純平、考え直せ

著者 :
  • 光文社
3.21
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感想 : 296
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334927417

作品紹介・あらすじ

坂本純平、21歳。新宿・歌舞伎町のチンピラにして人気者。心酔する気風のいい兄貴分の命令は何でも聞くし、しゃべり方の真似もする。女は苦手だが、困っている人はほうっておけない。そんな純平が組長から受けた指令、それは鉄砲玉(暗殺)。決行までの三日間、純平は自由時間を与えられ、羽を伸ばし、様々な人びとと出会う。その間、ふらちなことに、ネット掲示版では純平ネタで盛り上がる連中が…。約一年半ぶりの滑稽で哀しい最新作。

感想・レビュー・書評

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  • 坂本純平は、六明会傘下・早田組の盃をもらって、2年目のヤクザ、21歳。
    歌舞伎町界隈のペットとして、夜の女達にからかわれ、可愛がられている。
    当面の目標は、部屋住みを卒業して、バッジをもらう事。
    一回り年上の直系の兄貴分・北島敬介に憧れている。

    そんな純平が、組長から“鉄砲玉”になれと、指令を受けた。
    実行まで、三日間。
    考え直せるか?

    主人公の純平が、単純で、カッコつけで、騙されたり、頼まれたら断れなかったり、憎めない。

  • 六明会傘下にある早田組のチンピラの純平は、直系の兄貴分の北島敬介に心酔し、何とか北島のような男になりたい、男をあげたいとその機会を狙っていた
    そんな純平が組長から受けた指令は、鉄砲玉(暗殺)

    決行まで自由時間を与えられた純平が羽を伸ばし、さまざまな人々と出会う三日間の話である

    この三日間、今までこんなに人にかまわれたことがないというほどの人にかまわれ、あてにされ、ネットでも話題にされている
    これまでずっと一人で、馬鹿にされることを恐れ虚勢を張って生きてきた純平は、今から任務を果たし、刑務所に入る自分に対して神様の慰めなのかと思うほどである

    鉄砲玉として組や兄貴のために一肌脱ぐことに迷いなどない純平であるが、最後の最後になって、この世の中も満更捨てたものではないなと思えるぐらいである

    この三日間、次から次へと純平の前に現れる人が、みんなおもしろい
    とても人間的である

    千葉から遊びに来ている二人組の女性、テキヤの信也、おかまのゴロー、昔の暴走族仲間の後輩達・・・

    特に、元早稲田大学の教授、今までの人生は偽りの自分だった、これからはグレてやると言いながらもどうすればいいか分からず、よりによって純平に教えを請うとは

    その先生曰く
    「若者が死を恐れないのは、人生を知らないから。知らないのはないのと同じだから、惜しいとも思わない。ろくな経験がないから、今燃え尽きてもいいなどと平気で言う。全く若者はおめでたい生き物だ。おまけに厄介なのは、その渦中にいる者は、その価値がわからないということだ。若さの価値は、歳をとらないと分からない。
    まこと神様は意地が悪い」

    先生の話を聞き、純平の心はざわざわと揺れる

    純平の「純」は、純粋の純。その方向は、ちょっと間違っているけれど、あまりに純粋すぎて、危なかっしくて可愛くて、憎めなくて、放っておけなくて、可哀想で、切なかった

    幼い頃から真っ当な愛情を受けて育っていれば、真っ直ぐな好青年になっただろうに
    「純平、考え直せ」は、奥田英朗さんの声でもあり、
    私の声でもある



  • 埼玉育ち、今は歌舞伎町でヤクザの下っ端になっている純平21才。親分から相手の組の男を討ってこい、と「鉄砲玉」になることになった。実行の時までのめくるめく3日間の話。

    娑婆の思い出にと兄貴から渡された金で高級ホテルに泊まり、高級寿司を喰おうとするが臆して店に入れず回転寿司を食べ、あこがれのダンサーにかっこをつけ、ヤンキーねえちゃんと知り合うと、彼女がネットに決行を載せたことから、書き込みが・・


    親のいいなりで世間の期待に沿うことに疲れてグレた大学教授との話が含蓄。純平が父は知らず、男をひきこむ母のもと、養護施設育ち、悪いことはみな純平のせいにされた中学時代、というグレといい子のパターン化は気になるが、これも奥田氏流の皮肉なのかな。

    最後は純平にきっちり救いのある書き方があるのかと思ったが、どうだったんだろう、どちらともとれる。

    2018に映画化されていた。純平は野村周平。


    「小説宝石」2009.9月号~2010.8月号連載

    2011.1.25初版第1刷 図書館

    書評:朝日 2011.3.9
    https://book.asahi.com/article/11648274

  • 良い意味で「悪くなかった」。
    ラストのもやっとも含め、佳作!
    奥田さんはこれでいい、これがいい。


    純平、考え直さないだろうな。
    純平、やり直せが読みたいな。

  • やはり奥田英朗の本は読みやすいです。
    この本は結末を先に書いてからその時点に至るまでのストーリーにしてくれた方が面白かったのかなと思いました。

  • 2013.5.27
    歌舞伎町、ヤクザの下っ端の純平、心酔する兄貴のようになりたい。
    でもなぜかみんなから笑われる...
    そんな純平が組長から鉄砲玉になるよう命令される。
    決行までの3日間、自由な時間とお金を手にいれた純平は美味しい物を食べ、様々な人と出会う。
    ナンパで知り合った女がネット純平のことを掲載しスレッドが立ち盛り上がりを見せる。

    オチは

    鉄砲玉としての結末は書かれていないけれど
    アナクロな純平はきっと任務を果たすんやろうなあって思った。
    成功するかは別として。

    テンポが良くて、結構ギリギリのラインの部分もユーモアに読める。

  • チンピラの世界観、歌舞伎町の世界、やくざの世界、警察の世界、どこまで真実なのかは不明だが、気軽に、楽しんで読めた。ただ、親に愛されずに育った子どもというのは、言い知れぬ寂しさを抱えているんだろうなと。

  • 奥田英朗らしい世界。
    若い男の子をデフォルメしてヤクザの鉄砲玉を描く、モノマネ芸のコロッケや清水アキラの世界、名人芸だね〜
    舞台からか村上龍、『インザミソスープ』を思い出した、ちょっとイメージは違うけど。
    著者は、『邪魔』『最悪』とか写実的な長編があって。
    デフォルメした作品軸では『ララピポ』『東京物語』など男の子が一方にあり、本作、『サウスバウンド』などから『家日和』と家庭が入ってきて、『ガール』『マドンナ』のオンナに至る。これらの病んだ世界を『インザプール』などで伊良部医師が治療する。

  • 軽過ぎました。

  • (データ移行)


    最高の一冊。本当に読んで良かった 自分と同じ21歳の主人公。色々と考えるものがあった。

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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