答えは市役所3階に 2020心の相談室

  • 光文社 (2023年1月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (332ページ) / ISBN・EAN: 9784334915056

感想・レビュー・書評

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  • あなたは『カウンセリング』を受けたことがあるでしょうか?

    この世を生きることは大変です。自分の思い通りに事ごとが進むわけではありません。そこには”予期せぬ出来事”が日々訪れます。そんな”予期せぬ出来事”の代表格がコロナ禍だったと思います。それまで当たり前と思われていたことが当たり前ではなくなり、それによって人生が大きく影響を受けていく…コロナ禍は多くの人たちの未来に決定的な影響を与えた出来事でもありました。

    そんな時代には心が不安定にもなっていきます。自分の心の中だけに抱えておくことの辛さ、苦しさ。そんな状況から脱するために『カウンセリング』を受けられた方もいらしたのではないでしょうか?『カウンセラー』の前で語る悩みごとの数々。しかし、そんな時でも人はその心の内を全て曝け出すわけではありません。そこには、心の一線というものもあるのだと思います。一方で、そんな悩み苦しみはそこで隠した事ごとの中にある…そんな現実もあるのだと思います。人の悩み苦しみの深さを感じもします。

    さてここに、『コロナ禍における心の不調やお悩み事』を相談する主人公たちと接していく『こころの相談室』を描いた物語があります。五人五葉のさまざまな悩み苦しみを見るこの作品。そんな彼らの悩み苦しみの真実を見るこの作品。そしてそれは、『コロナがすべてを奪っていく』という時代に生きる主人公たちの思いを見る物語です。

    『えっ…これだけですか?』、『そう。今年はこれだけ』と『お願いだから否定して』と目の前の『宮田先生の短い返答に、あっさりと打ち砕かれた』のは主人公の白戸ゆり(しらと ゆり)、十七歳。『実はこの求人も、白戸にはちょっとおすすめできないんだ』、『すでに希望してる子がいてね』と語る宮田は『これは指定校求人で、一名のみの限定応募だから』、『希望したとしても、白戸には校内選考での勝ち目がない。その生徒は評定平均が学年トップクラスで、出席日数や生活態度にもマイナス点が見当たらないからな』と続けます。それに『中橋花菜ちゃん…ですか?『と訊く ゆりに『お、知ってるのか』と返す宮田に『合唱部で、一緒だったので』と ゆりは説明します。『一番就職したいのがホテル…』と花菜から聞いていた ゆりは『彼女が応募するのなら、この求人票はあってないようなもの』と思います。『去年は、求人票、もっとありましたよね?』と訊く ゆりに『今年はわけが違う。そもそも求人票の総数自体が二割以上減ってるし、白戸や中橋が希望してるような接客業に至っては壊滅状態だ』、『企業にとって、人件費ってのはバカにならない。コロナで苦境に陥って、まず削減するのはそこだ』と返す宮田。それを聞いて『私が今、この二〇二〇年に高校三年生である事実を変えることはできないのに…』と思う ゆり。『ちなみに、白戸の場合、今から進学に切り替える選択肢はないんだよな?』と確認する宮田に『はい…進学は、ちょっと』と返す ゆりは『ねえ、どうして、今年なの?』、『コロナのせいで。二〇二〇年現在、ちょうど高校三年生だったせいで』と思う ゆりは『幼い頃から憧れていた職業への道が、閉ざされた』と感じます。『決して成績がいいとは言えない自分でも、第一志望のブライダル業界には運がよければ、第二志望のホテル業界まで視野に入れればほぼ確実に、就職することができると見込んで』きたものの『挑戦することすら許されずに』『将来は散った』と思う ゆり。
    場面は変わり、自宅で担当している皿洗いをする ゆりは『お父さんとお母さんが離婚しなければ、うちにはもう少しお金があって、進学も許されたのかな…』と『考えても仕方がないことばかり』を『頭に浮か』べます。『お父さんもお母さんも悪くない。花菜ちゃんも、宮田先生も悪くない。悪いのは、全部 ー』と悶々とする ゆり。『ねえ、どうして』、『どうして、よりによって、今年なの?』と思う ゆり。
    再度場面は変わり、通学途中『「2020こころの相談室」と書かれた水色のチラシ』を『市役所の門の前を通りかかったとき』に見つけた ゆり。『コロナ禍における心の不調やお悩み事を、専門の心理カウンセラーに相談することができます。ぜひお気軽にご利用ください』と書かれた『お気軽に、というその文言に吸い寄せられ』た ゆりは『チラシにあった三階の会議室を目指し』ます。『ご相談者の方ですか?どうぞ、こちらへ』と『うららかな笑みをたたえた小柄な女性』『に招き入れられ、恐る恐る、中に入』ると、『おっ、初めてのお客さんだね』と『白髪のおじいさんが顔を覗かせて』います。そして『私が晴川で、彼が正木。二人でこの相談室を担当することになったの。どうぞよろしくね』と始まったカウンセリングの先に ゆりが抱える悩みの背景が明らかになっていく物語が始まりました…という最初の短編〈第一話 白戸ゆり(17)〉。物語の基本形を上手く提示する中に清々しい結末を見る好編でした。

