殺意の構図 探偵の依頼人

著者 :
  • 光文社
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感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929206

感想・レビュー・書評

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  • 次々と起こる殺人。
    それに伴う複雑に絡み合った家族関係。
    こんなにも血族同士が、疑心暗鬼になるのか…と。
    まるでサスペンスドラマを見ているような展開。

    不慣れな殺人事件を担当するのは、亡くなった知人のためだと弁護士の衣田は思っていたが無罪を勝ち取ってもすっきりしない。
    そのまま影の薄いまま、終わるのかと思いきやまさかの結末。
    その全てを調査したのが、プロローグでの私立探偵ってことで。

    いゃ〜、私立探偵の榊原が、そうなん??とエピローグで知ったときの驚きのほうが、本編よりインパクトありすぎて…しかもさらりと触れてるところがなんともなぁ。

    • 霧雨さん
      深木章子さんの小説が好きで、湖永さんの素敵なレビューが目に留まりましたので、コメントしたいと思います。

      60歳になって小説を書き始めたとい...
      深木章子さんの小説が好きで、湖永さんの素敵なレビューが目に留まりましたので、コメントしたいと思います。

      60歳になって小説を書き始めたという深木章子さんですが、そのいずれもが傑作という、物凄い才能を持った作家さんだと思います。

      この作品も、巧緻極まりない仕掛けが施された本格ミステリで、物語は、奇妙な冤罪事件から始まり、妻の父親宅に放火し、養父を殺害した容疑で逮捕された男が、それまで頑なに口を噤んでいたにも関わらず、ある事をきっかけに、突然、無罪を主張し始める事に。

      ここから、この物語は二転三転の逆転劇が展開されるのですが、これが二転三転どころか、読みながら七転八倒してしまうぐらいの驚きが待っていたんですね。

      何より感心するのは、この作品は現在進行形で物語が進むのではなく、後に振り返る形で、事件の顛末と関係者たちの感想や行動が描かれていて、これが我々読者の予想を裏切るというか、先回りしてそれは違いますよと可能性を次々と潰していくんですね。
      まさに驚天動地の展開で、この卓越した仕掛けには舌を巻きましたね。
      2023/02/15
    • 湖永さん
      霧雨さん こんばんは。

      コメントありがとうございます。
      確かに複雑でありながらも物語に引き込まれてしまって、凄いなって思うストーリーでした...
      霧雨さん こんばんは。

      コメントありがとうございます。
      確かに複雑でありながらも物語に引き込まれてしまって、凄いなって思うストーリーでしたね。
      毎回、レビューに四苦八苦しています。
      この拙いレビューを気に留めて頂きありがたいです。
      これからもよろしくお願いします。
      2023/02/15
  • 『殺意の構図  探偵の依頼人』
          深木章子  光文社

    ある冤罪事件に端を発する連続不審死事件。その発端は、放火による殺人だった。容疑者は、焼死した人物の婿養子峯岸諒一。知人でもある容疑者の、たっての願いであると彼の妻から依頼され、弁護を引き受けた依田弁護士は、冤罪を主張する男の本心をつかみきれず苦悩する。

    容疑者の複雑な親族関係は、誰が誰の叔父で、養子で、従姉妹なのかわからなくなり、人間関係の構図を理解するのに最初もたついた。が、放火の真犯人や協力者は、最初案外簡単に予想がつくと思われたものの、依田弁護士、容疑者の義妹、従兄弟の妻それぞれから見た事件への独白を読みながら、誰もが怪しく思えて来る。それでも案外予想が当たると甘く見ていたが、後半一気にどんでん返しに次ぐどんでん返し。

    絡まった糸のような真相が探偵によって解きほぐされ、殺意の構図が最後に浮かび上がった時、え!とのけぞるこちらに追い打ちをかけるようなエピローグにもう一度打ちのめされた。

    刑事物でも無く、法廷物でも無く、サブタイトルが「探偵の依頼人」だったと読み終わって改めて思い出し、ああ、やられた、と思った。




     

  • (No.14-4) ミステリです。

    『衣田征夫(きぬたまさお)は弁護士だが、刑事事件は専門外。街の弁護士、いわゆる街弁で顧客は中小企業や個人経営の店などが主だ。
    それまでにも商売上のトラブルで何度か相談に乗っていた顧客である峰岸諒一の依頼を断りきれず、弁護を引き受けた衣田。
    容疑は殺人だが、峰岸は衣田に冤罪だと訴える。そして裁判で無罪判決が下った。
    衣田の手腕が優れていたわけではない。峰岸が土壇場になってアリバイを証明する情報を告げた結果だ。

