海神

  • 光文社 (2021年10月20日発売)
3.58
  • (23)
  • (50)
  • (50)
  • (12)
  • (2)
本棚登録 : 400
感想 : 60
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (392ページ) / ISBN・EAN: 9784334914325

作品紹介・あらすじ

「災害は金になるってことよ」
東日本大震災で被災した三陸沖の有人島、天ノ島に現れた、NPO法人「ウォーターヒューマン」代表、遠田政吉。「復興のカリスマ」と豪語する彼は、見捨てられた島に支援隊を立ち上げ、救世主として君臨するが、復興支援金四億二千万円の横領疑惑が発覚する。島を復活させるための命の金が、たったひとりの男の私利私欲のために溶けて消えてしまったのだ。地元出身の新聞記者、菊池一朗は、島を冒瀆した遠田の罪を追い、得体の知れない詐欺事件の解明に奔走する。
デビュー作『悪い夏』、映像化決定『正体』でブレイク中の著者が、圧倒的な筆致で人間の闇に迫る、興奮の感動巨編。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 染井為人さん、2冊目読了。

    これは大ボリュームですが、最高に素晴らしい作品です。
    東日本大震災をモチーフにした話ですが、とても感動します。物語の構成も◎。ラストも文句なし。是非読んで下さい!!

  • 2021年
    三陸沖の有人島 天ノ島
    震災のあった日に生まれた「未来」は 震災から10年経った3月11日に海で金塊の詰まったジュラルミンケースを拾う。その出来事は全国の話題になった。この金塊を巡り 復興を歩みだした島が再び混乱の渦に巻き込まれる─

    2011年
    東日本大震災で甚大な被害を受けた天ノ島。本土からの支援もなく途方に暮れる島民たちの前に、「災害支援のプロ」と名乗るNPO法人の男たちが現れる。代表の遠田はリーダーシップを発揮し、島民たちを鼓舞し、やがて「救世主」と呼ばれるようになる。

    ボランティアの女子大生 姫乃は、「自分にも何か出来ることはあるはずだ」と 震災の次の日に親の反対を押し切り ボランティアのバスに乗っていた。天ノ島での地獄のような現状を目の当たりした姫乃。想像を絶する非日常を体験し、心身共に限界に達していたが、誰かの役に立つことで「自分が生きている証」を見つけたと感じ始める。そして、遠田から「ヒメの力が必要だ」と頼まれた姫乃は 大学を休学して天ノ島に残り 遠田の仕事を手伝うようになる。

    遠田の傍には いつも江村という少年がいた。遠田の指示には絶対従い、表情が乏しく何を考えているのか全く読めない為 島民とも打ちとけることは無かったが 姫乃の作った「パンダおにぎり」がキッカケで 2人は少しずつ心を通わせるようになる。


    2013年
    四億二千万円の使途不明金─。遠田は島の復興支援金を横領していた。そして仲間と島を脱出。遠田を信用していた島民たちを再び絶望に陥れた。

    島の新聞記者 菊池一郎は遠田の罪を暴くため 遠田の過去を調べ始める。

    明らかになる遠田の過去の様々な悪行

    江村とのおぞましい関係

    金塊は誰のものなのか

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    鬼畜とはこいつのことか!!

    2011年 2013年 2021年を行き来しつつ、姫乃、菊池、島の養護施設の女性の目線で話は進んで行きますが 読みやすい。どの年代を読んでも 遠田の野郎は はらわた煮えくり返ること間違いなしってくらいのクズ! この男にどうやって被害を受けた人たち以上の苦しみを与えてやろうかってことばかりを考えながら がんがん読みすすめちゃいました。しかもこれが実際にあった事件をもとにしていると知って (大雪りばぁねっと事件)もっと落ち込みます…。信じた人に裏切られる。知らぬ間に悪事に加担させられる…。遠田によって人生を狂わされた人たち。弱ってる人につけ込んで悪事を働くやつらみんな地獄に堕ちろ!

    遠田、姫乃、菊池が再び出会う2021年からは 心臓バクバクで一気読みです

    プロローグに出てきた「未来」ちゃんの名前が
    エピローグで生きてきて素敵


    いつ行っても図書館に「正体」と「悪い夏」がない!
    なぜだ、、、誰か意地悪してない?