    “コロナ禍がもたらした、幾つもの「こんなはずじゃなかった」。市役所に開設された「2020こころの相談室」に持ち込まれるのは、切実な悩みと誰かに気づいてもらいたい想い、そして、誰にも知られたくない秘密。あなたなりの答えを見つけられるよう、二人のカウンセラーが推理します”と内容紹介にうたわれるこの作品。『2020』という4桁の数字がもしや…という感覚を抱かせます。そうです。『2020』とは、あのコロナ禍が世界を震撼させた年、私たちの当たり前の日常を終わりの見えない不安に陥れた悪夢のような日々の幕開けとなった年です。物語は、そんな『2020』を指定していることもあってコロナ禍初期の世の中の様子が鮮やかに描かれていきます。では、まずはそんなコロナ禍初期を描く表現を抜き出してみましょう。

     『オリンピックのための祝日移動でできた四連休』、『東京オリンピックは来年に延期されて幻と消えたものの、世間は別の理由で浮かれているようだった。この四連休から「Go To トラベル」の施策が始まり、ホテルや旅館の宿泊料金が割引になる』

    2020年と言えば『東京オリンピック』が開かれる年でした。まさかの『来年に延期』という衝撃的な出来事でしたが、外出も憚られる『四連休』が虚しさを演出したのも印象的でした。『Go To トラベル』も懐かしい響きです。

     『クルーズ船内で数百人規模の集団感染が発生し、乗客全員が海上で隔離されているダイヤモンド・プリンセス号』

    これも印象的な出来事でした。それまで優雅さの象徴だった『クルーズ船』が一気に別物に感じられる中に、そこにいた人たちを何か穢れた存在と思う感情がこの国を襲っていったと思います。この感情がその先にどんどんエスカレートしていくわけですが…。

     『コロナに感染した患者や、その患者に接する医療従事者を差別する風潮は、残念ながら、今のこの国には確実にあります』。

    危険と背中合わせに一所懸命に働いてくださっている『医療従事者を差別する風潮』が急速に湧き上がっていったのもコロナ禍初期の状況でした。人の恐怖心が煽られに煽られた先には、冷静な状況判断ができなくなることを象徴したものだったと思います。この作品では、コロナ禍初期の状況を背景として描くだけではありません。コロナ禍がなければこの作品は存在しなかった、そう言い切れるくらいにコロナ禍に密接した物語が描かれていきます。それこそが、そんなコロナ禍初期に市役所の中に開設された『こころの相談室』の存在です。次は、この『相談室』がどんなものなのかを見てみましょう。

     ● 『2020こころの相談室』について
      ・『コロナ禍における心の不調やお悩み事を、専門の心理カウンセラーに相談することができます』。
      ・場所は『立倉市役所三階 309・310会議室』
      ・相談員は『晴川あかり(臨床心理士)、正木昭三(認定心理士)』

    この作品は五つの短編が連作短編を構成しています。それぞれの短編には主人公となる人物が登場しますが、『相談室』の晴川と正木は共通して登場します。ここまでのレビューを読んでくださった方で、これまでにも数多くの小説を読んでこられた方はこの作品がこんな構成を辿ると思われたのではないでしょうか?

     ✕ 各短編には悩みを抱えた人物がそれぞれ登場する。そんな人物たちが『こころの相談室』を訪れ、カウンセラーのアドバイス起点として再び前へと向かって歩き出していく。

    この作品が青山美智子さんの作品であればそうなるのだと思いますし、それはそれで感動的な物語が期待できます。しかし、この作品はそうではないのです。それこそが、『カウンセラー』の役割を説明する晴川のこんな言葉に見ることができます。少し長いですが引用します。

