ブラック・アゲート

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 222
レビュー : 48
  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334928063

作品紹介・あらすじ

日本各地で猛威を振るう未知種のアゲート蜂。人間に寄生し、羽化する際に命を奪うことで人々に恐れられていた。瀬戸内海の小島でもアゲート蜂が発見され、病院で働く事務長の暁生は、娘・陽菜の体内にこの寄生蜂の幼虫が棲息していることを知る。幼虫を確実に殺す薬はない。未認可の新薬を扱っている本土の病院を教えられた暁生は、娘とともに新薬を求めて島を出ようとするが、目の前に大きな壁が立ちはだかる…。暁生親子の運命はいかに。

感想・レビュー・書評

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  • 『華竜の宮』で私の心を鷲づかみにした上田早夕里さんの新刊。
    『華竜~』は壮大なスケールの物語でしたが、この作品は規模の大きな事象を扱いつつもも身近な問題として深く考えさせられる、そんな作品でした。

    人に寄生しやがては死に至らしめる毒蜂、「アゲート蜂」。
    その蜂に刺されることで引き起こされる諸症状「蜂症」が蔓延した日本を舞台に、ある島で暮らす蜂症を発症した少女とその家族が新薬を求めて現実と戦う物語。
    帯には「近未来バイオ・サスペンス」と書かれていますが、そういう趣はあまりありません。「蜂による感染の恐怖」よりも「人間の社会システムの脆さ」に焦点を当てているので、割と身近な問題を描いている作品だと思いました。

    新種の蜂がもたらす人類絶滅の恐怖という大規模な話と、孤独死やホームレスの問題など、弱者が切り捨てられる社会の問題をうまく繋げて描いており、まるで今の現実が向かおうとしている未来への警鐘のように感じられます。
    毒蜂の蔓延という割と突拍子もない設定ですが、とても現実味のある話でした。

    蜂よりも、患者家族を非情な手段で追い詰めていく村綺という男の存在がとても恐ろしかったです。
    村綺にも同情すべき過去があるのですが、それでもやっぱり彼のようなやり方には嫌悪感を抱きます。でも、自分もそういう立場になったら彼のような選択をしそうな気がして、そう考えるとすごくすごく怖いのです。

    今こういう作品を読むと、どうしても昨年の大地震や今後起こるかもしれない大災害のことを考えてしまいます。
    そういう非常事態に直面したとき、自分は果たしてどういう人間でいられるのか?そう問いかけられているような気がしました。

  • 人間を宿主とするようになり、急速に世界各地で大繁殖し始めた寄生蜂、アゲート蜂。体内で卵が孵化し体を食い破って羽化するまでの「蜂症」=AWSには有効な治療法がなく、確実に無惨な最期に至る。
    医療施設も遺体を焼く施設もパンクし、蜂や患者による被害拡大を防ぐためなら射殺も合法とされる中、人々は蜂に怯え、発症を恐れることしか出来ない状況にあった。

    離島ゆえにアゲート蜂の脅威から免れていた鰆見島で、ついに患者が確認される。
    その中のひとりは、島内唯一の病院に勤務する暁生の愛娘だった。
    治療のためには、島の封鎖にあたるAWS対策班の監視から逃れ、島を脱出し、本土の病院に辿り着かなければならない…


    『華竜の宮』以来の大好きな作家、上田早夕里さん。
    彼女の作品には、ヒトに害を為すものは悪という考え方とは対極にある、生あるものへの等しい愛情が流れていると感じる。
    己が生きるために他者を食べる/殺す事を受け入れる。けれど、人間の愛情、弱さ、利害に囚われる事からも目を背けない。

    ちょっと似た設定の物語はたくさんあるけれど、主役が圧倒的にいいヒトで、人類の勝利〜とか悪い為政者を倒した〜とか、そんな決着じゃないところが、良かった。

  • 最初から最後まで一気に読める面白さはあったんだけど、散らかったまま終わったようななんともいえない読後感。
    明確な解決策がないから間違えながらも諦めずに社会構造全体を変えていかなきゃいけないんだよ〜という、この系統の話の毎回同じ、落ちつかないオチについまたかよって思ってしまう。

    読み始めは虫繋がりで安生正の生存者ゼロを思い出したんだけれど、全体的にそこまで無茶な方向にはいかず、読み易い分だけ切迫感があまりない。
    後味そこまで悪くないので、バイオサスペンスみたいの読みたいけど、吐くほどエグイのは読みたくない、位の時に丁度いいかなと。

  • 上田早夕里作品初読み。
    極限状態の人間心理と薬品承認問題に感染症対策と盛りだくさんな内容。
    スピーディーな展開で飽きずに読ませていただきました。
    暴走は誰かが食い止めねばならず、必要悪も存在するし、たどり着いた結果が必ずしも救いがあるとも限らない。

  • 上田さんが言いたいことと、
    ナウシカの雰囲気似てる気がする

    自然はただそこにあるだけなのに
    人間は愚かだから
    正しい事を知ろうとせず
    ただ挑もうとする

    この本自体は最後の駆け足感が気になった

    追う側も魅力的だった

  • amazon のレビューもにもあるけど、せっかくの設定が生かし切れていない感じ。結局、逃避行かよ的な。

    本書の状況下で住民の少ない島に2個小隊も部隊を派遣するのは、ちょっと無理があるのではと。

    なんとなく、弱者を見捨てちゃ駄目ですよ的なメッセージがあるような。

  • メッセージ性が強すぎるのはちょっと好みじゃないけど、それでも最後までノンストップで読ませるのはさすが。この設定ならもっと長くしてもいいかも。

  • No.6とジェノサイドと生存者ゼロとアトミックボックスを足して、容赦のない上田早夕里風味に仕上げた逸品・・・我ながら凄まじい感想だ。期待どおりの着地で、面白かった。一気読み。

    SFの名手が、国内を舞台に書いたパンデミックもの。面白くないわけがない。この作者にしては短い物語の中で、もしかしたら治療まで行き着かないんじゃないかと後半やきもき。船上で小さくなる島を振り返り、きっと治療を受けさせてみせる・・・とか誓われたら消化不良だなあ、と思ってたけど、大丈夫でした。

    蜂は都市に適応しただけ。悪意はない。作中で繰り返し語られるテーマだけど、よくわかるだけに怖い。奇しくもエボラやデングやらが感染拡大している昨今、他人事じゃないんだよな・・・。そういう意味ではホラーテイストな物語でもあるのでした。

  • SFっぽさとあり得そうな感じのバランスが良かった。
    私自身がちょっと深刻な病気の疑いアリの時に読んだから、余計に怖かった。世間的にもエボラやらデングやらが取り沙汰されてるので、とても感情移入できると思う。

  • SFのイメージが強い作者だが、本作は離島脱出モノのサスペンス。
    登場人物ひとりひとりが知的で、その行動や思考に共感を覚える。悪役を単なる悪役で終わらせない描写もよかった。

    現実にありそうなリアルな災厄。
    ちょうどブラックライダーを読んだ後で、同じく人間に寄生する虫が重要キーワードだったのが印象的。
    そう、やっぱり一番怖いのは人間なのです、はい。
    割とあっさりとしてて、読みやすい1冊。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。2011年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。同作は「SFが読みたい! 2011年版」国内篇第1位に選ばれ、『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』の各表題作、『華竜の宮』の姉妹編『深紅の碑文』と合わせて《Ocean Chronicleシリーズ》と呼ばれ、読者からの熱い支持を集めている。近著に『妖怪探偵・百目』シリーズ、『薫香のカナピウム』など。

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