三月

著者 :
  • 光文社
3.51
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本棚登録 : 423
感想 : 93
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334928988

感想・レビュー・書評

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  • 評価は悩みに悩み、★5つ。
    小説の締めくくり方は、またそこかとも思えなくもなかったし、不必要にも思えた。
    しかしそれを差し引いても尚、心に響く作品だった。

    同窓会の案内状を受け取ったのをきっかけに、短大時代の友人たちが20年を経て再会する話だ。
    当時自殺とされた男子学生が本当に自殺だったのか、その理由はなんだったのかというのがそもそもの発端。
    謎は登場する女性達によって語られ、真実が浮かび上がるのか。

    でもこの本はミステリーでも何でもない。
    そこの描かれるのは彼女たちの生き様だ。
    きらきらして悩みなどなかったあの頃から、何を得たのか、何を失ったのか。今何を抱えているのか。

    あんなに毎日会っていたのに、段々と疎遠になった友達。
    お互いの生活にいっぱいいっぱいで物理的にも精神的にも再会なんてかなわない日々。
    そんな自分と重なって苦しくなった。
    つい最近、大学時代の友人とメールのやりとりをしていて、お互いに励ましたり励まされたり。
    学生時代の友達ってやっぱりいいなと再認識しているこの頃。
    この小説のようにはなかなか行かないけれど、たまには重い腰を上げて会いに行ってもいいじゃないか。
    そんな気持ちになった。

    大島さん、初読ながらウマが合った。
    他の作品もチャレンジしてみよう。
    この作品、アラフォー女子に是非お勧めします。

    • 夢で逢えたら...さん
      こんにちは。vilureefさんのレビューを読み、面白そうだったので読みました。
      確かに女性なら共感できるお話ですね。
      大島さんはvil...
      こんにちは。vilureefさんのレビューを読み、面白そうだったので読みました。
      確かに女性なら共感できるお話ですね。
      大島さんはvilureefさんのお勧めがなければ、
      知らない作家さんでした。
      新しい出会いに感謝です。


      2014/02/21
  • 読み終わって『三月』というタイトルの意味に気付く。
    最後の最後まで気付かなかった私は鈍いのかもしれない。
    あんまり考えてないんだろうな。反省…

    大島真寿美さんの小説の中で生きている女性達が好きだ。
    不安を抱えて、過去を悔やんで、それでも自分を手放さない人達。
    完璧なんかでいられるわけがない。
    どんなに不甲斐なく思っても、自分からは逃げられない苦しさ。
    ちゃんとその苦しさを知っていて、そこで立ち続ける彼女達の姿に勇気づけられる。

    そして友人との関係にも嘘がない。
    話せることと話せないこと。
    相手の全てを好きなわけではなかったりすること。
    きれいじゃないところも、チクッとするところも全部、たぶんあのままだ。

    信じた人、夢、未来と別れなきゃならない時には、自分だけが取り残されたような、世界中から嫌われてしまったかのような気分になってしまう。
    そんな時に慰めあうでもなく、励ましあうでもなく、私とあなたの関係は変わっていないよと伝えあえるような相手がいたらもう一度信じられるものを探せるかもしれない。
    そんなふうに思える物語。
    あの『三月』も長い人生の中の困難のひとつとして描かれている。
    その困難を彼女達は友人と一緒に乗り越える。

    世界で1番好きな人、世界で1番好きなこと、それが力になるのはもちろんその通り。
    でも、その1番が永遠じゃなかったら、信じたような運命じゃなかったら…
    1番じゃないかもしれないけどいつまでも変わらない関係でいられる友人とちょっと弱音を言い合って、そこからまた歩き出せるかもしれない。
    いや、歩き出せる。歩き出したい。

  • 大島真寿美さんは、ずるい。
    上手すぎる、心の機微を捉えるのが。

    東京の短大時代の同級生たち。
    卒業の3月から20年。
    人生いろいろ人それぞれに、
    過去も未来も、人には言えないことも、
    葛藤もある。

    そして、3.11。

    上手く言葉にできない感情を、
    誰もが感じたことのある怖れを
    抱えつつ生きている中で、
    突然つきつけられた
    現実。

    20代、30代、40代と
    必死で生きている同級生たち。
    自分と友を重ね合わせて読み進めた。
    登場人物ひとりひとりが、
    本当に目の前にいるような、
    本当は自分の友達のような、
    自分も登場人物の中にいるような、
    なんだか不思議な感覚に陥った。

    素晴らしい作品!
    共感の嵐!

