日本「半導体」敗戦 (Kobunsha Paperbacks 138)
- 光文社 (2009年8月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334934699
感想・レビュー・書評
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日本の半導体メーカは微細加工性を強調するのに対して、韓国や台湾の半導体メーカはスループットと稼働率を強調するようです。パテント・エンジニアにとってのスループットとは何でしょうか?真っ先に考えられるのが、明細書の作成時間だと思います。
これまで、新規出願数十件を担当しました。特許事務所を介した出願は含めておりません。一件当たりに費やした時間は20時間くらいではないかと思います。一度、出願までどのくらい時間をかけているのか正確な時間を計測してみようとしたのですが、細切れで仕事をしているとついつい計測するのを忘れてしまうことがあったので、断念しました。20時間という数字は感覚で記載していますが、それほど見当外れでもないと思っています。質を下げずに、この20時間を減らしていくことがスループット向上に繋がると思います。
以前は、研究者から頂いた明細書を一字一句確認し、日本語としておかしいもの(てにをは)や、SVOCの関係が全くなっていない文章などを徹底的に修正していました。しかし、そんなことをしていてはいくら時間があっても足りません。
担当する部署が増えたことを境に、一字一句見直すことをやめることにしました。手を抜き始めたと言うことではありません。膨大な件数の中で本当にライセンス等で活用される案件など微々たるものです。多くの案件は「権利化したら、はい、それで終わり」です。活用可能性のある案件だけについて、本当に力を入れて取り組めばよいのです。
そこで問題となるのが「活用可能性のある案件の決め方」です。出願後ある程度期間が経過していれば、毎年行われる会社の表彰で認定された案件が重要案件と認識すればよいのですが、出願前だとそうは行きません。上司に聞くと、「そういうことは技術に精通している研究者に聞くのが良い」と言われ、研究者の方に聞くと「先のことだから何とも言えない」と言われてしまいます。
結果として、「どれが重要になるか分からないから出願前はどの案件も力を入れなさい」という無理難題に陥ります。これでは、担当する案件が増えればルーチンを回せなくなるのが目に見えています。
出願前にフラグを立てる妙案はないものでしょうか。明日の5年目からは、そんなテーマを一つの目標として業務に望みたいと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日立をクビになったエンジニアの回顧録。
ところどころうらみつらみやどうでもいい旅行記が書かれているが、それなりに分かりやすかった。 -
"電子立国"読んで、観たから、これで日本の半導体産業の栄枯盛衰が見えるかな...
半導体技術者だった経験が生かされた分析は新鮮。興味深く読めた。 -
外から見ている人にとっては半導体産業って非常に分かりにくい産業だと思うのですが、業界の中枢でエンジニアとして働いていただけあってその実態を的確に書いていると思います。本書の内容はとても納得する事が多い。しかし未だなかなか変われないのは何故だろう。本質的には今も本書の内容は当てはまると思います。
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元日立の半導体技術者の方が、「なぜ日本の半導体産業が凋落したか」をまとめたもの。
色々勉強になりました。
・高スペックを闇雲に追及し、供給サイドの理屈で商品の値付けをしてはいけない(特にコモディティの場合は)
・技術力には二種類ある。要素技術と生産技術。他国の競合企業は「生産技術」を徹底的に追求しコスト競争力を獲得
・日本半導体はゴーン前の日産のようであった。日産は技術オタクの会社で、過剰技術・過剰品質のせいで倒産しそうになった
・日本は、研究部→開発部→量産部という序列。サムスンは、マーケティングに精鋭を揃える
・官主導のコンソーシアムは機能しなかった
・対等の精神の合弁はうまく機能しない。特に「技術(=長い年月をかけて構築されてきた文化)」に摩擦がある場合は難しい
・日本の製造業では、「技術者」として偉くなることが難しい。優秀な技術者が優秀なマネージャーではない
・特許戦略は極めて重要。特許を利益に転換していかないと、ただ競合他社を育ててしまうだけ
・ASMLは、最初の露光装置を設計する際、その後10年以上にわたって通用するプロットフォームを構築した。日本の装置メーカーは、都度全く新しいものをゼロから作っていたのでは
・ASMLの装置は個体差が少ないが、ニコン・キャノンは個体差が大きい。そうすると、ある装置A用のライン、装置B用のライン、と作らざるを得ず効率が悪い -
著者は、87年に日立に入社し、02年に退職、日本半導体凋落と共にキャリアを積んだ方。エルピーダ統合時のなまなましい話も。
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日系半導体メーカーに勤めていた著者から見た日本半導体産業没落の背景・理由についての本
半導体に限らず、日本の産業全般に共通している気がするのです -
過剰品質の滑稽さ、笑えない敗北感