サクラ咲く (BOOK WITH YOU)

著者 :
  • 光文社
3.59
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本棚登録 : 848
レビュー : 182
  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334928162

作品紹介・あらすじ

若美谷中学1年5組の塚原マチは、自分の意見を主張できない、頼み事を断れない、そんな性格を直したいと思っている。ある日、図書室で本をめくっていると、一枚の紙が滑り落ちた。そこには、丁寧な文字で『サクラチル』と書かれていた。貸出票には1年5組と書いて、消された跡がある。書いたのは、クラスメイト?その後も何度か同じようなメッセージを見つけたマチは、勇気を振り絞って、返事を書いた。困っているはずの誰かのために-(「サクラ咲く」他2編収録)。中高生が抱える胸の痛み、素直な想いを、みずみずしく描いた傑作。中学生から。

感想・レビュー・書評

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  • 学校は、俺たちみんなのものだ。

    華々しく壮行会で送り出される運動部のエースでもなく
    大勢の友人に囲まれ、スクールカーストのてっぺんに君臨する人気者でもなく
    たった3人の映画同好会の一員という、学校の主役ではない自分を奮い立たせながら
    自分のような生徒の居場所を作るため、幻の本を探して
    地を這うような努力を続けた一平の言葉が、キラキラと眩しい。

    人間の心に沈殿するエゴやトラウマや葛藤を容赦なく描き出すこともできる辻村さんが
    これから中学校生活を送るこどもたちに向けてのエールとなるよう
    共感、友情、ほのかな恋や憧れ、信頼。。。と、濁りのない部分だけを
    両手いっぱいにそっと掬い取って、差し出してくれているような短編集です。

    若美谷中学を舞台とした最初の2篇は、まさかのタイムスリップが友情を育んだり
    図書室の本に挟まれた謎のメッセージがヒロインの心を揺り動かしたりと
    進研ゼミ中学講座という掲載誌にぴったりの、初々しい物語に
    う~ん、かわいい♪ これは中学校入学を控えた小学生にもぜひ読んでほしいなぁ
    と思っていたのだけれど。。。

    若美谷高校を舞台とした、最後の『世界で一番美しい宝石』。
    辻村さんならではのトリックで、物語は最初の2篇と魔法のようにつながって
    遠い未来のために交わされた約束や、心に芽生えた希望が
    ひたむきな努力を経て、信頼できる素敵な大人という目にみえるかたちで
    結実していることに、爽やかな感動がこみ上げます。

    本を読み始めようとするこどもたちが、『ぼくのメジャースプーン』、『凍りのくじら』と
    読み進めていくための、辻村さんワールド入門編として
    手に取ってくれるといいなぁと思う1冊です。

  • 最初の二編は、辻村さんが中学生向けに書いたお話。
    『オーダーメイド殺人クラブ』でスクールカーストや中二病を扱い、青春の暗部にぐっさりと切り込んでいったのとは違い、思春期の悩みを交えながらも、希望や友情、青春の明るい面にスポットをあてていた。(そりゃ進研ゼミに、スクールカーストやら中二病は持ち込めまい。笑)
    3編進むにつれ、辻村さん色が出てきて、やっぱり辻村さんいいなぁと思った。

    最初の『約束の場所、約束の時間』は、ドラえもん好きの辻村さんらしく、タイムマシンを取り入れていて夢があるんだけれど、いかんせん軽く、漫画のノベライズ化みたいな趣。(けなしているわけではないです)

    『サクラ咲く』は、真面目でいい子と言われることが嫌なんだけれど、思ったことをはっきり口にできないマチが、図書室の本に挟まれたメモを発見し、名前も知らぬその人物と本を介して文通を始める…というもの。
    思春期まっただ中の中学生に読んでほしいなぁと思わされるとても素直なお話。

