おさがしの本は

著者 :
  • 光文社
3.30
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本棚登録 : 775
レビュー : 201
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334926687

作品紹介・あらすじ

簡単には、みつかりません。この迷宮は、深いのです。生まじめでカタブツの図書館員が、お手伝いいたします。極上の探書ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館のレファレンス・カウンターが舞台のミステリー小説。
    主人公の和久山隆彦(わくやまたかひこ)は30歳。入職して7年、調査相談課に配属されて3年になるN市立図書館のレファレンス・カウンター担当だ。隆彦は相談者の証言を手掛かりに、様々な仲間に支えられながら、レファレンス・ブックを駆使し、長年の職業経験で培われた勘を総動員して特定の本を次々と探し当てていく。それと同時に、その本を探す相談者の本に対する想いや人生もするすると紐解かれていく。レファレンス・カウンターで解き明かされていくのは、まさに本に関わる人間たちの生きるドラマなのだ。図書館におけるレファレンスという仕事の謎解きのような要素に着目し、ミステリーを書き上げたのは大変面白い試みだったと思う。

    レファレンス・カウンターには実にさまざまな相談が舞い込んでくる。例えば、第2話「赤い富士山」では、取り壊し予定の峰杉公民館(N市立図書館分館)に隆彦が蔵書を取りに行ったとき、鳥沢嗣春(とりさわつぐはる)という紳士と出会い、分館の蔵書の中から表紙いっぱいに「赤い富士山」が描かれている本を探してほしいという依頼を受ける。隆彦は、図書課児童書担当の24歳の乙女、藤原沙理(ふじわらさり)と一緒に紳士の言葉を頼りにして試行錯誤を繰り返しながらも一冊の本を見つけ出す。

    第3回「図書館滅ぶべし」では、新しく副館長として赴任してきた潟田直次(かただなおつぐ)が隆彦のライバルとして登場する。潟田は市長秘書室から転属してきたのだが、正月の着任早々、あからさまな図書館廃止論を繰り広げていく。それに対して反論した隆彦に潟田は研修と称して難問をぶつけるのだ。「或る一つの語をタイトルに含む本。その語は、A意味的には、日本語における外来語の輸入の歴史をまるごと含む。B音声的には、人間の子供が最初に発する音によってのみ構成される」。期間は一週間。隆彦は調査相談課の先輩楢本(ならもと)のサポートを受けてレファレンス・ブックや勘を頼りにこの難問を解き明かし、指定された本を探し出すのだ。

    そして、第5話「最後の仕事」では、市議会議員増川弘造(ますかわこうぞう)に実力を認められた隆彦は、文教常任委員会において、図書館長となった潟田と弁論対決をしなければならなくなる。もちろん、議題は図書館の存廃に関するものだ。
    さらに、増川は隆彦に個人的な本探しをも依頼する。若い頃に読んで衝撃を受けた作品で、作者と書名が思い出せないが、登場人物の若い男が陰茎で白い障子を次々と突き刺すシーンが出てくる政治小説を探してほしいというのだ。隆彦は演説の草稿と本探しという2つの案件を抱え、またもや沙理の言葉からヒントを得る。
    隆彦の図書館存続を訴える演説の内容はなかなか良かった。図書館の存在意義を日本が法治国家であることと絡めて説明し、さらに救急医療センターや市営住宅と同等の意義があるということを証明してみせた説得力のある演説だった。
    また、弁論対決に辛くも勝利した隆彦は、古巣に戻ることとなった潟田の推薦で市長秘書室と連携関係にある企画グループへの異動が決まる。隆彦のレファレンス・カウンターにおける最後の相談がどんなものなのか、職員の仲間たちが見守る中、やって来たのは意外な人物だった。
    最後の最後で、隆彦と沙理の凸凹コンビが淡い恋愛関係に発展していくのも、私はなかなか微笑ましいことだと思った。

  • 図書館にてタイトル借りした本。うーん。ちょっと私には合わない文体だったなぁ。僅かなヒントの中から本を探すという設定は面白かったと思う。なんか妙に淡々としていて盛り上がりには欠けたかも。2011/144

  • 和久山は図書館でレファレンス担当。自分の仕事に意味を見出させないでいました。
    大学生のレポート課題、表紙に赤い富士山が載っていたと思うという記憶が不確かなもの、などに回答しながら、少しずつ図書館のあり方を考えるようになります。

