- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334914325
作品紹介・あらすじ
「災害は金になるってことよ」
東日本大震災で被災した三陸沖の有人島、天ノ島に現れた、NPO法人「ウォーターヒューマン」代表、遠田政吉。「復興のカリスマ」と豪語する彼は、見捨てられた島に支援隊を立ち上げ、救世主として君臨するが、復興支援金四億二千万円の横領疑惑が発覚する。島を復活させるための命の金が、たったひとりの男の私利私欲のために溶けて消えてしまったのだ。地元出身の新聞記者、菊池一朗は、島を冒瀆した遠田の罪を追い、得体の知れない詐欺事件の解明に奔走する。
デビュー作『悪い夏』、映像化決定『正体』でブレイク中の著者が、圧倒的な筆致で人間の闇に迫る、興奮の感動巨編。
感想・レビュー・書評
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2021年
三陸沖の有人島 天ノ島
震災のあった日に生まれた「未来」は 震災から10年経った3月11日に海で金塊の詰まったジュラルミンケースを拾う。その出来事は全国の話題になった。この金塊を巡り 復興を歩みだした島が再び混乱の渦に巻き込まれる─
2011年
東日本大震災で甚大な被害を受けた天ノ島。本土からの支援もなく途方に暮れる島民たちの前に、「災害支援のプロ」と名乗るNPO法人の男たちが現れる。代表の遠田はリーダーシップを発揮し、島民たちを鼓舞し、やがて「救世主」と呼ばれるようになる。
ボランティアの女子大生 姫乃は、「自分にも何か出来ることはあるはずだ」と 震災の次の日に親の反対を押し切り ボランティアのバスに乗っていた。天ノ島での地獄のような現状を目の当たりした姫乃。想像を絶する非日常を体験し、心身共に限界に達していたが、誰かの役に立つことで「自分が生きている証」を見つけたと感じ始める。そして、遠田から「ヒメの力が必要だ」と頼まれた姫乃は 大学を休学して天ノ島に残り 遠田の仕事を手伝うようになる。
遠田の傍には いつも江村という少年がいた。遠田の指示には絶対従い、表情が乏しく何を考えているのか全く読めない為 島民とも打ちとけることは無かったが 姫乃の作った「パンダおにぎり」がキッカケで 2人は少しずつ心を通わせるようになる。
2013年
四億二千万円の使途不明金─。遠田は島の復興支援金を横領していた。そして仲間と島を脱出。遠田を信用していた島民たちを再び絶望に陥れた。
島の新聞記者 菊池一郎は遠田の罪を暴くため 遠田の過去を調べ始める。
明らかになる遠田の過去の様々な悪行
江村とのおぞましい関係
金塊は誰のものなのか
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鬼畜とはこいつのことか!!
2011年 2013年 2021年を行き来しつつ、姫乃、菊池、島の養護施設の女性の目線で話は進んで行きますが 読みやすい。どの年代を読んでも 遠田の野郎は はらわた煮えくり返ること間違いなしってくらいのクズ! この男にどうやって被害を受けた人たち以上の苦しみを与えてやろうかってことばかりを考えながら がんがん読みすすめちゃいました。しかもこれが実際にあった事件をもとにしていると知って (大雪りばぁねっと事件)もっと落ち込みます…。信じた人に裏切られる。知らぬ間に悪事に加担させられる…。遠田によって人生を狂わされた人たち。弱ってる人につけ込んで悪事を働くやつらみんな地獄に堕ちろ!
遠田、姫乃、菊池が再び出会う2021年からは 心臓バクバクで一気読みです
プロローグに出てきた「未来」ちゃんの名前が
エピローグで生きてきて素敵
いつ行っても図書館に「正体」と「悪い夏」がない!
なぜだ、、、誰か意地悪してない?