     ・『カウンセリングの目的とは、相談者本人が自分の問題を明確にし、自力で道を見つけることです。私たちは対話や傾聴により、その手助けをしているだけ』。

     ・『私たちは対話や傾聴により、その手助けをしているだけ。だから私は常々、彼らの秘密を無理に引き出して、心を丸裸にすることは、カウンセラーの仕事ではない』。

    五つの短編に登場するそれぞれの主人公たちは共通して『こころの相談室』を訪れます。五人の主人公とその悩み苦しみをあげておきましょう。

     ・〈第一話〉: 白戸ゆり、十七歳。将来の夢を失った。
     
     ・〈第二話〉: 諸田真之介、二十九歳。婚約者を失った。

     ・〈第三話〉: 秋吉三千穂、三十八歳。幸せな未来を失った。

     ・〈第四話〉: 大河原昇、四十六歳。人間の尊厳を失った。

     ・〈第五話〉: 岩西創、十九歳。生きる気力を失った。

    何かを『失った』という幅広い年齢層、境遇の主人公たち。『相談室』を訪れるきっかけはそれぞれ異なりますが、絶望を前にした彼らが『相談室』に期待する事ごとの大きさを感じさせます。しかし、『カウンセリング』の場で彼らが晴れやかに帰っていくことはありません。『相談室』から一歩出た彼らが晴れやかな顔つきで歩いていく姿はここには描かれないのです。これは、上記もした『カウンセラー』の役割にも反します。『自力で道を見つけること』が大切であり、『カウンセラー』は『対話や傾聴により、その手助けをしているだけ』という役割ならではのことです。そして、『心を丸裸にすることは、カウンセラーの仕事ではない』という点も重要です。相談者は全ての真実を『カウンセラー』に語るわけではないのです。それは、イコール読者にも真実が明かされないことをも意味します。隠された謎が真実の扉を開く起点になるのです。それには読者は真実を知るための謎解きが必要になります。そうです。この作品は謎に立ち向かい、謎を明らかにすることごとが真骨頂であるミステリーを得意とされる辻堂ゆめさんの作品なのです。そんな物語の構成は実はこのようになっています。

     ○ 各短編には悩みを抱えた人物がそれぞれ登場する。そんな人物たちが『こころの相談室』を訪れ、その後に自力で起点を見つけ再び前へと向かって歩き出していく。そんな物語の後に、隠されていた真実がカウンセラー二人の会話によって読者に明かされていく。

    いかがでしょうか?一見似ているようで全く体裁は異なります。なんとカウンセラー二人の役割はまるで探偵のごとく相談者が語らなかった言葉の裏側にあるものを推理していくことなのです。だからこそ書名が「答えは市役所3階に」なのです。全ての短編は主人公の物語が終わった後に〈昼休みのひととき〉という晴川と正木の昼休みの会話の場面が描かれています。ここで、二人が謎解きをする、そのような構成になっているのです。なかなかに興味深い構成です。

    そして、この作品はそれだけではないのです。全編を貫くように一つの小道具が登場します。

     『レモン色の小さな巾着が吊り下げられていた。「御守」という複雑な文字が、オレンジの糸で不格好に刺繡されている』。

    この『御守』も全編にわたって登場します。さて、そんな『御守』が導く結末に何が待っているのか?ええっ!と驚く辻堂さんの鮮やかな構成、連作短編だからこそ描けるその驚きの結末には辻堂さんならではのこだわりの構成を目にすることになります。コロナ禍を必然とするこの作品に描かれていく、読者の心までホッコリとさせるような優しさに溢れた物語の中に、まさかのミステリー要素を絶妙なブレンドで散りばめたこの作品。そこには、予想していた物語展開を良い方向に裏切る辻堂さんならではの物語の姿がありました。

     『新型コロナウイルス感染症流行の状況を受け、このたび市役所三階に、「2020こころの相談室」を開設することになりました』。

    そんな『市民のみなさま』に向けたお知らせの先に開設された『こころの相談室』を訪れる五人の主人公たちの悩み苦しみが描かれるこの作品。そこには、辻堂さんならではの一工夫が光る物語の姿がありました。コロナ禍初期の世の中の様子が落とし込まれたこの作品。そんな世の中に数多の悩み苦しみがあったことを改めて思うこの作品。

    まさに書名通りに『こころの相談室』の役割をミステリー小説として上手く用いた素晴らしい作品でした。

  • ダイヤモンドプリンセス号のコロナ感染と共に日本中が巻き込まれたコロナ渦の恐怖や不安に誹謗中傷、市役所の3階に設けられた「心の相談室」が無料で悩みを訊いてくれる。
    この作品は当時の不安な状況にあった人たちの生の声のようにリアルに響いてくるし10年後ぐらいに読み返してみるとコロナの時代を振り返れそうで手元に置いておきたい1冊に思えました。
    連作短編集になってますし、カウンセラーの晴川さんの裏の裏までお見通しの洞察力は凄すぎて怖いほどでした。もう1人の年配のカウンセラーの正木さんも穏やかで腰が低くくいい味出してました。
    相談者の悩みに寄り添うことで自分自身が糸口を見出す方向に導いてゆく。探偵になった方がいいのではって思うぐらいの推理力なんですけど犯罪も未然に塞いじゃっては出番がないわけで凄すぎる。
    こういったタイプのミステリーは無茶好みでした。