    • ultraman719さん
      クズアベンジャーズ隊長!
      何を言っておるんですか!
      隊員が泣きますよ。
       ユッキーさん
       ゆうきさん
      が!
      クズアベンジャーズ隊長!
      何を言っておるんですか!
      隊員が泣きますよ。
       ユッキーさん
       ゆうきさん
      が!
      2024/06/18
    • yukimisakeさん
      アッセンブル!!。゚(゚⊃ Д ⊂゚)゚。
      アッセンブル!!。゚(゚⊃ Д ⊂゚)゚。
      2024/06/18
    • ゆーき本さん
      。・゚・(*ノД`*)・゚・。
      。・゚・(*ノД`*)・゚・。
      2024/06/18
  • <東北の本棚>被災地の人間模様描く | 河北新報オンラインニュース / ONLINE NEWS
    https://kahoku.news/articles/20220123khn000006.html

    海神 染井為人 | フィクション、文芸 | 光文社
    https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334914325

  • 震災地を狙う悪徳集団は現実でもありえる話で、リアルな場面も多かった。重く絶望的なストーリーで島の悲惨さが伝わった。過去と現在をほぼ交互に構成されているが、少しずつ真相が解き明かされていく展開は良かった。とはいっても予測はしやすいストーリーだったとは思う。

  • 「絶望と再生のミステリー」というのが本書の謳い文句でそこに興味を惹かれて読んでみたが…

    テーマは<東日本大震災とその復興の闇>。
    闇の部分は実際に起きた事件をなぞっているようなので、そこはもうノンフィクションといってもよいと思う。
    震災直後の現地の様子などもリアルな描写だし、闇が深すぎて「絶望」が重い。
    重いんだよ~~~!(鎌倉殿の13人ふうに言ってみた)

    最後希望を感じることができる終わり方でよかったよ、ほんと。
    これなかったら、間違いなく「闇」文庫になっちゃうもの。嫌ミスになっちゃうもの。


    ===データベース====
    東日本大震災により甚大な被害を受けた天ノ島で、NPO法人の代表が復興支援金を使い込む横領疑惑が発覚。命の金がひとりの男の私利私欲で消えてしまったのだ。
    10年後、被災地の海から黄金のインゴットが見つかり、事件は動き始める。
    圧倒的な筆致で人間の闇に迫る、絶望と再生のミステリー。

  • あとがきを読んで、凄く悩みながら書かれたのだなぁと
    作家さんの気持ちがわかって
    余計にいい作品だったな、と思いました。

    能登の地震の後も、ボランティアに行くのに
    ネットで色々批判的な意見もありハードルが上がっていると聞きました。
    行動に移せる人は凄い!と尊敬に値するという
    もっと単純な話ではないのかな。
    と、この作品を読んでそう思った事を思い出しました。

  • メインキャラの各時代からの視点で
    物語が進むので、過去に遡ったり、
    現在に戻ったりと慣れるまでは、読
    みづらかった。
    染井作品は、悪い夏や正義の申し子
    のようなぶっとんだキャラの話を書
    くタイプの小説家からは、このよう
    な重たいテーマの物語はギャップを
    感じた。
    主人公のヒナは、ボランティアで人
    助けをするつもりが、壮絶な経験を
    していき、ラストまで気になり、一
    気に読んでしまった。
    読後は、悪くない感じで終わった

  •  震災の復興の中で、実際にあった復興支援金を詐欺するNPO法人をモデルにした作品である。
    最初は、復興の救世主のように登場したカリスマ性を持った遠田。しかし、行っていることやっていることは、でたらめ。人を100人近く雇うことは、地域の活性化が生まれるが、補助金頼みの運営では先が見えている。リーダーである遠田は、復興にどのような事業が必要で、それが持続的可能な事業にするには、どうすればいいかというアイデアはない。また、そのような事業が、この小説の中に退治されていないところが、残念だ。自分のための善意を装ったものの暴走が主題である。

     千田来未は、三陸沖の天ノ島で、2011年3月11日に生まれた。母親は来未を産んだ時に死んだ。そして時がたち、10歳の誕生日を迎えたのだった。海岸にいた来未は、銀色の鞄が海の中にあるのを見つけ、拾い上げた。その中には、金塊があったのだ。大きな話題となる。その金塊は、誰のものか?

