- Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334927813
作品紹介・あらすじ
「全方向土下座外交」で生き延びた弱小勢力もついに運の尽きが。起死回生はあるのか(見えすぎた物見)。落城必至。強大な水軍に狙われた城に籠もる鯨取りの親方が仕掛けた血煙巻き上がる大反撃とは(鯨のくる城)。まずは奴に城を取らせる。そして俺は国を取る。奇謀の士が仕組んだ驚愕の策とは(城を噛ませた男)。のるか、そるか。極限状態で「それぞれの戦い」に挑む人間の姿を熱く描いた渾身作。
感想・レビュー・書評
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短編集。後北条氏に仕える佐野家筆頭家老の天徳寺宝衍、小田原合戦の最中の西伊豆衆高橋丹波守、秀吉の北条攻めをめぐる希代の謀略家・真田昌幸、武田家滅亡後の今福丹波守・善十郎父子、後北条氏及び豊臣と徳川家康に仕えた外交僧板部岡 江雪斎。
それぞれ悪く言えば汚いが、また別な一面からみれば、先を読む力に溢れ、力強く生き抜いた隠れた英雄といえる。素晴らしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
勇気あるお話し、切ないお話も、怪奇の一歩手前の恐ろしいお話もあって、読み応えがありました。
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戦国モノ短編集。なんとも言われない、救いようのない結末のいつもの伊東節炸裂なんだけど、短編だけに、さーって次にいけるのはいい。
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司馬遼太郎の小説がイマイチぴんとこなかったんだけど、これは面白かった。
「見えすぎた物見」は、そういう在り方とどうしようもない因果として。「鯨のくる城」は、痛快な物語として。「椿の咲く寺」は並にもまれながらも信念を貫く女性の姿として。 -
戦国時代を生きる人の意志と決断がギュッと描かれていて読みごたえがあった。
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戦国時代に生きた5人それぞれの短編集。①上杉、北条に挟まれ、常に脅かされる下野国家老天徳寺法衍の、国の存続をかけた立ち回り②小田原に攻め込まれ、豊臣水軍に立ち向かう鯨取り、高橋丹波守政信の最後の反撃③戦国の世を立ち回るためにあらゆる知略を駆使した真田幸村の父昌幸の秘策④仏門に入るも一族の徳川への復讐に巻き込まれる妙慧尼の生涯⑤北条、豊臣、徳川に仕え、関ヶ原では小早川秀秋を説得した板部岡江雪斎の「いざ」という時の切れ味。伊東潤の作品を読むと歴史が好きになること請け合い。実に読みごたえがある。
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ちょっと伊藤潤のファンになった。短編でもこれだけ読ませる。「巨鯨の海」を思わせる「鯨のくる城」が一番迫力があった。
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戦国時代を舞台にした5篇の短篇小説集。
今までなんで読まなかったんだ、と後悔するぐらい面白かった!
いずれも主人公は今まであまりスポットライトがあたらなかったマイナーな人物がほとんど(有名なのは真田昌幸ぐらい)。
過酷な戦国時代を生き延びるため、知略謀略を駆使する武将たちの活躍を見て来たかのように活写する作者の剛腕に、感服しました。
「見えすぎた物見」
全方向土下座外交で生き延びてきた弱小勢力の佐野氏は、その先を見通す能力ゆえに滅びるという皮肉なお話。
まずこの最初の短編でグワーッとダイナミックな戦国絵巻に惹きこまれてしまいます。
え、こんな熱くて濃いネタを短編に使っていいの?長編小説でなくて?
なんて贅沢な・・・序盤からこの勢いだと後の話はどんだけ面白いの…とわくわくしながら次のまた違う熱いかたまりのお話へと、ページをめくる手が止まりません。
「鯨のくる城」
これも面白かった。
伊豆の海で捕鯨をする小大名が、秀吉勢の水軍に仕掛けた大反撃。
時代に翻弄されず飄々と生きる漁師達のたくましさは痛快。
この話が一番面白かったかも。
「城を噛ませた男」
武勲を立てたいがために謀略をはかる真田昌幸。
爽快な話の後に、かなり冷徹で後味の悪い話が来たので身がぐっと引き締まりました。
野心に囚われ功を焦る者と同様、自分も野心に囚われていると自覚する昌幸には、単なるダーティーな暗い話に終わらせない力強さを感じました。
また、この昌幸の謀略は史実だと自然に思いこんで読んだのですが、後で作者の説だと知って驚きました。
他の短編も全てそうですが、史料がほとんど残っていないのにもかかわらず、史実の隙間を奇想で膨らませるその想像力は凄いと思います。
「椿の咲く寺」
家康によって滅ぼされた今福家の娘・初音は、出家することによって命は助かった。
家族の菩提を弔うつもりでいたがそこに父と兄が現れ・・・というお話。
尼僧が主役なので今までのお話とは異なる雰囲気でしたが、これもまた人間の哀しさが横溢する見事なストーリーを魅せてくれました。
「江雪左文字」
北条・徳川に仕え、戦国の世をうまく渡り歩いた板部岡江雪斎の話。
関ヶ原の合戦と子ども時代の喧嘩を絡めて展開するという、見せ方にちょっとした心憎い工夫があってうまいなあと思いました。
この演出によって、生きるか死ぬかの時代に生きる江雪の命をかけた人生がより際立って見えてくる気がします。
最後にふさわしい、淡々としながらもどこか明るさも感じられるたたずまいのお話でした。 -
史実をベースにした短編集。どこまでが史実なのかわからないけど。時代劇で群像劇的な展開は面白かった。
それにしても、時代背景や登場人物の関係性などを把握するのが難しくて、読むのに多少時間がかかった。