神様のケーキを頬ばるまで

著者 :
  • 光文社
3.63
  • (46)
  • (199)
  • (150)
  • (15)
  • (6)
本棚登録 : 1417
感想 : 187
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929282

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 最初、なにかケーキ屋さんとか美味しいものにまつわるお話なのかなと思ってたの。
    そしたら全然違って。
    人が自分で意識したり認めたりしたくない嫌な部分と向き合って苦しんでもがいて、それでもなんとかやっていくっていうか。
    上手く言えないけど蓋をして見ないままにはできないんだよなって思った。
    よく自分にご褒美って聞くけど、私にはその感覚がよく分からなくて。
    どこまでがんばったら自分にご褒美あげていいんだろうって。
    でもこの本読んだら案外小さな事でも自分ががんばったと思うなら、その時自分にご褒美あげてもいいんだなってそんな事に気付いた一冊でした。
    今日はチョコレートでも買ってこようかな。
    ココアも飲みたいな。

  • 彩瀬まるさん初読み。
    読みやすいし、表紙も含めすごく好きな感じだった。

    同じ雑居ビルで働く、マッサージ店店主、カフェバー店長、古書店バイト、IT企業OL、元カフェ経営者のそれぞれのちょっと切ない話。なんだけど、周りに素敵な助言をくれたり、はっとする様な一言を伝えてくれる人がいて、最後は少し前向きになれる。

    今悩んでる事があっても、いつか「私は私を褒めていい」って思える時が来て、そんな時に頬張るケーキは格別に美味しいだろうなーって思える良いラストだった。



  • とある雑居ビルに関わりがある人物たちを主人公とした短編集。
    各短編に共通するのは雑居ビルだけでなく、画家であり映画監督でもある人物の作品が共通して登場している。

    どの短編も、とらわれていた相手や自分自身から離れて一歩踏み出す痛みや勇気が描かれていたように感じた。
    「神様のケーキを頬ばるまで」という印象的なタイトルはラストの一節と繋がっており、各短編の主人公たちを労わるような終わりだった。
    どれも一言で説明するのは難しいような複雑な感情が描かれており、物語の深みも感じられて良かった。
    ストーリー展開は淡々としつつ、文章の優しさに心地よさを感じる作家さんだと改めて思った一冊。

  • タイトルが気になり読みました。
    内容はとある雑居ビルで働いていたり関わりがある人達の5つの短編集です。短編に出てくる主人公たちは、それぞれ違った悩みや鬱憤を抱えていて自分で解決できず、もやもやとした人生を生きています。その人たちが自身や周りの事と向き合い、少しづつ前向きに考えられるように変化していく物語です。物語はすべて独立しているわけではなく、他の短編の主人公が少し出てきたりと連動していました。

    作中でとある作家の絵や映画が出てきますが、その作品の評価が人それぞれとなっています。良い捉えをする方もいれば、自分に合わない・好みではないと様々な評価がなされています。映画や絵の評価がそうであるように、悩みや鬱憤も捉え方一つで変わっていくものだという思いを抱きました。主人公たちはそれに気づき、もやもやした気持ちを整理できたのかなと思いました。

    読了後は劇的に生き方が変わる物語でなく、ほんの少しだけ変わってきそうなほんのり明るさを感じたい時に読むと良いかなと思いました。

  • 本タイトルの話はないけれど、このタイトルの意味は最後の短編ラストでわかるようになっている。

    読んでいて全然気づかず本紹介を見て知ったのだが、この5つの連作短編は、ある雑居ビルにお店(オフィス)がある人たちのお話だった?らしい…
    でも、そのつながりを感じたのは、最後の話だけだった。

    ・泥雪
    鍼灸指圧の専門学校を出て、自分の店をはじめて持ったときに買ったのは、当時無名画家だったウツミマコトがはじめて描いた雪景色の絵だった。
    その絵を買った日から17年(←結構さらっとかなりの時間が経っていて、読んでいてびっくりした)
    結婚し、出産し、離婚し、出産し、マッサージ店を営みながら2人の子育てをしている。
    思春期の息子との関係は、こじれている。
    マッサージ店の常連客・里保の、闇を含んだ恋。
    その店には、雪景色の絵が今も飾られている。

    ⇒短編ながらも、主人公の17年に渡る波乱万丈な人生が綴られており、その壮絶さに動揺する。
    しかし、マッサージ店の店長という顔からは、それまでの壮絶な過去や今の苦しみに、まわりの人たちは気づくことはない…それは、現実社会でも同じだなあとおもったら、急にこの話にリアリティを感じた。