     天ノ島生まれの菊池一朗は、東北大学経済学部を出て、「今日新聞社」に入り、郷里である天ノ島を管轄にふくむ、宮古通信部に赴任した。1年が経とうとして、2011年3月11日の東日本大震災にあったのだ。「地震が来たら津波が来る」と一朗は漁師の父親から聞かされていた。

     天ノ島復興支援隊のウォーターヒューマンが、行政から請け負っていた業務は、遺体捜査隊、救援物質の管理、防犯パトロール、仮設住宅の配膳、観光復興のための人材育成、災害対応支援要員の育成、ボランティアセンターの運営だった。緊急雇用創出創出事業として、予算2年間で、約12億円だった。そこで働く、職員は100名近くだった。そのリーダーが、遠田だった。その遠田に、支援金横領疑惑が持ち上がった。そして、雇われていた従業員が突然解雇を言い渡された。ウォーターヒューマンは、破産手続きに入った。支援金横領疑惑を起こす前は、みんなから尊敬されていた。震災復興の救世主だった。

     物語は、2011年、2013年、2021年と時間がずれていく。
     椎名姫乃は、学生の時に、ボランティアで天ノ島にきた。その大震災での死体なども見て、その悲惨さを目の当たりにしていた。そして、大学を休学して、さらにボランティアに従事する。そして、天ノ島復興支援隊の遠田の仕事を手伝うようになる。また、江村とも、親しくなっていく。姫乃は、江村におにぎりを作ってやる。遠田に対して、尊敬の念が深まっていく。
     姫乃は、なぜ震災ボランティアを志願したのか?姫乃は「人助けしたい」と思っていた。
     姫乃は、なぜ遠田のいうことを指示通りに行うのか?というのが、よくわからず。

     菊池一朗は、遠田の経歴を探り、北海道にいる遠田の離婚した妻と話はできるようになった。遠田は、川で溺れた少年を救った。その少年が、江村だった。江村の母親は死んだ。そのため、江村を遠田の家に連れて、生活させた。遠田と江村の主従の関係が明らかになる。遠田は、川で溺れていた人を救ったことで、人を救うことに自分の生きる道を見つけ出した。菊池一朗は、遠田が、なぜ横領したのかということも、調べていた。

     菊池一朗は、江村の教師の有賀先生から、江村はアレキシサイミア、失感情症だと聞かされた。アレキシサイミアは、自閉スペクトラム、アスペルガー症候群や注意欠如・多動性障害とは違っている。アレキシサイミアは、感情を認識したり、言葉で表現したりすることが困難な人をいう。表情に出ない。自閉スペクトラム症は、発達障害の一つで、コミュニケーションがうまくできない。アスペルガー症候群は、かつて自閉スペクトラム症の一タイプとして診断されていた概念。表面上は一見問題なく会話できるが、対人関係でのミスコミュニケーションや、特定のこだわりが強く出ることで、社会生活での困難を抱えることがある。江村が、アレキシサイミアであることが重要なポイントとなる。

     遠田は、江村を精神的に支配し、遠田に楯突くものを江村に処理させる。遠田は、放漫経営で、贅沢を尽くす。それに、姫乃が巻き込まれる。たまたま重要な話をしているときに、姫乃がいて、監禁し、江村に殺すように指示するが、初めて江村はその命令に従わない。遠田は、そのことに驚く、そして。
     姫乃は、従順であったが、最後には「あなたは人間のクズだ」と遠田に言うことができた。

     人間の中にある心の闇、常に人の責任にする遠田。それに心酔している江村。姫乃に好意を持つことで、変化していく江村。初めて、自分から涙を流す。やっと、自分が人間として、生きていく道をはっきりと自覚する江村。海神(わだつみ)が、船をゆり動かす。小説らしい小説。

  • 東日本大震災により甚大な被害を受けた天ノ島で、NPO法人の代表が復興支援金を使い込む横領疑惑が発覚。命の金がひとりの男の私利私欲で消えてしまったのだ。10年後、被災地の海から黄金のインゴットが見つかり、事件は動き始める。圧倒的な筆致で人間の闇に迫る、絶望と再生のミステリー。

    火事場の泥棒的なやつはどこにでも居る。許せん!

