- 本 ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334928124
感想・レビュー・書評
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長嶋有の小説を様々な漫画家たちに漫画化したもの。
長嶋有本人が、漫画家に依頼する、コラボ的&創造的な企画で、長嶋有と漫画家たちの相乗効果がよく出ている。
原作小説自体が長嶋有てきなオリジナリティーがあり、それに対して漫画家の個性が、いかんなく発揮されていて、漫画としてのレベルの高さを感じる。
一番最初の萩尾望都『十時間』が圧巻。
姉妹の不安が、家の中の姉妹の様子で何とも言い難く文学的に表現されている。
基本的に全ての作品が面白い。
特に、印象に残ったもの
カラスヤサトシ 『夕子ちゃんの近道』
島田虎之介 『猛スピードで母は』
フジモトマサル 『ねたあとに』
陽気婢 『エロマンガ島の三人』
うめ 『パラレル』
河井克夫 『タンノイのエジンバラ』詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
どの作品も原作に沿った(ある意味期待を裏切った)良い仕上がりなのですが、もう、なんといっても、萩尾望都先生の「十時間」が心に染みた。
ほんとうにほんとうによかったのだよ。 -
長嶋有の作家デビュー10周年を記念した、彼の小説を人気マンガ家たちがコミカライズ(マンガ化)する試みをまとめたもの。
『小説宝石』に連載されたものにくわえ、描き下ろし作品が5作もプラスされている。430ページを超えるポリュームで、参加したマンガ家の顔ぶれも豪華だ。
長嶋は『週刊文春』にマンガについてのコラム『マンガホニャララ』を連載(ブルボン小林名義)しているほどディープなマンガ読みだから、いかにも彼らしい試みではある。
たんに原作を提供するだけではなく、作品のセレクト、マンガ家の人選・原稿依頼にまで長嶋自身がかかわり、マンガ家と綿密な打ち合わせを重ねたうえで作業が進められたようだ。つまり、長嶋は本書のプロデューサーとしての役割まで果たしたのである。
私は長嶋有の小説が好きだし、参加しているマンガ家にも好きな人が多い。だから大いに期待して本書を読んだのだが、思ったほど面白くなかった。てゆーか、かなり玉石混交。
まあ、もともと長嶋作品はあまりマンガ化向きではないのかもしれない。
作家性の強いマンガ家が多いだけに、原作をそのままなぞったような芸のないマンガ化は少ない。作品によってはかなり大幅にアレンジされている。
たとえば、長編『パラレル』は、うめ(というマンガ家)によってなんとボーイズラブ風にアレンジされてマンガ化されている(原作にBL臭はなし)。
で、そうした大胆なアレンジが見事に決まっているものもあれば、「うーん、外したな~」というものもある。
私がいいなと思ったのは、カラスヤサトシによる『夕子ちゃんの近道』、小玉ユキによる「泣かない女はいない」、ウラモトユウコ(この人は新人だが、新人離れした手慣れたマンガ化ぶり)による「サイドカーに犬」、河井克夫による「タンノイのエジンバラ」。
とくにカラスヤサトシのものは、原作のエッセンスをきちんと活かしつつ、4コマ風に話を細かく区切り、笑えるオチなどを盛り込むことによって、まぎれもない「カラスヤサトシの世界」になっている。見事なアレンジだと感服した。
なお、長嶋有は本書の試みと並行して、マンガ作成ソフト「コミPo! (コミポ)」を使ったマンガ『フキンシンちゃん』をウェブ連載していたが、それが先ごろついに単行本化され、マンガ家デビュー(?)も果たしたらしい。
ううむ、こんなふうに“真剣に遊ぶ”姿勢は、いかにも長嶋有ですなあ。 -
これは素晴らしい。長嶋有の小説が大好きなんだけれど、それを漫画化するとこんなにも手触りの違う作品になるのかという驚き。萩尾望都から島田虎之介、吉田戦車などなどもう漫画家のメンツもすごい。
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長嶋有って実は読んだことなかったのだけど、これを読んで読んでみてもいいかなと思った。
小説を映像化、漫画化すると小説を越えてしまう時もあり、それがわかっていて自ら計画。しかも、漫画だけ読んで、小説は読まない人もかなりいるはずで、そういうリスクも承知の上やっているっていうのは案外懐が大きいな、と。
フジモトマサルやカラスヤサトシ、河合克夫みたいなかなり個性の強い漫画化の絵でも、ちゃんともとの小説の良さが伝わってくる。 -
全部読みたなるやんけ。
図書館で借りた。いずれ買おう。 -
長嶋有作品をまだ読んでいない方、すでに読まれた方いずれにもオススメの漫画化計画。作家が違えども、ここまで忠実に「何かが起きそうでなにも起きない雰囲気。しかしするどい斬新さ」をもつ長嶋作品を再現しているとは!読後感よし。もう一回活字版を読み直したくなった次第。
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原作と漫画の幸福な関係、について考える。
て長嶋有自身もどっかに書いてた気がするけど。
これこそがそれそのものじゃないか!
って長嶋有自身がどっかに書いてた気がするけど。
もともと長嶋作品の熱烈なファンであるがゆえに判官びいきを避けることなど絶対に無理な話で、それでその上に漫画化したのがぼくの好きな漫画家ばかり!となってしまうと、おそらくこのレビューなど何の役にも立たないわけです。昔風に言うと屁の突っ張りにもならんですよ、なわけです。
だからこれくらいにしておきます。
こういうものを原作者主導でやる、ということのおもしろさを他の(小説を書く)作家さんにもわかっていただければ、いろんなアツい漫画が生まれるのでは、と密かに期待しているのですが、どうなんでしょう。無責任に言いたいことを付け加えておきます。
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