    ・七番目の神様
    イタリアンカフェバー2号店の雇われ店長・橋場は、幼い頃ゲルから喘息をもっている。
    ある日橋場は、店のある雑居ビルの上層階のIT企業に勤める藤原から、合コン参加を打診される。
    売り上げのことが頭によぎった橋場は、合コンに参加。そこで笑美と出会い、連絡をもらいはじめた。
    笑美はウツミマコトの映画「深海魚」が好きだという…

    ⇒終わり方がちょっと唐突。フェードアウトではなく、終わりだよという合図もなく、急に終わった印象で、ひっかかった。そして、この終わりからは、わたしにはまだ橋場と笑美の間が進んでいくのかは、読めなかった。

    ・龍を見送る
    ネットの音楽コミュニティサイトに「ラピス・ラズリ」という楽曲をアップした朝海は、その歌を歌う哲平と出会った。
    やがて2人は音楽ユニット・フォックステイルを組み、楽曲を発表し、サポートメンバーの力も借りながらライブも行っていく。
    フォックステイルの楽曲制作をしている朝海は、普段は古書店で働いている。

    そして、その日は来た。
    「龍」が宿った哲平は、止められないほどの熱量で、歌の才能を孵化させていく…

    ⇒ここにもウツミマコトの映画が登場。
    読んでいると哲平と朝海がどうなるかは想像がついてしまうのだが、最後に朝海がどういう方向に生きていこうとするか、その場面というかモノローグというか描写が、よかった。
    漫画「NANA」(矢沢あい・作)にあるような、気持ちと才能のすれ違い、もどかしさ…そういう雰囲気があるお話だった。
    主人公たちとおなじ年頃の、20歳前後くらいの方には、このもどかしさが特に刺さる部分が多いかもしれない。

    ・光る背中
    会社のトイレで、ウツボのフィギュアを見つけた(←なんですかこの始まり方…斬新!)
    IT企業事務員の十和子は、一流商社勤めの上条さんに恋している。…いや、付き合っている…?
    しかし上条さんはイケメンで、モテる。
    メールの返信も滞る。
    十和子の“恋”は、行き場を失っていた…

    ⇒読み返して気付いたが、十和子の勤めるIT企業は、「七番目の神様」に登場したIT企業営業マンの藤原の会社とおなじ…なんだとおもう。
    タイトルの意味は、ラストでわかるようになっている。上条さんが十和子に行ったあるセリフ、それを聞いた十和子が固まってしまう様子(161ページ)が、怖かった。上条さんのモテるが故の苦悩(いや諦め…?)の闇の深さが、上条さんの発する4行のセリフに凝縮されていて、読んでいた自分もゾッとしてしまい固まった。
    そしてここにもウツミマコトの映画。
    ウツボのフィギュアの持ち主にも注目。

    ・塔は崩れ、食事は止まず
    郁子と2人で立ち上げたカフェは、経営方針の違いからたった6年で終わりを告げた。
    最後にもらった“餞別”は開店資金と、カフェの看板メニューだったパンケーキのレシピ。
    そしてわたしは、ホームセンターのアルバイトとして働き始めた…

    ⇒ここにきて「泥雪」とのつながりがきて、この5つの話は、ウツミマコトだけでないつながりがあるのか…??とやっと疑問におもう(汗)
    「泥雪」では内側から見ていたマッサージ店の店主が、ここでは完全に外側からしか見えず、マッサージ店の普通の店長という感じにしか見えないことに、人間の見えない部分の奥深さを感じた。
    人はやはり、見た目だけではわからない…
    内面は外側ににじみ出るというが、全部ではない…それが“見える”のが小説であり、そこがやはり小説のおもしろさだなあ…とあらためてしみじみおもった。
    それにしても、苦い別れの象徴であった甘いパンケーキのレシピが、まさかあんな形で生かされるとは…
    ラストは本タイトルとつながるところも、ちゃんと終わりでありつながりを感じられてよかった。