    • きたごやたろうさん
      またまた私の本棚に「いいね」をありがとうございます。

      この作品私が「ブクログ」に出会う前に読みました。
      ちょうど、最寄りの役場で非常勤職員...
      またまた私の本棚に「いいね」をありがとうございます。

      この作品私が「ブクログ」に出会う前に読みました。
      ちょうど、最寄りの役場で非常勤職員をしているときでした。
      2024/12/11
  • 猛威を奮ったコロナウイルス、影響を受けてしまった人たちの未来を優しく包みたい #答えは市役所3階に

    ■あらすじ
    2020年、全世界を襲ったコロナウイルス。立倉市役所ではコロナ禍による心の不調や悩み事を「2020こころの相談室」で受け付けていた。

    コロナによって人生が思い通りにいかなくなってしまった人たちが、相談にやってくる。当時、全国のどこにでもいた我々たちの物語。

    ■きっと読みたくなるレビュー
    あれからすでに3年以上ですか。

    多くの人が亡くなってしまい、有名人にも多くの犠牲者が出てしまいましたね。本当に辛いです。
    そして外出時は常にマスクをして、学校や会社にも行けず、常に周囲に気を使った生活でした。ワクチン接種や、濃厚接触や罹患者に対する差別があったりと、ギスギスした世の中で嫌になったものです。

    本作の主人公は、当時全国のどこにでもいた人たちの物語です。コロナウイルスへの不安、日常生活への影響をリアルに描写しており、当時の辛さを思い出してしまいました。

    なお本作は辛い環境でのお話ですが、いろいろと気の利いた仕掛けがしてあり、読んでいて心を打たれます。きっとあなたも優しい気持ちに包まれる作品です。

    ■各短編のかんたん感想文
    〇白戸ゆり
    コロナのため求人が減り、就職難になってしまった女子高生のお話。

    人生では何度か重要なタイミングがあります。受験、就職、結婚、出産など…
    特に未来のある若い方は、なんという災難なんだろうと思ったものです。不安な中で、彼女の葛藤が細かく描かれていて本当に切なかったですね。

    〇諸田真之介
    コロナ禍の中、結婚と仕事に逡巡する若き男女の物語。

    ある意味、読んでいて一番しんどいお話です。私も当時、この人たちをなんとか守ってあげられないのかと、思ってましたね…

    〇秋吉三千穂
    幸せな出産と子育てだったはずが、コロナの猛威が襲ってきて…

    守るものがある人の大変さがリアルに伝わってくる。
    そして最低な人間は、どんな環境でも最低ですね。

    〇大河原昇
    素寒貧の中年男、コロナで住まいを追われ、公園に住むことに。

    主人公のキャラクターが愛らしく(おっさんだけど)、一番好きな作品です。
    気持ちがめっちゃわかる、私も一つ間違えば、この主人公と同じだったろうなぁ

    〇岩西創
    オンライン授業を受ける学生、部屋にこもってばかりで身に入らず…

    私もテレワークが始まった初期のころは、ストレスがたまりまくりでした。通勤時間がないし、合理的な仕事ができるのは良いですが、やっぱりコミュニケーションは不足します。
    主人公のような若者も、全国にいっぱいいたんだろうなぁ…

    ■きっと共感できる書評
    コロナ禍では普通に生きるだけでも大変なのに、弱い立場の人はさらに追い込まれてましたね。本作にでてくるのは、当時どこにでもいた我々ひとりひとりと同じです。

    現在はかなり収束はしてきていますが、完全になくなったわけではありません。これからももっと大きな災害がやってくるかもしれません。

    しかしそんな時に重要なのは、決してひとりに悩んで不安にならず、近くの誰かに話しかけること。大切な人を守る意思があれば、きっと小さな幸せが芽生えてくるだろうと思いました。

  • コロナはホントに忌々しい。
    当時みんな疲弊していたね。
    こんな世の中になるなんて想像していなかった。
    1章からズッシリきた。
    未知のウイルスのせいで理不尽に夢も希望も吸い取られた人達の葛藤を思い出した。
    辻堂ゆめさん、やっぱりいい作家さんだなぁ。

