ロスト・ケア

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334928742

作品紹介・あらすじ

社会の中でもがき苦しむ人々の絶望を抉り出す、魂を揺さぶるミステリー小説の傑作に、驚きと感嘆の声。人間の尊厳、真の善と悪を、今をいきるあなたに問う。第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 在宅で介護が必要となり、介護者がその介護負担をすべて背負わなければならない社会…介護保険が創設されたとはいえ、その恩恵に授かれるのは一握りの金銭的に問題のない富裕層のみ…。介護保険をビジネスチャンスと捉え参入した企業も、利益を継続して生み出すことはできず、そのしわ寄せは介護を担う職員に…。介護が必要な要介護者を多数毒殺し(ロストケア殺人)、死刑判決を受けた犯人の真の動機は??

    苦しいな…読んでいて、ひたすら苦しかったです。介護保険が創設されて気が付けばもう20年以上…その間、自分自身が母の介護に携わったこともあったし、今も介護業界での仕事もしていたりもします。私なら何ができたのか、在宅介護でキツイ思いをしている本人や家族を救うにはどうしたらいいのか…考えてしまいました。だから、なかったことにする…そういう考えには及ばないけれど(当たり前だけれど)、でもこの犯人の言うこともわかるんだよなぁ…結局、介護保険では限界もあるから…。それでもすこしでも在宅介護で大変な思いをされている方の思いに寄り添えるよう、勉強は続けていきたいと感じました。

    • ヒボさん
      かなさん、こんにちは♪
      葉真中作品、ヤバイですよね!
      きっと絶叫もハマっちゃいますよ~
      かなさん、こんにちは♪
      葉真中作品、ヤバイですよね!
      きっと絶叫もハマっちゃいますよ~
      2023/04/06
    • かなさん
      ヒボさん、おはようございます(^^)
      いいねすよねぇ~葉真中顕さんの作品っ!!
      今「絶叫」読んでますけど、面白いですっ。
      すでに、ハマ...
      ヒボさん、おはようございます(^^)
      いいねすよねぇ~葉真中顕さんの作品っ!!
      今「絶叫」読んでますけど、面白いですっ。
      すでに、ハマり込んでますよぉ(^^;)

      ヒボさん、いつもありがとうございます。
      2023/04/07
  • 介護保険制度への疑問点や欠陥指摘などをベースにしたミステリー作品。
    独善と思い込みと一人よがりに固まった犯人が密かに数十人もの要介護老人を手がけるという設定に拒否感を覚えながら読了しました。
    介護施設や制度など少し知っている身としては頷けない箇所もあるのでついていけなかったのかもしれないけれど。
    それなりの展開とちょっとした意外性は仕込んであるけど、着眼点は買うもののこんな犯人像と犯人を暴いた検事の葛藤には違和感を感じてしまいました。2013年発刊、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品。

  • 自分達が…日本が抱えている大きな問題を露呈したような一冊だった。今、自分の身に起きても不思議ではない現実に、目をつぶり見ない振りをしている。改めて様々な事を考えるきっかけとなった。
    ※2023.10.9 映画鑑賞

  • 私が読む葉真中氏の作品、2冊目。
    本書がデビュー作らしいが、私には本書の方がずっと良かった。

    ミステリーを読み慣れている身としては、早くから気付いていたので、そんなに驚きは無かった。
    しかし、きちんと時系列通りで読みやすいのに、うまく騙す。
    その書き方がうまい。

    ミステリー要素よりも、介護問題から死刑制度に至るまで考えさせられるテーマが複数あって、そちらの方で心をかき乱された。

  • データ分析、「彼」のトリック、など、ミステリーとして読ませる作品でした。ベースとなっている介護問題も明日は我が身の内容だけに、胸に迫るものがありました。ただ、登場人物の性格や思考に多少違和感を感じる箇所があり、ストーリーありきで練られたようにも思われました。
    映画では実写が難しい部分があるので、どう表現するのか気になります。

  • 2020/07/05読了
    #このミス作品32冊目

    介護による苦悩から解放するための
    「ロスト・ケア殺人」。
    高齢化社会と言われる現代社会の
    法制度の欠陥等を暗に指摘した作品。
    誰もが直面する大きな課題。

  • 「介護に苦しむ人を救いたかった」
    43人もの老人を殺害した〈彼〉は言った。
    しかしそれはこの事件の本当の動機ではなかった。自身の死刑判決さえも〈彼〉の計画のうちであった。43人の命を奪い自分の死をもって完成する〈彼〉の「本当の目的」とは何なのか-。