    そして『世界で一番美しい宝石』。
    映画同好会の一平は、図書室で見かけた三年の立花亜麻里を主演女優にスカウトするも、すげなく断られる。彼女は以前、演劇部で主役を演じるも、突然演劇部を引退し、人を寄せ付けなくなっていた。
    これに込められたメッセージは重いなぁ。宝石にまつわる本をずっと探しているという彼女のために、一生懸命になる3人の気持ちが温かくて…。でも何よりも、前の2編とのリンクがうれしい♪という1編。

    まぁ実は、2編目とのリンクは、読み終わった後で、ほかの方のレビュー読んでて気づいたんですけれどね…!(笑)

    • まろんさん
      掲載誌に配慮して、苦さ・重たさ70%OFF(当社比)で
      辻村さんが工夫に工夫を重ねて書いた感じが出ていて、可愛らしい作品ですよね♪
      かなり荒...
      掲載誌に配慮して、苦さ・重たさ70%OFF(当社比)で
      辻村さんが工夫に工夫を重ねて書いた感じが出ていて、可愛らしい作品ですよね♪
      かなり荒唐無稽な設定だった1編めが、映画同好会の地道な努力を描いた3編めと
      あんなかたちで繋がるとは、さすが辻村さん♪ と思いました(*'-')フフ♪
      2013/01/31
    • マリモさん
      まろん社比はいつもしっくりきます!(笑)
      辻村さんから苦さや重たさを取り除くと、こんな爽やかなお話になるんですね。
      辻村さんも最近は本当にい...
      まろん社比はいつもしっくりきます!(笑)
      辻村さんから苦さや重たさを取り除くと、こんな爽やかなお話になるんですね。
      辻村さんも最近は本当にいろんな挑戦をしていて、目が離せないです。
      進研ゼミで1、2話を読んだ子たちが、3話目を読んでくれたらなぁって思いました♪
      2013/01/31
  • さすがに辻村深月、単なるジュブナイル小説ではなかった──

    一作目の「約束の場所、約束の時間」を読み始めたときは、“わあ、やはりラノベだな、こりゃあ……”とあまり気が進まず、読後感も今ひとつ。
    そこで『進研ゼミ』連載の中学生をターゲットにした小説は、きついものがあると思い、二作目の「サクラ咲く」を飛ばし、『小説宝石』に掲載された「世界で一番美しい宝石」を先に読むことにした。
    こちらの主人公は高校二年の男子、武宮一平。
    映画同好会に所属する3人の男子が映画製作のために主演女優を探そうとする。
    そこで目に留まったのが、いつも図書室の窓辺で本を読んでいる『図書室の君』と噂される美しい先輩、立花亜麻里。
    出演を懇願する武宮たちに、あまり気乗りしない立花先輩は一つだけ条件を出す。
    自分が昔読んだ本を探し出してくれたら出演してもいい、と。
    それが『世界で一番美しい宝石』にまつわる話という設定。
    この程度になると、少しミステリー的要素も加わり「ふむふむ、なかなか面白い」
    そして、最後に表題作「サクラ咲く」を読んだのだが……。
    時系列的には、「サクラ咲く」が二作目で、ターゲットは最も低い中学1年生になっているが、表現もストーリーも、こちらのほうがすんなり入っていけたし、感情移入もしやすかった。
    初めての挑戦ともいうべき「約束の場所、約束の時間」では表現を敢えて抑え、中2レベルに合わせようとし過ぎたため、ややぎくしゃくしたような感がする。
    作者自身も「約束の場所、約束の時間」より、表現手法に少し慣れたのではないか、と思う。
    引っ込み思案な主人公マチと、ある出来事が原因で不登校になってしまった紙音の成長物語。
    その二人とも、優しい友たち、友情のおかげで暗闇から光待つ場所へ吸い上げられる。
    救われる物語だ。
    この展開は彼女の名作「名前探しの放課後」を彷彿させ、「名前探し」で号泣した私は、ここでも最後の『遠い日のうた』(この歌、実際にあるんですね。YOUTUBEで調べたら分かった。クラシックの名曲“カノン”の旋律を基歌にしたやつで、思わずじっくり聴いてしまった)合唱シーンには感動し、かなりうるっと来た。
    なんとも涙もろい私です、はい。
    「オーダーメイド殺人事件」「水底フェスタ」の二作には、やや失望感があり、少し心配した辻村さんでしたが、これを読んでホッとした。
    これで、来週発売になる次作「鍵のない夢を見る」は、文藝春秋社発行という一抹の不安はあるにせよ、期待していいかもしれない。

