月の光の届く距離

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334914431

作品紹介・あらすじ

真面目な女子高生、美優は予期しない妊娠をしてしまう。堕胎するには遅すぎると、福祉の手によって奥多摩にあるゲストハウス「グリーンゲイブルズ」に預けられる。そこには、明良と華南子という兄妹が、深刻な事情を抱えた子どもたちの里親となって、高齢の母、類子と暮らしていた。貧困、未婚、虐待、難しい背景をもつ里子たちを慈しんで育てる彼らにも、運命に翻弄され絶望を乗り超えた苦しい過去があった。
話題作『展望塔のラプンツェル』に続く、家族の在り方に迫る物語。

感想・レビュー・書評

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  • 17歳で望まぬ妊娠をした柳田美優が親元を離れてグリーンゲイブルズというゲストハウスで働くようになるまでから、出産に至るまでの物語と、そしてもうひとつは赤毛のアンのマシューとマリラのように暮らす兄妹とその里子たちの物語です。

    なぜ、兄と妹である井川明良と、西村華南子とそして母の西村類子が三人でグリーンゲイブルズという名前のゲストハウスを営み三人の養子を育てているのか。

    井川明良の少年時代の話である第二章は平成の危うい歌舞伎町にたむろする少年少女たちの実態と明良という人物と千沙という不幸な身の上の少女との関係や橋本という一本気な指物師との関係から、非常に読まされました。

    第三章の華南子の章は、赤毛のアンが大好きだった華南子の悲恋がわかっていても泣かされました。

    第四章では、よい巡り合わせが重なって皆の気持ちがひとつになって存在しているこの奇跡のような家族が心から素敵だと感じられました。
    その家族は「月の光の届く距離にいる家族」ととても美しく表現されています。

    美優の産んだ子供もきっと幸せになれるだろうことが信じられました。

    • くるたんさん
      まことさん♪

      明良と千沙の章、泣けました。橋本さんと明良の関係がまた良かったです。ここでも血の繋がりなど関係ない信頼関係、救いを感じました...
      まことさん♪

      明良と千沙の章、泣けました。橋本さんと明良の関係がまた良かったです。ここでも血の繋がりなど関係ない信頼関係、救いを感じました。

      美優の選択も、子供の幸せに繋がれば良いですよね。
      タイトルが秀逸でした♪
      2022/03/10
    • まことさん
      くるたんさん。

      そうですね。
      第二章がやっぱり泣けました。
      橋本さんの最期は、早すぎました。
      明良の立派になった姿見届けて欲しかったです。...
      くるたんさん。

      そうですね。
      第二章がやっぱり泣けました。
      橋本さんの最期は、早すぎました。
      明良の立派になった姿見届けて欲しかったです。
      カメちゃんは、元気そうで、嬉しかったです。
      2022/03/10
  • 望まぬ妊娠をした女子高生の話かと思いきや、そんな子ども達を救おうとする大人たち、その大人たちの壮絶な過去を描いた物語だった。
    様々な家族の形があって、何をもって家族なのか色々考えさせられる。
    個人的には江戸指物師の橋本さんが好きだった。朴訥とした中に優しさが溢れていて、すごく魅力的な人。
    それにしても…明良と華南子の関係は、途中から想像がついたけど、いくらなんでもこんな偶然ある?

  • 予期しない妊娠をしてしまった17歳の決断。

    血の繋がりがある家族が、ほんとうの家族なのか、それだけではない家族のかたちだってあってもいいと思えた。

    冒頭の「私の赤ちゃんへ」の手紙が、最期まで読んだ後に心に沁みてきた。
    後悔はしない彼女なりの勇気なのだろう。

    子どもに関しては、何が正解なのかいつもわからない。
    ただ、子どもがいつも笑って過ごしてくれさえすれば良いと思う。
    そして、傷ついた子どもに寄り添う大人がいればいい。



  • 宇佐美さん2冊目。家族とは何か?という命題に対し、命のリレーへの神秘や不条理が見え隠れした。1人の女性が子どもを産むという決意は様々ある。大好きな人の子どもが欲しい、ママになりたい、自分の人生で必要だから、修行や冒険心など色々ある。この本では1人の女性の異なる過去や価値観、人生観によって「子を産む覚悟」が垣間見えた。この覚悟に良い悪いはないのだと思いう。しかし、子どもは親を選べない。生まれてくる子どもが「母親が自分を産んだという覚悟」に納得できればよいのだと思う。男性として分からないことだらけだったが。⑤

  • 出てくる人、みんながみんな苦労を背負いすぎてる。
    何でみんなこんな不幸なんだ。

    元凶の准也は親にも言わずに平然と大学進学!?
    絶対ダメでしょ。美優の両親、まともそうなのにそこはいいのか!

    第四章が一番良かった。美優が自分で考えて、子供のためにどうするのが一番良いかを決断することができた。
    でもやっぱり、男の方ももっとしっかり向き合うべき。

  • 涙と光の一冊。

    予期せぬ妊娠、家族を描いた物語は随所で涙。 

    たとえ血の繋がりはなくとも相手への絶対的な信頼というもの、それが子供の居場所と心を創り上げる愛情へと変わる大切さ。
    そして人は苦しみを背負った分だけ人に手を差し伸べることができる事を強く感じた。

    誰もの人生の決断が胸を打つ。 
    美優が悩む姿は見守る時間だった。

    彼女の決断が確かな幸せと愛情に姿を変えて欲しい。

    世の子供達誰もが自分の"祝福された命"を感じ取れたら良い。

    太陽も月もなくてはならない大切な光。
     
    その光が次へと、大切な誰かの元へと絶え間なく届きますように。

    • まことさん
      くるたんさん。おはようございます♪

      図書館通い、再開したので、またくるたんさんの本棚からも予約を入れさせてもらいますね。
      このお話は...
      くるたんさん。おはようございます♪

