怪談

  • 光文社
3.29
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感想 : 105
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334927936

作品紹介・あらすじ

鮮やかな論理と、その論理から溢れ滲み出す怪異。小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの『怪談』を、柳広司が現代の物語として描き直した異色のミステリー。

感想・レビュー・書評

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  •  ラフカディオ・ハーンの著作に着想を得た、ミステリー短編集。「雪おんな」「ろくろ首」「むじな」「食人鬼」「鏡と鐘」「耳なし芳一」の6編を収録。


     図書館本。
     全体に消化不良な感じ。推理と怪談が上手く噛み合っていない気がする。
     中盤くらいまではまあ楽しいのだけれど、終盤でガッカリなものが多い。終盤でニヤリとするのは「雪おんな」くらいかなあ。
     時々原作を彷彿とさせるフレーズが入ってくることがあるが、時代錯誤な感じが漂うものも。無理に原作を持ち込まなくても良いんじゃないかなあ。


    「雪おんな」
     蓑輪がパーティー会場で見かけたコンパニオン。地味で影の薄い彼女が、なぜか蓑輪に深い印象を残した。後日、彼女から会って話したいとの誘いが。

     面白いひねり方をしている作品。元の話を全く知らない方は、原作を先に読んでおいた方が。
     ただ、話全体としては、もうちょっと何か……! 何か一味足りないというか。短編にありがちな掘り下げ不足を感じてしまう。


    「ろくろ首」
     外科医の磯貝は旅先で任意同行を求められ、警察署に留め置かれてしまう。昨日までの勤務先の院長が失踪したというのだが、実は磯貝には心当たりが……。

     悪趣味系の話で先行きもまあ見当は付くのだが、そこそこ面白く読んでいた。
     が、刑事が磯貝に声を掛けた理由が興ざめ。んなことで職質! 根拠レス! 事件を担当している刑事ならまだしも、管轄外の人じゃなあ。最後でガックリきた……。
     原作はほぼ最後の方にしか関わってこないし、知らなくてもまあ問題ないと思う。


    「むじな」
     経理部主任の赤坂は深夜の帰宅途中、DV夫から逃げてきたという女性と出会う。女性に頼まれ、近くのマンションにある彼女の部屋の様子を見に行くと……。

     かなり原作に沿った展開の話。
     ちょっとご都合主義というか、設定が強引というか。とはいえ、のっぺらぼうを出すわけないし、その辺は上手く持っていくものだなあ、と。
     坂の近くにある店が「紀の国屋スーパー」というネタには思わず笑ってしまった。無理に出してこなくても(笑)。


    「食人鬼」
     通報を受け、不審な冷凍コンテナを調べる2人の警察官。そこに貯蔵されていたのは絶滅危惧種の肉や卵……。

     まあタイトルからお察しの、悪趣味な内容。原作の面目丸潰れというか。
     しかし2010年にもなって、ダチョウの卵を食用にしていることを知らずにゲテモノ扱いする警察官ってどうなの?
     この作品ではもう1作、有名な文学作品が引き合いに出されているが、読んでいなくても問題ない……たぶん。私もいずれ読もうとは思っているのだけど、戯曲を読むのが億劫で……。


    「鏡と鐘」
     頻繁に届く宅配の荷物に悩まされる初老の婦人。彼女の名を騙って支援物資を募集するホームページが、削除依頼を出しても何度も開設されるのだ。我慢の限界に達した彼女は探偵を雇うことに……。

     ◯◯と思わせて実は……と、ちょっとひねりの利いた話。見事に引っかかってしまった~! そうだよね、結構ミエミエだったもんね。
     で、スッキリ終わるかと思ったら。ラストのあれ、必要なのだろうか??? 個人的には蛇足感がすごい。


    「耳なし芳一」
     ロックバンドのボーカル・ヨシカズは謎の執事(?)に誘われ、謎のお屋敷で歌を披露する。このことを他言せずに6日間歌い続ければ、望むものが手に入るというのだが……?

     歌詞がすごい(笑)。サラソウジュ!!!ハナノイロ!!! ちゃんとコーラス付き。ロックだぜ……。
     書き下ろしでオマケ的なものだろうか? ミステリーもホラーもフレーバー程度。
     原作が有名なだけに、ここまで原型を残されると現実離れがひどくてムズムズする。

  • 2014.6.14

    小泉八雲 怪談 の現代版アレンジ

    どれも面白かった!
    ゾクリヒヤリニヤリでウヒャーってなる 笑

    •雪おんな
    サイコパス⁉悪の教典 思い出した…こわっ
    •むじな
    現代だとこうなるのか…イヤだな
    •ろくろ首
    ホラーだよホラー‼ ゾっとした
    •食人鬼
    …読んでキモチワルくなった…うへっ
    •鏡と鐘
    コレだけ原作を知らないのでなんともだけど、娘が怖いよ〜
    •耳なし芳一
    巡り巡っても 人ならぬ意志が動いたようで…ギャってなった

    今夜は怖い夢 見そうだ…泣

  • ジョーカー・ゲームではまった柳広司さん。
    図書館で見つけた本を読んでみました。

    小泉八雲の「怪談」に対するオマージュとして書かれた短編集。
    雪おんな、ろくろ首、むじな、食人鬼、鏡と鐘、耳なし芳一、が現代風にアレンジされていますが、そのまんまではなく、ひとひねりされていて、そう来たか!という驚きがありました。

