ロスト・ケア

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 1078
レビュー : 208
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334928742

作品紹介・あらすじ

社会の中でもがき苦しむ人々の絶望を抉り出す、魂を揺さぶるミステリー小説の傑作に、驚きと感嘆の声。人間の尊厳、真の善と悪を、今をいきるあなたに問う。第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 2020/07/05読了
    #このミス作品32冊目

    介護による苦悩から解放するための
    「ロスト・ケア殺人」。
    高齢化社会と言われる現代社会の
    法制度の欠陥等を暗に指摘した作品。
    誰もが直面する大きな課題。

  • 老人介護を主軸にしたミステリー。

    介護の辛さの描き方に目新しさはないけれど、そのどん詰まり感はよくわかる。親が死んでくれてほっとする、という感情が露悪的なものとしてではなく想像できてしまう私は、まだ本格的な介護を経験していないうちから、なんて奴だ!と自分のことが空恐ろしくなったり、いや、未経験だからなおさらなのかも、と思ったり。

    介護保険の「改正」の酷さは、ホームヘルパーとして働いている友だちがよくこぼしているので、知っているつもりではいたけれど、そっか、こういうことだったのか・・と愕然。ある時期、町に老人介護施設が急増して、それは老人が増えているのだから需要があるためなんだろう、と単純に考えていたのが、介護ビジネスの起業を促す国の方針が根底にあり、(それはホントに必要だから、だよね)ある程度商売として利益をあげるようになった時点で制度としての梯子をはずす、という非情さ、というより、無軌道ぶり。
    全く、それはないでしょう~~!とあきれてしまった。

    ミステリーとしての意外性、統計から見つけてしまえる「事件」、なぜ人を殺していけないかの問いに対するキリスト教的な見解、など面白く読めたところも多々あり、介護の話は辛かったけど読めてよかったと思う。

    ただ・・・
    作中で、認知症が進んで全く別の人格になってしまった親の介護の辛さ、が語られていたけれど、(それはもちろん、とてもとても切ないものだと予想できるけれど)私の場合は、老いとともに、うん、この人は元々こういう
    いい加減な、OR 依怙地な ところがあったよね、というところが増幅されて表れるのを見る辛さ、というものを感じているので、それも少しは織り交ぜてほしかったかなぁ、なんて。

    親の介護が終わっても(つまり亡くなっても、ということだよね、当然)その次には、自分の配偶者、あるいは自分自身の老いが待ち構えているわけで、その意味では、終わりはない、逃れられないという点もよく書かれていたと思う。

    人間、死ぬときには誰かの世話になってしまうのだから、せめて国のフォローだけは血の通った優しいものであってほしい。
    介護予備軍としても、被介護予備軍としても切実に思う。

    • tsuzraさん
      じゅんさん、おひさしぶりです。
      レビューをまた読めてほっとしました(^_^)/


      じゅんさん、おひさしぶりです。
      レビューをまた読めてほっとしました(^_^)/


      2013/06/01
    • じゅんさん
      つづら様(#^.^#)
      え~~ん(涙)嬉しいコメント、ありがとうございます~~。
      少々体調を崩してしまって、(でも今はほとんど大丈夫!)しば...
      つづら様(#^.^#)
      え~~ん(涙)嬉しいコメント、ありがとうございます~~。
      少々体調を崩してしまって、(でも今はほとんど大丈夫!)しばらくお休みしてしまいました。
      読むだけは相変わらず読んでいますので、ぽつりぽつりと感想も書いてきますね。
      これからもどうぞよろしく!(#^.^#)
      2013/06/01
  • まず、ミステリーとしては、私はまんまとどんでん返しにやられた。
    「あれ?あれ?」と何度も前の方を読み返し、「あー! そうか」と天を仰いだ。うまくミスリードするなあ。何度も読み返したくなる構成。

    さて、本命のテーマに関して。
    私は《彼》の思想に激しく共感してしまった。だから、逮捕後、大友検事と対峙するシーンでは、大友が「安全地帯からモノを言う偽善の人」に見えてしかたなかった。
    《彼》が大友に投げかける痛烈な言葉は、日頃私が持っている疑問そのものだった。
    他人の命を奪うことはすべて罪だというなら、死刑制度も同じことではないのか。かけがえのない命、と言いながら、特定の人の死を望むとはどういうことなのか。
    高齢化社会はもうすでに到来している。これからもっと厳しい高齢化社会となっていく。世の中は高齢者であふれていくのだ。すべての人が健康で裕福であるべきだというのは理想論で、実際には二極化は進んでいくばかりだろう。いつまで理想論をふりかざしているつもりなのか、と、まさにロストジェネレーション世代の作者は問いかけてくる。
    元総理大臣の失言が取りざたされたが、私にはどこが問題なのかわからなかった。健康な老人を殺せと言っているのではないのに。袋小路で行き詰まって、自分も周りも苦痛しかないとき、「死」は確実にひとつの救いになる。現代は人が死ななすぎる、と言ってもいいくらいだ。どうして尊厳ある人生の終わりが迎えられないのか。
    「絆」というキレイ事で周囲の人間まで引きずり込んで共倒れになることがそんなに素晴らしいことなのか。
    育児もそうだが、「人間の世話」には物理的に時間も手間もかかるのだ。そして身内であるからこその激しい消耗や失望もある。
    介護のために、収入の道が閉ざされてしまう現状を変えて行かない限り、いつかほんとにこのような「ロスト・ケア」が待ち望まれるようになるだろう。

