雨のなまえ

著者 :
  • 光文社
3.29
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本棚登録 : 953
レビュー : 154
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929053

感想・レビュー・書評

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  • 雨のなまえ・・・というと、想い出すものは狐の嫁入りとか霧雨、小糠雨、小夜時雨・・日本は雨の呼び方(名前・種類)が多い気がする。しかも響きも字面も美しい。本書には、最初そんな美しい雨と人とを織り成す優しい物語をイメージをしていただけに、読み進めていくにつれなんともやるせなくなってしまった。
    短編の中の登場人物は皆、現実に起こり得る負の感情と向き合わざる負えない人達ばかり。幸せの中にいるはずなのにふと逃げ出したくなる気持ち・・妄想の世界に身を置くことで生きながらえる人など、、それらが短いストーリーの中にぎゅっと凝縮されていてチクリチクリと読み手の心を刺す。 流せるものなら流してしまいたいものを抱えて生きている、それこそが人生というものだろう、紛れもない現実の一つなんだよというメッセージ。でも、この本がそこまで絶望的でないのは、やはり流れなくても自分の中に抱えたままでも、雨上がりの雲の切れ間から青空を観る事も人は許される、誰だって見れるはずなんだよ!という、作者の思いも汲み取れるからだと思う。そんなことも感じさせてくれた一冊。(3.5)

  • 「午後から雨になるみたいですね」
    こんな世間話の文底には、「雨なのか、嫌だなぁ」「降らなきゃ良いのに」「傘用意するのがめんどくさい」といったネガティブな感情がある。

    雨は降るとめんどくさい。
    だが、雨が降らない日が続くとそれはそれで困る。

    その雨をモチーフにした短編集。

    「雨のなまえ」
    妊娠中の妻がいるのに浮気をしている主人公悠太郎。
    同級生で資産家の娘・ちさとにとっては待望の妊娠。
    母子家庭の悠太郎は、母親の男が変わるたびに引越しをする不安定な少年時代を過ごした。
    悠太郎が一生分の給料を出しても買えない様な高級マンションを、娘の妊娠と同時に買い与える義父母。

    「記録的短時間大雨情報」
    痴呆が始まったと思われる義母との同居がはじまる。夫はまったくの無関心。一人息子の教育費のためにパートに出た先で出会ってしまった大学生。
    自分の名前ではなく「作哉くんのお母さん」となってしまう日常。
    その中で澱のようにたまっていく抑え切れない感情。

    「雷放電」
    「一人の人間に割り当てられた幸せの量があるとして、自分はもうそれを使い果たしてしてしまったのではないかと思う」
    「こんなに美しい女が自分の妻になるなんて夢みたいだ。おれは毎日、何度でもそう思う」

    「ゆきひら」
    中学校教師の臼井には、中学時代の同級生ユキとの悔やんでも悔やみきれない過去があった。妻の戸紀子にはそれは話していない。それは戸紀子のなかの秘密を確かめるのが怖かったから。そして教師の仕事にのめりこむことで、そこから逃げていたのだ。

    「あたたかい雨の降水過程」
    「おまえの言葉は刃物みたいに人を傷つける」別居している夫から言われた繭子。シングルマザーとして必死に働き子育てに奮闘するが、思うように行かない毎日が続く。
    「仕事と子育てだけしていたかった。そうしたくて、夫と離れた」のに。


    心の奥底に眠っている自分でも気づかない感情に気づかされる5つの短編。

  • 雨にまつわる短篇5つ。
    切なくて虚しく、そして暗くて軽い、
    そんな印象の作品たち。

    暗虚しいのに 嫌いではなく、むしろ好き。

  • どの話も雨のシーンが出てきて、薄暗く湿気の多いスッキリとしない短編集。

    最終話だけ少し救いが見えたかな。

    窪さんに人間の暗い膿んだ感情を書かせたら天下一品なんではないでしょうか。
    どうしようもなく病んでいるのに、すごく血が通っている様な生命力を感じます。

    私はこのどうしようもない感覚、
    すごく好きです。

    雨のなまえ/記録的短時間大雨情報/雷放電/ゆきひら/あたたかい雨の降水過程

  • 満たされなくて、もがいてみてもどこにも辿り着けない物語。
    ざらざらした手に撫でられるようで不快なんだけど、その手の残した感触を忘れられない。

  • 窪美澄の作品だと先入観を持って読むと期待外れ。
    救いがない、未来がない。
    特に表題作の「雨のなまえ」。
    彼女の作品の柱にはいつも生と性があるが、性だけが残った感じ。

