身も心も (テーマ競作小説「死様」)

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 63
レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334927646

作品紹介・あらすじ

突然に妻を失って、生前ありがとうの言葉ひとつかけてやれなかったことが悔やまれる男。老人クラブの絵画同好会で知り合った女性は、親身に彼の話を聞いてくれた。しかし、彼女自身には、抱えきれないものがあった…。

感想・レビュー・書評

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  • 情報誌ぴあで編集長として活躍ののち作家となった盛田隆二氏の作品「身も心も」を読了。

     親はとっくに後期高齢者、自分もいい年になってきたので、老いた男の人生の最終コーナーを回った後の生きざまについて書いた本書を手にしてみた。先輩はますますいい歳になり、一緒に仕事をした後輩が40代,50代となってきているいま、まだまだ自分では若いつもりではいるが少しばかり最終コーナーを回ってからの暮らしやそのための準備たとえばエンディングノートをどうしようとかふと考える時間が最近ある。

     本書では75歳になり妻をなくしてがっくりしていた男が、人生最後に愛することになる女性に出会い、力を得て暮らし始めるのだが病に倒れてしまう。だが介護を受ける状態になり自分の記憶までまだらになり自分自身の人生が全く意味のないものであったような気持になってしまうような恐怖の中、それでも支えてくれる老いた恋人に死線の手前にいながらも少しばかり救われる主人公が描かれている。

     この分を書き出してから病に苛まれている知り合い、友人もいる中人生最終コーナーを回ったなどということを堂々と言い放つ事自体が失礼なことかもしれないとも思ったが、正直最近やもめ暮らしを続けていると今まだ見えぬゴールラインがいつ見えるときがくるのだろう、見えそうになった時俺はどうしているのだろうというぼんやりとした不安に襲われることもあるのが正直なところだ。生来の楽天家ゆえなんとかなるさと強がりを言っているが心の奥底には少々ビビっている自分が潜んでいるのがよくわかる。

     そしてエンディングへのぼんやりとした不安だけでなく、自分がいかに至らなかった人間かということが過去の自分を振り返る時間が増えるとともに重く自分にのしかかって来ていることももう一つの悩みだろうか。

     この本では主人公が自分の人生を振り返り亡き妻にたいしてのコミュニケーションのいたらなさについての懺悔の気持ちや、本人の視点から描かれた自分がぼけていく様子、体が動かなくなる様子がなまなましく描かれており、老いた人間が直面する現実を今一度見せつけらえた気がして正直楽しくはなかったが少しばかりいい反省をする時間を持つことができた。

    そんな人生の終わりに一瞬一瞬を大事に生きることの大事さを描いた作品を読むBGMに選んだのがRC策セッションの”ラプソディ”。いまだにグッとくる歌がたくさん収められています。
    https://www.youtube.com/watch?v=I0aFHzzPd8Q

  • 「死様」という競作テーマにふさわしい老人の晩年の話。妻を失った男の新たな恋愛に対する家族の無理解や周囲の目などがリアリティをもって描かれている。また、主人公が脳梗塞に見舞われたときの感覚も、経験がないから本当のところはよくわからないが、とても生々しく感じられる。
    主人公のように、人生の晩年に新たな恋をすることは、生きる活力の元となってその人の人生を輝かせるのだろうか。それとも、生への未練や執着につながって悔しさの中で最期のときを迎えることにつながるのだろうか。

  • <もし幸子さんを忘れたら、やさしいおばあさんが幸子さん>
    できないことだらけになったときの、しあわせを見つけるチカラの強いこと。

  • 盛田隆二さんの作品は、心に染みる。
    丁寧に描かれる主人公の心の襞に、いつも自分を重ねてシンクロさせられてしまう

    終焉が近づいたとき、人生の記憶が涙と共にこぼれ落ちていくとしたら、自分がもぎ取られていくような不安と孤独感を感じるだろうと思う

    残された時間を大切に生き、人を愛し、愛されることの豊かさと暖かさはそれすら包み込んでいくという救い

    最後の瞬間まで生きることへの愛おしさ、慈しみを感じながら、静かに寄り添う愛と共に人生の終焉を迎えたいと考えずにはいられない

    盛田隆二さんの小説はとても好きです。

  • 七十五歳礼二郎と六十五歳幸子の老いらくの恋。
    途中まで身内を想像して落ち着かない気持ちだったけど、最後はボロ泣き。
    人は誰でも老いていく。
    もし自分が惚けてしまっても、変わらずに愛情を持って接してくれる相手に出会えたら、涙がでるほど幸せなんだなあと思った。