    私の母は、自分も70歳の老人でありながら、老人施設でヘルバーの仕事をしていたことがある。入浴介助をしていたのだが、あるときしみじみと言ったことがある。
    「死ぬのも大変なんだよ」と。もうこのまま静かに逝かせてあげればいいのに、というような人も、病院でかろうじて命だけとりとめて施設に戻される。戻ってきてもそこにあるのは苦痛の日々だけなのに。
    「なかなか死なせてもらえないんだよねえ」と言っていたことが忘れられない。
    他人の命を勝手に奪う権利がないのと同じように、他人の命を勝手に引き伸ばす権利もないんじゃないだろうか。

    ふだんからいろいろ考えていることがたくさん盛り込まれた作品だったので、読み終わっても、いろんな思いが渦巻いて止まらない。

  • ひさびさに読んだ小説は読み応えあるものでした。

    43人もの人間を殺し死刑を宣告された時、男は微笑んだ。
    想像した。
    やがて来る世界の未来を。
    後悔はない。
    全て予定通りだ。...

    マタイによる福音書 第七章 十二節
     だから、
     人にしてもらいたいと思うことは何でも、
     あなたがたも人にしなさい。
     これこそ律法と預言者である。

    そして、<彼>は剣をとった。
    介護という社会に暗部に。

    サイコパスのようなミステリーが展開されるかと思っていた。
    もっと深い物語だった。
    「なぜ人を殺してはいけないのですか?」
    「死刑で犯罪者を殺すのが世のため人のためならば、社会が産み落とした暗部に本人も、家族も苦しんでいる人を助けるために殺すのは人のためにならないのですか?」
    というような件がでてくる。

    悩みますね...。

    ミステリーの謎解きの要素は軽めかもしれない。
    しかし、世の中にぽっかりあいている穴へのミステリーの扉に誘なわれた感じは重いです。


    追伸:
    週刊少年サンデー「犬部!ボクらのしっぽ戦記」のシナリオ協力もしている作者だったんだ。
    こちらもペットから見える社会の穴を貫くシナリオです。
    諦めるのではなく、落ち込むのでもない主人公が魅力のマンガです。

  • 介護をテーマとした大量殺人事件

    介護と安楽死と尊厳死
    どれも一言では語ることの出来ない現代社会での大きな問題

    自分ならどうするのか?
    考えさせられた一冊になった

  • ここ最近では特にお気に入りの作家、葉真中顕さん。wikiって見るとなかなかの多才ぶり。

    それはさておきこの作品、なんとも言えない内容になっている。他の作品でもだが、犯罪者の側の意見でもあながち間違っていない思想が、読者を唸らせる一因になっている。

    介護問題&安楽死問題がテーマ。綺麗事だけではすまされない介護の重さとそれでも守られるべき尊厳、政府主導の介護保険制度の改悪、以前から人口推計で分かっていた超高齢化社会の現在、そんな諸々の問題を解決する方法を発見した『彼』。

    『彼』は救世主なのか?それとも世紀の大量殺人犯?読んで色々思うところがある社会派本格ミステリ作品。構成も巧い。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    社会の中でもがき苦しむ人々の絶望を抉り出す、魂を揺さぶるミステリー小説の傑作に、驚きと感嘆の声。人間の尊厳、真の善と悪を、今をいきるあなたに問う。第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。

    要介護者を次々殺害していくのですが、自分がもし介護されている人だったらこうやって殺して欲しいと思っていまうのは、自分が直面していないからでしょうか?何も分からなくなるならいっそ・・・。と思ってしまうのは罪でしょうか。
    生きている時に意思表示できるシステムが欲しいです。最終的には家族の合意が必要だとして、自分で前もって尊厳死を選べる仕組みは是非作って欲しいです。
    事件に関わった人々の独白の繰り返しで物語が進んで行きます。どれもこれも重く引きずるようです。介護の現場の現実は厳しいし、介護だから儲けてはいけないという謎ルールに阻まれて給料も上がらないという悪循環。誰が好意で介護するもんですかって話ですよね、家事と同じで金銭に換算すると相当な報酬になると思われますがひたすら安くこき使われてしまう現実。そして在宅介護の出口の無い迷路のような閉塞感、怖いです。

  • 犯人のどんでん返しはいらないと思うし、震災との関連付けもいらないと思う。見せかけだけの友人関係も、おれおれ詐欺も覚醒剤もいらないと思う。もっともっとストレートで良かったんじゃないかな、と思う。
    これだけ無駄なものを描いてさえ、なお胸に迫るテーマであり、筆致であったから。
    さっそく「絶叫」を図書館で予約した。24人待ちだ。

  • ロスト・ケアという言葉の意味が重く心に響いた1冊。

    介護というテーマは重いのですが、読後感が悪いということはなく…ただ、答えは出ない。

    人間としての尊厳や、家族の死を望まないでいい世界、いろいろと考えさせられながらも引き込まれて、一気読み。
    しかも途中でえ?って罠にも素直に落ちました。そこで、あー、ミステリーね、と。おもしろいと言うと軽い感じがしそうですが、おもしろかったです。

  • ぐいぐい引き込まれた
    老人介護問題 みんな分かっていた、これからも
    日本の抱える問題がえぐられている
    そして ラスト えっ!
    ミステリーの面白さを堪能できる

    ≪ 介護とは 何を守るか?ロストケア ≫ 

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著者プロフィール

一九七六年東京都生まれ。「ロスト・
ケア」で第16回日本ミステリー文学大
賞新人賞を受賞し、二〇一三年に作家
デビュー。本作にて第21回大藪春彦賞
および第72回日本推理作家協会賞を受
賞。近刊に『Blue』『コクーン』
『W県警の悲劇』『ブラック・ドッグ』
『政治的に正しい警察小説』などがあ
る。

「2020年 『凍てつく太陽』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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