暗い越流

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 227
レビュー : 51
  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929336

感想・レビュー・書評

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  •  若竹七海さんの約3年ぶりの新刊である。失礼ながら、キャリアの割に知名度は高いとは言えず、近年は寡作気味。そんな中、「暗い越流」で第66回日本推理作家協会賞短編部門を受賞したとのニュースが流れたのが昨年のこと。

     そして今年、「暗い越流」を含む5編を収録した短編集が刊行されたのだった。近年はライト路線が続いていたが、久々に超ビターな若竹節が味わえる。これってコージーの範疇に入るのだろうか。僕はただただ苦笑いするのみであった。

     「蠅男」。若竹ファンにはおなじみの女探偵・葉村晶が登場。群馬県は伊香保温泉近くの洋館に遺骨を取りに行くだけのはずが…。彼女には悪いが、コメディにしか思えん。タイトル通りとだけ書いておく。幽霊の正体見たり…よっぽど恐ろしいじゃないかっ!!

     「暗い越流」。死刑が確定した男へのファンレター。その意図とは。現実にもよく聞く家庭事情の数々。ちっとも笑えないシチュエーションだが、なぜか顔が引きつる。やや詰め込みすぎだが、よく短編に収めたな。そしてまたこの手に引っかかった…。

     「幸せの家」。やり手の雑誌編集長が転落死。殺人を疑い、取材を装って調べてみると、現実にも聞くような聞かないような…。雑誌の休刊・廃刊が相次ぐご時世とはいえ、いつまでもこんなこと続けられるわけがない。オチはちょっと読めたかも。

     「酔狂」。途中はどうでもよいと書いたら怒られるか。最後の一文が命の1編と言い切ってしまおう。男のくどくどした独白に飽きてきたところで、嗚呼、こんなネタが炸裂…。笑うべきか笑わないべきか。一応願いが叶ったのかな、これ。

     「道楽者の金庫」。再び女探偵・葉村晶が登場。福島県の別荘にこけしを取りに行くだけのはずが…。事件の内容はともかく、こけしがずらりと並んだシチュエーションは想像するだけで怖い。こけしも古書も、マニアの世界はディープですねえ…。

     若竹流ミステリの一ファンとしては楽しめたが、一般読者は楽しめるだろうか。これで遂にブレイク!! ということはないだろうなあ、やっぱり…。猫島シリーズ辺りをもっとプッシュしてはどうだろう。しかし、本作こそ若竹七海の真髄なのである。

  • ダークでしびれる短編集。葉村晶が出てきて嬉しくなったけど、葉村シリーズではないようだ。
    お食事時に読むのはおすすめしない。

  • 間に出ていたコージーものと違って、どことなく暗いこれぞ若竹さんという⁈短編集。でも短編なので陰鬱にもならず少し軽め。

  • 葉村シリーズ、と思ったら最初と最後の短編だけだったのか。相変わらず怪我の絶えない方だ・・・病院と警察の世話にならないでいられない(笑)。他の短編もどれもぞくっとして良かった。無害そうに見える語り手が実は、って話好きなので、「暗い越流」「幸せの家」などオチまで楽しめるし、「狂酔」は展開なんとなくわかったけど面白い。ちょっと米澤穂信の短編ミステリを連想した。「満願」だったっけ。ああいう雰囲気に、もう少しユーモアが加算されたような。

  • 5つの話。
    どれも読みごたえがあって、キャラクターもあって楽しく読める期待を裏切らない本でした。

  • 5つの短編のうち『蠅男』と『道楽者の金庫』は葉村シリーズ、どちらも葉村らしくちょっぴりダークでコミカル。またまた痛い目に合わされ気の毒だけど…笑ってしまう。
    他の3編はノンシリーズだが、いずれも若竹さんらしい皮肉が効いて面白かった。最もゾッとしたのは『狂酔』、いや〜な話だ。

    人間の先入観は真実から目を背けさせる。ある話の中に容疑者でも被害者でもない2人の人物が出てくる。片方を女性、もう片方を男性だと思って読み進んで行ったら、最後の最後に双方の性別が逆だったとわかる。作者は女性だろう、男性だろうと仄めかす書き方はしているが断定はしていない。仄めかされた情報で勝手に判断しただけのこと。映像では決して出来ない活字ならではのトリック、この騙され方は心地よい。

  • ホラー落ちがメインのミステリー短編集。

    ・蠅男
    ・暗い越流
    ・幸せの家
    ・狂酔
    ・道楽者の金庫
    の5編収録。
    最近ファンになった女探偵葉村作品が収録されているということで読みました。
    どの作品も落ちがホラーになっていてゾクッとしました。
    ミステリーとしては謎解きのヒントが開示されていない部分があって読者にはアンフェアですが、一応筋の通った解決がされていて納得です。
    これで葉村作品の期間は全部読んでしまったので、新作を首を長くして待ちたいと思います。

  • 「暗い越流」ってタイトルの通り、なんとも暗いやるせないお話5編を収録した短編集。最初と最後に葉室晶が出てきます。そういう構成の工夫や時々出てくるユーモア表現にクスッとするものの、それらは言わばぜんざいについてくる塩昆布みたいなもんで、ダークな雰囲気を一層盛り立てる小道具にすぎず…

    っていっても、露骨な表現等表面的に眉を潜めるような描写はなく、もっと現代人として生きてる俺たちの根底をグラグラ揺さぶるような暗さが怖い。
    基本性善説で生きてる俺だけど、こういう本を読むと人間の本質には悪の要素は少なからずあることを思い出さされる。この短編集がオモロいということは、俺の心にも「暗い越流」があるってことやからねぇ。

    とは言え、読み終わってもそうそうやるせなさを感じさせず、むしろ「あぁ暗かったひどかった」とかえって元気に現実に戻れる感じの妙味。さすが若竹七海上手いわ!

  • 2016.4.30
    私の好きなタイプの短編集。5篇あるが、最後の「道楽者の金庫」以外はどうにも強烈な「臭い」が気になった。死臭、消臭剤の臭い、カレーの臭い。
    全編読みやすく、暗い陰湿な話なのだが、たまにクスりと笑える表現もあり、そして最後の数行でゾクリとさせられる。
    どの話もクオリティが高く面白かった。

  • 短編集

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著者プロフィール

東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒。1991年、『ぼくのミステリな日常』でデビュー。2013年、「暗い越流」で第66回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。その他の著書に『心のなかの冷たい何か』『ヴィラ・マグノリアの殺人』『みんなのふこう 葉崎は今夜も眠れない』などがある。コージーミステリーの第一人者として、その作品は高く評価されている。上質な作品を創出する作家だけに、いままで作品は少ないが、受賞以降、もっと執筆を増やすと宣言。若竹作品の魅力にはまった読者の期待に応えられる実力派作家。今後ブレイクを期待出来るミステリ作家のひとり。

「2014年 『製造迷夢 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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