  • 女友達っていいなぁ、と年を取ってつくづく思う。
    あの頃は何のしがらみもなく、ただその人間性だけでつき合っていた。
    会えばお互い年を取ったなぁと思うけど、
    笑顔の中に昔の面影がくっきり見えて、
    20年の空白なんて一気に飛び越えてしまう。
    喋っているうちに、ストレスでかちかちだった心が少しだけ柔らかくなる。
    そしてさんざん笑った後、またいつもの生活へそれぞれ戻って行くが、
    心には明日へのエネルギーが満ちている。

    登場人物それぞれが厄介な悩みを抱えているが、
    落ち込んでいても友達と話をするうちに、だんだんと前を向き始める。
    自分は最悪な状況でも、友達を勇気づける彼女らは美しい。

    友の顔を一人一人思い浮かべながら、この本を読み終えた。
    温かさに包まれた、安堵に満ちた読後感だった。

    • katatumuruさん
      夢で逢えたら・・・さん、はじめまして(^^)
      私のレビューを読んでいただき、たくさんの花マルとコメントをありがとうございます(^^)
      し...
      夢で逢えたら・・・さん、はじめまして(^^)
      私のレビューを読んでいただき、たくさんの花マルとコメントをありがとうございます(^^)
      しばらくこのサイトを訪問してなかったのでお礼が遅くなってしまい申し訳ありませんm(__)m
      温かいコメントに心がぬくもりました。

      コメントでいただいてたように、私は有吉佐和子さんの本が大好きなんです(^^)
      でも亡くなられてるので新しい本は出ないからチビチビ惜しむように読んでます。
      今まで読んだ中では「悪女について」と「香華」が特に読みやすくていいと思いました。
      女性の情感やドロドロした感情を見事に描いてると思います。
      もし読まれてないようならぜひ・・・!
      オススメいたします。

      夢で逢えたら・・・さんのレビューで初めてこの作者さんの事を知りましたが、とても素敵なレビューなので興味をもちました。
      機会があれば読んでみようと思います。

      では、これからもどうぞよろしくお願いします(^^)

      2014/02/22
    • 夢で逢えたら...さん
      katatumuruさん、コメント有難うございます!
      私もこの作家さんは初読みで、やはりお気に入りさんのレビューを見て興味を持ちました。
      ...
      katatumuruさん、コメント有難うございます!
      私もこの作家さんは初読みで、やはりお気に入りさんのレビューを見て興味を持ちました。
      温かい気持ちになれるので、機会があればぜひ!

      私も好きな物は最後に食べるタイプですので、有吉作品はkatatumuruさんと同じくちびちび楽しんでいます。
      なにせ新刊はもう出ませんから、全部読んでしまうのが恐いのです。
      有吉さんをたくさん読んでる方は少ないので
      嬉しくてコメントしました(^^#
      2014/02/22
    • vilureefさん
      こんにちは。

      コメントありがとうございました♪
      私の拙いレビューでも伝わることってあるんだなと思うと嬉しい限りです。
      全く手に取る...
      こんにちは。

      コメントありがとうございました♪
      私の拙いレビューでも伝わることってあるんだなと思うと嬉しい限りです。
      全く手に取ることのなかった作家さんとの出会いって嬉しいですよね。
      これもブクログをやってるおかげです。
      こちらこそ、色々参考にさせていただきますね(^_-)-☆
      2014/02/24
  • 先に読んだ大島さんの作品『チョコリエッタ』が、私の中で評価がかなり低かったものだから自分でもびっくりです。すごく良かった!

    短大の同窓会の案内が届いた事をきっかけに、今まで疎遠になっていた女友達と連絡を取り合っていく過程が描かれています。40歳になる彼女達。私も今年36歳になるのでとても感情移入しやすかったです。30歳以上の女性は共感できる部分が多いのではないでしょうか。

    大人になった今改めて感じるのは、若い時、特に学生時代はなんだかんだで特殊な環境ですよね。周りはみんな同世代で、気の合う仲間だけと関わり合っていれば済むし、それが許される。
    社会にでてみると、その世界がいかに狭い視野で出来たものでいかに自由な環境だったんだと思い知らされます。

    生きるという事は厳しい。一生懸命に生きていても、いい事も悪い事も突然思いもよらぬ方向に転がったりと。

    それぞれが別々の人生で、一生懸命今を生きている姿がとても良かったです。また、友達っていいな、捨てたもんじゃないなと思えたラストもまた心に残りました。

  • かつての短大の同級生達、20年ぶりに連絡を取り合った彼女達の今、そしてこれまでの歩み…。
    この類の群像ものが昔から大好きだ。特に今回は登場人物らがアラフォーということもあり、同世代の自分としては共感する部分が数多くあった。
    「人生って、つくづく甘くないって思う。ていうか、けっこう過酷。」
    この言葉が象徴するように、短大卒業後の彼女らのその後は順風満帆ではなかった。自分ではどうにも抗うことが出来ない流れにのまれ、選べなかった道がいくつもある。
    仲間だった森川の死…その死の原因は何だったのか?をきっかけに、あぶり出されていく彼女たちの軌跡。久しぶりの同級生との電話を機に、蓋をした昨日と向き合い、今を受け入れながら前を向いていこうとする彼女たちの姿勢に、自分を重ねた。皆の再会のシーンは、何だか自分のことのようにくすぐったく、嬉しかったな。会っていない時間がどんなに長くても、再会すると不思議と距離は一気に縮まり、「あの日」に戻る。その時間の愛おしさ、かけがえのなさが本当にありがたいと思えるのだ。