    一生に一度経験するかどうかの見事な大逆転劇。しかし報道関係者による取材攻勢が一段落した矢先に、飛び込んできたニュース。
    こんな幕切れが待っていたとは・・・・。衣田は独り煩悶する。』

    視点になる人がどんどん変わっていく構成です。
    ある人が疑わしいと語った人が次には視点人物になると、あれ~じゃあ違ったのか?って、疑いが晴れちゃう。
    もちろん視点の人だからといって、ほんとのことを隠してないとはいえないけどね。
    じゃあ実際起こったことは何なのか、知りたくてたまらなくなります。

    一部分は、予想通りだわやっぱりそうだと思ったんだ!と満足感を与え、その上でえ~っそうだったのか!と驚かせる、なんてこの作者さんは見事なんでしょうか。

    どろどろしてとても哀しい物語なのに、何故か救いが感じられ読後感は悪くありません。
    読み終わってもう一度あちこち確かめたくなる、そういうミステリが私は大好き。
    満足です。

    これでこの作者の本を読むのは4冊目。(多分4冊しか出てないはず)
    どれも全部面白かったです。
    なかなかそういう人はいないので、今後も楽しみにしてます。

  • 予想もつかない事件の真相だった。
    面白かった。最後はどう決断したのだろうか。

  • 面白かった!
    本編どうなるのー?って追って行ったら最後にやられた。

  • 放火、殺害の容疑で被害者の婿が逮捕された。動機があり状況証拠でも明らかに怪しいが、本人は否認を続けて弁護士にも何も打ち明けようとしない。弁護士が裁判の負けを覚悟した時、あるきっかけで被告がアリバイを主張し始めた…
    少ない登場人物で事件も一見すると単純だが、二転三転する展開で面白かった。最初は弁護士、その後は事件関係者と視点が変わるたびに、事件の見え方がガラリと変わる。
    全体的に暗いトーンの話だが、ラストで伏線がくっきり浮かび上がってきたところの驚きはミステリ的に心地よい。

  • 文章が少々古い、妙に裁判などに詳しく説明的・・・と思っていたら、作者が60を超えた元弁護士と知って納得。
    キャラが今一つ画一的のような気がするが、話自体は良く練ってあって一気に読める。
    まるで舞台劇のように登場人物が少ないが、それぞれ複雑に利害、愛憎によって結ばれていてそれが探偵の第三者の視点を通してそれぞれの立場で叙述してある構成は面白い。犯人が誰か、等いうのと同時に、次々と起きる事件の構図が鮮やかに浮かび上がって行く展開は見事。どこかアメリカの小粒な映画にありそうな筋立てで、この作家の他の作品も読んでみたくなった。

  • 丁寧でなおかつ端正な本格ミステリで、よかった。
    二転三転する事実と深まる謎。
    そして終盤に明かされる真実とサブタイトルの意味…考えられた本格でよかった。

  • 単純な放火殺人事件の構図が、二転三転して、果てには…と最後の一ページまで糸が張り巡らされた企みとひっかけに満ちた作品でした。
    少し独特な「…」の使い方など、一人語りするような文体は好みがあるかもしれませんが、基本的には読みやすく、意外性のつづく展開にも興味を惹かれてさっくりと読めました。
    一事不再理を利用した企て、依頼人を最後まで明かさない構成、探偵自身にも隠された秘密があった、といろんな要素が詰め込まれていて、これぞミステリという醍醐味を味わえました。

  • 冤罪事件を発端に次々と人が死んでいき、いったい誰が犯人なのか…。複雑な人間関係に少し混乱しましたが真相が気になってページをめくる手が止まりませんでした。最後に明かされる事実に、ただただ驚きでした。

著者プロフィール

みき・あきこ1947年東京生まれ。東京大学法学部卒。元弁護士。60歳を機に執筆活動を開始、2010年に『鬼畜の家』で島田荘司選第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞。『衣更月家の一族』『螺旋の底』が第13回・第14回本格ミステリ大賞にノミネート、『ミネルヴァの報復』が日本推理作家協会賞にノミネートされるなど、注目の作家。他の著書に、『敗者の告白』『殺意の構図』『交換殺人はいかが? じいじと樹来とミステリー』『猫には推理がよく似合う』『消人屋敷の殺人』『ミネルヴァの報復』『消えた断章』『罠』など多数。

「2023年 『欺瞞の殺意』 で使われていた紹介文から引用しています。」

深木章子の作品

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