伽羅の橋

著者 :
  • 光文社
3.11
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本棚登録 : 48
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334927035

作品紹介・あらすじ

介護老人保健施設の職員・四条典座は、認知症の老人・安土マサヲと出会い、その凄惨な過去を知る。昭和二十年八月十四日、大阪を最大の空襲が襲った終戦前日、マサヲは夫と子供二人を殺し、首を刎ねたという-穏やかそうなマサヲが何故そんなことをしたのか?典座は調査を進めるうちに彼女の無実を確信し、冤罪を晴らす決意をする。死んだはずの夫からの大量の手紙、犯行時刻に別の場所でマサヲを目撃したという証言、大阪大空襲を描いた一編の不思議な詩…様々な事実を積み重ね、典座にある推理が浮かんだそのとき、大阪の町を未曾有の災害・阪神大震災が襲う-!!時を経た大戦下の悲劇を、胸がすくようなダイナミックな展開で解き明かしてゆく、人間味溢れる本格ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • ばらのまちミステリー賞受賞作品ということで買って読んだけど、島田荘司の好みの謎と解決の香りがして納得。物語の勢いで終盤突っ走ったけど、いくら運動しても最後のあの活躍は凄すぎて、オイオイと思いつつ読んだけど、それはそれで良し。受賞に納得の作品でした。

  • お前は何処の名探偵かと主人公に対し突っ込みを入れたくなりました。閃き力がありすぎて唖然。
    その割には人物一人ひとりが薄い、と言うか、ぼんやりとしている感じがしています。
    自分の足で歩き、ものを見聞きし、と言う形で謎を解いて行くのは地道で正しい手順だと思いますが、それって伏線じゃなかったの、っていう人たちの放置っぷりがやや虚しく感じます。
    戦争だとか、家族愛だとかそういうのをテーマに第三者の目で追っていった、というのが正確でしょうか?
    その語り手が主人公。ただ、語り手だけを役割にするのであれば主人公の背景というのは不要だったのではないか、単に違和感を増徴させるだけのものだったような心地です。
    謎解き自体はよく仕組まれて作っているなあ、という感慨を抱いたので星2つ、で。
    もうちょっとこう、一ひねり欲しかったですね。

  • まあ、過去の事件を調べるという話しでなかなかいいかな。けど…

  • 島田荘司選評ということもあり、手に取ってみた。評論の島田評
    にあるように、前半は非常に怠惰。人物描写も平坦で、全く魅力
    を感じないし、事件の起点になるドラマ性にもイマイチのめり込
    めなかった。物語は、要介護が必要な老人の悲劇的な過去に対し
    てケアマネージャーが真実を解き明かしていく物語。この作品の
    モチーフになている源兵衛橋の話は、実際に大阪の伝説になって
    いるにも関わらず、恣意的史観のままチープな引用になっており、
    物語に何の深みも与えない。
    昭和の戦中及び、江戸時代の人間を描くのであれば、それ相当の
    時代に対する知識及び考察が必要になると思うが、そこは非常に
    稚拙。
    人間を描くのが小説なのであれば、この作品は小説に値しない。
    唯一小説に値するのが第十章。
    この十章を描くための作品であるとするなら、島田選評も納得い
    くが、他の退屈で、平坦な人物描写に付き合わされるのは、読書
    時間の浪費となる。
    この作家さんには、武士・戦争体験者・ムラ意識をもう少し勉強
    なさってからこの作品に挑まれた方が良かった気がします。

  • 福山ミステリー大賞受賞作。大阪大空襲のさなかに起こった凄惨な事件の真相を追い求める物語。その光景のインパクトは抜群なのですが。……この真相は、なんとなく分かっちゃうなあ。きっと無実なんだろうな、という思い込みがあるにしろ。ただ、移動トリックなどを緻密に考察していく過程はじっくり本格で楽しめました。
    そしてなんといっても、終盤のドラマが凄い! 過去の光景と現実の光景が見事に重なって、否が応にもあの惨状を思い出してしまうのだけれど。果たして繰り返す惨劇を阻止できるのか、とはらはらさせられました。

  • ばらのまち福山ミステリー文学新人賞(2回)