  • 染井さんの「人は二度死ぬと言われている。一度は命を落としたとき、二度目は記憶から忘れられたとき。ならば、自分は震災の本を書く」というお言葉聞いてからの読了にこそ意味があったと思っています。

  • 2021年3月、東北の小さな島の海岸で少女が見つけたアタッシュケース。その中身はたくさんのインゴットだった。それをきっかけに再び悪夢が訪れた。2011年3月に発生した東日本大震災。地震とともに津波も襲われた小さな島。そこでは、本島からの応援も来ず、多くの死者が出たりと大変な状況だった。そこに現れた救世主の遠田。彼は被災者を救うべく、島のリーダーとなって活躍し、島民から感謝されていた。しかし、その裏で遠田は、復興支援金を私利私欲のために使っていた。後に横領疑惑として、逮捕に踏み切ろうとしていたが、遠田は失踪してしまった。
    大震災から現在までに何が起きていたのか?そしてインゴットとのつながりとは?


    インゴットの発見をきっかけに大震災の記憶と人間の欲望やそれに翻弄される人たちが描かれていましたが、一番印象深かったのは、大震災直後の描写でした。とにかく生々しく目を背けたくなるばかりで胸が痛かったです。

    次々と打ち上げられる死者の数々。想像するだけで、精神が崩壊してしまいそうでした。

    一番のメインとなる人物が遠田です。救世主として現れた男で、始めは良い人だと思っていたのにその裏では、とんでもないことをしています。金をいいように使う姿には、言葉もありませんでした。

    物語の構成としては、2021年、2013年、2011年の3つの年代が同時進行として進んでいきます。新聞記者・菊池とボランティアとして島に来た椎名が主にメインの視点となって、あの日あの時、何をしていたのかが語られます。

    2021年のパートでは、ある養護施設の職員の視点が中心となって、過去の出来事と絡めながら、インゴットの謎に迫っていきます。

    同時進行なので、大震災から現在までの空白の時間に徐々に埋めていくかのようにわかっていきます。
    遠田の行方は?インゴットは誰のなのか?当時何が起きていたのか?

    全てがわかった瞬間、もどかしさや哀しさなどが込みあげてきました。その背景にある、誰かを想う愛情や人のために奔走する情熱などあらゆる感情が渦巻いていて、読み応えがありました。

    人々の心理描写が、特に色んな怒りの感情が丁寧に描かれていて、胸を打たれました。

    余談ですが、染井さんの別の作品「正体」が映像化されるということで楽しみです。

  • 災害を食い物にする犯罪者と、苦難の中それに縋るしかなかった人々の10年間です。東日本大震災直後とその2年後横領発覚、そして10年後。最初から最後までずっと重苦しい本ですが、これを読んでおくとおいそれとペテン師に引っ掛からないんじゃないでしょうか。この本のモデルになる事件があったようなので猶更です。でも多くの人が信じている中で少数が疑っている状態だと防ぐの難しいかもしれませんね。

  • これは…辛いけど良かった。

  • 小さな島ではボランティアが充分行き届いてなく詐欺にもあいやすい。そしてそれに疑いながらも未来さえ分からない状態で感覚も麻痺していると知る。自分も信じてしまうだろうなぁと思いながら読む。
    その災害復興から順に話が進められていくなら絶対耐えて読み終わる事はできないと思うが現在と復興の話を織り交ぜる事によって緩和されてラストまで読み終える事ができた。
    でも性被害はいらない。と少し残念に思う。それを書くなら被害に遭った心情とか深く掘り下げて欲しかった。

  • 本当にあった詐欺団体を題材に書かれているとの事で
    あの震災の最中こんな事を出来る人間って本当に嫌な生き物。

    心の綺麗な純粋な人ほど、騙されたり利用されたりして人生を棒に振るなんてあってはいけない。
    詐欺を働く人間は、頭も良くて人の心を掴むのに長けている人。別の道で活かせたら素晴らしい人になるかもしれないのに。

    江村もヒメも島の人々も、いい人たちが騙されて心をズタズタにされて辛かった。
    島の子供の未来ちゃんの未来に光が見えたところだけが救われた。

    染井さんの本はとても読みやすくて好きです。

  • 東日本大震災により甚大な被害を受けた天ノ島で、NPO法人の代表が復興支援金を使い込む横領疑惑が発覚。命の金がひとりの男の私利私欲で消えてしまったのだ。10年後、被災地の海から黄金のインゴットが見つかり、事件は動き始める。圧倒的な筆致で人間の闇に迫る、絶望と再生のミステリー。

  • 災害は金になる。3.11直後に島の復興の為に渡ってきたという男達。
    隊長と慕われ村民から信頼を得た遠田
    遠田の側近で感情を持たず何を考えているか分からない江村
    誰かのために役立ちたいと島にボランティアにやってきた姫乃
    島の記者として遠田の不正を暴こうとする菊池一郎。

