長はちょっと微妙かもだけれど)

    牧場に出戻った親子の話が好き。あと最後の章で、日本各地の食材が集まって一つの美味しい料理になったのが、何だかすごくよかった。
    食材を上手く組み合わせる料理人、牧場の動物に欠かせない獣医、農家の力になる機械の会社、人が少ない農家をボランティアで手伝う旅の若者や近所の住人とか、農家を支えるいろんな人たちも登場する。

    日本には(もちろん世界にもなんだけど)、北から南までこんなにいろいろな美味しい食材があるんだなぁと、嬉しくなった。

  • トマト農家さん、レタス農家さん、酪農家さん…。農業にかかわる女性についての短編集。一つ一つのお話で、いろんな食材が出てくる。
    「夜明けのレタス」では、文字を読んでいるだけでも採れたてのレタスが美味しそうで、食べてみたくなった。
    話の内容が一番好きだったのは「オリーブの約束」。割と定番な話の展開かもしれないが、それでもレオの優しい嘘にグッとくる人は多いと思う。

    ラストでは各短編集で取り上げられた野菜が、一つのサラダとなり、話のまとめに入る。

    当たり前だが、お料理やお菓子、飲み物など私が口にしているものは、こうやって誰かが素材を作ってくれているんだなと改めて感じた。スーパーで綺麗に梱包され陳列された状態しか普段は見ないが、土から掘り起こされ、選別され、そのあと沢山の工程を経てスーパーに並ぶ。
    たくさんの人や動物のおかげで私たちは当たり前のようにいつも食事をしている。
    「当たり前」だからそのことには気づかないし、食べるたびに意識し続けるのはなかなか難しい。
    でも、「当たり前」を作ってくれている人たちがいるから、食べれることが「当たり前」になっている。
    だから私は、そういう人々や動物への感謝の想いを込めて「いただきます」「ごちそうさま」を言っていきたいなと思った。

    よくある感想だけれど、本当に大事なことだ、、。

全75件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1981年、兵庫県生まれ。京都大学卒業。2007年、『うさぎパン』で第2回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞し、デビュー。
著書に『ふたり姉妹』(祥伝社文庫)のほか、『ありえないほどうるさいオルゴール店』『女神のサラダ』『もどかしいほど静かなオルゴール店』『博士の長靴』『ひこぼしをみあげて』など多数。

「2023年 『あなたのご希望の条件は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

瀧羽麻子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×