人は思い出にのみ嫉妬する

  • 光文社 (2007年7月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (172ページ) / ISBN・EAN: 9784334925581

感想・レビュー・書評

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  • 水質学者の戸田さんと浄水器販売会社の栞は付き合っているが、戸田さんは事故で亡くなってしまったかつての恋人を未だに想っている。過去に嫉妬を続ける栞は壊れる寸前の精神状態になっていた。

    上海で新たな暮らしを始めた栞は安東青年と出会い、距離を縮めていく。そこに現れた戸田さんが栞に復縁を求めるけど、栞は彼を拒む。そして戸田さんは事故に遭い、植物状態になってしまう。

    安東青年よりも戸田さんに寄り添うことを優先した栞。博多の病院で、栞は捏造した思い出話を戸田さんに語り掛ける。
    植物人間だと思われていた戸田さんの脳は正常に動いていた。瞬きで意思を伝えながら、彼は徐々に回復していく。栞も安東青年も自分のやるべきことへ向かっていく。

    ---------------------------------------

    絶対に勝てないものがふたつある。思い出と死んでしまった人。
    過去はどうしたって美化されしまうから、思い出はいつも輝いて見える。そして死んだ人を悪く言うことはできない。みんないい人だったかのように語られる。

    目の前にいる人よりも、過去に捕らわれることを良しとするような、そんな人たちの話だった。
    未来に生きるだけが人生じゃないと思うし、過去を想い続けることは素敵だと思う。けれど、植物状態(と思われていた)の元恋人に対して、都合のいい思い出話を捏造しまくる栞にはちょっと引いてしまった。
    前を向いて未来のために生きるのも、後ろ向きに過去を見つめて生きるのも、全部自由だけど、自分以外の人を巻き込むのは卑怯な気がした。
    思い出がまぶしく見えるのは、過去に起こった出来事は絶対に変えられないからだ。捏造と美化は違う。

    誰かを想い続けるというよりも、自分が依存できる過去を探しているような、そんな話だった。

  • 辻 仁成さんの本は初めてでしたが、とても綺麗で繊細な物語でした。
    水アレルギーをもつ栞、栞の恋人の戸田さん、戸田さんの元カノの愛麗、安東くんと、主にこの4人が出てきます。
    彼らを時に鬱陶しく感じつつも、やはり彼らの言葉には心打たれます。

    "人は思い出にのみ嫉妬する"
    確かにそうかもしれません。
    幸せだった最高の思い出に、"今"が勝つ事ができるのか。
    それはきっと無理で、その"今"が思い出になった時に同じくらいの、もしくはそれを上回る思いになり得る事ができるのです。

    私はずっと、こんな物語が読みたかった。
    今回読めて本当に幸せです。
    辻さんの書いた違う書籍も読んでみたいと思いました。

  • 何度も何度も読んでしまう
    誰かを好きになること、誰かを愛すること、誰かと思い合えること、愛の強さ、素晴らしさを教えてくれる一冊

  • あとがきを読んで実話だと知って驚いた!

    思い出って美しく綺麗に残るっていうのは皆共通だったんだ。付き合ってる時に色々なことが嫌になって別れた元彼と半年後に話した時に、何が嫌だったのか思い出せなかったんだよな〜。むしろ綺麗な思い出ばかり出てきて人間ってずるいなと思ったくらい。
    一人一人に楽しくて素敵な思い出が存在するからこそ嫉妬が生まれる。
    これから出会う人にも色んな思い出があるわけで、それぞれの思い出を大切にして生きていきたいな。

  • 読んでいて、苦しくなる。
    でも読んでしまう。
    登場人物、それぞれの感情が伝わってきて辛くなる。それぞれが幸せになれたらいいのにと都合のいいことを考えてしまう。

  • さらりと読め、せつなさも感じさせてくれる。

  • 表紙が素敵。内容も彼らしい感じでよかった。

  • 死んでしまった彼の元カノに嫉妬するあまり、別れを選んだ主人公、栞。新しい地、上海でやっと心を開き、年下の彼もできたが、元彼が栞を追いかけてきて、事故に会い、植物状態になる。栞は献身的に介護し、やっと自分の居場所を見いだす。思い出とは、厄介なものだ。私なら未来を選ぶ。