  • 新聞の書評を見て読んだが、がっかりの内容でした。読み応えはあると言えばある、プロットも壮大と言えば壮大なんだが、作家の力量が追いついていなくて、結局つまらない内容になってしまったのか?なんだか大阪の大空襲と阪神淡路大震災を取り上げるのが目的だったのでは・・と読後に思ってしまった。

    まず、人物描写が薄いので全く感情移入できない。長編なのにこれでは致命的。ダラダラと、早く結末だけを知りたいがために細かい所を読み飛ばしながら進む事になってしまう。主人公が一生懸命になる動機も不明。唯一、なんだか昭和を生き抜いた人々の為に頑張っています、という説得力のないメッセージだけが印象に残る結果に。何よりマサヲの人物像も全く見えないのでどの程度の精神疾患や痴呆を抱えているのかいないのか、孫と接する時にはどの程度「普通」の祖母として接する事ができているのか不明。従って、なぜ孫の信頼を得たのかも不明故に、クライマックスのシーンも全然感動できず。犯人を捜す、という点ではミステリーなのだろうが、当時の目撃証言の不一致やそれが克服される理由が判明しても、全然心躍らないのでミステリー小説としても失格。

    巻末に選評が書いてあったり、書き直しの指南が書いてあったりしてそれはとても納得できたので、あー、確かにこれから改善して行けばいい作品になるかもね、と思ったのだが、最後にこれは書き直した後の作品である事を知り、脱力した。

  • 福山ミステリー文学賞2作品目

    初めはだらだらして読みにくかったが、最後はぐんぐん引き込まれて一気に読み終わった。
    地元主催のミステリー文学賞でなかったら読まなかったかもしれないけど・・・

    また、この賞を意識してなのか、偶然なのか
    福山自動車時計博物館が少しだけ登場したね。

  • 介護老人保健施設「さんざし苑」へ入居した安土マサヲ。
    彼女には終戦の前日に旦那と息子2人を殺したという過去があった。
    そのため他の入居者が恐れ、退去処分になりそうになる。
    しかし職員の四条典座(のりこ)はマサヲの疑いを晴らしてみせるので、処分は待ってほしいと言ってしまう。
    期限は1年。
    証言者たちが高齢になってしまっている今、はたして典座は間に合うのか。

    第2回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作品。
    第1回受賞作品『玻璃の家』につづき、今回も「ああ、島田さんはこういうのが好きなんだなぁ」と思ったのでした。

    渡し守の子殺しの昔話と地獄のような空襲下で幼子の生首を抱いた幻想的な情景という導入部はとても魅力的。
    でしたが、選評にあったように前半はとても退屈でした。
    テンポが悪いというか、大阪の地理に詳しくないからか、発見されていくことがらがいまいちイメージできず。
    しかもほとんどが苦手なアリバイ崩し的なため、なかなか進みませんでした。
    ですがやはり選評のとおり、後半そのピースがつながっていくとがぜん引き込まれました。
    時代がどうしてここだったのかも納得。
    そしてタイトルとなった「伽羅の橋」。
    その導入部も含め、全てが裏返るラストは圧巻。

    これまた素晴らしいデビュー作でした。
    いまのとこ福ミスのレベルは高いです。さすが。
    とはいえ受賞作品たちより、第1回優秀作の『少女たちの羅針盤』が一番面白くて印象に残ってるんですけど・・・。

  • 前半部分が退屈すぎ。登場人物たちの行動の動機が曖昧で、理解できないところが多かったです。
    第1回福ミスの「玻璃の家」「少女たちの羅針盤」が良かっただけに残念。

  • 戦時中、夫と息子を殺したと言われる女性が、介護施設に入所してきた。ひとりの介護士が、謎を解いてみせると名乗り出る。大阪を舞台に繰り広げられる、大仕掛けのミステリー。
    これがデビュー作だそう。まずは厚い!導入部分でなかなか作品世界に入ることができず、辛かった。そこを乗り越えると、終わりまで一気に駆け抜ける感じで楽しく読めた。

  • 2010/05/01読了

  • ◎第2回(2009年)ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀受賞作品。

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