    • きたごやたろうさん
      ゆきみだいふくさんへ

      「いいね」ありがとうございます。

      そうですね!
      辻堂さんの作品、オイラも大好きです!!
      ゆきみだいふくさんへ

      「いいね」ありがとうございます。

      そうですね!
      辻堂さんの作品、オイラも大好きです!!
      2025/06/09
  • 初読みの作家さんです
    レビューを読んで手に取りました(^^)


    市役所に新しくできた
    コロナ禍における心の不調や、悩みごとを聞く
    『こころの相談室』にやってくる人たちの話です


    コロナのせいで、
    コロナがなければ、
    そういった悩みを受け止めることで
    相談者が徐々に変化していく
    そんな物語かなと読み進めていたら


    なんかミステリーな展開に!!
    日常ミステリーとでもいうのでしょうか?
    各章ごとの物語のラストに
    カウンセラーによる謎解きが行われます
    洞察力が凄すぎる!


    そんな展開は知らずに読んでたので、
    1、2章は驚きました!
    本編で楽しんで更に謎解きで楽しめる感じ!
    3章以降は謎を考えながら読んでました(^^)


    後半は作者もそれを意識してるのか
    読んでいても謎がある感満載で
    悩みに寄り添う感じが
    少なかったような気がして
    ちょっと残念な気もしましたが
    本編で感じたモヤモヤを
    一気に解決してくれるのでスッキリします(^^)
    謎解きとして読んだら面白いのかもしれないですね


    カウンセラーの二人はとても好きです(^^)
    話聞いてもらいたいー!
    話すだけでスッキリすることってありますよね
    行政がやってる相談室とかたまに見かけるけど
    なかなか足が向かない…
    行ってみたら案外いいのかな…
    てかみんなあんなに隠し事するもんなんでしょうか??


    産後のお母さんの話は
    自分も割と産んで間もないので
    もう共感しかなく、
    あの閉塞感をよくかけてるなと思いました。

    次はミステリーとして
    この作家さんの作品を読んでみたいです(^^)

  • コロナ禍に、市民の心の悩みを聞く為に、市役所3階に、新たに設けられた、「心の相談室」。
    そこに来る相談者の話が、5つの短編となっていて、最後には、登場人物の関わり合いがわかる。

    最初の相談者が落として行った、手作りの「お守り」が、良い仕事をする。

    1日の最後に、カウセリングが、事務整理の際に、相談者の言葉や態度で、彼らの嘘を見抜く、謎解きもあって、なかなか、面白かった。

  • 舞台は市役所の3階に開設された「2020こころの相談室」。コロナ禍による心の不調と悩みを相談するため、その場所を訪れた「どこかにいた、誰かの物語」でした。

    相談室の二人は雰囲気がよく、間合いも絶妙でした。誰かに話を聞いてもらいたいという気持ちを、しっかりと受け止めてくれていました。何よりも臨床心理士の観察力のすごさに驚きました。共感力、受容力があり、的確なアドバイスにも感心しました。

    コロナ禍の犠牲になった高校三年生、医療従事者、一人で出産した母親、ホームレス、浪人生。それぞれの理不尽な思いは、コロナ禍できっと誰かが感じていたことだと思いました。

    相談室にいったことで物事がうまくいき、まえを向いて歩けるようになった、というだけの話ではないところがよかったです。人間は自分の都合のいいように話をするという現実。それを伏線回収として書かれているところが、この短編集の面白いところでした。

    読後、先入観を取り払って人と向き合うことと、常にまっさらな目で世の中を見るようにすることは、相談室の2人にかかわらず誰にでも必要なことではないかと思いました。


    〈目次〉
    第一話 白戸ゆり(17)
    第二話 諸田真之介(29)
    第三話 秋吉三千穂(38)
    第四話 大河原昇(46)
    第五話 岩西創(19)

  • コロナが流行り始めた2020年のお話。
    市役所に設けられた心の相談室。臨床心理士の若い女性カウンセラーと、年配で新米の男性カウンセラーの二人が担当する。
    コロナ禍の苦悩を抱えた様々な年代の人たちが相談にやって来る。
    悩みを聴いてもらい、気持ちに共感してもらった相談者たちは、最終的に自身で悩みを解決していく。
    答えはいつだって自分のなかにあるのだ。
    短編集だが、少しずつ繋がっていく構成は見事だった。

    カウンセラーって探偵みたい。表情や仕草、言葉の矛盾を見逃さず、心の内を推理する。
    探偵と違うのは、真相を暴かないところ。相談者の隠したがっていることはあえて指摘せず、相談者が去った後にひそかに種明かしする。
    女性カウンセラーの洞察力と推理力に感心するとともに、おじいちゃんカウンセラーのキャラのよさに癒された。