    例えば雪おんな。
    主人公はパーティで出会ったコンパニオンの一人が、なぜか気になります。とりたてて美人でもない、目立つところのない彼女、真っ白な肌のその女性になぜか雪景色が重なります。
    どうして惹かれるのかも分からないまま、主人公とその女性は付き合いを始めます。
    彼女に惹かれる理由が分かった時、主人公がとった行動は……。

    「雪おんな」とは相手の女性ではなく、自分であったというオチは、なるほど!と思いました。

    さらりと読める短編集です。

  • おもしろかった。
    やはり柳さんは外れないなあ。
    けど、ちょっと手にするのを躊躇したのは表紙の色合いが気持ち悪かったから。
    まあ、「怪談」とゆー題名にはぴったりだったが。
    なんだろう、緑と朱色ってなんかうぎゃーって感じ。
    そして一番ぞぞっとしたのは「雪女」かな。
    題名からして女性の方になにかあるのか、と思いつつよんでたので、
    おおっ、そうくるかあっと。
    人ほどオソロシイものはない。
    あ、あと鏡、も。これも、そうくるかあって思った。
    おもしろかったのは「耳なし芳一」
    名前からしてそのまんまなとこが笑えた。
    設定をそのまま現代にもってきてて、一番ハーンの怪談っぽい。
    彼はなんとか逃げ切れた感じだけど、これでおわりじゃないよ、的な
    終りがちょっと怖くておもしろい。

    柳さんは、こーゆーリメイク的なものうまいよなー。
    あーでも結城少佐もまた読みたいー。

  • 雪おんな、ろくろ首、耳なし芳一…。鮮やかな論理とその論理から溢れ滲み出す怪異。小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの「怪談」を、現代の物語として描き直した異色のミステリー。

    さすがに柳広司の手によるだけあって、辻褄があった短編に仕上がっているとは思うけど、小泉八雲の「KWAIDAN」にあった怖さがないのが残念だった。換骨奪胎には違いないが、出来上がったのは「怪談」ではなくやはり「異色ミステリー」というのが正解かと。
    (C)

  • 馴染み深いラフカディオ・ハーンの怪談を、柳さんが現代人の心の闇といった方面からアレンジ。 それぞれの素材からどんな新しい話を引き出してくれるのかなぁ、という興味で最後まで読みました。(*^_^*)

    「雪おんな」「ろくろ首」「むじな」「食人鬼」「鏡と鐘」「耳なし芳一」。

    原作は、もちろん日本に伝わる異形のものたちの怖いお話、なのだけど、柳さんの捉え方は人の心の不思議&黒い思いがメイン。だから、ホラーというよりは推理もの、という色合いの方が強い。

    でも、その中で、どんなに小賢しく策略を巡らして悪事を企んでも、わけのわからないもの、死んだ人の思いなどでどんでん返しをくらう怖ろしさ、という話もいくつかあり、その方が私は好きでした。

    「鐘と鏡」は、原作では女の思いの凝り固まったもの、としての鏡であり、また、その鏡を溶かして作った
    鐘を突き破る者は金銀財宝を授かる、とのことで、今度は人の欲を引き出す存在になってしまっていたのが、柳さんは、マンションのチャイムを本来ならば爽やかな鐘の音にすることによって、招かれざる客の迷惑感を主人公や読者の頭の中にわんわんと鳴り響かせるところが巧みだなぁ、と。しかも、現代の人間に一番怖いもの(それゆえに一番つけ込みやすい弱点ともなるけど)、自らの老いなのではという提示にも頷かせられた。
    ただ、話に鏡を投げ込む流れはかなり強引だったかな・・・。

    一番好きなのは、「ろくろ首」でした。
    最後のひと言で、すっと瞳孔が開くような恐ろしさが味わえたから・・・・。

  • 切れ味鋭い柳広司らしい作品で、面白かった。ハーンの「怪談」が元ネタではあるけれど、かなりミステリー寄り。合理的な解釈とホラー色との兼ね合いがいい塩梅だ。献辞にある通り、ハーンへの敬意が感じられるところも良い。こういうさらっと読めるがひねりのあるものって好きだなあ。

  • 柳広司の新刊ならば読まないと。
    ラフカディオ・ハーンの「怪談」を現代のアレンジ。
    「怪談」だからホラーが本当なんだろうけど、読んだ感触はサスペンスかなぁ。
    もうひと押し欲しかった。

  • こういう感じ、好き。

    小泉八雲の『怪談』の話を下敷きに、現代のミステリーというかホラーというか、とにかく怪しい話を仕立てた短編集。

    ミステリーの魅力の中でも最後の腑に落ちるところより、謎が深まってゾゾッとするところを味わいたい人向け。

  • 小泉八雲の『怪談』を換骨奪胎し舞台を現代にしているが、今ひとつパンチが足りない。一瞬、ゾクリとさせるような感じはあるものの、振り返ってみても怖さが今ひとつでピンと来ない。アイディア自体は悪くないが自分とは合わなかった。

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著者プロフィール

一九六七年生まれ。二〇〇一年『贋作『坊っちゃん』殺人事件』で第十二回朝日新人文学賞受賞。〇八年に刊行した『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞。他の著書に『象は忘れない』『風神雷神』『二度読んだ本を三度読む』『太平洋食堂』『アンブレイカブル』などがある。

「2022年 『はじまりの島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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