  • 最初は「高齢者のよくある恋愛物か」と思ってたけど、主人公が倒れたり痴呆が忍び寄ってきたりと最後グイグイ読ませる。
    ただ、主軸がやっぱり「高齢者のよくある恋愛物」なのが残念。何の取り柄も無い高齢男性がみんなのマドンナ(しかも若い)に惚れられちゃったり、その人が尽くしてくれたり・・・都合よすぎー!!

  • 【身も心も】 盛田隆二さん

    突然妻に先立たれ礼二郎は無気力になっていた。
    家業は既に息子に譲っている。こんなに早く、あっけなく妻が逝ってしまうとは思ってもいなかった。そして妻が生きている間に何一つ優しい言葉をかけてやれなかったコトを今は激しく後悔していた。無気力になった父を案じた息子夫婦は、文化センターへ行く事を勧め、礼二郎は老人クラブの絵画同好会「光彩会」へ入会するコトになった。その「光彩会」で礼二郎は岩崎幸子という65歳の女性と知り合う。
    妻に申し訳ないと思いつつも幸子に魅かれ始める礼二郎。そして幸子も礼二郎に安らぎを感じる。幸子の生い立ちを聞いた礼二郎は同情を寄せ、いつでも力になると励ますが彼自身が脳梗塞で倒れてしまう。一命は取り留めたものの障害が残り、やがては痴呆も始まってきた。入院中の礼二郎の世話をする幸子であるが、礼二郎は幸子との記憶が所々欠落していくコトに恐れおののく。



    「死様」がテーマの本。「明日の記憶」に通じるモノがありました。自分自身、物忘れが増えたような気はするけど、まだまだ痴呆なんて遥か未来の出来事で、あまり考える事も無いけれど、数日前に写した写真を見て、その写真に写っている出来事を全然覚えていないというのはすごい「恐怖」だと思う。
    そして、身に覚えのないコトが毎日少しずつ増えてきたら・・・
    自分自身の中から少しずつ自分が消滅していく恐怖。。
    まるで真綿で首を絞められて行くような感じなんじゃないかな。。
    そういう恐怖をいずれは自分も体験するのだろうか。。。
    そういうコトを考えさせられました。

     

  • 主人公・道久礼二郎は、75歳。
    妻を亡くし、後悔の毎日…。
    ボーっと家で過ごす義父を心配した息子の嫁が、老人クラブに申し込み、絵画同好会に入ることになります。

    そこで出会った、幸子との恋愛。
    息子夫婦としては、賛成できかねるものもあり…。
    また、礼二郎自身が倒れたりと、「老い」に向かっていく不安がひたひたと襲ってきます。

    一人暮らしの義母や両親と重なり、身につまされる思いでした。
    一分一秒を笑顔で過ごして欲しい……。
    時間に限りがあることを突き付けられた気がします。

  • 一昨年96歳で亡くなった祖母は、晩年物忘れがひどかった。さっき食事をしたばかりなのに、まだ食べていないという。それでいて、昔のことはよく覚えていて、女学校で習った英単語(月や曜日など)をすらすらと言ったりして、家族は驚いたものだった。祖母本人も驚いていたが。

    祖母には、この本の礼二郎のように、記憶を失っていくことに怯える様子はなかった。ごく自然に記憶を失い、そのことに本人は気付いてもいなかったように思う。なので、礼二郎が断片的に記憶を失っていくことに苦しんでいる様には違和感を覚えた。

    いや、この本は、記憶を失っていく過程を正確に示すことが目的ではなく、まだ若い、記憶を失っていない読者に向けて、一分一秒を大切に生きることを訴えているのだろう。そして、愛する人を大切にすることも。

  •  恐ろしい話だった。初めは老いらくの恋の話かあ、自分ももうすぐこんな感じかなあ、自分はならないだろうなあとか思って読んでいた。そしたら、主人公がぼけていく様子、体が動かなくなる様子が本人の視点から描かれていて、こんな感じかと思うと怖くなった。ぼけるのも体が不自由になるのも自分にも大いにありそうで実に怖い。

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