巨鯨の海

著者 :
  • 光文社
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レビュー : 75
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334928780

感想・レビュー・書評

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  • ただ文字を追うだけで、
    こんなに歯をくいしばったり、
    全身に力が入ったりするとは
    思ってもみませんでした。

    江戸から明治にかけての太地鯨組の物語。

    小山とも思える大きな鯨に対峙するのは
    一艘に十数人が乗る小さな船の船団。
    総勢200~300名で行う捕鯨は
    結束なくしては命にかかわる。

    そこはまさに命と命がぶつかり合う死闘。
    その上自然も読み間違えれば敵となる。

    でも物語はそれだけではない。
    女子供や年寄まで捕鯨の何かに携わっている地であり、
    そこの生まれの人々だけでは手が足りず、
    他所からの出稼者も受けて入れていく地でもある。

    生活を保証するかわりに、
    鉄壁の『掟』を守らねばならない。
    大勢を束ねるときに必要な様々な掟に縛られた生活に
    欲を出すもの、違和感を持つもの、普通にできないものたちは
    太地にはいられなくなっていく。

    覚悟がないと、生きていけない地。

    その覚悟が色々な角度から突きつけられる6編で
    最後まで気が抜けませんでした。

    伊東潤さん、初めて読みました。
    クジラ好きとしては…最期の絶叫など耳を塞ぎたくなるし
    血生臭さまで伝わってくるし
    体に力が入ってしまうほどの緊迫した文章に
    たじろぎましたが…
    ズシンと胸に響きました。

    加工した肉を何の迷いもなく食べている時代に生まれつき
    「いただきます」の意味が薄れてたなぁと。
    何かの命で日々紡がれている私の命。
    しっかり生きなきゃなぁと思い直す一冊です。

    • 怠さん
      『いいね』ありがとうございました。

      鯨との戦い、生活する人々の人間模様、時代の移り変わりを重層的に描写していて、読み応えがありますよね...
      『いいね』ありがとうございました。

      鯨との戦い、生活する人々の人間模様、時代の移り変わりを重層的に描写していて、読み応えがありますよね。

      なにぬねのんさんは、クジラが好きなようですから、尚更のめり込んだことでしょうね。

      国際状況や現代的価値観では受け入れられないことなのだろうけれど、文化を保護するという意味において、無理してクジラ漁を禁止しなくても良いのでは、と思ってしまった。まあ、賑々しく漁に出る必要もないのだろうけれど。
      2014/04/20
  • 伊東潤さんの本はこれ以前にも直木賞候補になっていたけれど、伊東潤という作家を知らなかった。
    新聞等で彼の名前を目にすることもあったけれど、歴史小説作家ということで完全にノーマークでした。
    この本もタイトル、装丁ともに、全く感じるものがなかった…(失礼なことを言っていますね…、ごめんなさい!)
    そんな私がこの本を手にしたきっかけは、日経新聞(国際版)の『プロムナード』に掲載されている伊東潤さんのエッセイを読んだこと。
    そこで「巨鯨の海」が第1回高校生直木賞を受賞したことを知りました。
    高校生直木賞は、第149回、150回直木賞候補12作品の中から、麻布高(東京)・盛岡四高(岩手)・磐田南高(静岡)・筑紫女学園高(福岡)の4校で行われた予選を通過した6作品の中から、各校2名の代表が議論し、決定したもの。
    予選を通過した6作品は、【巨鯨の海】・【王になろうとした男】(伊東潤著)、【ジヴェルニーの食卓】(原田マハ著)、【望郷】(湊かなえ著)、【恋歌】(朝井まかて著)、【あとかた】(千早茜著)。
    著者である伊東さん自身が「自分の作品は歴史小説ということもあって、五十代以上じゃないと楽しめないと思ってきた。」
    「昭和の小説の臭いを濃厚に漂わせた大人向けの作品が高校生に評価されるとは思ってもみなかった」と。
    フランスで最も権威のある文学賞「ゴングール賞」を高校生に選ばせたらどうなる?という発想から生まれた「高校生ゴングール賞」
    フランスではテレビで生放送されるぐらいの人気だとか。
    高校生直木賞はその「高校生ゴングール賞」を参考にして開催された。
    そんなことを知ると、この高校生直木賞受賞作を読んでみたくなるというもの~(笑)
    で、読んでみたら、面白い!!
    舞台は江戸中期から明治にかけての和歌山県太地。
    捕鯨によって生きている村。
    鯨をしとめるために生まれた組織捕鯨。
    それは捕鯨で生きる人々の命を守るためである一方、どんなときにも揺るがない掟をも生み出した。
    その掟の下、命をかけて鯨と向き合う男たち。
    そんな村に寄せる時代の波…
    伊東潤さんの他の作品も読んでみたい!!