    コロナの影響は私たちの生活を変えるほど大きかった。
    亡くなった人や仕事を失った人だっている…苦しいのはみんな一緒…などと無意識に我慢していなかっただろうか。
    本来、悲しみや苦しみは比較できるものではないはずなのに。これは災害が起きたときにも言えること。
    登場人物たちもコロナの影響で様々な悩みや苦しみを強いられることになった。
    目指していた合唱コンクールが中止になる、就職口が激減する、仕事を失う、病院で面会できない、感染予防のため家族に会えない、リモート授業で学校に通えないなど。
    苦しいとき相談できる人がいることって大事だなぁと改めて思った。
    こんな素敵なカウンセラーがいたら相談者も殺到しちゃうよなぁ。
    いつか、そんなこともあったねと懐かしむことができる時がくるといいな。
    固くなった心を解してくれる優しい物語だった。

  • コロナ禍ですべてが激変した。
    それも思いもよらぬ悪い方へと…
    この怒りや悲しみを苦しみを誰に話せばいいのだろうか?
    そもそも話をして解決するのだろうか?

    答えは市役所3階に。
    『2020こころの相談室』が開設されコロナ禍における心の不調や悩み事を晴川と正木の2人の相談員が担当する。

    晴川さんが柔らかい笑顔で、時おり深く頷きながらことばを発することなく、耳を傾けてくれる。
    決して否定はせずに「大丈夫ですよ。心の内を吐き出してください」と包容力がありながらも洞察力は半端ない。
    すべての人のちょっとした誤魔化しや嘘を見抜く。
    けっして彼女が解決するわけではないのに上手くおさまるのが不思議だ。
    正木さんは、年齢的に人生経験は豊富であり、醸し出す人懐こさに来る人を和ませる力がある。

    全5話あるが、1話のNのお守りがラストの5話まで繋がっているのもおもしろい。
    それぞれの悩みが晴川さんの推理で氷解するのがミステリーになっている。

    • ポプラ並木さん
      湖永さん、コロナ不条理を感じつつ、心理士の2からのカタルシス、堪能しました。面白かったです。相談者は何故か心理士にウソをつくんですよね。コロ...
      湖永さん、コロナ不条理を感じつつ、心理士の2からのカタルシス、堪能しました。面白かったです。相談者は何故か心理士にウソをつくんですよね。コロナ禍、闇深いです。
      2023/04/22
    • 湖永さん
      ポプラ並木さん コメントありがとうございます。

      辻堂ゆめさん、続いていますね。
      これもコロナ禍ならでは…の悩み相談ですよね。
      とても読みや...
      ポプラ並木さん コメントありがとうございます。

      辻堂ゆめさん、続いていますね。
      これもコロナ禍ならでは…の悩み相談ですよね。
      とても読みやすくて、あれば良いなと思える相談室でしたねー。
      2023/04/22
  • コロナ禍の頃を思い出す作品。実際に起きた事がそのまま出てくるからよりリアル。

    そんなコロナ禍で苦しんでいる人々が市役所に設置された"心の相談室"で心のうちを吐き出す。"心の相談室"にいる相談員は、清川あかり(臨床心理士)と正木昭三(認定心理士)の二人。みんなこの二人に相談するのだけど、相談に訪れた人々は年齢、性別、職業、悩み、葛藤はみんなバラバラ。だけど共感してしまう事もいっぱいあった。それぞれの心のうちがまたリアルだったからだろう。あの頃はそうだったよね⤵︎とその当時の自分を振り返ってしま
    う。

    心理士の二人は主に聞き役で、たまにアドバイスもする。みんな心のうちを吐き出し、スッキリして立ち直っていく心温まる話なんだけど、ただそれだけではないことにびっくりだった。心温まる話には違いないと思うけど、ミステリ度が高い。清川あかりの洞察力がとにかく凄すぎる。相談者の隠された真実を明かしていく。なんと言えばいいのか、最後にどんでん返し?謎が解けた後の爽快感?がほっこりより強いんだよな。第一話でそれに気付き、第二話から真相を見極めようと読んだけど、私は真相に辿り着けなかった。唯一第二話が少し分かっただけ。なんか悔しい。

    心温まる話➕ミステリ。意外な組み合わせ。
    クセになるかも。

  • コロナのせいで、こんなことになってしまった。コロナのせいで、できなくなった数々のこと。何で!どうして!?
    その思いをぶつけてやりたい!どこにぶつければいいの!!

