命に三つの鐘が鳴る Wの悲劇'75

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334927578

感想・レビュー・書評

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  • 左翼運動家であった警官・二条と、親友で現役の左翼運動家・我妻が取調室で対決します。我妻は、二条の元恋人・和歌子を殺したことは認めるものの、動機については一切何も語りません。事件の供述にも多くの嘘が入り混じるのですが、二条は捜査経験が少ないうえに、「和歌子を奪った親友」という私情が邪魔をし、我妻の嘘を見破れず翻弄されてしまいます。見るに堪えかねたベテランの上司が矛盾をロジカルに指摘し、崩します。
    新証拠を突き出す度に別の動機が語られるの繰り返しで、最後は、これまで提示されたデータと伏線から論理的に推理し、動機を特定します。蓋然性の高い真相でやや不満ではありますが、「新しいタイプの警察小説」なので価値のある作品だと思います。

  • 慟哭の本格推理×迫真の警察小説。
    まほろ、加速。本年度ベスト級、圧倒的な熱量で駆け抜ける傑作。
    彼女が選んだのは、なぜ僕ではなかったのだろう。
    彼女を殺したのは、なぜ僕ではなかったのだろう。

    探偵と犯人と被害者の三角関係に、探偵が勝ったことなどない。
    ないのだ。

    元活動家にして若きキャリア警察官・二条実房のもとを訪れた、親友で現役の非合法活動家・我妻勇人。
    恋人の佐々木和歌子を殺した、という。
    彼女のことは二条も知っていた。
    我妻に奪われるまで、自分の恋人だったからだ……。我妻は犯行を認めながら、動機の一切については語ろうとしない。
    息詰まる取り調べの攻防の果て、二人が辿り着いた結末とは!?

    ちょっと癖のある文体・リズム。
    けれどホワイダニットにここまで特化した作品も読んでないように思えた。

    ミステリ :☆☆☆☆☆
    ストーリー :☆☆☆☆
    人物 :☆☆☆
    読みやすさ:☆☆☆

  • 以前は左翼革命組織の一員だった新米警部補、二条実房の元に、組織時代の友人我妻が恋人を殺したと自首してくる。その被害者はかつては二条の恋人であった。
    自首して素直に自供しているように見えるが、なぜ殺したのか動機に納得がいかない二条は、その嘘を突き崩そうとする。二重三重に隠されたその動機とは…
    対立する左翼組織に属する恋人どうしと、警官となった元カレという三人が被害者、犯人、捜査官として対峙する。序盤はちょっとクセのある文体と、純然たるホワイダニットの細かい捜査や取調室の攻防でなかなか読み進めなかったが、ラストのカタストロフには驚いた。

  • 時代背景的に当初はイマイチのめり込めなかったものの、それを乗り越えればストーリー的にも、ミステリー的にも面白かったです。

  • 天帝の準レギュラー二条警視正がまだ新人の頃の物語。
    極左過激派が活発に活動する時代が舞台。極左活動家であるかつての友人が、二条のもとに、恋人を殺したと自首してくる。その恋人とは、二条のかつての恋人でもあった。時間制限がある中で、彼の殺人の動機を探るべく二条たちは奔走するが、その動機は二重三重に隠されている。そして、二条は自分自身が、秘密の鍵を握ることに気づいていく。
    これまで、フーダニットにこだわってきた作者が挑む、伏線と論理を巧みに使った上質のホワイダニット。そして、取調室の心理的攻防を丁寧に描いたスリリングな警察小説でもある。
    物語と文章の美しさは相変わらず。まだ若い二条さんの信念・心情を茶化すことなく描き、またパズルよりも物語性を重視したまほろ作品の中でも異色の作品。こんな作品も書けるのかと思うと、まほろの今後の可能性にますます期待してしまう。傑作。

  • 読みにくかった…

  • おもしろい。これはおもしろい。

  • いきなり警察の隠語が会話の中にでてきて戸惑いがあった。しかし、読んでいくうちに自然と違和感無く、また展開での主人公とその友人(犯罪者)の取り調べのやり取りに面白さがわく。最後の驚くような結末には、意外性と唸る面白さの二面性があった。

  • 普通の世界?と思ったけど,相変わらずのまほろ世界.とはいえ,そんなに色濃くはないかも.

  • まほろらしくない、端正な警察小説ですが、しかし終盤に至る物語はまほろらしい。

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著者プロフィール

東京大学卒。リヨン第三大学法学部第三段階専攻修士課程修了。元警察官僚。2007年『天帝のはしたなき果実』でデビュー。以後続く「天帝シリーズ」は、高校生、大学生を中心に熱狂的なファンを獲得。他著作に『絶海ジェイル』『背徳のぐるりよざ』『その孤島の名は、虚』など。

「2022年 『老警』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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