鼓笛隊の襲来

著者 : 三崎亜記
  • 光文社 (2008年3月20日発売)
3.55
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  • レビュー :168
  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334926014

鼓笛隊の襲来の感想・レビュー・書評

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  • 三崎さんの不思議世界がいくつも。
    非日常的なものが「あたりまえ」にあるものとしてあるように扱われる作者の作風が絶妙です。
    逆に普段「あたりまえ」に感じているものを、何かこれはおかしいことかも。といろいろ考え始めちゃう刺激的な本でした。

  • 「鼓笛隊」の1ページ目は個人的に永久保存版。コピーして何度も読み返しています。これぞ三崎ワールドを堪能できる短編集。

  • 「赤道上に戦後最大規模の鼓笛隊が発生した」という冒頭の文いきなりすごい。鼓笛隊の「襲来」という不穏なタイトルのこの短編、実はいたって平和な物語であったりする。

    わからないもの、ふだんとちがうものを前にしたとき、不安や恐れを力で無理にねじふせようとするのではなく、自分のなかにもあるものとしてこころをひらくことによって、恐怖にまかされてしまうという危険はなくなり「被害」もなくやりすごせるものだということを、鼓笛隊の奏でる旋律と子守唄が調和し中和するというごくシンプルなひとことを持って語る。

    怖がらないためには、まず恐怖のもととなるなにかとむきあわなければならない。虚勢をはっても仕方ない。過信するのはさらにいけない。

    「彼女の痕跡」「『欠陥』住宅」「同じ夜空をみあげて」はそれぞれ、輪郭のもやもやとした、しかし存在だけはそこに確固としてある喪失感についてのお話。日常とか自分とか、そういったものの存在の脆さ、あやうさを淡々と描いている。「覆面社員」にも共通するものがある。

    なんとなく、なぁなぁにながされていく庶民や民衆といったもの(=責任をとらないひとたちの集合体がもたらす現実)の怖さが根底にあるのは「ボタン」。「覆面社員」にも、非常識がいかにたやすく常識にすりかえられていくのか、世論のいいかげんさと怖さ、そこで自分を見失わずにいくことの難しさ、あるいは、ながされていくだけの自分から目をそらしたい衝動が描かれている。このあたりは「となり町戦争」で私が一番惹かれた要素で、この作家の小説に一貫している気がする。

  • 赤道上に、戦後最大規模の鼓笛隊が発生した。この出だしの一行だけで、その不穏さにワクワクしてしまう。(*^_^*) 三崎さん、巧いなぁ。

    出だしの後は、

    鼓笛隊は、通常であれば偏西風の影響で東へと向きを変え、次第に勢力を弱めながらマーチングバンドへと転じるはずであった。

    と来るんですよ。
    鼓笛隊のスネアドラムの乾いた連打やローリングが次第に大きなうねりとなって日本に近づいてくる様が音だけでなく、圧力として文章から感じられ、怖くてたまらないのに嬉しくなってしまう、という。

    人々の脳裏に、あの戦争の前に本土上陸して、甚大な被害を生じさせた「鼓笛隊26号」の忌まわしい記憶がよぎる。

    と、あぁ、ずっと本文を抜き書きし続けたくなるじゃないですか。

    鼓笛隊の被害から逃れるためには、上陸予定地域から避難するか、防音の部屋に閉じこもるか。
    スーパーは臨時休業となり、老人ホームも閉鎖されたために、主人公の園子の家には義母がやってくる。どこか落ち着かない様子の園子の夫の描写が可笑しい。どうも子どものころに一回、うっかり窓を開けて鼓笛隊の姿を見てしまったらしい。

    さぁ、鼓笛隊が近づいてきた。軽快な行進曲が演奏されている、という設定なのに、どんどんその中に組み込まれていきそうな不安感。バチの響きに合わせてどこまでも行進したくなる気持ち、わかるよぉ~~。

    どっしりと落ち着いた義母と、子どもに戻ったような夫、そして、実際にすっかり子どもになってしまって街から200キロも離れた地で発見された隣家のご主人など、いやぁ、これはホントに面白いです。
    しかも、昔の日本人は鼓笛隊に抵抗することなく、お祭り騒ぎとして楽しんでしまった、一晩中踊り狂ったなんてね。

    ほんの20ページ程のお話なのだけど、三崎ワールドをたっぷり楽しませてもらいました。
    ただ、最後はちょいと美談的にまとめすぎ、かな。

  • ■「三崎 亜記、天才!」って最初の一編...表題作の『鼓笛隊の来襲』を読み終わった瞬間に声に出して言っちゃった。(笑) でもほんとに凄いよ。思わず唸ったり驚嘆したりを繰り返してしまうような三崎マジックがたっぷり詰まった短編集。