    震災によって身近なひとを亡くし、島の復興を食い物にする男達によって人に絶望する。綺麗事ではない世界を感じる一方で、姫乃に心を開いていく江村のその後も気になる。
    島に起きる不思議な出来事に、人の想いの温かさを感じました。

  • きれいごとをを描こうとしないのが 良い
    私もあなたも、生き残った人間のひとりなのだ

    架空の人物像だからこそ 自由に表現できる、
    小説ならではの 良い事例 ではないだろうか
    ルポルタージュでは、こうは行かないだろう

    信頼していたものが虚偽、偽りの言葉だったら裏切られたなどと軽々しくは人の心を表現するのが難しいとも思えるほどだ
    まして、東北震災は人の心に影響を与えた災害としての規模が大きかった
    復興支援予算の不正使用のNPO団体があったことも記憶の片隅には残っている

    その復興支援団体の実態がもし、こうだったら とサスペンスドラマ仕立てで組み立てられている

    話しのスタートは震災からちょうど10年後の2021.3.11
    津波の日に産まれた女の子が海岸で金塊の入った、藻の生えたジュラルミンケースを見つけたところから始まる
    当然、全国のメディアで報道される

    時系列も 2021年.2013年.2012年.2011年 それぞれの特別な日毎に、分割され、ストーリーを構成する人の目で、時の順序を進めたり戻したりしながら、ドラマのパーツが組み合わさってゆく

    2011.3.11 津波のニュース映像を見た女子大学生は三陸へ向かう ボランティアとして遺体の検分も手伝う
    大学も休学して復興支援団体のNPOに雇われ1年以上被災地で貢献する
    すっかり地元のマドンナだ
    団体のリーダーを信用していた
    遺体の捜索活動は90%終わったとしても人の捜索は終わることがない
    子供が見つからないということは生きている証だと一年経っても子供の誕生日を祝う母親も描く
    しかし団体の不正経理と国の復興支援金の使途はひどすぎた
    代表者とその部下の歪んだ特殊な人間性によるものだ
    地元新聞記者とルポライターが協力して、この首謀者の人物像を取材する
    描かれる人物像のリアリティがこの小説のポイントだ
    殺人も犯す
    ボランティア女子大生も首謀者に気に入られて不正などと知らず手伝っていた訳だ
    首謀者は補正予算がつかなかった頃から不正を追求される
    女子大生は失意の中、東京に戻る
    もう被災地の人たちには顔向けができないと生きる覚悟だ
    しかし、慰霊祭の日に戻ると、逮捕拘束されているはずの首謀者と部下、の二人に遭遇し見つかってしまう
    お互いに地元の人間に見つからないように行動していたのに
    女子大生は首謀者に強姦される
    部下に殺害を命じてある
    しかし部下はこの女子大生を殺せない
    特殊な障害とコンプレックスを抱え込んだ男であった
    女が首謀者を銛で殺す
    記者はまさにその場にいたが

    2021年3月15日 この部下が金塊のニュースを見て被災地に現れる
    自分の目で見た事を話しをするためであった

    償うことは何もできないのは分かっていても
    生き残っている人として、言葉を伝えたかったのだろう

    私も あなたも
    今 生きている者たちは誰も皆、生き残ったひとりなのだから

  • 以前にネットで見てザワッとした事件が題材でした。
    小説化により、悪い人間の悪業とともに、周辺人物の描写がとても上手く表現されており読み応えがありました。
    他の作品も興味深いですね。

  • 染井さんがドキュメンタリー?と思って手にしたら、やっぱりミステリーだった。しかもオウム風オヤジにコロナにとてんこ盛り。東日本大震災舞台にしたミステリーは初めてでは。事実はミステリーより奇なりで火事場泥棒や復興詐欺横行したが、10年の歳月を経て被災地の負の面描くのもタブーてはなくなった?

全55件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

染井為人(そめい・ためひと)
1983年千葉県生まれ。芸能プロダクションにて、マネージャーや舞台などのプロデューサーを務める。2017年『悪い夏』で横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞しデビュー。本作は単行本刊行時に読書メーター注目本ランキング1位を獲得する。『正体』がWOWOWでドラマ化。他の著書に『正義の申し子』『震える天秤』『海神』『鎮魂』などがある。


「2023年 『滅茶苦茶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

染井為人の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×