ドッグテールズ

著者 :
  • 光文社
3.43
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本棚登録 : 65
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334927561

作品紹介・あらすじ

愛犬の予期せぬ死ゆえ、ペットロスに打ちひしがれた夫婦。互いの心がすれ違い、ふたりの亀裂はしだいに大きくなっていった。そんなある晩、男は月明かりの中で仔犬の鳴く声を聞いた…(グッドバイ)、他四編。犬との出会いや絆をリリカルに描いた、希望と再生のストーリー。

感想・レビュー・書評

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  • 山岳救助犬シリーズの作者が描く犬と人間との物語を集めた短編集。
    最初の2作は、生きることの意味を見失ってしまった人たちが犬によって救われる作品。2作に出て来る「飼い主が犬を選ぶのではなく、犬が飼い主を選ぶ」と言う言葉がじんと来る。
    3作目、4作目は犬本来の狩猟本能を描いた作品。これはそれほど感動もなく。
    そして5作目は、山岳救助犬シリーズでも登場する夏美の恩師とそのパートナー犬との話。日本が初めて海外に派遣した四川地震が出て来る。実際に活動していたことを知っていただけに、あとがきを読むまで、どこまでがフィクションか分からずに、かなりショックを受けた。でも、山岳救助犬シリーズの前日譚が読めたので、かなり得した気分。

  • R3/2/7

  • 3

  • 犬と自然、人間の営みについて書かれたフィクションの小品集。
    犬と自然について、深い理解と知識、経験がある筆者ならではの作品は、静かに読ませる。
    大きな展開や、作者お得意のアクション場面があるわけではないが、静かな時間を共に過ごすには良いと思います。

  • 冷えきった関係とペットロスでどん底の夫婦、仕事も家も無くしてバックパックひとつで旅に出た男…
    悲しみにうちひしがれた時、孤独や絶望のさなか、そっと寄り添ってくれる犬の優しい暖かさ。
    小さな奇跡や希望が見えてくる、静かな感動のある短編集です。ウルウルしながら読みました。

    樋口氏は南アルプス山麓に在住とのこと、自然豊かな風景描写もまた魅力的でした。

  • 人と犬に焦点を当てた短篇集。
    やはり樋口明雄に外れなし。人と犬の絆を感じた。最後の『向かい風』には『天空の犬』で出てくるJRDも登場。山と犬に関してはこの人の本が最高だなと思う。
    『グッドバイ』小説家の斉木渉、イラストレーターで妻の真由は半ば壊れかけた夫婦だったが、その隙間をクロという犬が埋めていた。しかし二人が渓流釣りに行っている間に事故で死んでしまう。クロを失った二人はまた冷えきった関係になっていく。ある日、渉が書斎で執筆していると犬の声が聞こえた。玄関に出てみると、仔犬がいた。どう見ても小さい頃の”クロ”だった。
    『バックパッカー』智史はリストラされて、山道具だけを持ってあてのない旅をしていた。寝ようとしてテントに潜ると、大嫌いなはずの犬がいつもそこにいた。
    『疾風』狩人、弥太郎と疾風は最後の狩りに出ようとしていた。
    『遠吠え』動物学者の千明のもとに野犬の群れのリーダーに狼らしいという知らせが入る。
    『向かい風』弥生は瑞牆山のログハウスで傷心を癒していた。JRDの救助活動中、二人と二匹の同僚を事故で失ったトラウマがまだ消えていないのだ。それでもこの場所と愛犬”エマ”との日々は確かに弥生を癒しつつあった。しばらくして、山に台風が到来。そんな中双子の幼い姉妹が遭難し、地元警察から協力を要請された弥生は…。

  • 図書館の壁面にあり気になって借りた本。この短編集に出てくる犬たちは、単なる人間の従者としてではなく強い意志を持った生き物として描かれている。犬、自然が好きな人にとってはたまらない一冊だろうな。

  • 5つの作品で構成されています。最初の2作品は死んでしまった犬が舞い戻ってきたような子犬に出会い、その犬を通して後悔や夫婦の関係を取り戻していく・・というような、ほんわかしたお話しでした。なので、このままこんな感じの小説なのかなと思っていたら、残りの3編は骨太な重量感たっぷりなお話しです。『狼王ロボ』を用いたものや『凍える牙』をほうふつとさせるような犬の姿はドキドキします。
    人と犬との関係は今や切ることの出来ないものになっています。そんなさまざまな関わり方を、作者はテンポを変えて小説で楽しませてくれます。特に最後の「向かい風」は救助犬のお話ですが、3・11のこともあって胸にグッときました。犬はもちろん、人とも信頼関係を築いた時にどれだけ人は幸せになれるんだろう、と思ったのでした。

  • 犬にまつわる短編5つ。
    「グッドバイ」事故で亡くしてしまった飼い犬に対する思いのすれ違いで関係がこわれた夫婦のもとへクロが小犬になって帰ってきた。幸せだったと伝えるために。
    「バックパッカー」幼児のトラウマ。亡くなった兄。失職の若者が故郷へ帰るまで。
    「疾風」は熊狩りの名犬。飼い主との心のつながりがすばらしい。哀しい結末。
    「遠吠え」は現代版狼王とビアンカの話。
    「向かい風」のエマは救助犬。仲間の事故死以来傷ついた心を抱えてきた飼い主の再生物語。

  • 犬と人とのつながりを描いた短編集。SF風あり、リアリズムあり。私は、ラストの災害救助犬のNPOで活動していた女性と、そのパートナーの犬の話が好きでした。

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著者プロフィール

1960年山口県生まれ。明治学院大学卒業。雑誌記者を経て、87年に小説家デビュー。2008年『約束の地』で、第27回日本冒険小説協会大賞、第12回大藪春彦賞をダブル受賞。2013年刊行には『ミッドナイト・ラン!』で第2回エキナカ大賞を受賞。山岳救助犬の活躍を描く「南アルプス山岳救助隊K-9」シリーズの他、『狼は瞑らない』『光の山脈』『酔いどれ犬』『還らざる聖地』、エッセイ『北岳山小屋物語』『田舎暮らし毒本』などの著作がある。有害鳥獣対策犬ハンドラー資格取得。山梨県自然監視員。

「2022年 『南アルプス山岳救助隊K-9 それぞれの山』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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