トライアウト

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334927981

作品紹介・あらすじ

「これまでは他人と競争するためにやってきた-これからは自分との競争をする」父親の名は明かさないシングルマザーと戦力外通告されたプロ野球選手、二人の生きがいで紡がれる感動長編。

感想・レビュー・書評

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  • 最初主人公の「可南子」がちょっと好きになれないなぁと…そんな読み始め(。-_-。)

    前情報なしで読んだので、この作品トライアウトや野球の話しだと思ってたんです。
    藤岡さんがスポーツ物?
    ちょっと失敗したかしら?なんてね(*_*)


    いや〜泣きました。゚(゚´ω`゚)゚。
    小学二年の息子「考太」に泣かされました!
    少年野球の紅白戦で泣かされてしまいました!

    はい!この場面だけで☆4つです!


  • いろいろなテーマが盛り込まれているけど、
    その中の一つである(だろう)
    戦力外通告を受けた野球選手の発言が、
    なかなか興味深い。

    野球しかやってこなかった、
    野球だけやることを許された人物が、
    人生の岐路に立った時、
    何を考え、どう振る舞うのか。

    こういう人生もあるんだなぁと
    しみじみ感じた。

  • 新聞社に勤める久平可南子は、八年前に「父親はいない」男の子を出産した。
    その半年以上前、可南子は写真週刊誌に深夜、その後八百長疑惑で逮捕された
    プロ野球選手の片岡信二と一緒に居る所を写真に撮られた。
    周りの人間は、子供の父親は片岡だと信じている…。
    新聞社でも産休後何度も何度も部署を異動になるなど冷遇されている。
    しかし、辞めると負けだと思い、頑なに会社に居続けている可南子。
    不規則な勤務により、息子孝太は仙台の実家に預けたままだ。
    突然の運動部への異動で取材に行ったトライアウトで一人の投手が気になった。
    深澤翔介…甲子園の優勝投手だった…。

    新聞社勤務の女性だったり、高校野球の優勝投手でプロ野球選手であったりと、
    一見華やかな世界に身を置いてる人の様に見えますが、
    しかし、実家に子供を預け、必死に働いている女性と
    「戦力外通告」を突き付けられ、トライアウトも駄目で崖っぷちにいる男性です。
    二人のどん底から這い上がろうとする様を丁寧に描いています。
    未婚の母・可南子は頑なで不器用で自尊心が強く肩肘張った生き方しか出来ない。
    家族にも、周囲にも心を開けないでいるのですが、取材で知り合った深澤の
    武骨な言葉だけど、とっても深く温かい言葉や俺はまだやれるという生き様や、
    全力で生きる為に終わりがあると言う深澤の言葉で可南子徐々に変わってゆく。
    今迄の自分自身の呪縛から解き放たれ再生されていく。

    ひとりひとりが、懸命に生きる思いが丁寧に描かれている。
    そういう人間の切実な思いがしつかりと伝わってくる。それがとっても良かった。
    可南子の家族が良かったなぁ♪
    父親の謙二の一本筋の通った姿も一家の大黒柱だなぁって良かったし、
    妹の柚奈もおちゃらけていてそうで、ほっこりさせてくれた。
    何より息子の孝太の一生懸命さが愛おしい(*´˘`*)♡
    母が居ない事で、少年野球で力があるのに冷遇され珠拾いしかさせて貰ってない事を隠してる。
    明るく真っすぐに育ってて、涙が零れそうな嘘でした。
    これからの可南子と深澤の関係も気になりましたが、
    深澤っていう素晴らしい見本の選手が居るから孝太素晴らしい選手になりそうです。

    本当に大事なものは何か?
    他人と競争するのではなく、自分と競争するために生きて行けると良いな。

  • 初めて読む作家さん。
    新聞の書評に「清々しい作品」とあったがまさにそう。
    野球を知らないわたしでもまったく気にならず、引き込まれて読めた。
    以前読んだ、同じように野球がキーポイントとなる伊集院静さんの「受け月」は、わたしが野球が好きならおもしろく読めただろうなと感じた。
    こういう違いっておもしろい。

    下手に恋愛に発展することなく、でも、正しすぎず爽やかすぎず、素直に引き込まれて読める作品。

  • 「トライアウト」。プロ野球では、戦力外通告を受けた選手が新天地を求めて、まさに選手生命を掛けて挑む機会、「拾う神あれば捨てる神あり」。タイトルは単にプロ野球のイベントを示すのではなく、誰の人生にも起こり得る「挫折と復活」のメタファー。
    たとえトライアウトで女神が微笑まずとも、生きている限り人生は続いていく。そうそう上手く事が運ぶわけがない。毎日それこそコツコツと強く生きていくことで、復活の目が出るのを待つのだ。俯くのではなく、顔をあげて上を向く、作中でトライアウトに臨んだ深澤が天を見上げたように。
    この作品からは、そんなメッセージを受けました。

  • 読んで良かった。泣いた。

  • 一気に読み終わりました。前向きに生きようという気持ちになります。

  • 誰よりも考太が強く、健気で、真っ直ぐで、心から応援したくなりました。担任の先生も出番は少なかったけど良かったな♪可南子の頑張りも理解できるけど、全ては聞き分けの良い子に育った考太だからこそ許されたことではないのかと。そしてそう育てたのは可南子ではなく、健二であり、佳代であり、柚奈ではなかったのかと思われ。反発するのはいいのだけど、そこに対する彼女の思いはあまり触れられず釈然としないものも感じました。認めてほしかった…それは分かるのだけど。隠すのはいいけど、少し独りよがりに感じてしまったのでした。

  • 女性の生き方を鮮やかに描き出す藤岡陽子だが、珍しくプロ野球という男くさい世界を絡ませて、未婚の母にとっての子供との関係や実家との関係、そして仕事と家族というテーマを描いている。
    プロ野球選手として崖っぷちに立つ男が女性新聞記者である主人公に対してどういう気持ちでいるのか、なぜ主人公をここまでサポートするのかという点が最後まで曖昧なままなのが気にかかるが、主人公の葛藤や決断という心の動きを丁寧に追っていて、全体としては分かりやすい。
    彼らの10年後という続編を読んでみたい。

  • 読み終わって、頑張る気力と清々しい気持ちになれる本でした。
    プロ野球の世界の戦力外通告を受けた選手が最後のチャンスを獲得するためのトライアウト。現実はなかなか厳しい。
    そんな選手とシングルマザーの新聞記者を中心に物語は進みます。
    出来すぎなストーリーですが、読んでいて面白いし、生きる希望をもらえます。生涯現役というセリフも良かった。

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著者プロフィール

藤岡 陽子(ふじおか ようこ)
1971年、京都市生まれの小説家。同志社大学文学部卒業後、報知新聞社にスポーツ記者としての勤務を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学。帰国後に塾講師や法律事務所勤務をしつつ、大阪文学学校に通い、小説を書き始める。この時期、慈恵看護専門学校を卒業し、看護師資格も取得している。
2006年「結い言」で第40回北日本文学賞選奨を受賞。2009年『いつまでも白い羽根』でデビュー。看護学校を舞台にした代表作、『いつまでも白い羽根』は2018年にテレビドラマ化された。

藤岡陽子の作品

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