灰色の犬

著者 :
  • 光文社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334928971

感想・レビュー・書評

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  • 1月-1。3.5点。
    出世の道を閉ざされた警官、できの悪い息子、落ち目のヤクザ。
    警官は昔陥れられた際の証拠を掴みかけ、息子は090金融にはまり、ヤクザは連合内の地位を守るため、警官にすり寄り。。
    丁寧な描写。結構面白い。
    堕ちていきながらも、最後は救い。
    次作も期待。

  • 元県警エースの父、無職の息子、落ちぶれた暴力団員の3人の視点で綴られる警察小説。
    県警本部捜査四課のエースだった片桐誠一は、情報漏洩の疑いで条川署に左遷された。十年後、誠一(52)は県警本部から流出した捜査員名簿を入手する。捜査員名簿の出所を暴けば、過去の濡れ衣を晴らせると、誠一はひとり捜査に乗りだす。しかし他部署の応援で拳銃のやらせ捜査を命じられ、顔見知りの暴力団幹部、刀根剛(52)に協力を求める。ちょうどその頃、誠一の息子、遼平(25)は職にあぶれたあげく、090金融に手をだして返済に苦しんでいた。巨大組織に狙われた三人は絶体絶命の窮地を脱出できるのか…。

    簡素で読みやすい文体ながら、描写の内容は十分に緻密でリアリティに満ちています。
    冒頭はダメ息子と頑固親父の陰気な父子小説なのかと思いましたが、そこに風穴をあけたのが暴力団幹部ながらうだつの上がらない刀根。歯医者に律義に通いつつも、組織でも家庭でも肩身の狭い思いを強いられているのが笑いを誘います。刀根の登場により展開が一気に加速しましたね。後半は怒濤の展開で、決して地味な小説ではなかったです。
    そして特筆すべきは警察、暴力団、090金融、派遣労働の内部事情まで描き出す著者の筆。さまざまな職業を経験した作家ならではの描写が冴えわたります。
    弱者や貧乏人を搾取する社会。表向きはクリーンでも、背後では荒み切っている実態が暴かれており、暗澹としてきます。考えさせられました。
    同じ世界観という関連作『白日の鴉』も読みたくなりました。

  • 属する組織や社会の犬に落ちぶれた者たちの反撃。

    一昔前に県警の捜査情報漏洩の濡れ衣を着せられ、所轄に飛ばされた片桐誠一は、地元の不良グループのリーダーから捜査情報漏洩の証拠品を掴むことに。

    昔の汚名を晴らすべく動き出した片桐に、組織対策部への応援の使命が下り、やらせ捜査での拳銃の摘発を命ぜられ、昔の捜査協力者・刀根と接触する。

    刀根は組での立場が悪くなり、後輩のケツ拭いをするために刀根に協力することになる。

    片桐の息子・遼平は、フリーターで借金に追われる毎日で、090金融を手伝う羽目に。

    誠一、刀根、遼平とそれぞれが社会や組織の犬と化し、白黒つけられぬ存在からの反撃をもくろむ。


    後半は一気読みでした。

    どうしようもない人たちばかり出てくるところは黒川博行作品と匂いが似ていて、大好きです。

    博多弁の軽快さも面白いです。

  • 2016_10_24-0110

  • 最後までどうなるのか 面白かったです

  •  とある地方都市で、フリーターの遼平、警察官の父親である誠一、ヤクザの刀根がそれぞれ切羽詰まった状態に陥る。警察とヤクザの持ちつ持たれつの関係といい、最後に三者のストーリーが交差するまでの、理不尽な力や心の弱さに負けて人間が窮地に陥っていく様は目が離せない。
     遼平がパチンコで遊ぶ金欲しさに何気なく借金したことから、ずるずると貧困ビジネスの地獄へ落ちていく様はもう一つの重要なストーリーなのだが、同じ作者の『東京難民』の方がより深刻でリアルだっただけにすこし物足りなさを感じた。
     ラストは『東京難民』同様、救いのある終わり方で、これがこの作者のスタイルなのだろうか。

  • 息子が借金を重ねていく様は読んでて辛い。

  • 片桐誠一は県警の捜査4課で活躍していたが,捜査情報を漏洩しているとの告発があり,左遷という形で所轄の生活安全課にいる.ある日突然暴力団の対策を強化するため組織犯罪対策課に応援を要請され,昔のコネを使って拳銃を出せと命ぜられる.息子の遼平は大学を出て就職したがブラック企業だったので程なく退職し,バイトで金欠状態になっており怪しげなサラ金に借金を作っている.誠一は暴力団の刀根剛の動きでチャカを手に入れて応援としてのノルマを果たすが更に成果を要求される.伊能建設と接触するうちに危ない目に遭うが,大きな罠があることに気づき,刀根と組んでその全貌を明らかにする.その過程で遼平が罠にはまり,誠一も同僚からの策略にはめられるが,最後の最後で目的を達成する.軽快なテンポで進む状況が,読みやすい文体で記載されており,楽しめた.

  • 最後のページで思わずニヤリとしてしまいました。
    読みやすくてテンポも良くて面白い!!

  • 20代とヤクザの苦悩と警察内部の個人的な事情が絡まって面白かったです。福澤徹三は難しい言葉や回りくどい言い回しがない文体なので、どんどん読み進めることができますが、本書は特に後半、目まぐるしく視点が変わり、どういう結末を迎えるのか気になり、一気読みでした。

    年齢や職業や立場を超えて、それぞれが抱える不安や苦悩は、その本人にとっては深いものであっても、他者がそれらを本当に理解することはできないのだと思いました。

    自分以外の人のことを思う気持ちは、そこに良心がなければ、例え家族であっても真実には分かり合えないことがあるのだとも感じました。

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著者プロフィール

福澤 徹三(ふくざわ・てつぞう):1962年、 福岡県生まれ。ホラー、怪談実話、クライムノベル、警察小説など幅広いジャンルの作品を手がける。2008年、『すじぼり』で第10回大藪春彦賞受賞。著書に『黒い百物語』『忌談』『怖の日常』『怪談熱』『S霊園』『廃屋の幽霊』『しにんあそび』『灰色の犬』『群青の魚』『羊の国の「イリヤ」』『そのひと皿にめぐりあうとき』ほか多数。『東京難民』は映画化、『白日の鴉』はテレビドラマ化、『Iターン』『俠(★正字)飯』はテレビドラマ化・コミック化された。

「2023年 『怪を訊く日々 怪談随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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