    全くの期待をしないで読んだらそれなりに読めるのかもしれない。
    巧いな~、暗いな~、でも何が言いたいんだろうと思いながら。
    それだけ今までの窪さんの作品が秀逸なことの裏返しだろう。

    でもやっぱり読後感が悪すぎる。
    ここまで登場人物たちを追い込む意図はいったい何なんだろう。
    むむむ・・・。
    次回作に期待。

  • 窪美澄らしい、毒の入った短編4編。
    一番印象に残ったのは「雷放電」。冴えない男が誰もがうらやむ美しい女を妻とし、幸せな結婚生活を続ける。妻は日
    がなけだるそうに過ごし、夫は働きながらその妻の世話をする。低いトーンで語られる物語の結末が実はサスペンスだったことをみじんも感じさせない筆力はさすが。

  • 雨にまつわる短編集

    何となく今に不安や不満を
    もって生きてる人たち
    罪悪感を理由にしたり
    運命みたいなものに流されたり
    プライドとか見栄にしばられたり
    そんな人の方が多いとは思うけど

    それでも何かをきっかけに
    少し変わってみたり
    心決めたりしてみる
    だけど
    ハッピーエンドには
    終わらない

    結局・・・という思いが残り
    さらに自分を追い詰めるような

    なんだか重いというか
    イタイというかそんな読後感
    エロさが人間的だなぁ

    窪さんの本って
    暗くて重くてエロいけど
    なんか読んでしまう

  • この人の描く作品はいつも生々しくて、変にリアリティがあって読むのが辛くなることが多い。
    今回は初めての短編集だったが、相変わらず容赦なく読み手の心理に切り込んでくるあたり、著者らしい作品。

    5編のうち最終編まで、読まなければよかったと思いつつ進んだが、最後にやっと少し救われてちょっとホッとした。
    その辺り狙って構成もされているのだろう。
    嫌いな作家ではないが、自分が精神的に参っている時には絶対読まない方がよさそうだ。

    『雨のなまえ』
    『記録的短時間大雨情報』
    『雷放電』
    『ゆきひら』
    『あたたかい雨の降水過程』

  • 窪 美澄の本は"ふがいない~"から新刊が出るたびに読む作家のひとり。
    そして、やはり読まずにはいられない。はずれがないというか…
    なんでいろんな立場の女性だったり、男性だったり、年齢もさまざまなのに
    こんなに心象風景が巧いんだろう。
    今回は雨にちなんだ短編集。
    最後の"あたたかい雨の降水過程"はとりわけ良かった。
    ガサツに見えて、やさしいみつきのママや、コンビニの前でヤンキーぽく見えたギャルが足の手当てしてくれたり、スニーカーくれたり。
    生きていくって大変だけど、捨てたもんじゃないと思わせてくれる作品。

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著者プロフィール

窪美澄(くぼ・みすみ)
1965年東京都稲城市生まれ。カリタス女子高等学校卒業。短大中退後、広告制作会社勤務を経て、出産後フリーランスの編集ライターとして働く。2009年「ミクマリ」で第8回R-18文学賞大賞を受賞し小説家デビュー。
2011年、受賞作収録の『ふがいない僕は空を見た』(新潮社)で第24回山本周五郎賞受賞、第8回本屋大賞第2位。同作はタナダユキ監督により映画化され、第37回トロント国際映画祭に出品。2012年、『晴天の迷いクジラ』で第3回山田風太郎賞受賞。2018年『じっと手を見る』で直木賞初のノミネート。

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