絶叫

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (522ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929732

感想・レビュー・書評

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  • まず目に飛びこんでくるのは、NPO法人『カインド・ネット』の代表理事である神代武が殺害された新聞記事。
    そして、プロローグで単身向けマンションで11匹と猫とともに一部白骨化した孤独死体。
    それは、1973年10月21日に生まれた鈴木陽子であった。

    その当時だとごくありふれた家庭だと思う。
    サラリーマンの父と専業主婦の母、その長女として陽子が生まれ、弟が生まれ、翌年にはマイホームを建てる。
    だが身体が弱く繊細な弟だけに愛情を注ぐ母。
    やがて弟が事故で亡くなり父が知らぬ間に退職し、失踪する。
    父に借金があり、自宅を競売にかけられ母はひとり伯父の家へそのあと陽子は1人暮らしをする。

    それから陽子の人生が、いったいこれが1人の人生かと思うくらいに壮絶であり、誰といても孤独を感じさせるのだ。

    やっとNPO法人の神代との繋がりが見えたときには、棄民を利用しての暗部まで足を突っ込み身動きもとれないことに…。

    陽子が下した決断に異常さを感じ震える。

    愛に飢えた咆哮なのか…。

    これこそ絶叫だと。

  • 冒頭では、NPO法人カインドネットの神代武が殺害された事に関しての新聞記事…。その数ヶ月後、一見普通で平凡そうな鈴木陽子が、マンションの一室で人知れず何十匹もの猫とともにこの世を去った…。刑事の奥貫綾乃は、鈴木陽子の生い立ちから現在までの生き様を調べるうちに、この2つの事件のつながりが明らかになる…。

    スゴい作品を読んでしまった…!!鈴木陽子の壮絶な人生、どこまで落ち続けるのか…。一つの作品の中に、沢山の社会的問題が絡まって…これでもか!くらいに読み手を追い立てるような…そんな読み応えでした。ラストは思ってもない展開に、呆然としてしまいました。完全に参りました!!

    • ヒボさん
      私も海外作品は元々苦手だったんですよ。
      登場人物の相関関係を理解するのがとんでもなく苦手な私には当たり前なのですが、カタカナばかりの名前でア...
      私も海外作品は元々苦手だったんですよ。
      登場人物の相関関係を理解するのがとんでもなく苦手な私には当たり前なのですが、カタカナばかりの名前でアタフタ^^;
      そんな私でしたが、とある女性作家さんの作品との出会いが重かった海外作品の扉を開け放ってくれました。
      なので今は雑食的に気になった本を手にしていますが、稀にとんでもない作品に出会っちゃうんですよね。
      だから読書は辞められません(笑)
      2023/04/09
    • かなさん
      ヒボさん、
      「ロングアフターヌーン」にも惹かれたんですよぉ~♪
      どの作品も評価がいいし、楽しみですよねぇ~!
      葉真中顕さんの作品を読ん...
      ヒボさん、
      「ロングアフターヌーン」にも惹かれたんですよぉ~♪
      どの作品も評価がいいし、楽しみですよねぇ~!
      葉真中顕さんの作品を読んで、ヒボさんも追いかけます!
      (ストーカーみたいですね(^^;))
      2023/04/09
    • かなさん
      ヒボさんも海外作品に苦手意識あったんですか??
      それは、驚きです!!
      でも、今は沢山の作品を読まれてますもんね。
      私も、おすすめ頂いた...
      ヒボさんも海外作品に苦手意識あったんですか??
      それは、驚きです!!
      でも、今は沢山の作品を読まれてますもんね。
      私も、おすすめ頂いた「黒い睡蓮」が
      苦手意識を払拭してくれるような気がしてます。
      いつか、読んでみますね♪
      そうですね、読書は私もヤメられませんっ(^^)/
      2023/04/09
  • 面白かった〜!
    一人の女が腐乱死体で発見された。
    孤独死なのか?身元不明の女を調べるうちに、ある事件へと繋がって行くのだが…