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「絶望と再生のミステリー」というのが本書の謳い文句でそこに興味を惹かれて読んでみたが…
テーマは<東日本大震災とその復興の闇>。
闇の部分は実際に起きた事件をなぞっているようなので、そこはもうノンフィクションといってもよいと思う。
震災直後の現地の様子などもリアルな描写だし、闇が深すぎて「絶望」が重い。
重いんだよ~~~!(鎌倉殿の13人ふうに言ってみた)
最後希望を感じることができる終わり方でよかったよ、ほんと。
これなかったら、間違いなく「闇」文庫になっちゃうもの。嫌ミスになっちゃうもの。
===データベース====
東日本大震災により甚大な被害を受けた天ノ島で、NPO法人の代表が復興支援金を使い込む横領疑惑が発覚。命の金がひとりの男の私利私欲で消えてしまったのだ。
10年後、被災地の海から黄金のインゴットが見つかり、事件は動き始める。
圧倒的な筆致で人間の闇に迫る、絶望と再生のミステリー。 -
あとがきを読んで、凄く悩みながら書かれたのだなぁと
作家さんの気持ちがわかって
余計にいい作品だったな、と思いました。
能登の地震の後も、ボランティアに行くのに
ネットで色々批判的な意見もありハードルが上がっていると聞きました。
行動に移せる人は凄い!と尊敬に値するという
もっと単純な話ではないのかな。
と、この作品を読んでそう思った事を思い出しました。 -
メインキャラの各時代からの視点で
物語が進むので、過去に遡ったり、
現在に戻ったりと慣れるまでは、読
みづらかった。
染井作品は、悪い夏や正義の申し子
のようなぶっとんだキャラの話を書
くタイプの小説家からは、このよう
な重たいテーマの物語はギャップを
感じた。
主人公のヒナは、ボランティアで人
助けをするつもりが、壮絶な経験を
していき、ラストまで気になり、一
気に読んでしまった。
読後は、悪くない感じで終わった -
災害を食い物にする犯罪者と、苦難の中それに縋るしかなかった人々の10年間です。東日本大震災直後とその2年後横領発覚、そして10年後。最初から最後までずっと重苦しい本ですが、これを読んでおくとおいそれとペテン師に引っ掛からないんじゃないでしょうか。この本のモデルになる事件があったようなので猶更です。でも多くの人が信じている中で少数が疑っている状態だと防ぐの難しいかもしれませんね。
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染井さんの「人は二度死ぬと言われている。一度は命を落としたとき、二度目は記憶から忘れられたとき。ならば、自分は震災の本を書く」というお言葉聞いてからの読了にこそ意味があったと思っています。
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これは…辛いけど良かった。
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2021年3月、東北の小さな島の海岸で少女が見つけたアタッシュケース。その中身はたくさんのインゴットだった。それをきっかけに再び悪夢が訪れた。2011年3月に発生した東日本大震災。地震とともに津波も襲われた小さな島。そこでは、本島からの応援も来ず、多くの死者が出たりと大変な状況だった。そこに現れた救世主の遠田。彼は被災者を救うべく、島のリーダーとなって活躍し、島民から感謝されていた。しかし、その裏で遠田は、復興支援金を私利私欲のために使っていた。後に横領疑惑として、逮捕に踏み切ろうとしていたが、遠田は失踪してしまった。
大震災から現在までに何が起きていたのか?そしてインゴットとのつながりとは?
インゴットの発見をきっかけに大震災の記憶と人間の欲望やそれに翻弄される人たちが描かれていましたが、一番印象深かったのは、大震災直後の描写でした。とにかく生々しく目を背けたくなるばかりで胸が痛かったです。
次々と打ち上げられる死者の数々。想像するだけで、精神が崩壊してしまいそうでした。
一番のメインとなる人物が遠田です。救世主として現れた男で、始めは良い人だと思っていたのにその裏では、とんでもないことをしています。金をいいように使う姿には、言葉もありませんでした。
物語の構成としては、2021年、2013年、2011年の3つの年代が同時進行として進んでいきます。新聞記者・菊池とボランティアとして島に来た椎名が主にメインの視点となって、あの日あの時、何をしていたのかが語られます。
2021年のパートでは、ある養護施設の職員の視点が中心となって、過去の出来事と絡めながら、インゴットの謎に迫っていきます。
同時進行なので、大震災から現在までの空白の時間に徐々に埋めていくかのようにわかっていきます。
遠田の行方は?インゴットは誰のなのか?当時何が起きていたのか?
全てがわかった瞬間、もどかしさや哀しさなどが込みあげてきました。その背景にある、誰かを想う愛情や人のために奔走する情熱などあらゆる感情が渦巻いていて、読み応えがありました。
人々の心理描写が、特に色んな怒りの感情が丁寧に描かれていて、胸を打たれました。
余談ですが、染井さんの別の作品「正体」が映像化されるということで楽しみです。
何を言っておるんですか!
隊員が泣きますよ。
ユッキーさん
ゆうきさん
が!
何を言っておるんですか!
隊員が泣きますよ。
ユッキーさん
ゆうきさん
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