ホイッスル

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 192
感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334928438

作品紹介・あらすじ

平穏に暮らしていたはずの両親。その父が突然いなくなった。思い出の詰まった実家も売却されていた。何一つ身に覚えのない母は、なぜと叫びながらも、答えを手繰り寄せていく。不倫・離婚・裁判、家族の再生の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 年老いた夫婦。長年連れ添ってきた夫に裏切られ、ずっと専業主婦で何も一人でできなかった妻が裁判を起こし、たくましく変わってゆく。
    登場人物が欲望のままに生きている人ばかりで途中、読みながら荒んだ気持ちになりました‥‥
    でも、裏切られた妻が最後には幸せを感じられて良いラストでした。
    苦しみの量は誰にも一定だけれど、幸せの量は自分次第で増やせる、という主人公の言葉が印象的。

  • 思ってた内容と違った。表紙からしてもっと爽やかな話かと思った。
    初老も通り越した夫が突如恋愛に暴走する。一人娘も家庭を持ち、かわいい孫娘もいて、後は長年連れ添った夫婦二人で穏やかに人生の終盤を過ごせていけたら思っていたら、夫がたまたま入院した病院で優しくされた看護師に金目当てで騙される。老人から搾り取れるだけ搾り取ってやろうとする看護師の愛人とその仲間。どうして寄りにもよってこんな人に誑かされちゃうのっていう程のえげつない人たち。相反して、妻や娘、周りの支えてくれる人たちは本当にいい人たち。助け合って励まし合って裁判を乗り越えるという話。
    中年女が老人を性で誑かす場面は本当に気持ち悪い、反面、結婚後専業主婦となり全く社会を知らない60代の女性が、夫と離婚後、清掃の仕事に就き強くたくましくなっていく姿はとても美しかった。聡子さんの人柄が素晴らしくて最後は涙でした。

  • 登場人物の多くがク○でしんどかったけど、主人公の言葉に救われた。「不幸せの量はみんな同じ。幸せの量はその人それぞれ」

  • 平凡に暮らしていたはずの夫婦。
    老齢の夫章が、家を売り払い、全財産を持って行方不明になった。
    突然のことに戸惑う妻聡子、母を支えなければと気持ちを添える娘香織、叔母を助けたいと頑張る姪優子、章をたぶらかしていた看護師和恵、裁判を請け負った弁護士芳川と事務員沢井、彼女たちの4年間。

    平凡な日々から、突然何も無い状態放り出された妻の立場、同じ年頃の両親を持つ娘の立場、どちらにもなり得る自分なので、何度も胸がかきむしられるような気持ちになりました。
    しかし、悪意に満ちた和恵自身も、ある意味被害者ではないかとも思え、同情してしまうところもあった気がしています。
    やっ ぱり、和恵の夫とレミだけは許せませんね。
    天罰が下らなきゃならないです、あの2人は。

    最後に章に再会した聡子の姿に、涙が止まりませんでした。
    強くなった聡子達の姿に安心したものの、生きているうちに、章が家族の元に戻れたら良かったのに、と思わずにはいられませんでした。

  • 読んでいて辛くなるほど自分と重ねてしまった。
    そして、読みながら声が出てしまうほど腹の立つ人たち。
    この作品に出てくる弁護士が出てくる他の作品があるようなので、読んでみようかな。

  • 法律事務所の依頼者に比重を置いたもので
    「テミスの休息」の前の話。

    依頼者の66歳の女性の身に起こったことは重い。

    バカな夫だと思うが狂った人の判断基準は
    予想がつかない。

    信じていた人に裏切られる
    精神的な打撃は周りが思っている以上にきつい。
    裏切られたほうも狂ってしまいそうだ。

    裁判ってお金もかかるけど、気力もいる。
    そう思うと聡子は本当に頑張ったと思う

    どんな老い方をするかはその人の意志で決められるものなのだ。
    事務員の沢井さんの要所要所に挟まれる

    「息子を育てる覚悟」みたいな真っ当さが結構好き。

    本当に素晴らしかった。深夜の一気読み。おかげ様で今日は目がシパシパでした。


    私はやっぱり、不貞行為は刑事罰でいいと思ってるけどね!

  • 「不幸せの量はみんな同じ。幸せの量は人それぞれ」

    どこからどうやって這い上がればいいのか
    盲目的に信じて、なんの疑問ももたずにこの先も連れ合うのだと そう思っていた人に
    裏切られた
    と表現するとなんだかとても薄っぺらくなってしまう。
    怒りと
    悲しみと
    悔しさと
    不安と
    色んな感情がないまぜになりながら
    進んでは戻りを繰り返しながら
    それでも現実を受け入れ
    そこから立ち上がろうとする
    その過程が
    生々しく、繊細に、時に清々しく
    描かれている。

    心持ちを大切に
    幸せの量は自分自身で決める事ができるんだ

    2012年 光文社 
    装画:水口理恵子 装幀:川上成夫・塚本裕子

  •  藤岡陽子さん、「陽だまりのひと」(2019.2)に続く2冊目は「ホイッスル」(2012.9)です。一言で言いますと、読み応えはあるけどストーリーがネガティブ。74歳で66歳の妻聡子から、愛人沼田和恵48歳のもとに行ったダメ男園原章。かつ、章は、和恵に騙され全財産を貢がされる。実にさびしい話が展開する。聡子が和恵相手に訴訟を起こし、そのサポートをするのが芳川有仁法律事務所長と沢井涼子事務員。章も和恵も、最後は情けない結末に。自業自得。読後感が爽快とは言えないけど、記憶には残る作品です。

  • 重たい。でも明るい未来がみえて終わって良かった。

  • 警察から、離婚した父の死を知らされることから始まるこの物語は、夫婦や家族の意義などについて色々考えさせられる話でした。善良に生きる人々と、相手が傷つくことよりも自分の利益のことしか考えられない人種が交わることにより生じる不幸は、確かにあると思います。最後は納得のいく結末で、面白かったです。

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著者プロフィール

藤岡 陽子(ふじおか ようこ)
1971年、京都市生まれの小説家。同志社大学文学部卒業後、報知新聞社にスポーツ記者としての勤務を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学。帰国後に塾講師や法律事務所勤務をしつつ、大阪文学学校に通い、小説を書き始める。この時期、慈恵看護専門学校を卒業し、看護師資格も取得している。
2006年「結い言」で第40回北日本文学賞選奨を受賞。2009年『いつまでも白い羽根』でデビュー。看護学校を舞台にした代表作、『いつまでも白い羽根』は2018年にテレビドラマ化された。

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