    羽田洋子の生活は 母の認知症によって地獄の日々と一変した。夫とは離婚によって縁は切れた。しかし母は母だ。家族の絆。絆とは「手枷足枷」「人の自由を縛るもの」という意味もある。絆という呪いで いつか自分もまた息子のことも縛ってしまうのだろうか。洋子の介護という地獄はある日突然終わりを迎える。母の死によって。しかも自然死と判断された母の死は〈彼〉に殺されていた。喪失感と共に 洋子の心に訪れたのは「救われた」という思いだった。

    ✍︎┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
    家族の介護。祖父と祖母を続けて看取った母を見ていてその大変さは覚悟しているつもりだけれど…。数年前に鬱になった母を自宅で看護した1ヶ月、その短い期間でさえ心穏やかには生活できなかったなぁ。もう近い未来にくる親の介護。そして遠い未来ではなくなった自分の老後。老後の資金2千万?ナイナイ、無理無理‎(×ࡇ×。) 。年金ホントにもらえるの?子供に迷惑かけたくないって気持ちもよくわかる。


    物語の前半は〈彼〉の登場もあまりなく、介護について考えされられるというより気が滅入る感じで進んでいった。予想通りの展開かなぁと思っていたら犯人逮捕の瞬間にガンッΣ(゚ロ゚;)と衝撃の事実!


    〈彼〉の犯行は本当に人々の救いだったのか。
    絆は呪いなのか。「本当の目的」が明らかになった時に何を思いますか?


    • みんみんさん
      ラジャ( ̄^ ̄)ゞ
      そのときは私の腐った本にコメよろしく笑
      ラジャ( ̄^ ̄)ゞ
      そのときは私の腐った本にコメよろしく笑
      2023/04/06
    • ゆーき本さん
      (>Д<)ゝ”ラジャー!!
      そんときは みんみんさんの腐った本(笑)で
      また語り合いたいです
      (>Д<)ゝ”ラジャー!!
      そんときは みんみんさんの腐った本(笑)で
      また語り合いたいです
      2023/04/06
    • ゆーき本さん
      あ!うちの次男くんも 今は楽しく高校に通っております´▽`)ノ
      あ!うちの次男くんも 今は楽しく高校に通っております´▽`)ノ
      2023/04/06
  • 老人介護を主軸にしたミステリー。

    介護の辛さの描き方に目新しさはないけれど、そのどん詰まり感はよくわかる。親が死んでくれてほっとする、という感情が露悪的なものとしてではなく想像できてしまう私は、まだ本格的な介護を経験していないうちから、なんて奴だ!と自分のことが空恐ろしくなったり、いや、未経験だからなおさらなのかも、と思ったり。

    介護保険の「改正」の酷さは、ホームヘルパーとして働いている友だちがよくこぼしているので、知っているつもりではいたけれど、そっか、こういうことだったのか・・と愕然。ある時期、町に老人介護施設が急増して、それは老人が増えているのだから需要があるためなんだろう、と単純に考えていたのが、介護ビジネスの起業を促す国の方針が根底にあり、(それはホントに必要だから、だよね)ある程度商売として利益をあげるようになった時点で制度としての梯子をはずす、という非情さ、というより、無軌道ぶり。
    全く、それはないでしょう~~!とあきれてしまった。

    ミステリーとしての意外性、統計から見つけてしまえる「事件」、なぜ人を殺していけないかの問いに対するキリスト教的な見解、など面白く読めたところも多々あり、介護の話は辛かったけど読めてよかったと思う。

    ただ・・・
    作中で、認知症が進んで全く別の人格になってしまった親の介護の辛さ、が語られていたけれど、(それはもちろん、とてもとても切ないものだと予想できるけれど)私の場合は、老いとともに、うん、この人は元々こういう
    いい加減な、OR 依怙地な ところがあったよね、というところが増幅されて表れるのを見る辛さ、というものを感じているので、それも少しは織り交ぜてほしかったかなぁ、なんて。

    親の介護が終わっても(つまり亡くなっても、ということだよね、当然)その次には、自分の配偶者、あるいは自分自身の老いが待ち構えているわけで、その意味では、終わりはない、逃れられないという点もよく書かれていたと思う。

    人間、死ぬときには誰かの世話になってしまうのだから、せめて国のフォローだけは血の通った優しいものであってほしい。
    介護予備軍としても、被介護予備軍としても切実に思う。