  • 実話に基づいた話。生きるっていうのは決して幸せなことばかりじゃないけれど、幸せを感じられるのは、そうではない出来事があるからこそのこと。

  • 思い出、それが人生を作り上げているのか。
    好きな相手の人生の中に、どれだけ私という人間の思い出があるか。
    それはやっぱり重要だ。

    でも考え過ぎもいけない。
    相手の過去を嫉妬してはいけない。
    信じていてあげないと。

  • 『人は思い出にのみ嫉妬する』すごく納得できる言葉。
    栞の少しずつ壊れていく場面は理解出来るし、作った思い出を戸田さんにひたすら語り続ける場面は、とても切なかった。
    愛麗の自ら死を選び、相手を縛り付けるということには全く共感できなかった。

  • ”思い出は時に素晴らしいものだが、時に厄介なものとなる。逆に、思い出があるからこそ、私たちは人間なのだ、と自覚することができる”

    栞ほどの嫉妬心を持ったことはないし、嫉妬のあまり命を絶ってしまった愛麗の気持ちもわからない。それでも嫉妬心は誰でも持っているマイナスな感情であり、また、自分を苦しめ、相手を苦しめ、コントロール不能になるほどの愛情を持ってしまうこともあると思います。ちょっとそれらが強すぎる登場人物たちだとは感じますが、簡潔な文章にところどころで共感する言葉に触れることができる作品です。

    人はいろいろなことに折り合いをつけて生きている。そうなんだろうと思う。

  • 他人に読むのを薦めるほどのものではない。

  • 辻仁成さんの書くものを読みたいと思って選んだ本。

    "人は思い出にのみ嫉妬する"



    そうかもしれないなー

  • 実話を基にしているらしいが、
    脚色のせいかリアリティがない
    携帯小説のようで入り込めなかった。

    ただ、この人の文章の感じは好きなので
    次は完全なフィクションを読もうと思う。

  • 思い出は人を苦しめる時もあれば、救うときもある。小説の中盤にそれを示す言葉が登場する。いい思い出も悪い思い出も一度刻まれたものは消すことができず苦しめられることがある。この言葉に込められた実話と創作が混じった物語。自分の思い出を振り返るきっかけとなり、将来に向かい思い出をどう作るかを考えさせられた一作。

  • 博多と上海を舞台にした、ちょっと悲しい物語。
    話の内容自体は好きじゃないけど、要所要所で語られた、思い出は厄介なものだ。というくだりは納得。
    栞が少しずつおかしくなっていく様子はつらかった。仮想の未来の思い出も悲しかった。

  • 160ページ程の小説。
    「心情面での深い情熱的な大人の愛」を描く著者。
    男性よりも情熱的で相手への愛に貪欲な印象の女性が多い
    でもそれがトゲトゲしく感じたり、重く怖い印象を与える時もありますが…それこそが本来の女性の姿を描いている気もします。
    この小説で登場する栞は、
    もうこの世には居ない死者に対する己の嫉妬心に、悩まされながら苦悩する。
    相手への愛の深さは、嫉妬心の深さにも比例するからこそ、叫びたくなるほど愛と嫉妬の狭間で自分の心が徐々に崩壊していく。

    女性の共感が得られやすい描写があり、文面も読みやすくこの小説の美しい世界観に深く入り込んで読めました。
    中盤辺りから綴られる栞の心の解放は、1つ1つ丁寧で美しい描写だなぁと感じます。

  • ボルドーの義兄(多和田葉子)と似ててボルドーの方が好きだったのですが、こっちのほうが先だったのか

  • Sくんともし付き合えたら、こういう感覚になるのかなって思いながら読んだ。
    上海で出会った年下の男の子はこんなに自分を好いてくれているのに、やっぱり戸田さんじゃなきゃって思うんだな。自分のことをすいてくれているのなら、それに甘えちゃえばいいのにって思うけど、今の私の状況は、Yくんと付き合ってはいるけど、頭のなかはSくんでいっぱいで、やっぱり私を好いてくれるYくんよりも、Sくんがいいなって思ってしまう。わかるわかる。彼女いるけどさ。
    あーあ・

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著者プロフィール

東京生まれ。1989年「ピアニシモ」で第13回すばる文学賞を受賞。以後、作家、ミュージシャン、映画監督など幅広いジャンルで活躍している。97年「海峡の光」で第116回芥川賞、99年『白仏』の仏語版「Le Bouddha blanc」でフランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として初めて受賞。『十年後の恋』『真夜中の子供』『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』『父 Mon Pere』他、著書多数。近刊に『父ちゃんの料理教室』『ちょっと方向を変えてみる 七転び八起きのぼくから154のエール』『パリの"食べる"スープ 一皿で幸せになれる!』がある。パリ在住。


「2022年 『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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