    そして…
    「三月」。
    ざわざわと感じていた胸騒ぎ。
    「だって、ほんのちょっとしたことで、人生って大きく変わってしまうものでしょう。これから先だって、ほんのちょっとしたことで大きく変わってしまうんだと思うのよ。」
    このセリフが胸をかすめる。
    自分の中では3.11をまだ客観的に捉えることはできずにいるけど、嬉しいことも悲しいことも受け入れ、乗り越え、生きていくのだなと静かに思える。目の前の現実に打ちひしがれても…「いい年したおばちゃんだからね、いざとなると強いんだよ」って一文が好きだ。そう、だてに年重ねていないのだよ。
    この本を読み終えてから、あの三月に届いた、友人たちからのメールを読み返した。
    ああ、この物語は私たちの物語でもあるのだなとしみじみ思う。慌ただしさに流されて日々を過ごしがちだが、時々振り返って、元気だろうかとかつての仲間達に想いを馳せたい。

  • 優しい文体で短大の時の友達五人の人生が描かれてた。
    色々ある。
    一言で人生と言っても全然違う。同じ短大にいて一緒に過ごした人たちも全く違う人生を創って歩いていく。
    心の葛藤とかもすっと私に伝わってとても共感できた。
    色んなことがあっても、その人生を自分で受け入れて前を向けることは本当に素敵なことだなぁっとほっこりした。

  • 短大時代の同期と20年を経て電話で繋がり再会する物語。といってもそれぞれの章ではひとりひとりのその頃と今を丁寧に描いており、同じくらいの年ごろの私としてはとても共感できるし、リアリティがある。
    学生時代の友だちが亡くなってしまったところの云々は再会の序章と思っていたが、阪神淡路、東日本大震災を経ての命の尊さと生きる力強さに繋がっていくとは…。最後の部分はやや駆け足気味なのは否めず少し残念だが、全編を通じて心の機敏も丁寧に描かれた良作だと思う。

  • 良かったです。私も彼女たちと同じくらいになったら学生時代の友だちと旅行にいきたいなぁ。
    バリバリ稼いで、男友だちも沢山いて、恋愛にはクールで…就職で遠く離れたのもあるけれど、あの頃の私とは違いすぎて、その違いを知らせたくもなくて会うのが億劫になってしまっていた。けれどやはり生きているうちに会いたいな。久しぶりに電話をしよう。知られたくないことも正直あるけれど、それより話したいことがたくさんあるよ。

  • 三十路を迎え、それぞれの「平凡ながらそれなりに激動な」人生を送っている6人の同級生たち。彼女たちは、一人の同級生の電話によって、過去を思い出しまた向き合うことになる。一人の男子学生の自殺は、ほんとうに自殺だったのだろうか。すでにすべてが済んだその疑問から、彼女たちの過去と現在が交差して、それぞれにさざなみをたてていく…。
    ほのぼのとした、口語体混じりの軽い筆致で、さりげなく「イイ歳した」女性たちのリアルな姿を浮き出していきます。何気ない会話から、それが浮き立ってきて形を持っていくので、流されるように読んでいたら、突然「え!?」とびくっとしてしまうことも。そういったことは普通の会話でもあることで、それだけ自然な流れ、ということなんでしょうね。
    彼女らの悩みは、なにか事件を起こしたりというような結果にはならず、そしてまた劇的に解決をするわけではありません。けれども、それでも、ポジティブにやっていこうという姿勢を、この再会が生んだのは間違いなく、そう考えれば「友達」の絆というもののたくましさ、かけがえのなさをひときわ感じられるのです。
    タイトルの由縁はお察しのとおりというか。
    ただ自然にめぐってきたひとつの「事件」として描かれており、不自然な印象はなく、その過酷な現実をも受け止めて生きていく彼女達の姿にこそ、この物語のキモはあるわけでしょう。彼女たちは強い、わけではない。けれども強く生きようとしている、それがわかるから、とてもすがすがしく、そして未来を祈りたい気持ちに、させられるのです。

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著者プロフィール

1962年名古屋市生まれ。92年「春の手品師」で文学界新人賞を受賞し同年『宙の家』で単行本デビュー。『三人姉妹』は2009年上半期本の雑誌ベスト2、2011年10月より『ビターシュガー』がNHKにて連続ドラマ化、2012年『ピエタ』で本屋大賞第3位。主な著作に『水の繭』『チョコリエッタ』『やがて目覚めない朝が来る』『戦友の恋』『空に牡丹』『ツタよ、ツタ』など。2019年『妹背山婦女庭 魂結び』で直木賞を受賞。

「2021年 『モモコとうさぎ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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