ブラック・アゲート

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 239
レビュー : 55
  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334928063

作品紹介・あらすじ

日本各地で猛威を振るう未知種のアゲート蜂。人間に寄生し、羽化する際に命を奪うことで人々に恐れられていた。瀬戸内海の小島でもアゲート蜂が発見され、病院で働く事務長の暁生は、娘・陽菜の体内にこの寄生蜂の幼虫が棲息していることを知る。幼虫を確実に殺す薬はない。未認可の新薬を扱っている本土の病院を教えられた暁生は、娘とともに新薬を求めて島を出ようとするが、目の前に大きな壁が立ちはだかる…。暁生親子の運命はいかに。

感想・レビュー・書評

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  • 『華竜の宮』で私の心を鷲づかみにした上田早夕里さんの新刊。
    『華竜~』は壮大なスケールの物語でしたが、この作品は規模の大きな事象を扱いつつもも身近な問題として深く考えさせられる、そんな作品でした。

    人に寄生しやがては死に至らしめる毒蜂、「アゲート蜂」。
    その蜂に刺されることで引き起こされる諸症状「蜂症」が蔓延した日本を舞台に、ある島で暮らす蜂症を発症した少女とその家族が新薬を求めて現実と戦う物語。
    帯には「近未来バイオ・サスペンス」と書かれていますが、そういう趣はあまりありません。「蜂による感染の恐怖」よりも「人間の社会システムの脆さ」に焦点を当てているので、割と身近な問題を描いている作品だと思いました。

    新種の蜂がもたらす人類絶滅の恐怖という大規模な話と、孤独死やホームレスの問題など、弱者が切り捨てられる社会の問題をうまく繋げて描いており、まるで今の現実が向かおうとしている未来への警鐘のように感じられます。
    毒蜂の蔓延という割と突拍子もない設定ですが、とても現実味のある話でした。

    蜂よりも、患者家族を非情な手段で追い詰めていく村綺という男の存在がとても恐ろしかったです。
    村綺にも同情すべき過去があるのですが、それでもやっぱり彼のようなやり方には嫌悪感を抱きます。でも、自分もそういう立場になったら彼のような選択をしそうな気がして、そう考えるとすごくすごく怖いのです。

    今こういう作品を読むと、どうしても昨年の大地震や今後起こるかもしれない大災害のことを考えてしまいます。
    そういう非常事態に直面したとき、自分は果たしてどういう人間でいられるのか?そう問いかけられているような気がしました。

  • いろいろと提示されるテーマにも、頷くばかり。背中がムズムズしながら楽しめました。

  • サスペンス。SF。ホラー。
    テンポの良いバイオサスペンス。
    主人公と、AWS対策班のリーダー、二人が物語の中心。
    他の登場人物もそれぞれ複雑な立場にあり、自分がこの人の立場だったら…、と考えさせられる。
    今作では蜂が原因でしたが、この種のパニックは将来的な必ず発生するんでしょうね…。などと、想像が膨らむ一冊でした。

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  • 65:上田さんの最新刊。蜂が人体に卵を産みつけ、その孵化に伴って産生される毒素によって人が死に、死体を食い破って新たな蜂が生まれる……という、虫が苦手な私は想像するだけで鳥肌がたつのですが、そんな「アゲート蜂」による災禍に見舞われている日本、という設定でした。蜂を殺虫剤で殺すことはできても、産み付けられた卵を殺すような薬もなく、毒素によって「蜂症」を発症することも止められず、という悲惨な状況下で、行政による有効な対策手段もないまま、日本は大混乱に陥ります。そんな中、アゲート蜂が見つかっていなかった瀬戸内の小島にも、蜂症で亡くなったと思われる人が現れ――。
    アゲート蜂禍と戦う話ではなく、あくまで人と人との対立、立場の相違から来る意見のぶつかり合いを描いた骨太の物語でした。そのため、「蜂は見事に退治されました、めでたしめでたし」とすっきりした終わり方ではないのですが、「華竜の宮」のときもそうであったように、困難に立ち向かう人々の姿に胸を揺さぶられます。

  • パニックものかと思って読み始めたら、なんだよディストピア小説じゃないか。

    たった一種類のハチによって人間社会が恐ろしく変貌している。
    げに恐れるべきは人間。
    逃げろよ逃げろ。

    黒死病の流行った中世ヨーロッパもかくありなん。

  • 人間を宿主とするようになり、急速に世界各地で大繁殖し始めた寄生蜂、アゲート蜂。体内で卵が孵化し体を食い破って羽化するまでの「蜂症」=AWSには有効な治療法がなく、確実に無惨な最期に至る。
    医療施設も遺体を焼く施設もパンクし、蜂や患者による被害拡大を防ぐためなら射殺も合法とされる中、人々は蜂に怯え、発症を恐れることしか出来ない状況にあった。

    離島ゆえにアゲート蜂の脅威から免れていた鰆見島で、ついに患者が確認される。
    その中のひとりは、島内唯一の病院に勤務する暁生の愛娘だった。
    治療のためには、島の封鎖にあたるAWS対策班の監視から逃れ、島を脱出し、本土の病院に辿り着かなければならない…


    『華竜の宮』以来の大好きな作家、上田早夕里さん。
    彼女の作品には、ヒトに害を為すものは悪という考え方とは対極にある、生あるものへの等しい愛情が流れていると感じる。
    己が生きるために他者を食べる/殺す事を受け入れる。けれど、人間の愛情、弱さ、利害に囚われる事からも目を背けない。

    ちょっと似た設定の物語はたくさんあるけれど、主役が圧倒的にいいヒトで、人類の勝利〜とか悪い為政者を倒した〜とか、そんな決着じゃないところが、良かった。

  • 最初から最後まで一気に読める面白さはあったんだけど、散らかったまま終わったようななんともいえない読後感。
    明確な解決策がないから間違えながらも諦めずに社会構造全体を変えていかなきゃいけないんだよ〜という、この系統の話の毎回同じ、落ちつかないオチについまたかよって思ってしまう。

    読み始めは虫繋がりで安生正の生存者ゼロを思い出したんだけれど、全体的にそこまで無茶な方向にはいかず、読み易い分だけ切迫感があまりない。
    後味そこまで悪くないので、バイオサスペンスみたいの読みたいけど、吐くほどエグイのは読みたくない、位の時に丁度いいかなと。

  • 上田早夕里作品初読み。
    極限状態の人間心理と薬品承認問題に感染症対策と盛りだくさんな内容。
    スピーディーな展開で飽きずに読ませていただきました。
    暴走は誰かが食い止めねばならず、必要悪も存在するし、たどり着いた結果が必ずしも救いがあるとも限らない。

  • 上田さんが言いたいことと、
    ナウシカの雰囲気似てる気がする

    自然はただそこにあるだけなのに
    人間は愚かだから
    正しい事を知ろうとせず
    ただ挑もうとする

    この本自体は最後の駆け足感が気になった

    追う側も魅力的だった

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。2011年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。同作は「SFが読みたい! 2011年版」国内篇第1位に選ばれ、『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』の各表題作、『華竜の宮』の姉妹編『深紅の碑文』と合わせて《Ocean Chronicleシリーズ》と呼ばれ、読者からの熱い支持を集めている。近著に『妖怪探偵・百目』シリーズ、『薫香のカナピウム』など。

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