    ■この人の作品はいつも独自の世界観、価値観で満ち溢れていたけど、この作品はテオムニバスとは思えないぐらい、一編、一編の読後感がもうひたすら重厚で。天才、ここに現る。

  • つい最近、三崎亜記の新刊が出ていることを思い出し、すぐ図書館に予約して借りてきました。『失われた町』以来1年半ぶりの新刊で、アンソロジーを除いて4冊目の著書です。

    これまでの三崎さんの作品は、設定が特殊で現実離れしているせいか、作品世界に入り込むのに時間がかかっていました。『となり町戦争』は、世界観を受け入れられずに読みづらかったし、短編集の『バスジャック』は、ドラマの「世にも奇妙な物語」っぽくてどの話も読むのにけっこうなエネルギーがいった。『失われた町』は、これまたかなり独特で時間がかかったけれど、気がついたら夢中で読んでいて、読後はとても強く長く余韻が残っていた。そのときの感じは今でもよく覚えています。

    そしてこの『鼓笛隊の襲来』。本書は短編集です。表題作のほか、「彼女の痕跡展」、「覆面社員」、「象さんすべり台のある街」、「突起型選択装置(ボタン)」、「『欠陥』住宅」、「遠距離・恋愛」、「校庭」、「同じ夜空を見上げて」、以上9編が200ページほどの本に収められています。

    どれも三崎さんらしく、やっぱり現実離れしている話ではあるものの、今回はなぜかすんなり読めて、楽しめました。以前に感じていた違和感みたいなものが一切感じられず、読みやすかった。三崎さんが肩の力を抜いて書かれたのか、それともわたしの許容範囲が広がったのか。いずれにしても、すごく良かったです。とくに書き下ろしの「同じ夜空を見上げて」は、のどをかきむしりたくなるほど切なくて、ノックアウトされました。

    わたしたちが<見ているのに、見えていないもの>、<誰もが同じように見ていると思い込んでいるものも、実は、見る者によってはまったく違う見え方をしているのかもしれない>もの、いつの間にか確実に失われゆくもの、そういうものがふんだんに盛り込まれていて、現実離れしているようで、ある意味ものすごく現実味がある。ちょっとコワいような気もするけど、実は切なくてあったかい。おおおお、三崎さん、イイじゃんっ!! と思いました。

    これは三崎さんにしか書けない作品群です。本当に稀有な才能だと思います。次はどんな作品が読めるのか、ワクワクしています。

    読了日:2008年6月25日(水)

  • 短編集。
    どの話にも、一風変わった要素がまぎれこんでいる。それらを当たり前のものとして、日常にしてしまうことで、独特の世界を生み出している。
    表題作が一番面白かった。能力がほぼ台風なのに、その実態は鼓笛隊。ギャップが面白く、引き込まれた。自然災害なのにユーモラスで、読後感もよかった。

  • 三崎亜記さんといえば「となり街戦争」ですよねぇ。
    あたしも読んだ!
    それが面白かったのでこれも読んだわけです。

    これは短編集で
    ・鼓笛隊の襲来
    ・彼女の痕跡展
    ・覆面社員
    ・象さんのすべり台のある街
    ・突起型選択装置(ボタン)
    ・「欠陥」住宅
    ・遠距離・恋愛
    ・校庭
    ・同じ夜空を見上げて
    という作品が入ってました。

    私は最後の同じ空を見上げてが一番すきです!
    設定が良すぎる。
    とある市がそのまま上空に浮かぶっていう話で
    地上にいる彼女と上空にいる彼氏の話。
    そういうドリーマー設定だいすきなのです(笑)

    ただ、全体的にはなんか意味不明なことも多くて
    三崎ワールドに入るのにちょっと時間かかりました。
    鼓笛隊の襲来は最初に来る話じゃない気がするなぁ。
    最初情景が見えてこなくて困りました。

    確かとなり街戦争がデビュー作だったから
    これはあとなんだろうな。
    バスジャックも読んだけど、
    バスジャックやとなり街戦争の方が面白かったです。
    短編より長編の方が得意なのかな?

  • 鼓笛隊の襲来。

    三崎亜記さんらしい、すこしだけ世界の見方が違う、でも繋がってる世界のお話。

    この世界が普通?それともあの世界が普通?

    むしろ普通ってなんだろう?って世界な気がします。


    どれも「大切なもの」の存在を思い出すお話です。

  • この本読んだときの感じは昔村上春樹さんの小説をはじめて読んだときの感覚に似ている。あくまでも個人的な意見だが彼女はきちんとしたサポートがあって、いいチャンスがあればすごい小説家になれるのではと思った。買いかぶり過ぎかもしれないがなぜかそう感じた。今後も注目して行こう。

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