    女刑事の捜査が進み女の過去が少しずつわかってくる刑事の語りと死んだ女の生まれた時からの女の語りが交互に進みながらラストで全てが繋がる…

    これが本当に凄い!もう一気読みです!
    一人の女が落ちていく過程がもうリアル過ぎます。

    この作家さん初読みですが…当たりです\(//∇//)\
    土瓶さん当たりだよ笑


    • みんみんさん
      この犯罪はなかなか考えてるよ〜!
      この犯罪はなかなか考えてるよ〜!
      2023/02/11
    • ゆーき本さん
      葉真中顕さん!
      これとロングアフタヌーン読みたいやつ!
      私の利用している図書館は1人10冊までしか予約できなくて、もういっぱいいっぱい予約し...
      葉真中顕さん!
      これとロングアフタヌーン読みたいやつ!
      私の利用している図書館は1人10冊までしか予約できなくて、もういっぱいいっぱい予約しちゃってるんだよなぁ( ・᷄-・᷅ )
      みんみんさんオススメ!よみたい!
      2023/02/11
    • みんみんさん
      ゆーきさん♪オススメですよ!どの作品も評価高いですよね〜どれも面白そう(^-^)
      ゆーきさん♪オススメですよ!どの作品も評価高いですよね〜どれも面白そう(^-^)
      2023/02/11
  • ビミョーなところを突いてくるお話しでした。
    こうなるか、となんとなくわかる。ということは、こんな事件、こんな悪者もいるんだ、というどこか昔の記憶が呼び起こされた感じだったのだと思う。
    いや、つい最近のニュースだったのか?

    将来への不安感がもたげてくるので、しっかり呼吸しながら読みました。
    人間は、人殺しをこんな簡単にできるのか?

  • NPO法人の代表が殺害された事件と、あるマンションで身元がわからないくらい腐敗した状態で見つかったある女性の孤独死…一見関連性のない2つの事件が、その悲壮な孤独死を遂げたとされる女性の一生を振り返ると共に、次第に繋がっていくという物語。
    500ページ強の結構な長編であったが、結論一日でイッキ見してしまった程引き込まれる内容で、最後まで中だるみなくおもしろいなと感じる作品でした。
    何をやってもうまくいかない、社会に溶け込むことができない、居場所がない、男運がない…まぁこんな設定の女性を主人公とした作品は結構あるのだが、この作品では主人公が想像の何倍をも超えて成長していく…と言ったら語弊があるが、生きていくために変わっていく、強くなっていく姿は圧巻であった。
    初めての作家さんであったがこの作品で俄然興味を持った。また別の本にもトライしていみたい。

  • 『ロストケア』の作者で前から読みたかった一冊(^^)
    殺人事件と孤独死した女性の2つの事件が、同一人物による犯行、その目的とは?!!

    ある女性の一生が描かれていてなかなか壮絶な人生だなぁと思いました。
    結局犯人があの子ってことはわかったけど、理解できぬまま読み終えてしまったのでモヤモヤです。

  • 2021/01/29読了
    #このミス作品62冊目

    最後まで2人称で表現されるミステリ。
    犯罪者目線で展開されるのも巧妙。
    "私"は誰なのか?
    グロめの生々しい表現もあるが
    それが逆にリアルで、
    本当にありそうな話に思えてくる。

  • 感想
    平凡な人生に山あり谷あり。人生誰にだって何が起こるか分からない。そして、人は何のために生きるのだろうなど考えさせられる。

    最後に急展開で謎解き。こういう逃げ切りもあるんだ。物語の伏線が次々に回収されていった感じ。

    陽子の回想シーンで「あなた」と書かれていたことも最後で納得がいった。

    あらすじ
    マンションで女性の白骨遺体が見つかった。飼い猫に喰われたことと死後4-5ヶ月は経過していそうなことから死因の特定は難しい。

    死亡したと思われる鈴木陽子がどのような生い立ちであったかが、現在と過去を行き来しながら、物語は進む。平凡な両親と弟の4人家族で暮らしていたが、母親が弟贔屓であることや、弟が中学でいじめられて自殺するなど、重い過去を持っていたが、当の陽子は地元の短大に通い、地元の企業に就職して平凡な毎日を送っていた。陽子も働くようになり、平凡な毎日を過ごしていたが、27歳のある日、父が失踪する。

