- 本 ・本
- / ISBN・EAN: 9784334929862
感想・レビュー・書評
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関ヶ原から30年。とある人物の依頼で関ヶ原について調べることになった一人の町人が、江戸上方と様々な人を訪ね真実を聞いて歩く。関ヶ原とは何だったのか、石田三成とはどういう人物だったのか、道理はどちらにあったのか…。
勝者が必ず幸せになるとも限らない。負けはしたけれど、やはり石田三成の正しさ誠実さ賢さは心に深く残る。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
関ヶ原の合戦の各大名家の動きや石田三成の実像に迫る歴史小説。関ヶ原の合戦の30年後に町人が当時の関係者に話を聞いて回る体裁になっている。徳川史観の下では三成は奸臣・佞臣と貶められていた。それを覆す展開になることは読みながら予想できた。しかし、話をする人々は皆が三成の良いところを話すものではなく、それほど単純ではない。
最後になって現在と未来につながる問題であることが明らかになる。不当に貶められた三成の実像を明らかにすることは、冤罪被害者の名誉回復と重なる。冤罪の追及は過去だけでなく、現在と未来の問題である。
三成は以下のように考えていた。「天下が定まったからには、もはや兵も不要、軍勢は減らして兵を田に返すようにするつもり」(250頁)。これは今村翔吾『八本目の槍』の三成と重なる。既得権を守りたい守旧派大名には嫌われるだろう。 -
関ヶ原から30年後の太平の世の中、ある者の依頼で江戸町人の文殊屋が当時の事、特に石田三成について当事者達にインタビューをして行く、言うならば"インタビュー with 関ヶ原"で小説の大半が経過していく。そして最後の一章で謎の依頼主とその意図、そして石田治部少輔の全体像が見事に浮かび上がる、小説として極めて秀逸な一作。
いやあ、おもしろかった。天下分け目の戦いと言えば司馬遼太郎の「関ヶ原」がそれぞれの大名家の事情や利害を腑分けしていて面白いが、この作品では更にその大名の部下やあるいは下級武士からみた関ヶ原の状況や、石田三成、徳川家康が彼らからどう見えていたかがイメージが着いてなんとも興味深い。そして、「道理」という関ヶ原でこれもほど使われ、これほど無力だった観念的観点から石田三成の実像を浮かび上がらせ、そして最終的には、子孫を代々受け継ぐ大名家としての情みたいなものと絡ませて大団円を迎え、読者を心地いい感想(感傷?)に導いてくれる。基本的に日本人は敗者に弱い。よくよく考えれば、石田三成は源義経、西郷隆盛と並び、人の心をグッとさせる日本的敗者なのかもしれない。 -
教科書にある一片の見方ではなく、さまざま立場からみた関ケ原を小説化している点で面白い。
ただ、口語調の文章が読みづらい。特に、東北弁。最も大切なところ場面だと思うが、伝わってこない。 -
日経新聞 夕刊「文学周遊」で紹介されていた為、手に取った。石田三成を、関ヶ原合戦に焦点を当てて評価する試みはそれほど斬新ではないものの、色んな立場の人間から回想を踏まえて浮き彫りにするストーリーが非常に面白かった。長編ではあるが飽きさせることなく、テンポの良い組み立て。お勧めの一冊。
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進みません…読むの中断です。
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関ヶ原の戦いで三成に関わった方々のそれぞれの視点や考え、そして三成の対応を物語化した小説。義理人情は大事だなぁと思った。
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葉室麟氏の「津軽双花」を読んでいたから、ラストはすごく暖かい気持ちになった(ネタバレになるか?)。石田三成と関ヶ原のことを、当時の経験者からの伝聞を「なんのために集める?」ミステリーとしても面白かったし、その経験者たちのお国言葉まるだしの話もとても興味深かった。石田三成そのものも人となりが面白かったし、その経験者たちの話も面白かった。また最初から読んでみたくなる気持ちになった。
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石田三成という人の好感度が高いというのは、まぁ普通に授業受けただけよという人にはかなり少ないだろうか。偏見だろうか。
そんなあなたも、この本を読めば三成の新しい魅力を再発見、ではないだろうか。いや誰も知らない田舎の役所が考えそうなフレーズではあるが。
この本を読んでざっくりと言い切るならば、三成は仕事人なんである。あまり裏表もなく、頑固っちゃあ頑固だけど、筋は通っている。というタイプは個人的には好きなんである。でも嫌いな人もいるわけで、だから戦国時代にも色々あったんだろうけど、ね。
三成派と言われる大名が、島津とか、上杉とか、南部とか、後は島左近とか大谷吉継とか。その人の人となりを見るには友人を見ろ、とね。なんかそそられるじゃんか。
著者プロフィール
岩井三四二の作品





