- Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334914202
感想・レビュー・書評
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スカートがキーワードのアンソロジー。自分にとって初めましての作家さんに出会えるのが、アンソロジーの楽しいところ。
どれもよかったけど、特に印象に残ったのが3編。
佐原ひかりさん著「そういうことなら」
気にはなるけどどうでもいいという、この距離感と正直さがとてもいい。
何か異性的なものを身につけたり持っていたりするだけで、すぐにジェンダーだなんだと騒いで何かしらのカテゴリに分けようとするのは違うんじゃないかなと私は思っていて、本人の心が安定するなら好きにしていいじゃないか。
ルール違反をしているでもなし、論理的な説明をしなきゃいけないなんてことではない、と思う。本人が深刻に悩んでいるならまた別の話で。
それはそうと、水谷はすごくいい男だと思うのだ。
佐藤亜紀さん著「スカートを穿いた男たち―トマス・アデリン『黒海沿岸紀行』抜粋」
他の作品もそれぞれ似ていないけれど、これはもうダントツで違っている。
作り込まれた設定も面白いし、最後のセリフが抜群。
中島京子さん著「本校規定により」
女子高の制服から見る時代の移り変わりがテンポよくちょっとコミカルで、私の頃はこうだったなあと懐かしくて楽しい。
そして、ぐっと来た。
タメジ、なんていい先生なんだ。 -
小説宝石2020年6月号朝倉かすみ:明けの明星商会、7月号佐原ひかり:そういうことなら、8,9月合併号北大路公子:くるくる回る、10月号佐藤亜紀:スカートを穿いた男たち、藤野可織:スカート・デンタータ、11月号高山羽根子:ススキの丘を走れ(無重力で)、2021年3月号津原泰水:I,Amabi、4月号吉川トリコ:半身、5月号中島京子:本校規定により、の9つの短編。藤野さんのはホラー?びっくりです。高山さんのは余韻が素敵です。中島さんのが好みで楽しめました。後書きで朝倉さんが同時発売の「絶滅のアンソロジー」をおすすめしていましたが、こちらのスカート〜の方がずっと良くて好きです。
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素晴らしいテーマアンソロジーだった。
読んでて、何度も心の鼻血が出そうになった。興奮しすぎて。いや、鼻血体質ではないのだけれど。どれもこれも素晴らしくて、普通アンソロジーってひとつふたつ「おお!」と思うものがあって、それが新しく知った作家さんだと読書の幅が拡がる楽しさがあるのだけれど、この本はどれもこれも、なのだった。
白眉はやはり奇跡の同時掲載だった佐藤亜紀「スカートを穿いた男たち――トマス・アデリン「黒海沿岸紀行」抜粋」と藤野可織「スカート・デンタータ」なのだけれど、その他でズカーンと来たのが朝倉かすみ「明の明星商会」、北大路公子「くるくる回る」、中島京子「本校規定により」。この波はこれまた素晴らしく、雑誌掲載順そのままとは思えない奇跡である。こんなアンソロジー組めた朝倉さん、すごい。そして、そのお題に見事に想像以上の作品で応える皆さんもすごい。こんな企画を組んで掲載した「小説宝石」もすごい。みんなすごい。多分、読んでいる人たちもすごい。
この本は、みんな読むべきです。スカートを穿いたことがあるなしに拘わらず。最高。 -
テーマに通り、どの著者もスカート=ジェンダー(女性)という視点で書かれているだけれど、直接的よりも、少し離れた物語の方が印象が深かった。
やはり好きな作家さんだということも含めて、以下4作がお気に入り
「明けの明星商会」
「そういうことなら」
「くるくる回る」
「本校規定により」 -
〈懐かしさ、エロさ、美しさ、歴史(あるいは時系列)、フェミニズムのイメージが連想されること〉を条件に設定されたお題にこたえ、多彩な作品が全9編。
女子高生の制服のスカートが牙を剥く「スカート・デンタータ」のインパクトよ。イイゾヤッチマエ感が加速していく興奮。この先、痴漢の話題を耳にするたびにきっと思い出す。 -
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読書家にして、市井の名もなき男女の機微を自在に描く朝倉かすみが、今いちばん読みたいテーマで、いちばん読みたい作家たちに「お願い」して、一筋縄ではいかないアンソロジーができました。もちろん、「女性の物語」とは限りません。
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「明けの明星商会」 朝倉かすみ
「そういうことなら」 佐原ひかり
「くるくる回る」 北大路公子
「スカートを穿いた男たち」 佐藤亜紀
「スカート・デンタータ」 藤野可織
「ススキの丘を走れ(無重力で)」 高山羽根子
「I、Amabie」 津原泰水
「半身」 吉川トリコ
「本校規定により」 中島京子
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一見すると軽やかなようであって、その実深くて重いテーマなのだと、読んでみて今更ながら実感したのだった。たかがスカート、されどスカートである。編者の朝倉かすみ氏は、なんと絶妙なテーマを提起したことだろう。これを差し出された作家のみなさんの頭の中には、まず最初にどんな閃きがあったのだろうか、興味深いところである。いろんな仕立て方があるだろうな、と想像はしたのだが、圧倒的に軽やかな肯定感は見受けられず、どこかジェンダーがらみの屈託を抱えるものとして描かれるものが多い印象である。スカートというものは、今やこういう存在なのか、と再認識させられもした。深い。何事にも是もあり非もあり、疑問に思うことから何かが始まるのだと考えさせられる一冊でもあった。 -
『スカート』をテーマにしたアンソロジー。実に多種多様な短編が集まっていて、なんとも面白い。
北大路公子さんのざらついた不穏さが胸をかすめる団地に住まう老女が主人公の短編、佐藤亜紀さんの「カーチ」という不思議な部族の習性を美しい詩編みたいにでも皮肉に描いた短編、中島京子さんのスカート丈の校則指導をし続けた教員の物語、藤野可織さんの「牙をむく」スカートの話。
特にこの4作が印象的だった。 -
この本めっちゃお得でした。
「夜明けの明星商会」
これはまたすごい朝倉かすみ
大好きです。
泣いた。
この本の中で最も手練。
「くるくる回る)北王子公子
知らなかった作家。
最後!
ああ、そういうことなのね
スカートは息子が履いていたのか
切ない
ナナヨにも騙されてもいいのだ。自分は罰されるべきだという悲しさが胸に迫る。
一番印象深い。
「スカートを穿いた男たち」佐藤亜紀まで登場してくれる
何もせずただ美しい役立たずのカーチの男
うまいなあ
さすが佐藤亜紀
一番好きな短編。
もう佐藤亜紀と朝倉かすみだけで十分だと思うがまだまたあるのです。特に最後の2人。
「半身」吉川トリコ
未熟で社会に対応できない主人公を描く。
一番痛い。
最後は中島京子。
中島京子らしい、切り口の短編。
松田青子もアンソロジーの一員に入ってもよかったかも。それを言い出したらキリがないか。
https://www.cyzowoman.com/2021/10/post_362134_1.html