火星に住むつもりかい?

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 3069
レビュー : 449
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929893

感想・レビュー・書評

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  • 危険人物と判断された時点で警察の捜査対象にされることが当然となった場合こんな感じになるよといったお話。
    事件が起きないと警察は動かないと騒ぐ人々は読むべき一冊。

    読み始めてしばらく集中できず途中で断念を考えたが、他のレビューで最後まで読み切って良かったとあったので一旦読むのを止めて読み直しすることとした。
    2度目はすんなり入り込め作者の作風を存分に楽しめた。
    作者の複雑な伏線と最後の着地の良さに改めて尊敬。
    ゆっくりきっちり読み進めることをおススメします。

  • 自らの人生と決別する覚悟で声を上げた。「ここだ!ここにいるぞ」

    久慈羊介が広場で声を上げる、このシーンが最高に好きです。鳥肌が立ちました。映像が鮮明に頭に浮かびました。

    面白かった。他の方の評価が思ったほど高くなく、話に無理があるとか、ご都合主義だとかもちらほら見かけましたが、わたしはすんなり受け入れられたし、大好きでした。

    第一部約100ページ分、明らかに無実の人が痛めつけられたり拷問されたりと、辛い内容が続き、挫けそうになりました。二部に入り真壁さんが出て来て、そこから最後まで一気に読みました。

    全編通して割と残酷な描写が多い気がしますが、どことなく淡々としているし、昆虫の雑学をちょいちょい挟んできたり、勧善懲悪とまではいかないけど、平和警察の生みの親は貶められたし、真壁さんも生きてたし、やっぱり伊坂さんだなあって感じました。

  • タイトルからSFファンタジー的な話かと思ってたら全然違うし!!
    特に第一章はこわかった、なんかとても不安な気持ちにさせられた。
    最後まで読んでそれなりに納得はしたけど、最近の伊坂さんは理屈っぽいのが多いような。。
    登場人物が多い上にいろんなエピソードが語られるので、ごちゃごちゃしてました。。
    読後感としてはモヤモヤしてます。

  • 伊坂作品久しぶり。
    独特感がたまりません。悪人らしい人はいるけど、なんか使命感で淡々としていてでも迫力はあり、その回りも「悪いことをしている」ではなく、楽しんでいるわけでもなく、「まあそういうもんか」と受け入れている。立ち向かう側も、立ち向かう!という使命感ではない。
    …つきつめれば、色んな感情があるんだろうけど、表面上はほんとに軽妙。

  • 「平和警察」という組織が作られ、テロリスト等を摘発、ギロチン公開処刑制度ができた近未来パラレル日本。舞台はいつもの仙台。しかし平和維持のために作られた組織のすることは中世ヨーロッパの魔女狩り方式。自己保身や単なる妬みからの密告が横行し、構成員がほぼサディストな平和警察に捕まったら最後、自身が犯罪者だと認めるまで拷問、認めたら処刑、あくまで認めなければそのまま拷問死。どこにも逃げ道はない。

    罪もない人々が大勢処刑される中、突如現れた謎の男=正義の味方が、無実の罪で拘留されている一部の人々を救出しはじめる。ヒーローの正体は?平和警察では救出された人間の共通点から正体を突き止めようとするが・・・

    一貫した視点となる主人公はおらず、語り手は各部ごとに変わる。伊坂幸太郎らしい散りばめられた伏線、巧妙なミスリード。今回は「擬態」というキーワードがうまく利用されている。

    ラストは一応ハッピーエンドといえるのだろうけど、絶対の正義、というものを断言しないのが伊坂幸太郎の良いところ。悪いやつらが正義の味方に退治されて痛快、というだけでは終わらない。正義の味方にも事情はあるし、全員を公平に助けることはできない。ひとつの権力が倒れても、また別の権力が実権を握るだけ。最初は歓迎された新制度も、だんだん変質してとんでもない悪政だったということになることも多々ある。

    後書きによるとタイトルは、デヴィット・ボウイの「Life on Mars?」の和訳を作者がこう解釈していたというものだそうで。たぶん発売当初の日本盤でも「火星の生活」と訳されていたのだと思うけれど、どうやら実際は「火星に生命体が?」というような意味だったらしい。