    辻村さんは、ホントに子どもの頃から本や図書室、図書館が大好きだったんだな、と思う。
    一作目は別にしても、他の二作とも、本に対する作者の愛情が感じられるからだ。
    “スポーツで汗をかくのも気持ち良いけれど、本を読んで心の汗をかくのも素敵なんだよ”とでもいうような。
    それにしてもこの三作品、一見全く別々の物語だが彼女独特のスターシステムは健在で、見事に三作とも登場人物の細かいリンクが設定されている。
    よくぞ毎回こんなことができるものだ。感心せざるを得ない。
    朋彦と見晴が両親とは……。凝り性なんでしょうか、辻村深月さんは。
    中身を詳しく書くとネタばれになってしまうので、引用だけ載せておきます。

    (追記の雑学)
    “サクラサク”は本文にあるように、受験時の合格電報のメッセージに使われ、大学では早稲田が最初に使ったというのが定説になっています。
    ちなみに早稲田不合格の場合は、当初“サクラチル”のようでしたが、後には“イナホチル”(稲穂散る)がメインになりました(同じサクラだと間違う怖れもあったからでしょうか)
    今はどうか知りませんが、この合格(不合格)電報の通知、私が受験した頃は大学によってその土地柄の特色を出しており、それぞれ味がある表現なので、少し紹介しておきます。
    受験生同士のカップルで、会話中『天使が通り過ぎる時』が訪れそうになったら、雑談代わりに使って頂ければ本望です(笑)

    北海道大学=不合格“ツガルカイキョウナミタカシ”(津軽海峡波高し)
    東北大学=不合格“ミチノクノユキフカシ”(みちのくの雪深し)
    奈良教育大学=不合格“ダイブツノメニナミダ”(大仏の目に涙)
    高知大学=合格“クジラガツレタ”(鯨が釣れた)
    長崎大学=合格“マリアホホエム”(マリア微笑む)
    鹿児島大学=不合格“サクラジマフンカセズ”(桜島噴火せず)
    等々。
    でも最初にこれを考えた人はセンスありますね。

  • 本屋さんでなかなか見つけられなかったところ、図書館で運よく発見し借りたんですが、なんと、進研ゼミで連載されていた内容だったんですね!
    たしかに内容も文章も子供向けな感じでした。
    特に2本目は「思ったこと、感じたことはきちんと口にしよう。そうすればよい結果につながるよ」的な内容で、私としてはイマドキはクラスの中心(?)的な子にそんな注意なんてしたら逆にイジメられちゃうんじゃないか・・・と思わなくもなかったんですが、そこは学生文学ですから、ちゃんと「逆にハッキリ言ってくれてありがとう」ってよい方向につながってくんですよ。
    中高生の読む小説なんだから当たり前なんですが、やはり女性の裏側(?)を今までうまく書いてきた辻村さんだから、コレはちょっと物足りない感じがしました。

    でも3本目のお話しは、さすが辻村さんの本領発揮といいますか、うまく1・2本目の主要メンバーを絡めてきてて、思いっきり名前は出さないのに読者を「ああ、そういうことかー」とうならせる感じがあってよかったです。
    この3本目だけは進研ゼミじゃないんですね。
    せっかくだから1・2本目を読んでた進研ゼミっ子に、この3本目の話しもぜひ読ませてあげたいと思いました。

