リアスの子

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  • 光文社
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レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929183

感想・レビュー・書評

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  • 中学校で教鞭をとったことのある著者が、自身が教えていたことのある地をモデルにして書いた「自伝的(?)学校小説」。

    前半と後半でかなり雰囲気の変わる作品。前半は、話の舞台である三陸沿岸や教員文化を深く理解した上で、いい点にも悪い点にも両方つきあいながら生活する教員・生徒・保護者の動きを生き生きと書く。「この著者でこそ書ける」文章で、その「深く切り込まれた」ところに自分を重ねて痛さすら間々感じられる文章。

    これが、後半になると、くさい学園ドラマのように話が進んでいく。
    「この辺でそろそろ子どもたちの世界とは一線を引き、大人として教員の仕事をこなしていくーそれはそれで、学校内で必要とされるポジションだーことにするか、あるいは、可能な限り子どもの世界に踏み止まってもがいてみるか、その選択をしなければならない時期が、僕にも来ていることだ。(p.203)」
    というくだりが、物語的な転換点なのかな、とは思う。著者が現役の教員をしていたときも何度か同様の選択を迫られ、おそらくは「子どもの世界に踏み止まらない」選択を取ったことや「子どもの世界でもがくだけに終わった」選択だって幾度もあったんだろう、と推察する。

    ただ、子どもの世界に限らず、”その人らしさ”を生かす環境を用意したら、それだけで勝手に走り出していって「お話のように」物事が進む瞬間、というのは、人の世界に間々ある。
    この物語で言えば「悩める生徒だけど、走るのは好き」ということに気づいていたという”伏線”があってこそ「お話のように」物事が進んだ。現実でも似たようなことが”偶然”起こることがあり、たぶん著者もそれを見たことがあって、それを理想的な形でお話にしたのが後半なのかな、と推察する。

    「こんなお話のように物事が進むかいな?」とか「てか、生徒が走ってるのを先生は見てただけやん?」とかツッコミどころは多い後半部分だとは思う。
    だとしても「こうなれば理想的」というモデルなくして、現実を直視し対応できるほど、人は皆強くない。
    そんな理想的モデルを、今の教育業界や三陸沿岸へ、著者なりに示したのが、この物語なのかな、と。

  • 熊谷達也は、震災後にしばらく小説が書けないでいたが、一念発起して書き出したのが「仙河海サーガ」らしい。最新の「浜の甚兵衛」でそのことを知り、この作品がサーガの最初の小説だと聞いて紐解いた。

    それと知らずに読めば、一般的な青春学園小説である。舞台は架空の町「仙河海(せんがうみ)市」であるが、題名からも分かるように、作者の住んでいる仙台市がモデルでは無く、リアス式海岸になっていて、著者が教師として暮らしていた気仙沼市がモデルである。

    この本の語り手は著者の分身とも言える数学教師岩渕和也。1990年の話として進められている。しかし真の主人公は転校生早坂希(のぞみ)だろう。確かに一見スケバン風の登場をして、やがて素直な頑張り屋になり長距離ランナーとして稀有の才能を見せる希は、それなりに突出した個性だと思う。ただ、この作品は一冊の作品としてみると、あまりにも中途半端だった。主人公としては、これから活躍する直前に終わる。希が子ども時代、仙河海市に住んでいたとしても、それだけでは「リアスの子」とした説得性があまりにもない。岩渕の語り口調から、いかにも彼が20年前を回顧して語っているようにみせながら、とうとう現代の岩渕は一度も姿を見せなかった。なぜそういう形式にしたのか、という説明が、この作品の中には一切ない。あまりにも壮大なサーガの序章として位置づけるのならば(実際そういう意図なのだろうが)、わからなくもないが、そ この説明不足は「有り」なのか、私は判断がつかない。

    早坂希は甚兵衛の子孫なのだろうか。親分肌な所は似ていなくもない。しかし、彼に関係する金子、菅原、遠藤共に苗字が違う。果たしてどのように人物たちが絡まってゆくのか、しばらくはサーガを読んでゆきたい。

    2017年2月27日読了

  • 熊谷達也さん「リアスの子」、2013.12発行です。シリーズものかどうか、タイトルだけではわからない作品、多いですねw。同じ熊谷さんの「希望の海、仙河海叙景」(2016.3)を少し前に読んでますが、同じ登場人物でした(^-^) この「リアスの子」では、中学3年生、転校してきた母子家庭の早坂希(のぞみ)が、先生や生徒とのふれあいを経て、スケバン風から陸上部のアスリートに変わるまでの物語です。次は、たぶん同じシリーズの「微睡(まどろみ)の海」(2014.3)を読む予定です(^-^)

  • 中学生たちが主人公の青春ものは多々あるが,これは教師の立場から描かれた青春ものと言えるのかも.教師はこのように考え生徒と向き合っていくのだと,そしてやはり生き物相手なので,色々と大変だと思った.

  • 中学教師と生徒との交流。やさしい話し。ラストがもう少し盛り上がればな。
    2016.2.23

  • 前2作からの続きといえば続き。関連性はあまりない。淡々とした内容で、大きなエピソードはない。が、結構楽しく読めた。教師と生徒との信頼関係が物語の主軸になっているが、「人を信じる」ことの大切さをあらためて思い出させていただいた。主人公の年齢の割に老けた感じ(落ち着きすぎ)を受けるのは私だけだろうか?

  • 中学校の教師『僕』と転校生早坂希。心を閉ざしていた希が陸上競技を通じて心を開く。彼女の走る姿は皆の目を惹きつける。それは、華奢で小柄な彼女が微笑みながら全力で走る姿が、生きる希望と勇気を皆に与えているからだ。
    この小説の舞台、仙河海市は気仙沼がモデルの架空都市で『微睡みの海』と同じ。この都市は震災で一つになった日本の心が、復興でバラバラになって行くのを繋ぎ止める絆だ。

  • 古い英国の深謀遠慮渦巻く世界の大作を読んだ後だったので、ほっとしたというか何というか……(笑)。

    東北のとある海辺の町の中学教師と生徒の交流を描いてる。教師側の考え方が興味深かったかな。

  • リアス式海岸で風光明媚な港町の中学校にスケバンが転校してくる。
    港町であるがゆえ遠洋で父親と中々触れ合えない子供達と転校してきた母子家庭のスケバン。

    大雑把に言えば「学園もの」なんだろうが、ゆったりとした自然環境の中でゆったりと物語が進んでいく。
    繊細な心理描写や鮮やかな風景描写はそれほど多くない。さらっと読めてしまう。

    どうしても『邂逅の森』のインパクトが強すぎて、、。

  • 情景描写がとても丁寧。美しい景色が目の前に浮かんでくる感じ。

    どんな風に収束するのか、ワクワクしながら読み進めていったので、ラストはちょっと「えっ!?これで終わり?」と思ってしまった。

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著者プロフィール

熊谷 達也(くまがい たつや)
1958年仙台市生まれ。東京電機大学理工学部卒業。中学校教諭、保険代理店業を経て、'97年「ウエンカムイの爪」で小説すばる新人賞を受賞。2000年には『漂泊の牙』で新田次郎賞を、'04年『邂逅の森』で山本周五郎賞に続き直木賞も受賞。同一作品での両賞同時受賞は史上初の快挙。近年は宮城県気仙沼市がモデルの三陸の架空の町を舞台とする「仙河海サーガ」を書き続けており、同シリーズには『リアスの子』『微睡みの海』『ティーンズ・エッジ・ロックンロール』『潮の音、空の青、海の詩』『希望の海 仙河海叙景』がある。

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