  •  全く話に乗れなかった。伊坂さんは当たりハズレがあって怖い。

  • 前向きな諦めが必要なのかもしれない。とても恐ろしかった。

  •  一ケ月前、五月下旬に仙台駅の東口に作られた広場で、処刑が行われた。

    「安心していいからね。もちろん、保険はかけないといけないから、俺たちはこの後、君の裸の写真を撮る。少し、はしたない姿勢になってもらうけれど、まあ、我慢して。で、君がもし、俺たちのことを誰かに喋ったら、特に警察に言ったりしたら、その、破廉恥な写真はネットという大海に放たれて、回収不能になっちゃうわけ。しかも、君のだけじゃなくて、全員のね。今まで、俺たちが撮影してきたコレクションが全部、公開される。ハレンチコレクションが」

    平和警察

    「子供の大事な部分を、硫酸に漬けられそうになって、意地を張る母親はそうそう、いない。俺の母親くらいだろうな」肥後が笑う。

    鉄棒
    …母親は目を丸くし、鼻を膨らませ、また腕に力を込める。
     息子のために苦痛に耐える姿が、肥後には滑稽でならない。隣室で、母親の鉄棒ぶら下がりを眺めている制服警官三人も、明らかに笑みを浮かべている。

     県警内で二、三電話を入れると、東北大学工学部、白幡研究室に所属する学生の名前は得ることができた。大森鴎外は修士課程二年、岩手出身の男子学生で、太白区の八木山動物公園近くの住宅街の、賃貸アパートに住んでいる。

    「羊介、困っている人は助けろ」祖父はよく口にした。
     親切は正義、とでもいうような、悪くもないが正しくもない認識が、祖父にはあったのだろう。昔ながらの勧善懲悪、天網恢恢疎にして漏らさずの思想を大事にしていた愛すべき市民と言えた。

    …そのようにして僕は、ツナギの服を着て、磁石と木刀で、暴行を行う人間になった。

     理容チェアの客は、「どうにもならないよ」とさらに言う。「世の中はよくなったりしないんだから。それが嫌なら、火星にでも行って、住むしかない」と口元を緩めるだけだ。

    …タイトルから宇宙ものの話だと思われた方がいたら、申し訳ありません。…デヴィッド・ボウイのLife on Mars? 実際には、「火星に生物が?」という意味だと知り、恥ずかしくなった思い出があります。

  • 伊坂幸太郎作品の真骨頂!とも言うべき、読了後の爽快感が素晴らしい本でした。伏線の張り巡らせ方、文中における小気味の良い言い回し、回りくどいように思えて的を得た妙な喩え、何より先へ先へとページを繰らせるストーリーの組み立て方。全てがぴしゃり、とそこにあるべき形で息づいた気持ちの良い小説でした。この爽快感は重力ピエロを思わせるな、と少し昔の著者の本を思い出しました。

    個人的には、伊坂幸太郎作品で多く取り扱われている「正義とは何か?」という、正解のない問い掛けを考えるのが凄く好きなので、例に漏れずこの作品も一瞬で大好きになりました。作品を通して、ああでもない、こうでもない、と、解を導くまでの道筋を見せてもらっているようで、自分でも一緒に考え(ているつもりにな)ることができるところが好きです。


    以下、特にぐさっときた文章を抜粋。

    …「いつか、そういうリサイクル方法が見つかったとしても、父は何もやらないですよ。間違いないです。その点、そのおばさんはおそらく、リサイクルに協力します。どちらが正しいかどうかは断定できないですけど、ただ『君が、いいことだと思ってやっていることは、全部無駄だ』と無神経に言えちゃう人は、自分の面倒臭さを正当化する理由を考えたいだけに思えちゃうんですよ。」

    →「資本主義社会なんて大嫌いだー!だからそれを助長するような仕事なんてやりたくねえ!汚いことに手を染めるなんてごめんだぁっ!」と思っていた自分にそのまま向けられた言葉のように思いました。そう、私は自分が病んで働かないことを正当化するために、そんな理由をでっち上げたのでしょう。決められた枠組みの中で自分なりの正を探して奮闘することの方が、よほど世のためになるだろうし、そもそも意味なんてないこの人生を豊かにするためには、必要十分な大義だろうと思う。


    いやはや、良き小説に出会いました。

  • 信じていた正義が悪に変わる瞬間の恐怖感と勧善懲悪的感覚が大いに刺激される。権力の前の無力感本当に怖い。

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著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

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