雪の鉄樹

著者 : 遠田潤子
  • 光文社 (2014年3月19日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929350

雪の鉄樹の感想・レビュー・書評

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  •  最初はあまりに暗くて、読むのが辛かったのですが、途中から結末がどうしても知りたくなり、久しぶりに一気読みしてしまいました。
     雅雪は曽我造園の三代目。
    祖父・父と続く「たらしの家」と呼ばれる女の切れない生活の中で暮らしている。
     さらに、雅雪は父が殺した母を持ち、それがもとで殺人を犯してしまった、恋人がいた。
    その恋人の罪を償う為に、その恋人が殺した両親の赤ん坊遼平の面倒を見ることになる。
     遼平の祖母は、息子夫婦を殺された恨みを他にぶつけるところが無いので、雅雪にぶつけてくる。
    一生懸命面倒を見て、懐いていた遼平も心無いいじめと、過去の事件を知らされることで、荒れて手に負えなくなる。
     しかし、雅雪が本当の真実を勇気を出して、遼平に語っていく中で事態は大きく変化していく。
     恋人とのなれそめで、あまりにも孤独に慣らされてすぎて、誰とも一緒に食事が出来ない雅雪の異常性がわかってくる。
    そして、それは「情」が全く無い祖父に育てられた父にも言えることがわかる。
     この物語の登場人物は皆、さまざまな寂しさを心に抱え込んでいる。
     しかし、その中で異常だと、犬のようだなどと言われながらも愚直に自分の出来ることを必死に続けている雅雪の誠実さで周りの皆が救われていく。
     最後の遼平の変化と、これからの希望を感じられるラストは嬉しかった。

  • 主人公は曽我雅雪。祖父のやっている曽我造園の三代目だ。彼はいつも自分のせいとすべてを諦めてしまう。父が亡くなったのも、島本遼平の両親が亡くなったのも・・・彼の人生は償いに費やされ、13年という年月、遼平と祖母の文枝のために生きてきた。ただ一人、雅雪の愛した舞子と会える日を待ちつつ・・・
     読みながら、なんでこんなに・・・と何でも自分のせいという雅雪が理解できず、彼の人生って・・・と思っていたが、ラスト、家族の愛情に恵まれず育った雅雪にとって遼平と過ごした13年は決して無意味ではなかったと分かった。

  • 「たらし」の家と蔑まれる反面、確かな造園技術で地元では知られた曽我造園の三代目・雅雪。
    全身に大火傷の跡、不自由な身体、祖父から受け継いだ若白髪の髪。
    雅雪は、両親を亡くした少年・遼平の面倒を見続けながら、ひたすらに「その日」を待っている。
    その日まで、あと数日というところから物語は始まる。

    肉親から関心を持ってもらえず、自身も肉親への情を知らずに育った雅雪。
    母親からの過剰な関心を寄せられ、バイオリンを弾く事だけを求められてきた郁也。
    郁也の双子の兄姉でありながら、郁也に全ての関心を注ぐ母親に無視され、家政婦のように扱われてきた舞子。
    雅雪の父母、祖父、そして郁也と舞子の母もまた、人としての情の欠けた大人達。
    そんな人々が交錯し、愛が生まれ、愛ゆえの悲劇が起きる。


    遠田潤子作品の、どうしようもない力に惹かれつつ、昏い人間関係の描写が辛くて…
    しばらく離れていたけれど、本作には、最悪の傷と、最上の救いがある。
    あまりにも深く傷つき、結びついた心。
    すぐそばにいて伝わる心もあり、離れてやっと受け入れられる心もあるのだろう。

    ラストのおだやかな暖かさ。
    雅雪、舞子、遼平の誰もが、いつか傷つけ合わずに暖めあう距離を見つけられますように。

  • 曽我造園の清次,俊夫,雅雪は三代に渡って地元で営業している.細木老には目をかけて貰っている.物語は三代目の雅雪が島本遼平との複雑な絡み合いの中で,最終的に彼の心を開かせる話だ.顧客の真辺一家との関係が事件の発端となる.郁也と舞子だ.遼平の祖母文枝の頑なな態度は当初理解に苦しんだが,次第に真相が明らかになっていく過程が楽しめた.雅雪の生き方を細木老や鍼灸院の原田が強い口調で非難するが,雅雪の頑固さが最終的に遼平の変化に繋がるという,ある意味でハッピーな終わり方だが,複雑な思いが残る感じだ.ただ,造園の技術的な部分は専門的ではあるが,楽しめた.

  • 重いストーリーですが、読み応えありです。雅雪をはじめ登場人物が魅力的というか、キャラクターが際立っています。また、7月7日までの6日間のストーリーをとても上手く展開させています。オススメです。

  •  煙草と皿のエピソード。これが、テーマの基盤か。

  • タイトルだけで選んで読み出した本だったんだけど、なるほど遠田さんだったんだ。
    いい意味で遠田さんらしいストーリー。

  •  庭師の雅雪は、近所に住む少年、遼平の世話をしながら黙々と仕事を続けている。遼平の祖母にののしられ、思春期になった遼平からも疎まれながら、ひたすら耐え忍び何かに懺悔するかのように尽くしていく。果たして彼らにどんな因縁があるのか。
     後半から、雅雪の運命を変えたある一家との出会いが描かれ、やがて悲惨な過去の事件の真相が明らかになる。
     途中から、雅雪の隷属的な姿勢そのものが自己中心的に見え、事件を招く一因にもなったのではないかと感じるが、作者はそのような一途な心に救いを与え、ラストを温かく締めくくっている。なんというか、作者のぶれない一心が見えたような気がした。

  • 愛情って、償いって、許しって何だろう。

  • 上半期ベスト1本命候補
    今年度のベストに巡り合ってしまったかもしれない。

    凄い小説である。
    家族から情をかけてもらわず育った植木職人の、奴隷として過ごした13年間を追った話。
    何故奴隷なのか、家族の情とは何か?なんというか、出てくるセリフや表現一つ一つが重くて、読んでいてツラい部分もも多く、しんどいところも多々あって、色んな人が可哀そうで不幸で人間不信になりそうになる。

    許すってことは難しいと思う。罪を憎んで人を憎まずと言うが、そんなことで済まされない憎しみを抱くこともあると思う。許しを乞うことも、これまた難しいと思う、償おうを動けば動くほど、頭を垂れれば垂れるほど相手の気持ちを逆なですることも大いにある。

    さだまさしの何とかって曲が一時期話題になったが、あれだって罪を犯した人から見たら大いに希望の持てる歌であって、現実はあんなにユルしてくれる人ばかりじゃないかもしれない。

    罪を償うってことが、ましてそれが自分じゃなく自分のかけがえのない人が犯した罪を償おうとする行為ならば、そのやりようは本当に難しい。

    結局人間なんて、自分のケツを自分にも他人に頼っても拭いきれないことをしでかしてしまうこともあるんだと、そして人間なんて真心を尽くし切っても、人一人の罪すら償い切れない程度の、下らん存在だとそんな風に絶望に駆られる



    ラスト数ページで
    絶望でせき止められてた涙腺ダムが崩壊する。人間やっぱ、捨てたもんじゃないよ。

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