覚醒 下

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 37
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334928186

作品紹介・あらすじ

著者が経験した433日の獄中生活。そこで出会ったのは数多くの障害者たちだった。その一人が著者に語った。「俺たち障害者はね、生まれたときから罰を受けているようなもんなんだよ」。人間は何のために生まれてくるのか。人間の死とは何なのか。出所後、著者は障害者福祉や更生保護の現場に身を置く。著書『獄窓記』、『累犯障害者』はベストセラーとなるが、ノンフィクションでは書き尽くせぬことが多々あった。見てきたこと、感じたこと、思ったこと、そして見えてきたことのすべてを、衝撃と感動なくしては存在価値のない小説で描き切る。

感想・レビュー・書評

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  • これは福祉・知的や身体障害者に関わる人のすべて
    もっと言えば社会を構成するすべての人に読んでもらいたい
    多くの考え方と問題提起がなされている
    特に差別意識や権利意識を根底から見直す必要を浮き彫りにしている

    ドキュメントだけでも小説だけでも表現し切れない
    ドキュメント小説の真実性をここに見る気がする

    体験談である「獄窓記」シリーズを読み
    その体験をベースにしただろう「覚醒上下」を読むにつけ
    実体験からなる理解は喩え話のように
    具体性の強い個別的なモノとなって迫ってくる
    それは現象という切り取られた額縁の中だけの記録であると同時に
    その時空間で起こる感情面や精神面での記録を排除したものとなる

    そのブラックボックスを埋めて全体観を客観性の中で現すためには
    ドキュメントのタガをゆるめた小説仕立てが
    より納得の行く真実に迫る手段となりそうだ

    「事実は小説よりも奇なり」のディテールに加えて
    そこから広がる背景と未来に掛けた理解の可能性を
    より広げて深めることが可能かもしれない

    出合いを対立する被害者と加害者に分ける
    その縦の関係性を違う角度から見れば
    同じ釜の飯を食った対等にシェアし合える
    横の間柄だとも言えるのだろう

    ドキュメントとしてあるいは倫理観として気になるところを拾い
    77・94・95・・142・151・2006・20・209・211・
    のページに付箋を入れた

  • 最初に感じた違和感が、
    最後に解決して良かった。

    この本が、多くの人に共感されるといいなと思いました。

  • 飲酒運転で高校生をはねて服役したフリーライターが、自殺未遂や福祉施設での経験を積んで、「覚醒」していく物語。

    どんでん返しのネタや伏線の仕込みはちゃんとできている。だが、どうしても拙いと思う。

    それを除けば、人生や死について主人公や小百合と一緒に考えてしまった。人生の中で、「利他こそが自助である」という結論が出るまで生死について考えたことはないと思う。言葉では知っていても、心で納得はしていない。

    最終盤、高校生をはねた本当の犯人が判明する。だが主人公がその証拠を消したのは、服役から自殺未遂、冤罪の手助けにいたる一連の経験はきわめて不愉快で命さえ失いかねないものだったけれども、これがなければ最後の「覚醒」に至れなかったという思いがあるからだろう。

     利他によって自分が救われる、というのは「空飛ぶ広報室」の「あの日の松島」でも出ていた。「つらいときに自分にできることがある、というのはそれだけで救われる」という空井のセリフに通じるものがある。

  • 上下巻含め、とてもボリュームのある小説。一気に読みました。
    獄中生活・裁判・福祉施設での描写や表現は、とてもインパクトがありリアルで説得力があります。
    犯罪を犯してしまった主人公がドン底まで落ち、もがき苦しみ、そしていろいろな人との交流を通して「覚醒」していく物語。
    人の生死の意味を問いかけ、トテモとても考えさせられる作品でした。

  • これからの人生に於いて、様々な困難が訪れた時、再び手にとって読んでみたくなる、そんな本であった。
    飲酒で人身事故を起こし逮捕され、その最中に最愛の息子を亡くし、自分を責め、自死しか考えられなくなっていた主人公が生きている意味を改めて考える。
    同じ悲しみを背負った妻との会話が心に響き、とても良かった。
    誰かに何かを与え続けるために生きているのだという考えが素晴らしい。
    悲しみを受けた人は、それが少しでも免疫になり、強くなっていければいいのにとも思う。

  • 幾らか、技術が未熟という指摘があるかもしれないが、その批評をも凌ぐ作品だ。

  • 今年一番引き込まれた小説。
    前半ではいろいろ考えさせられ、後半は
    面白くなって、ミステリっぽく楽しめる。

  • 予測していたオチではあったのですけど、主人公の対応は予測外でした。いくらなんでも良い人すぎかなと思わないでもなく。とまれ、大団円って事で。

  • 物語の後半の展開に度肝を抜かれた。まるで雪崩のよう。万事塞翁が馬とはよういうたもんです。
    若干,出来すぎ感は否めないが,それでもこの作品の読者を引きつける力は凄いと思う。
    自分の仕事,家庭,そして生きること,と考えさせられる部分もあり,素直に読んで良かったと思えた作品。
    一読の価値あり。

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著者プロフィール

1962年生まれ、元衆議院議員。2000年に秘書給与詐取事件で逮捕、実刑判決を受け栃木県黒羽刑務所に服役。刑務所内での体験をもとに『獄窓記』(ポプラ社)、『累犯障害者』(新潮社)を著し、障害を持つ入所者の問題を社会に提起。NPO法人ライフサポートネットワーク理事長として現在も出所者の就労支援、講演などによる啓発に取り組む。2012年に『覚醒』(上下、光文社)で作家デビュー。近刊に『エンディングノート』(光文社)。

「2018年 『刑務所しか居場所がない人たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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