僕のなかの壊れていない部分

著者 :
  • 光文社
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感想 : 98
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334923631

作品紹介・あらすじ

強烈な個性を持つ男の女性関係を描き、小説の大きな役割に真っ向から挑んだ著者の最高傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 見えるものばかり追いかけてばかりいたら、人はどんなことにでも絶望するしかなくなってしまう。過去のトラウマにより、驚異的な記憶力を持つ、非凡な青年。彼には、才色兼備のスタイリストの恋人と、子持ちのバーのママである愛人、SMプレイ相手の人妻という女性関係があり、さらに家庭教師の元生徒だった少女と、たまに泊まりに来る弟のような青年という疑似家族がある。

    愛について、生と死について、突き詰めて考えずにいられない彼の内面を通して、作者は「何が一番大切なのか」を問いかける。 デビュー作『一瞬の光』で注目を集め、村上春樹にも比較される異才の最高傑作。書き下ろし。

  • 主人公が良い方に変わるのか、より壊れていくのか気になって一気に読んだけど、変わらないままだった。必要とされる喜びを感じてるのに自分勝手に振り回して突き放して痛々しい。でも人は変われないしぽっかり空いた穴は他のものでは埋められないよねと思った。私は枝里子さんに感情移入だなぁ。まっすぐで一生懸命で、理解しよう理解しようって相手を想う姿勢に共感。でもわかり合える相手じゃなくて、嫌いになりたくないって頑張ってる姿が痛々しくて苦しかった。端から見るとわかるけど、渦中にいるとわからないんだよね…。あと、そんなに出てこないけど性描写がえろかった(笑)大西夫人がドM過ぎる。旦那さんが20歳上の貿易商で一年の半分は海外にいる、いろいろ満たされない有閑マダムな感じに描かれてて熟女想像してたらまさかの32歳だった(-∀-;)…。

  • この人が新刊を出すと、好きじゃないのになんでか買ってしまう。「なんで好きじゃないのか」を検証するために読んでいるような気がする。んで読後に「あー、やっぱ好きじゃないわ」と確認したいのだろう。

  • 15年ぶりくらいの再読。
    本作、何といえばいいか。そう、ダメンズの『僕』こと、松原直人の独壇場とでも申し上げておきましょう。

    ・・・
    この御仁、とにかく性格が良くない。

    素直じゃないというか、ああいえばこういう。しかもその辛辣さは仲のよい彼女とかに対して一層高まる。読んでいてもこちらがムッと来る。文学系ウンチクを繙き上から目線で『お前知らないだろうけど』という風にディスるのも超一流。
    海外旅行に行くのってそんなに意味あるの?とか、趣味へのディスりもヤバ目。他人の趣味にそこまで言うか?的な。

    ・・・
    更に、それほど性格が良くないのに、結構モてる。

    作中でも、そこらのモデルよりも美しいといわれる枝里子と付き合い、シングルマザーの朋美といい中になり、30過ぎでご無沙汰となっている大西夫人と褥を共にする。
    でもって、これまた性豪かというくらいガンガン。どこで覚えたんだよ。

    ・・・
    極めつけは、これでいて某T大卒業、三十前後で1000万プレーヤーとのこと。容姿については書かれていませんが、どんだけうまくいっているんだ?って感じ。

    ・・・
    でもやっぱり性格が悪くて結局は一人に戻ってゆくと。

    後半に向けて、貧しい家に生まれ、片親に育てられるも捨てられた経験があり、それがトラウマになっていることが仄めかされます。とはいえ、他人はどこまで斟酌するべきか。

    私的には、枝里子の父親が枝里子に言ったように、あれはおかしいと思います。ない。娘を持つ親となった今、一層そう感じます。

    表紙の帯に絶賛云々とありましたが、個人的にはそこまでかという印象でした。

    ・・・
    ということで久方ぶりの白石氏の再読でした。

    村上春樹氏の作品でも度々でてくる『僕』も、独自な感性と洒脱な言葉遣いで相当我が道を行きますが、今回の『僕』こと直人くんは結構強烈だったと思います。題名の壊れていない部分がどこだったのか分かりませんが、大分壊れちゃっている気がしました。

    単行本で読みましたが、文庫で解説付きで読んだ方が良かったかと今更ながら少し後悔。

  • 題名も良いし、内容も良い。
    随所で哲学的思考が上手く含まれている。
    この著者の他の作品も読みたい。

  • 面白い

  • 幼少期にトラウマ的に傷つけられた人間は、防衛本能が働き人との関係が回避的になる。
    本当は必要とされる人間となりたい承認欲求は誰よりも強いが意にそぐわない事があるとすぐに関係を破壊してしまう。
    主人公は幼い頃に母親に捨てられるという経験をした。この経験から思考力は深くなったが人間関係には非常にドライになる。
    一方で愛情に包まれて育った人間は、傷付いても人間関係を深く構築しようとする。
    このストーリーはそんな思考や価値観が違う二人が、感情をぶつけ合い、お互いに傷付け合い、癒しあったりする。
    普通だとこんなぶつかり合いの中で感情の距離感は縮まっていきそうだが、感情を正直にぶつければぶつかる程、二人の違いが明瞭になっていくのがリアル。


    心に残った言葉
    ・人の感情は火花の様に瞬間の明滅で、そのひとつにもともと何の統一もありはしない。
    ・人生というのは死と直面しないと、本当の力も人間の生の粘り強さも示すことができない。

  • 2018.03.05 朝活読書サロンで紹介を受ける。

  • 死の受容は、一切皆苦であり、輪廻の中に人は存在していて、全ての物事は然程意味の無い事である。過激な性描写も然り。親からの愛情を受けない環境で育った主人公は、典型的な回避依存であり、去るなら、近寄るな。これでもかと傷付けても尚、自分を求めるのであれば、今度こそ離れないと確信出来る。無意識に試さずにいれない。去られるのが怖いし、傷付けるから、先に離れたくなる。自分が愛される事を信じていない。本当は必要とされたい。それが、拓也との河原での場面に現れている。

  • 一部、自分を見ているようで耐えきれなく、もしくは「阿呆か…」と感じざるを得ない場面も多くて困る。
    嫌いではないのだけれども、ではなぜたまにこの人の本を手にするかというと、この作家がなにか今までの書いてきたテーマ、もしくは考えてきたテーマを凌駕する瞬間を見たいからなのかもしれない。

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著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行。各紙誌で絶賛され、鮮烈なデビューを飾る。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌10年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。巧みなストーリーテリングと生きる意味を真摯に問いかける思索的な作風で、現代日本文学シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』など著作多数。

「2023年 『松雪先生は空を飛んだ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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