    コロナ拡大はスピードを増した。
    発生当時、大学卒業式中止、入社式、
    入学式中止になったところが多かった。
    人生の大事な節目なのにだ。


    この本は、コロナ期に様々な思いを抱え
    思い悩む人々にカウンセラーさんが
    寄り添い、一緒に考えてくれるという
    相談室を描いている。
    五話の連作短編になっている。


    相談者は、何から何まで打ち明けて相談ができるわけではない。
    カウンセラーは凄い人のようで、相談者の話し方や素振りで嘘や秘密を見抜く。
    もちろん、相談者には言わずにだ。


    今、コロナが収まりつつあるという。
    マスクを外している人も増えた。
    大丈夫なのだろうか?私は思う。
    中国では、日本への旅行が解禁になった
    とTVニュースで言っていた。またコロナが運ばれてきたらどうするんだ!
    心配しすぎだろうか?

    また、初読み作家さんが増えた。
    辻堂ゆめさん、とても読み易い文章だ。
    以前からお名前は知っていたが、この本が初めてだ。



    ――――少しだけ ネタバレ―――――
    五話に登場する五人にはきょうだいが
    いる!
    リモート授業に飽き飽きする受験生。
    住所を持たずに建設現場労働者の男性。
    妊娠中から出産後まで家に帰らない彼。
    この話が一番印象強い話だった。
    私が女性だからなのか?

    2023、8、14 読了

    • ポプラ並木さん
      アールグレイさん、
      共読です。
      この心理士2人の洞察力は凄かったね!
      コロナ禍で疲れた心を癒してほしい~
      アールグレイさん、
      共読です。
      この心理士2人の洞察力は凄かったね!
      コロナ禍で疲れた心を癒してほしい~
      2023/08/25
  • 辻堂ゆめさんの連作短編集。

    途中までは、よくある短編集の感じがしましたが、ラストが良いんですよねー。辻堂ゆめさんの作品は、ラストが本当に素晴らしい!!
    コロナ禍を思い出す一冊!!
    手元に残しておきたい作品です!!

  •  コロナ禍は社会の様相を一変させた。人生設計が狂ってしまい、不安や苛立ちでいたたまれなくなった人たちは多い。
     そんな、悩みに押しつぶされそうな人のため市役所3階に設置されたのが「2020心の相談室」だ。

     相談に゙訪れた人の話をじっと聴き気持ちに寄り添いながらも、話されなかった事情やその真意まで読み取って相談者の背中をそっと押す。
     そんな女性カウンセラーのミラクルカウンセリングを描くハートウォーミングミステリー。
              ◇
    将来の夢を失った17歳の白戸ゆり。高校3年の進路選択。母と2人暮らしのため経済的余裕がなく、就職を選んだものの、折からのコロナ禍で希望するブライダル関係やホテル関係への就職は絶望的な状況だ。

     進路担当の教師は、製造や販売を勧めてくる。でも夢を諦めることができないゆりは、当面はブライダル関係のアルバイトでいきたいと母親に相談したところ……。
       ( 第1話「白戸ゆり(17)」) ※全5話。

          * * * * *

     とてもおもしろくて、読み応えもありました。それは2本の柱がしっかりしていたからだと思います。

     1本目は、コロナ禍で苦境に立つ人たちの様子が端的に描かれていて、共感できる内容であるというところです。リアリティという点では申し分ありませんでした。
     さらに言えば、コロナ禍の矢面に立つ人間として、いろいろな立場の人たちを設定したところに感心しました。
     特に、医療関係者や就職希望の高校生を持ってきたのはよかったし、ホームレスが被った被害まで描いたのは興味深かった。そのユニークさにうなってしまうほどでした。

     2本目は、カウンセラーの晴川あかりの名推理と謎解きに無理がなく、どれも意表を突かれるという点で、できのいいミステリーを構成しているところです。
     個人的には、これまで読んだ辻堂さんの作品のなかではいちばん優れたミステリーだと思います。

     相談者に対し、話を急かすことも必要以上に詮索することもなく、丁寧に聴き取っていくあかり。その目のつけどころが明かされる各話のエピローグ部分。もう読むのが楽しみで仕方ありませんでした。
     
     この市役所の相談室でのシリーズ化は難しいかも知れませんが、臨床心理士・晴川あかりとしての物語を読んでみたいと強く思いました。連作、長編どちらでもうれしいので、辻堂ゆめさん、ご一考くださいませんか。よろしくお願いします。

  •  辻堂ゆめさん、初読みです!この作品は、コロナが未知のウィルスとして恐れられていた、治療法もワクチンも確立していなかった2020年度のお話です。物語の舞台は、立倉市役所に開設された「2020こころの相談室」…2人のカウンセラーが常駐し、2020年度だからこその悩みに対応していく5話の連作短編集。