  • 錦糸町の雑居ビルを舞台に、マッサージ店を営むシングルマザー、喘息を患うチェーン系カフェの店長、古本屋でバイトするミュージシャン、エリートに恋するアプリ会社のOL、人気カフェの共同経営者とケンカ別れした無職の女性…心にいびつなものを抱えながら不器用に生きる日々を切り取った連作短編集。
    そこはさわられたくないと思う心の傷、多少なりとも誰でも抱えているのではないだろうか。いつも彩瀬さんは、そんなデリケートな部分を敢えて触れてくる。だけど触れられることによって、凝り固まった痛みは少しずつほぐれてくる。
    短編の主役達は、皆どこか頑なだ。向き合う相手に対する思いに、己のエゴ、或いは劣等感のようなものが絡まってがんじがらめになる。必死になればなるほど自らを追い詰め、うまくいかなくなる。そうやってもがき苦しみながら、自分なりに踏み出す一歩のタイミングを見定めて、悩みつつも結論を出す彼ら。読後はあたたかいものが胸に溢れてきた。
    各短編に必ず登場するのが、ウツミマコト監督の「深海魚」という映画。独特な作風のこの作品をそれぞれの登場人物がどう捉えるか…バロメーターのような役割をしているのが面白いなと思った。
    決して明るい話ではないけれど、どの短編も読みこむほどにじわじわと沁みてきて好きだ。でも敢えて選ぶなら、ネット発の若いミュージシャンに井伏鱒二の「山椒魚」のエピソードを絡めてきた「龍を見送る」、人気カフェの経営から外され、無気力な日々からの再生を描いた最終話「塔は崩れ、食事は止まず」がお気に入り。そして各短編に登場する、物語のキーとなる脇役達もそれぞれに魅力的。彼らにも、主役に負けず劣らずの様々な背景があるのだろう…そんな奥行きの深さが感じられる。いい意味で皆、一筋縄じゃいかないのだ。
    自分のみっともなさを認めてしまえば、曇っていた目に今まで気づかなかった風景が映る。傷はすっかり癒えなくても、いつかきっと笑えるようになる。彩瀬さんの作品は、いつもそんなことを信じさせてくれる。

  • この作家、彩瀬まるさん。懐がものすごく深い気がします。

    いろんな年代の、それも性別も違う登場人物が
    あたかも自分のいる隣のビルに本当にいそうに感じる不思議。
    なんでこんなに色々なことを知ってらっしゃるのか。
    彩瀬さんの人間力、どんどん好きになっていきます。

    東京の錦糸町にある雑居ビルと、ある人物に関係する人々の連作短編集。

    仕事場でのちょっとした知り合いや、もっと関係の深い友達。
    その人が見せてくるいつもこちらが見られている面を通り越し
    見ているようで見せてもらっていない、
    いや見たいとこちらが思っていないから、見られていない面に
    スポットをいつも当てている気がします。

    相手と一緒に時間を共有すれば、
    色々なものが変化して、相手との関係性も変化していく。
    いい方向でも、悪い方向でも、
    変化は毎日続き、接近してみたり、離れてみたり。

    時と共に同じ場所に留まれないから少しずつ先に進んでいく。

    他の人には鼻で笑われるような変化でも、自分で愛おしく思っていいんだ
    と思える一冊です。

    しおりさんの『ウツボのフィギュア』
    天音さんが作った『パンケーキ』
    どちらも、ものすごく欲しい~。
    絶対的なもの、私も探そうっと。

  • タイトルに惹かれて手に取った本。
    「神様のケーキ」という言葉からは何故か美味しそうなケーキは想像出来なくて、もっと抽象的な安らぎのようなものを思い浮かべた。
    毎日オンオフのスイッチを入れては切って、ゴムみたいにブチっと切れそうになりながらなんとか生きている。
    そんな人達の心の揺れを自分の身に置き換えながらどうして切れずにいられるのか。どうしてまた笑えるようになるのか。そんなことを考えていた。

    毎日毎日正解のない問いを投げかける。
    どうすべきだったのか?
    どうしたいのか?
    何を求められているのか?
    あの言葉の真意は?
    そして、全ての問に対して「分からない」と繰り返す。
    「分からない」と繰り返しながら、でもどうにかしなきゃと手を伸ばす。
    その手を握りかえしてくれる手を見つけたり、その手に何かを掴んだと思えた時に感じる喜びがもしかしたら「神様のケーキ」なのではなかろうか。
    その瞬間があるから生きていけるように思う。

  • 『七番目の神様』と『光る背中』が好きな話し。
    全話、最後に少しずつ明るい兆しが見えるのが良かった。

  • 綾瀬まるさんの本は2冊目ですが、この本も良かった~!

    歌舞伎町のとある雑居ビルに関わる人々を描いた短編集。
    マッサージ店を営む女性。
    カフェの店長。
    古書店のアルバイト。
    アプリ開発会社の女性社員。
    雑居ビルの向かいに住む女性。
    それぞれが生き方に悩み、模索中。

    心に残る言葉がちりばめられている。
    「目にしていて、それでも見えないもの」
    「誰にも嫌われないのはいい作品じゃなくて、どうでもいい作品。強く主張するものが無くて、意識に残らないから嫌われない」
    「全部出し切った人の背中は、負けても光って見える」

    綾瀬まるさんの他の本も読んでみたい!

全187件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

彩瀬まるの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×