    陽子は偶然、中学時代に憧れていた先輩と再会し、結婚して東京に行くが、子供ができずに離婚する。その後、保険レディとして働くが、ノルマに追われる日々を送る。

    刑事の綾乃は陽子の事件を追っていた。陽子都合4回結婚して、そのうちの3人は結婚から1年以内に死亡している。陽子は、ホームレスを支援するカインド・ネットというNPOの神代と付き合っているという噂があった。その神代も死亡している。

    陽子は、保険会社で枕営業をしていることがバレ、辞めさせる。風俗でお金を稼ぐようになった。その頃、風俗狩りに合い、神代と出会う。今、世話している元ホストに保険金をかけて殺害することを神代に提案する。神代はカインド・ネットの生活保護者を使って、連続保険金殺人を思いつき、実行に移す。陽子は神代の支配から逃れるべく、地道に計画を立てて、神代を殺害する。

    陽子は、風俗時代に知り合った橘を自分に見立てて殺害し、橘さおりとして生きる道を選ぶ。

  • 「社会的弱者」である女性の辛い人生なのか…と鬱々としながら400頁ほど読んでいたら、とんだ展開となりエピローグてしてやられた!と思った。今年一番の衝撃を受けた本だったかもしれない。
    思わず後ろを振り返ったし、もう一度読んだらきっと見え方が違うはず。
    葉真中作品は初めてだったので、とても良い経験ができた。他作品も読んでみたい。

  • 鈴木陽子の生育歴のパートを読んでいて、萩尾望都さんの「イグアナの娘」を思い出した。本人にはまったく自覚がないまま、子どもをくっきり差別して育てる母親。差別してますよなんて言われようものなら、烈火のごとく怒って反論してくるであろう母親。子どものころの陽子は次第に母親の本質に気づく。しかし、おとなになってからの陽子の生き方を読んでいると、そんな母親にそっくりになっている。自分に都合の悪いことからは徹底的に目をそらす。
    保険業界に入って仕事を始めたときも、上司と不倫関係に陥ったあとも、何度だって立ち止まって考えるチャンスはあった。それでも、どうしてもこんなふうになってしまうんだよなあ。このあたりを読んでいるときは、やるせなく、虚しく、哀しい気持ちになった。

    金魚の幽霊は、純の姿を借りた、陽子の本質部分だったのかもしれない。彼女が不幸のどん底から浮かび上がってくるきっかけが「自然現象」だったというのは興味深い。人間の生き死にもすべて自然現象、という考え方は私にはしっくりくる。

    「見えざる棄民」という言葉が胸に残った。
    暴力団の追放や、ホームレスの排除、障害者やニートの存在のことを考える時にいつも思うのだ。
    汚いもの、悪いもの、都合の悪いものを排除したいと思うのはわかる。でもゴミのように焼却できるわけじゃないのだから、街から排除したって、そういう人たちはどこかに存在する。追放して、排除して、その先どうしようというのだろう。
    ヤクザや貧困業者がなくならないのは、結局そういう人たちの行き着く先になっているからなんじゃないのか。
    生活保護の基準を厳しくすることが、どうしてちゃんとした社会になっていくことにつながるのだろう。みんな働けばいいのだ、というけれども、現実には、一部の頑健な人と同じようには働けない人だってたくさんいるのに。
    神代がやっていたことはおぞましいことかもしれないが、それは一般社会がオブラートにくるんで捨てたものの中身をむき出しにしてさらけ出しただけのことなんじゃないのか。
    殺されたからかわいそうと言うが、殺される前には見向きもしないのが一般社会なのだ。
    終盤での「あなたは」という語りかけのパートでの一文には鳥肌がたった。そうか、そういうことか、と腑に落ちる感覚。彼女の絶叫に打ちのめされた。そうくるのか、と。なんだかひどく納得してしまった。

    女性刑事の話ももうちょっと読みたかったな。スピンオフで書いてくれないかしら。
    私は作者は男性だと知って読んでいたつもりだったのだが、途中で「あれ?女性だったかな」と思った。それくらい、女性心理や女性の生理がリアルに描かれていたから。でもやっぱり男性なんだよね。なんであんなこと知ってるんだろう。

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著者プロフィール

葉真中顕

1976年東京都生まれ。2013年『ロスト・ケア』で第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞しデビュー。2019年『凍てつく太陽』で第21回大藪春彦賞、第72回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。

「2022年 『ロング・アフタヌーン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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