     コロナ禍であることによって、性別も年代も異なる人々が将来の夢、婚約者、幸せな未来、人間の尊厳、生きる気力を失ったとカウンセラーに打ち分ける…。カウンセラーに話を聴いてもらったことだけでは、抱える悩みの解決とまではいかないのは当然のことです。ただ、話すと客観的に自分のことをみることができるのかな…そして、あの頃は誰しもが、この作品のカウンセラーのような人を欲していたんだとも感じました。

     この作品では、すべての登場人物が生きにくさと、秘密を抱えていました。限られたカウンセリングの中で、当事者が話したストーリーと全く異なるものであろう秘密について推理するって展開スゴイです。ただあまりにも真実が当事者たちの話すことと違ってるんだよね…ど感じてしまいました。

  • この1か月間に3冊読了、いいペース。毎回心の浄化・カタルシスを促す作品ばかり。コロナ禍ではやっぱり多くの方の人生を狂わせてしまったんだなぁと。市役所3階に設置された「心の相談室」。このコロナ不条理だからこそ誰かに話しを聞いてほしい。話を聞くのは2人の心理士。相談者への共感だけではない叱咤激励。話を伝えることで自分の頭の中が整理でき、カタルシスへの向かっていく。しかし、この心理士2人の洞察力は探偵レベル。相談者全員がつく嘘、それをいとも簡単に暴いていく。このような相談相手を公的に配置できるといいんだろう。⑤

  • 世界的に猛威を奮ったコロナ。当時の勤務先で急に待機期間の命令が出されてお仕事休みになったり、時差出勤になったりと不安になったのを覚えています…

    この本のお話しはクラブ活動や、就職など楽しいことを奪われた5人が心の相談室に行き、心が救われるお話し。
    どのお話しも素敵でおもしろくよかったんですが、途中から晴川さんの推理に少しモヤモヤしてしまい星4にしました(^_^;) 正木さんが一喝言ったシーンはちょっとスカッとした笑

  • コロナ禍で開設された、ある市役所の『こころの相談室』のお話。
    5人の相談者がそれぞれの悩みを打ち明けに来るのですが、相談後に相談員さんの推理が毎回書かれていて、あ〜本当はそういうことだったのかな!と気付かされて面白かったです。
    特に、『婚約者を失った』男性の話と、『幸せな未来を失った』女性の話が印象に残りました。
    全体的に読みやすい文章でした。

  • 立倉市役所三階「2020こころの相談室」が開設された。
    そこにいくと、臨床心理士の晴川さんと認定心理士の正木さんが待ってくれている。
    人は一人では生きられないんだなと、つくづく思う。
    友人であれ家族であれ相談室のひとだも必ず、ちゃんと自分話を聞いて向き合ってくれる人がいるということ。
    自分で気づき、道を切り開いていく相談者に万歳!!明るい気持ちで読み終われた

  • たくさんのブク友さんのおススメ
    図書館予約いっぱいで、やっと読めました

    『最注目の気鋭がストレスフルな現代に贈る、あたたかなミステリー。』

    5話の短編
    それがつながりラストはほっこり
    あたたかなお話です

    2020年 コロナ!
    目や耳を疑うことばかり
    心が凍ったよね
    まだ続いてるんだけど

    ところどころ突っ込みたくなったのですが
    カウンセラーさんが素敵だったのでまあヨシと

    ≪ 鏡です 本当も噓も 映します ≫

  • コロナ禍の物語。
    数年前ならコロナ禍の話はしんどいので読みたくなかったけれど、今回は「こんな事、あったな〜」と出来事を思い出しながら読むことができました。

    「2020こころの相談室」という市役所3階に開設されたカウンセリングルームが舞台です。
    第1話  白戸ゆり 17歳
        将来の夢を失った。
    第2話  諸田真之介 29歳
        婚約者を失った。
    第3話  秋吉三千穂 38歳
        幸せな未来を失った。
    第4話 大河原昇 46歳
        人間の尊厳を失った。
    第5話 岩西創 19歳
    生きる気力を失った。

    5人の相談者の話で、それぞれの失ったことを読みながら、コロナ感染拡大での近い未来が狂ってしまったことを思い出していました。
    この物語では、2人のカウンセラーが相談者の隠している部分までを推理して見抜いていきます。
    ちょっと鋭くてきついな、と感じる部分はありますが、全体的に温かい作品で登場人物の繋がりもあって良かったです。

        

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。東京大学在学中の2014年、「夢のトビラは泉の中に」で、第13回『このミステリーがすごい!』大賞《優秀賞》を受賞。15年、同作を改題した『いなくなった私へ』でデビュー。21年、『十の輪をくぐる』で吉川英治文学新人賞候補、『トリカゴ』で大藪春彦賞受賞。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻堂ゆめの作品

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