    • フッタさん
      面白い本を紹介してもらえました。有難うございます。azu-azumyの言われるように伊藤潤さんの他の作品も読んでみたいと思いました。これから...
      面白い本を紹介してもらえました。有難うございます。azu-azumyの言われるように伊藤潤さんの他の作品も読んでみたいと思いました。これからも面白い本を教えて下さい。
      2014/10/12
    • azu-azumyさん
      フッタさん、コメントありがとうございます♪
      伊東潤さんの本は初めてだったのですが、面白かったです!
      こちらこそ、また面白い本を教えてくだ...
      フッタさん、コメントありがとうございます♪
      伊東潤さんの本は初めてだったのですが、面白かったです!
      こちらこそ、また面白い本を教えてくださいね。
      2014/10/30
  • 久しぶりにしっかり読める小説を読んだ気がします。短編と言えないほどそれぞれの物語が濃く、それぞれ読後感が残ります。ダイナミックな捕鯨の様子、目の前の海面から鯨が飛び出してきそうな迫力、とても読み応えがあります。

  • 母からの借り物。

    2013年度上半期、直木賞候補作。

    江戸時代、一種治外法権的な扱いを受けるほど富を得ていた太地という漁村の、古式捕鯨にまつわる短編集。
    鯨の持つ知恵と身体、そして人間の持つ知恵と身体がぶつかり合う様はダイナミックで、生々しい。

    捕るものと、捕られるものという対比関係にありながら、両者が拠り所とするのは家族という情であることに変わりない。

    その情を絶たれた時、鯨も人も荒れ狂い、尋常ならざる力で場を乱すのだと感じた。

    また、組織捕鯨の見事さと危うさもよく描かれている。良くも悪くも、男臭が隅々まで滲んでいる作品である。

  • 和歌山県の太地古式捕鯨を描いた短篇集。
    6話の短編はそれぞれ独立していて連作短編ではないのが今どきの短篇集としてはかえって新鮮な一冊。
    太地の古式捕鯨は、船一艘一艘にそれぞれ役目が有りそのチームワークで鯨に挑む命がけの猟法。
    捕鯨から解体までの職種の一つを取り上げ一冊読むと太地古式捕鯨の全貌を描く。
    「大背美流れ」を描いた最終話は衝撃的だが、冒頭とは予想外の展開をする「決別の時」が良かった。

  • う〜ん。なぜ直木賞を逃したのかが解らない。ぼくは本作の方が数段楽しめた。治外法権的閉鎖社会の厳しい掟のなかで生きる人々の、強く、勇ましく、悲しい話。巨鯨と荒れ狂う海での命がけの攻防。海で戦う男たちを支える、裏方の男たちの複雑な気持ち、息子、夫、恋人に寄せる女たちのさまざまな思い、時代とともに変化する生活環境。この一冊に込められたメッセージはあまりにも多義にわたり、強烈に心を揺さぶりました。重厚で骨太な小説です。

    • なにぬねのんさん
      怠さん、はじめまして。なにぬねのんと申します。

      レビューの内容が正にその通り!と思ってしまい、思わずコメントさせていただきました。本を...
      怠さん、はじめまして。なにぬねのんと申します。

      レビューの内容が正にその通り!と思ってしまい、思わずコメントさせていただきました。本を読んでこんなに肩が凝るほど力が入ったのは、すごく久しぶりです。

      それと、この本とは関係ありませんが…
      怠さんのプロフィールが
      私の現状と全く一緒だったもので…
      フォローさせていただきます。

      これからもなぜか順番悪く、
      自分に割当が来るときが読み切れない程
      複数となってしまうタイミング最悪!
      の図書館予約本と格闘しながら、
      面白いレビューで良本を教えてください。

      宜しくお願い致します。
      2014/04/19
  • 和歌山・太地町、古式捕鯨の短編小説、6編。会話に方言が多い。図書館本。 105

  • 和歌山県太地町を舞台に、古式捕鯨で生計を立てる漁師や漁村の人々を描いた作品。読み進めていくうちに、古式捕鯨の世界観に取り込まれてしまった。伝統的な古式捕鯨は明治を最後に途絶えたみたいだけど、今に伝わる捕鯨もこの本に書かれたような村総出で行う鯨組があったからこその伝統かと思う。
    この本を読むと、日本の小さな村に外国の人が押し寄せて、捕鯨についてあーだこーだ言うのはいいが、無理やりやめさせられる筋合いや権利はないんじゃないかと思ってしまう。
    短編6編が収められそれぞれに時代、登場人物が違う。

  • すごい。興味が出てくる。最初は読むのがきついが、なれるとかなり面白い。これこそ小説!

  • 2017.05.12
    初めての著者。山本一力さんの本を思い出しながら読んだ。生々しさや厳しさ、そして鯨への感謝が強く描かれている感じがした。またこの著者の本を読んでみよう。

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著者プロフィール

1960年、神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学卒業。外資系企業に長らく勤務後、文筆業に転じる。『国を蹴った男』で吉川英治文学新人賞、『黒南風の海‐‐加藤清正「文禄・慶弔の役」異聞』で第1回本屋が選ぶ時代小説大賞、『義烈千秋 天狗党西へ』で歴史時代作家クラブ賞(作品賞)、『巨鯨の海』で山田風太郎賞と第1回高校生直木賞、『峠越え』で第20回中山義秀文学賞を受賞。『城を噛ませた男』『国を蹴った男』『巨鯨の海』『王になろうとした男』『天下人の茶』で5度、直木賞候補に。著書に『武田家滅亡』『天地雷動』など多数。

「2017年 『幕末雄藩列伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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