    うん、3本目があったおかげで読後感スッキリ♪

  • ●『約束の場所約束の時間』
    転校生の菊池悠
    現在は無い新しい病気の療養の為、100年後からタイムスリップして来たと言う。
    悠と関わっている内に変わって行く朋彦
    病気の無い未来へと変える!…。

    ●『サクラ咲く』
    塚原マチ子は自分の意見がはっきり主張出来ない事
    誰かから頼まれ事をすると、なかなか断る事が出来ない
    そんな性格を直したいと思っていた。
    図書室で借りた本からヒラリと落ちた紙「サクラチル」誰が…?
    それをきっかけに始まった図書室の文通
    顔の見えない相手…二人の距離は近付いて行った…。

    ●『世界で一番美しい宝石』
    武宮一平と生田リュウと平野拓史
    三人は映画同好会のメンバー
    一平は映画のヒロインにぴったりの図書館の君を見付ける…。


    『約束の場所約束の時間』を読み始めた時、中学生の物語…。タイムスリップって…。
    なんて、思いながら読み始めましたが、悠と朋彦と美晴の友情に胸が暖かくなった。
    『サクラ咲く』では、マチ子の成長がとっても嬉しく、特に高坂紙音の心の叫びはこちらの心が痛かった。
    辻村さんの作品らしく、3つのお話は繋がっている事に気付きました。
    3作目の海野司書が誰か、一平の両親が誰なのか気付いた時には、感動!
    お父さん間に合ってよかったね
    約束守れたね
    泣きそうになりました(*T^T)
    青春の中での悩みや妬み・葛藤がヒシヒシと伝わって来ます。
    心の琴線に触れる言葉が一杯
    温かい気持ちになれます。
    優しく純粋なお話でした(❁´ `❁) ♡

  • 辻村さんの本のなかでは、他とちょっと違う爽やかな短編集です。青春だなあと単純に感じるのではなく、ミステリーやSFっぽい設定が入っていて、感動したり、面白かったりと、テンポ良く読める軽い一冊なのにとても充実しています。図書館に中高生向けで薦められていましたが、読んでよかったなぁと大満足。
    ちなみに最後に新種の喘息が起こるのですが、それが最初の話と繋がっていたことは、全く気がつきませんでした。
    あー、辻村さん、好きー。

  • 辻村さんらしい一冊。
    長編かと思って読みはじめたら
    短編集だったのねとちょっと残念に思った。
    (わたしは辻村さんの長編が好き)
    それが短編集というわけでもないことに気が付いたときには
    「ああ、そうきたのね!」と感激。

    ★4つは最後まで読んだからこそ、です。

  • 辻村深月さん好きだけど、この作品の存在は知らなかった!ヤング(中学生向け?)コーナーでたまたま発見し、即ゲット。
    なるほど、青春そのもの!青春キラキラな短編集。
    合唱コンクールとかの素材も懐かしかったけど、そういえば自分も中学の頃、同じようなこと考えてたなぁ…とか、そういうメンタル的な部分も懐かしく、読んでる間、中学時代に戻った気分だった。

    3話バラバラのお話かと思いきや、実はひそかにリンクしてるところも、辻村さんの作品らしくて好きだった。

  • 「約束の場所、約束の時間」と「サクラ咲く」がわかりやすくアッサリした内容だったなぁ、と思ったら、初出が進研ゼミの中二講座と中一講座だった。
    すごく納得しました(笑)

    個人的には辻村さん独特の人間の心を表した「世界で一番美しい宝石」が、一番好きでした。
    新聞部の汚いとこの表現が辻村さん独特。
    展開は読めるものの、心理描写が胸を打ちます。学校の主役ではない、にはすごく共感。

  • 辻村ワールド全快。3つの短編が繋がったとき新たな感動が。表紙の絵が少し残念だけど中身は濃い学生の気持ちを代弁したかのような内容。学生から10年たった僕でも感動です。リアルタイムで読めたら良かったんだろうなぁ。

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。
千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。
2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞をそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第15回本屋大賞の大賞を受賞した。
他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。

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