- Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334925321
作品紹介・あらすじ
どうしても忘れられないもの、拘ってしまうもの、深く愛してしまうもの。そういうものこそが扉になる-。ひとりの女性への道のりを描く書下ろし長編小説。
感想・レビュー・書評
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宮下奈都さん、好きだなぁと思いました。
三姉妹の長女・麻子の少女から大人の女性へと変わってゆく物語。
まず少女の章で心を掴まれてしまいます。
可愛くて、欲しいものは欲しい!と言えるすぐ下の妹・七葉と自分をいつも比べてしまう麻子。
何かが違う、ここは自分の居場所ではない、いや、そもそもこの場所を愛せない私が欠けているんだ、と思う麻子に共感しきりでした。
でもそれが変わる日は自然にやってくる。
「長く固まっていたかさぶたがぽろっと剥がれ、その下からのぞく薄桃色のつるつるの皮膚みたいな」気持ちになれる日はいつかやってくる。
だから自分は自分でいいんだ、と思えました。
麻子の母が三姉妹を見て言うセリフ
「面白いわねえ」
この一言だけで宮下奈都さん、大好きになる。
常々、『面白い』っていうのが、子どもに対する最高の愛情表現だと思っていたので。
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少女が大人の女性になる過程の揺れる心の内を、なんて繊細な美しい言葉で表現してくれるのだろう。
姉妹、級友、同僚、人との関わりの中で変わっていく部分と決して変わらない芯の部分。
自信のない若い頃。
異性へ切ない思い。
自身を投影しながら読む人が多いだろう。姉妹がいる人はなおのこと。
4つのスコーレの中でそれぞれ悩みはあるけれど、成長するにつれて自分らしさを肯定的に捉えられるようになり、生きやすくなると私自身も実感している。
麻子も自分らしさを肯定し、自信を持てるようになり、似た感性の男性と出会えた。
麻子さん良かったねと思いながら、全ての女性に幸せになってほしいと沁々思った。 -
骨董屋の3人娘の長女津川麻子
ひとつ年下の妹七葉は、優しくてとても可愛くて機転がよく利く
とっても、仲良しな七葉だが、麻子は妹に比べ自分は
容姿も性格も平凡だと思ってる。
欲しい物を欲しいと言える熱い七葉に負けている…。
そんな彼女も、中学・高校・大学・社会人と4つのスコーレと出会い、
少女から女性へと変わっていく…。
骨董屋で生まれ、可愛くって積極的な妹・七葉へのコンプレックスを抱え、
比較し自分は平凡で面白みもなく、何かを強烈に欲する力もないと思ってる麻子。
古風な考えの祖母・優しい母・骨董屋店主の父
可愛い年子の妹の七葉・年の離れた妹・お豆さんの紗英の中で
長女としての自分の立ち振る舞い…。
諦めととも取れる麻子自身の在り方。
思春期の淡い憧れと、どうする事も出来ないもどかしさや絶望など、
誰もが、経験する様な日常の出来事…。
女性なら一度は感じた事がありそうな思いや感情を
とっても、繊細で優しくそして胸を抉るような心情描写
感情が手に取るように伝わって来た。
悩み苦しみながら少女から大人の女性へと成長していく麻子。
商社に就職しながらも高級靴店に出向を命じられ、
靴に全く興味が無い…同僚に敵はいないが見方もいない…。
戸惑いながらも、真っ直ぐに真摯に靴に向き合う。
麻子の過去や現在の努力が、
色々な経験や苦しみから学んだ事、時を経てるにしたがって
麻子の成長に繋がってゆく。
幸せにも繋がっていた。
麻子の心の揺らぎや葛藤、一人の女性が悩み苦しみながら
成長する姿を切なく美しく描いていた。
本当に、素敵なお話でした。 -
大きな川が流れる小さな町の古い骨董屋
そこで育った三人姉妹の長女麻子の成長物語
淡々と綴られる文が心地よく あっという間に読んでしまいました
生きることに気まじめでちょっと懐疑的だった少女
そんな麻子に共感しながら・・・
人生の四つのスコーレ(学校) 家族、恋愛、仕事、それから--
NO1~4 まで
ラストにそれぞれが生き生きとうかびあがってきます
≪ 一つずつ 重い扉を 開けていく ≫ -
『イライラからスッキリへの追い込み型小説』
読み始めは、麻子の自分を卑下した姿勢や性格にちょっとイライラ・・
後半は、麻子の成長した姿にスッキリ!