    • tsuzraさん
      じゅんさん、おひさしぶりです。
      レビューをまた読めてほっとしました(^_^)/


      じゅんさん、おひさしぶりです。
      レビューをまた読めてほっとしました(^_^)/


      2013/06/01
    • じゅんさん
      つづら様(#^.^#)
      え~~ん(涙)嬉しいコメント、ありがとうございます~~。
      少々体調を崩してしまって、(でも今はほとんど大丈夫!)しば...
      つづら様(#^.^#)
      え~~ん(涙)嬉しいコメント、ありがとうございます~~。
      少々体調を崩してしまって、(でも今はほとんど大丈夫!)しばらくお休みしてしまいました。
      読むだけは相変わらず読んでいますので、ぽつりぽつりと感想も書いてきますね。
      これからもどうぞよろしく!(#^.^#)
      2013/06/01
  • ここ最近では特にお気に入りの作家、葉真中顕さん。wikiって見るとなかなかの多才ぶり。

    それはさておきこの作品、なんとも言えない内容になっている。他の作品でもだが、犯罪者の側の意見でもあながち間違っていない思想が、読者を唸らせる一因になっている。

    介護問題&安楽死問題がテーマ。綺麗事だけではすまされない介護の重さとそれでも守られるべき尊厳、政府主導の介護保険制度の改悪、以前から人口推計で分かっていた超高齢化社会の現在、そんな諸々の問題を解決する方法を発見した『彼』。

    『彼』は救世主なのか?それとも世紀の大量殺人犯?読んで色々思うところがある社会派本格ミステリ作品。構成も巧い。

  • まず、ミステリーとしては、私はまんまとどんでん返しにやられた。
    「あれ?あれ?」と何度も前の方を読み返し、「あー! そうか」と天を仰いだ。うまくミスリードするなあ。何度も読み返したくなる構成。

    さて、本命のテーマに関して。
    私は《彼》の思想に激しく共感してしまった。だから、逮捕後、大友検事と対峙するシーンでは、大友が「安全地帯からモノを言う偽善の人」に見えてしかたなかった。
    《彼》が大友に投げかける痛烈な言葉は、日頃私が持っている疑問そのものだった。
    他人の命を奪うことはすべて罪だというなら、死刑制度も同じことではないのか。かけがえのない命、と言いながら、特定の人の死を望むとはどういうことなのか。
    高齢化社会はもうすでに到来している。これからもっと厳しい高齢化社会となっていく。世の中は高齢者であふれていくのだ。すべての人が健康で裕福であるべきだというのは理想論で、実際には二極化は進んでいくばかりだろう。いつまで理想論をふりかざしているつもりなのか、と、まさにロストジェネレーション世代の作者は問いかけてくる。
    元総理大臣の失言が取りざたされたが、私にはどこが問題なのかわからなかった。健康な老人を殺せと言っているのではないのに。袋小路で行き詰まって、自分も周りも苦痛しかないとき、「死」は確実にひとつの救いになる。現代は人が死ななすぎる、と言ってもいいくらいだ。どうして尊厳ある人生の終わりが迎えられないのか。
    「絆」というキレイ事で周囲の人間まで引きずり込んで共倒れになることがそんなに素晴らしいことなのか。
    育児もそうだが、「人間の世話」には物理的に時間も手間もかかるのだ。そして身内であるからこその激しい消耗や失望もある。
    介護のために、収入の道が閉ざされてしまう現状を変えて行かない限り、いつかほんとにこのような「ロスト・ケア」が待ち望まれるようになるだろう。

    私の母は、自分も70歳の老人でありながら、老人施設でヘルバーの仕事をしていたことがある。入浴介助をしていたのだが、あるときしみじみと言ったことがある。
    「死ぬのも大変なんだよ」と。もうこのまま静かに逝かせてあげればいいのに、というような人も、病院でかろうじて命だけとりとめて施設に戻される。戻ってきてもそこにあるのは苦痛の日々だけなのに。
    「なかなか死なせてもらえないんだよねえ」と言っていたことが忘れられない。
    他人の命を勝手に奪う権利がないのと同じように、他人の命を勝手に引き伸ばす権利もないんじゃないだろうか。

    ふだんからいろいろ考えていることがたくさん盛り込まれた作品だったので、読み終わっても、いろんな思いが渦巻いて止まらない。

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著者プロフィール

葉真中顕

1976年東京都生まれ。2013年『ロスト・ケア』で第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞しデビュー。2019年『凍てつく太陽』で第21回大藪春彦賞、第72回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。

「2022年 『ロング・アフタヌーン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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