    ところが、新しく来た館長は図書館廃止論を唱えて、レファレンス担当の和久山と楢本に課題を出します。できなければ無能な図書館員とみなす、というものでした。

    さらに図書館の存続をかけて、館長と戦うことに。

  • 図書館のレファレンスカウンターの業務に就く主人公が、本に関わる難問を解決していくお話。

    本の本って好きなものが多いんですが、この作品も楽しく読めました。

    某国民的食品ヒーローの章の謎はかなりよくできていて、回答を聞いた時は思わず「なるほどっ!」っと声が出てしまった。

    主人公の隆彦と潟田館長の毒の効いた会話のやりとりはとても面白く、立場や年齢差を超えた好敵手のようでもあり、ハラハラどきどきさせられました。

    ただ一つだけ、現実的なことを言えば、もし図書館を次々と廃館しちゃったら、「市長さん次の選挙は間違いなく落選しちゃいますよ」ってツッコミたくなりますね。

  • 軽ーく読めるお話。ミステリじゃなくて軽い謎探しといったほうが適当だと思う。
    図書館の意義については目からうろこ。

  • 『図書館が教えてくれた発想法』(高田高史著)と大崎梢さんの『配達あかずきん』シリーズを足して2で割ったような感じ、とでもいいましょうか? それにしても「けだし」がこんなに出てくる本を読んだのは初めてです。

    (図書館で借りた本)

  • みんな大好き!!の図書館のことがミステリーとして味わうことが出来る短編集。みんなのレビューが思ったほど高くないのに驚き。面白いじゃないですか!!私は☆五つでも足りないほどなのに。
    地方行政の裏側まで見えちゃってお得感満載です。
    でも、市の財政の中で図書館がお荷物になってるなんて、信じられない。在るのが当然。疑問の余地無し。これまでそう信じていたのに、改めて話題にされてしまうほどのことなのでしょうか。別な何か図書館を話題にした読みやすい小説でも読んでみたいなと思います。「図書館戦争」シリーズより好きかも。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「これまでそう信じていたのに」
      利用者には当たり前でも、使わない人にとっては無駄なのでしょうね。
      公共施設でも、外から人を引っ張って来る可能...
      「これまでそう信じていたのに」
      利用者には当たり前でも、使わない人にとっては無駄なのでしょうね。
      公共施設でも、外から人を引っ張って来る可能性のある美術館と、完全んに地域住民への知的サービスにしかならない図書館では、方向性が違うでしょうが、何かを結び付けて生き残る道を模索して貰いたいです。
      2012/05/15
  • 図書館のレファレンスサービスがどんなことしてるかわかる本。

  • 本好き、図書館好きの人間には一読してほしい一冊。身近にある本をもっと大切にしようと思った。

  • 本探しミステリー、という珍しい触れ込み。市立図書館のカウンター(だけではないが)へ持ち込まれる、依頼者の朧げな記憶に基づく本探しの依頼をリファレンスカウンターである主人公が解決する。それがメインだが、後半は本庁での政治的動きに巻き込まれていくことでただのミステリーとは一線を画す展開となっている。勿論、本探しの色々な角度からの推測は読みごたえがあった。

    最後の話の論戦?は個人的にはわりと面白いと思った。けど、主人公のラストの進路の選択がなぁ・・・。あそこまで上の人間とやりあったんだから徹底的に現場主義を貫き通してほしかったなぁ・・・。結局出世主義か・・・。とは思ったものの、そこで第一話を読み返すと主人公の選択に納得。公務員だろうが新入社員だろうが配属当初はお客さんのためにやれることをやるぞ、と意気込むけれどその気持ちを打ち砕くのはいつだって客だ。そのようにも読み取れる。
    あとここで恋愛要素は冷めるなぁ。でもこれは男のロマンなんだろうか。

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著者プロフィール

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年「キッドナッパーズ」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。16年『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年、咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年『銀河鉄道の父』で直木賞受賞。他の作品に『東京帝大叡古教授』『家康、江戸を建てる』『屋根をかける人』『自由は死せず』『東京、はじまる』などがある。

「2020年 『銀閣の人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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