      図書館通い、再開したので、またくるたんさんの本棚からも予約を入れさせてもらいますね。
      このお話は美優のお話だったのですね。
      私は明良と華南子のお話だと思ってしまいました。
      それにしても、安室奈美恵ちゃんの全盛期の頃の少年少女が中年になっているのにはびっくり!時の流れを感じました。早いですね~。
      2022/03/10
    • くるたんさん
      まことさん♪おはようございます♪

      まことさんの地域も春めいてきたんですね♪

      そうそう、章をガラッと変えての明良たちの構成がまた読ませてく...
      まことさん♪おはようございます♪

      まことさんの地域も春めいてきたんですね♪

      そうそう、章をガラッと変えての明良たちの構成がまた読ませてくれましたよね¨̮♡

      私も時代をなつかしみながら、涙しながら読みました♪

      2022/03/10
  •  自分なら絶対にそういう結論は出さないと思いつつも、美優と同じ状況なら、もしかしたらそうせざるを得なかったのかもしれない。

     妊娠をきっかけに高校を中退。そして妊娠に腰が引けた彼氏と別れ、両親には勘当同然の扱いを受けた美優。一人で産んで育てると思い、勢い出てきたまではいいが、二進も三進も行かなくなり、自殺をしようとしていたところ、NPO団体の千沙と出会う。

     千沙の紹介で奥多摩にあるゲストハウス『グリーンゲイブルズ』に預けられた美優。グリーンゲイブルズを営むのは明良と華南子という兄妹。2人は親に捨てられた子や事情を抱えた子たちの里親となって育てていた。

     それぞれの登場人物の目線で章が構成されていて、明良と華南子の過去は特に読み応えがあって面白かった。

     明良が木彫師となった経緯。華南子との出会い。許されない恋。

     おそらくこの物語は美優が主人公で、明良や華南子はあくまでもその脇役という位置付けなのだろうが、当然ながら、脇役にもそれぞれの人生があって、彼らもまた主役なんだと思い知らされた。

     さて、グリーンゲイブルズで過ごして行くうちに、美優の決断もせまられていく。生まれてくる赤ちゃん。美優はどんな決断を下すのか。

     そこで冒頭の感想である。この流れはこうなるんだろうなぁと思い読んでいくと、やっぱりかと鼻白む思いもあったが、でも、果たして。

     果たして自分だったらどういう決断を下したんだろう。

  • 宇佐美さんって作品によって、ほんとイメージ違うなぁ〜
    ホラーっぽいのもあったり、社会派小説だったり、戦争にまつわる話だったり。
    そしてそのどれもに見事に引き込まれてしまう。

    この作品は17歳の美優が望まぬ妊娠をしてしまい、親にも見放され先の見えない将来に絶望するけれど、千紗、明良、華南子といった人達との出会いによって変わっていく姿や、血のつながりを超えた家族関係について描かれた作品でした。

    明良の過去の話に涙しました。
    橋本さんの優しさに心打たれ、そして最後会えなかった事がとてもとても悲しかった(꒦ິ⌑꒦ີ)
    そして華南子との関係。
    昔のドラマでもあるまいし、そんな事ある??って感じもちょっとしたけど、世の中びっくりするような事もあるだろうしと素直に受け止めました(笑)

    冒頭の手紙で結末はなんとなく分かっていたけど、私としてはなんかちょっとモヤッとしてしまう。
    いつか後悔する事はないのかなって。
    だけれども人それぞれ立場や状況も違う。
    幸せになるための選択は色々あるんだな〜と知りました。

    なんとなく読んでて、辻村深月さんの『朝が来る』がよぎったなぁ〜
    朝が来るもそうだったけど、こちらもグイグイ読ませてくれる作品でした

  • 「月の光の届く距離」宇佐美まこと著|日刊ゲンダイDIGITAL
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/302090

    松山在住の作家・宇佐美さん、「家族とは何か」問う新刊:朝日新聞デジタル
    https://www.asahi.com/articles/ASQ2T6SDTQ2SPTLC001.html

    月の光の届く距離 宇佐美まこと | フィクション、文芸 | 光文社
    https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334914431

  • 奥多摩のゲストハウス「グリーンゲイブルズ」を舞台に、経営者の明良と華南子、妊娠した高校生の柳田美優、華南子の母親の類子、そして三人の子供たちなど心に大きな傷を抱えた人々がゲストハウスで新しい家族の絆を紡いでゆく物語。
    「血のつながった家族を包む愛が、太陽の光みたいなものだとしたら、私たちのつながりは月の光のようなもの。優しくはかない月の光に抱かれた家族なの。遠慮したり、反発したり、愛し合ったりしてお互いの距離を見いだしていくしかない。でも決して離れてはしまわない。 未来の実の親と未来も、 そうやって月の光の届く距離にいるの」

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著者プロフィール

(うさみ・まこと)1957年、愛媛県生まれ。2007年、『るんびにの子供』でデビュー。2017年に『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞〈長編及び連作短編集部門〉を受賞。2020年、『ボニン浄土』で第23回大藪春彦賞候補に、『展望塔のラプンツェル』で第33回山本周五郎賞候補に選ばれる。2021年『黒鳥の湖』がWOWOWでテレビドラマ化。著書には他に『熟れた月』『骨を弔う』『羊は安らかに草を食み』『子供は怖い夢を見る』『月の光の届く距離』『夢伝い』『ドラゴンズ・タン』などがある。

「2023年 『逆転のバラッド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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