美女と竹林

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334926243

感想・レビュー・書評

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  • 森見登美彦氏は、今を去ること三年前、大学院在学中に一篇のヘンテコ小説を書いて、ぬけぬけと出版界にもぐりこんだ人物である。一世を風靡するかに思われたが、風靡せんかった。

    こんな冒頭からして面白くないわけがない。最初は自分を主人公に第三者の視点から書いた小説かと思っていたが、途中でエッセイな事に気付いた。
    竹林についてひたすら語っている。竹林が好きなのは大いに伝わってきた。むしろ竹林の事だけでこんな文章が書けるのが凄い。半分くらい妄想だった気もするが…
    竹林が好きという気持ちには同感だ。

  • こんなに面白おかしく膨らませて書けるのは天才的。

    森見さんの小説は、突拍子もない出来事が起きたり現実離れしたキャラクターが登場するけど、「森見登美彦の文才」というフィルターを取り払えば、なんでもない日常だったりありふれた人だったりするんだろうな。このエッセイを読んでより彼らに親近感が湧きました。

  • てっきり小説だと思って読み始めたら、エッセイでした。
    この著者のエッセイを読むのは、気がつけば初めてです。
    それにしても、エッセイらしからぬタイトルですね。

    小説と同じとぼけた風の森見節が楽しめる、ファンにとっては嬉しい一冊。
    小説同様に、彼独特の妄想力を駆使して、あることないことを書いているので、読んでいくうちにだんだん虚実の境がわからなくなっていきます。
    すべてが彼の妄想なのかもしれませんが。

    登場人物は、おそらく実際に基づいているようですが、鱸(スズキ)氏とか鍵屋さんとか、少しアレンジした名前となっています。
    その割に、ジョニー・デップ、磯山さやか、堀北真希など、芸能人の名前ははっきり書かれているのですが。

    英国でパイ投げ合戦の傭兵をしていたという人も出てきました。いやいやありえません。これは妄想の域でしょう。
    彼の親友、明石氏が登場しました。明石さんと言えば、『四畳半神話体系』に登場するヒロインなので、タイプが全然違うものの、ごっちゃになりそうでした。

    竹林に心惹かれる著者、登美彦氏(自分に"氏"をつけているところに可笑しみを感じます)が、知人の家が所有する竹林の伐採をかってでて、苦心惨憺格闘する、という話ですが、軽妙な語り口に引き込まれて、読んでいると著者と一緒に竹林にいるような気持ちになってきます。
    実際に京都の桂に行ったことがありますが、確かに竹林が多く、かぐや姫伝説の里と言われている場所となっています。

    肝心の美女の方は、出てくるようで出てきません。
    著者が憧れの本庄まなみ氏と対談したエピソードは登場しましたが、竹林で美女と遭うという話は、皆無です。
    むしろ「竹林と言えば美女だ」「竹林で美女と会いたい」「竹林と美女は等価である」と、作中で始終語り続けている著者の主張(と妄想)がタイトルとなったようです。

    雑誌に連載されたエッセイなので、続きものになっていますが、もろもろの文学賞を受賞し、サイン会を繰り返し、著述に追われる多忙な日々を送る著者はなかなか自由な時間が取れないため、タイトルの割には竹林に行く話が進んでいないような気も。
    その意外性もまたおもしろいのですが。
    それにしても、京都を舞台にした小説で知られる彼が、大原三千院に行ったことがなかったとは驚きでした。

    竹林へのアプローチが全くのシロウトの思い付きや憧れではなく、著者が学生時代、竹の研究に取り組んでいたという話も、途中で明かされていきます。
    しじゅうボヤキ続け、苦労を避けたがりながらも、時には夢中になって慣れない労働に精を出すという著者の姿が、自由で柔軟な筆致で語られ、共感を持てます。
    あっという間に最後まで読みました。

    最終章では、なんとかタケノコも収穫し、タケノコづくし料理に舌鼓を打つところで終わっているので、大団円ではありますが、そこに至るまで1年半ほど要しており、かなり空白の迷走期間があったことを思わせます。
    それでも途中打ち切りにならず、なんとか形になったのは、著者の、人を逸らさない文章力あってこそでしょうか。