麻子の成長していく姿や感情の変化が、丁寧に細やかに描写されていて、宮下奈都さんの本領発揮。 -
骨董屋の長女に生まれた麻子の思春期、高校時代、就職した頃、その後という感じで章が分かれていて、それぞれ番号が振られています。
タイトルの意味がまず分からなかった。スコーレとはギリシァ語で学び、遊び、余暇を意味する語らしい。
その第1ステップから第4ステップということなのでしょうかね。
意味は分からなくても、本書は読み終わった後、あたたかな気持ちにさせてくれる事間違いありません。
うまくまとまりすぎている感はありますが、生きていく意味を見失いそうになった時に読めば力が湧いてくるかもしれません。 -
スコーレは古代ギリシャ語で、スクールの語源になった言葉。
一人の女性の成長をNo.1=中学校、No.2=高校、No.3=大学~就職、No.4=会社の4章で描いています。
はっきり言って最初は辛かった。初期作品にありがちなちょっと気取った表現。余り嫌らしくは感じないものの、やや過剰な少女の自意識の独白が続く。如何にも「女性の本」のイメージで、おじさんにはついて行けない感じでした。
ところが後半になって一気に進み始めます。いつしか少女時代の悩み乗り越え、糧にさえして伸び伸びと成長し、仕事に恋愛に一気に前進し始めます。最後には見事に花開き。。なるほど人気あるのも頷けます。
若い女性らしい瑞々しさにあふれた物語。とても心地良い読後感でした。 -
メロディ・フェアでも思ったけれど、
主人公が職場(今回なら靴屋)での在り方を見つけていく部分が優しくて暖かくてすき。
逆に最後の章の恋愛部分はただ流されているようで相手役に好感も持てなくて、
説得力が感じられずすきになれなかった。 -
これいいですねっ!好きです、この感じ!!最初はもたもたした感じだったけど、展開が意外すぎて・・・w 途中からは、ぐわーっと一気に読んじゃいました♪
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物語は平凡な女の子がひとりの大人の女性へと成長していくのを四つのシーンに分けて描かれています。
スコーレとは学校という意味があるみたいです。
主人公の麻子は三姉妹の長女で家はマルツ商会というフルドーグヤ。
妹は十八ヶ月下の次女の七葉と七十六ヶ月下の三女の沙英。
次女の七葉とはとても仲がいいんですが七葉が誰から見てもとても可愛くて機転が利くのに対して私は可愛くないし愛想もないと自分で思っています。
そのせいか学生時代の麻子は勉強は出来るけど目立たず恋に対しても奥手でどこか自信なさげで自分の立ち位置がよくわからない。
そんな麻子が輸入貿易会社に就職して靴を輸入する部門に配属されて現場研修として靴屋に派遣させられます。
ここでも麻子は自分の立ち位置がわかりません。
『私は靴屋にいた。靴屋でぼうっと革靴を見ていた。どうして自分がここに立っているのか、今でもよくわからないでいる』
ここからいろんな試練に耐えて経験と努力を重ねて本当の恋を知って自信を持って前向きに生きていく。
なんかこう書いてしまうと陳腐なんですがこっからがすんごくよかったのです。
成長していくに連れて今の自分があるのは育ててもらった父と母、そして祖母の教えのおかげ。
離れてた家族の大切さに気づく麻子。
読み終わって心がじんわりとあったかくなって爽やかな余韻の残る物語でした。
宮下さんってちょっとした感情の動き揺らぎをすごく細やかに描くのがうまい作家さんだなってデビュー作を読んであらためて思いました。
『朝起きたときに飲みたいお茶が決まっていればその日は一日いい日になる』祖母から何度も聞かされてきた言葉。
『あのさ、昔から思ってたんだけど、朝目が覚めたときに聴きたい曲が決まってると、その日は一日いい日になる気がする』好きになった茅野さんの言葉が祖母の言葉に重なったこのシーンが印象的でした。
あと麻子は七葉にコンプレックスをずっと感じていたけれど七葉も麻子に対してコンプレックスを持っていたんでしょうね。
七葉の物語も読んでみたい気がします。