    『夜は短し』も、かなり強引にハッピーエンディングに持ち込んだと、本人が作中でバラしてしまっていますが、確かにその作品を読みながら(ずっとフワフワ話が進んできたのに、最後になって、ものすごい力技で押してきたなあ)と思ったものでした。

    著者や彼を取り巻く人々が竹林の魅力に取りつかれたように、確かに竹林は爽やかで凛としていて、心洗われるイメージがあり、読んでいる間中、ずっと清々しい気持ちでした。
    竹林を所有しているとは、いいですね。実際には、竹はあっという間に成長するため、管理が大変だし、薮蚊の攻撃がすさまじいようですが。

    まだ著者が独身の頃の数年前のエッセイ。
    結婚時に、彼が「かぐや姫を見つけました」とブログに報告していたと聞き、(なんとも古風な表現をする人だなあ)と思っていましたが、その根拠はここにあったのか、とようやく合点がいきました。

    森見作品が苦手な人も、このエッセイなら楽しめそうに思いますが、現実と虚構の間をさりげなくいったりきたりする文章はここでも健在なので、その辺りについて行けない読者もいるかもしれません。
    私は彼の文章ワールドが好きなので、何度か読みなおしてみうと思います。

  • 登美彦氏の竹林への愛がひしひしと伝わる妄想と現実の混じったエッセイというにはオモチロすぎる内容だった。

  • 机の上に置けるミニチュアの竹林は欲しいけどなぁ
    誰か商品化してくれないかなぁ

  • 相変わらずの森見ワールド。
    エッセイ?なのかエッセイの形をした小説なのか。
    何処までがフィクションなのか、いまでもよくわからない。

    「小説執筆にかまけて大原へ行けなかったという事実を、もっと厳粛に受け止めなくてはならない。大原も未経験でなにが京都作家か!この野郎!」
    と叫んでみたり、本上まなみさんへの情熱を切々と綴っていたり、締切次郎に見守られたり、椅子の上で三角座りをしながらキーボードをたたいたり。チラリと見られる登美彦氏の日常も楽しい。
    「鍋に入った水に放り込まれて火にかけられた蟹もしくは海老」ってリアルだな。

    モチロン、竹への想いもいろんな方向から語られている。
    我が家にも異様に竹林を語る人がいて、竹林を眺めながら酒が飲みたいとか、竹林に囲まれた風呂に入りたいとか。
    MBC(モリミ・バンブー・カンパニー)の躍進はウチにも影響がありそう。

    それにしても、百閒先生っぽい命名の方々にニヤニヤしている。
    鱸(すずき)氏、海苔本氏、綿撫氏などなど。この名前を頭に置いてご本人を見てみたいような。

    「見ろ、竹林の夜明けだ」

  • 氏の言葉を引用するならオモチロイ!
    友人の明石さんと竹を刈りにいく場面で竹林のアイドル、「かぐや姫」を誤って切り、血みどろにしないように話すくだりは笑えた。
    氏の想像力豊かさには感服しちゃう。

    夢想妄想の作品ではあるがファンなら許せる、と言ったところか・・
    何より、このエッセー!?を本として世に送り出した光文社の勇気に拍手を送りたい。

  • 素敵で壮大な妄想

  • 図書館で借りる。
    「美女と竹林」をテーマにいつもの森見ワールドが特に作家のプライベートな空間が描かれる。竹林でぼーっとするのが好きな作家が、竹林をテーマに連載をするのであれば、竹林で連続対談や竹林で思索にふけるという内容が王道であるとおもうが、そこを細腕で竹林を「管理」するという暴挙にでるのが本書最大にして唯一の見せ場である。
    20代後半の一般成人男性と比較すると、「美女と竹林」における美女の描写はとても少ない。しかしそれも森見ファンとしては想定の範囲内であり、往年の深夜番組トゥナイト2の新聞告知覧に胸を熱くし、実際に放送を見て肩を落とすようなことはない。
    成長するということは、裏切られて、裏切られて、なんとなく心の中の期待値のハードルをさげるということなのだとおもった。

  • 基本的にエッセイというのは好きじゃない。現実が垣間見えちゃうから。

    でもこれはおもしろかった!妄想全開で。

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著者プロフィール

1979年、奈良県生まれ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。2003年『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。07年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を受賞。同作品は、本屋大賞2位にも選ばれる。著書に『きつねのはなし』『有頂天家族』など。

「2022年 『四畳半タイムマシンブルース』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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