キリング・フィールドからの生還―わがカンボジア「殺戮の地」

制作 : 吉岡 晶子 
  • 光文社
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  • レビュー :3
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334960483

作品紹介・あらすじ

本書は映画『キリング・フィールド』でアカデミー助演男優賞やゴールデン・グローブ賞を受賞したハイン・ニョルのカンボジア内戦下での体験をつづった手記である。

感想・レビュー・書評

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  • ヴェトナム戦争は隣国であるカンボジアにも飛び火した。

    「いんですよ、そんなこと。あなたはちゃんと来てくれたじゃないか。
    シドニー、 あなたはちゃんと来てくれたんだ」

    映画「キリング・フィールド」のラスト。カンボジア内戦を取材して
    いたアメリカ人ジャーナリストとカンボジア人助手の再会のシーンで
    ボロボロと泣いた。

    カンボジア人助手を演じ、アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞で
    助演男優賞を受賞したのがそれまで演技経験のなかった本書の著者
    ハイン・ニョルであり、彼も「キリング・フィールド」でクメール・
    ルージュ支配下のカンボジアを生き延びたひとりでもあった。

    アメリカの傀儡政権であったロン・ノル将軍を倒したポル・ポト率いる
    クメール・ルージュは農業重視の原始共産制社会を目指した。プノンペン
    などの大市都市の住民を強制的に農村に移住させ、集団農場で農業に従事
    させ、食糧の増産をはかった。

    事業で成功した父を持ち、自身も医学部に通い産婦人科医であった著者
    も例外ではなく、プノンペンを追われ、次々と農村を移動させられて
    クメール・ルージュの言う「自然への攻勢」に駆り出される。

    知識人階級を憎むクメール・ルージュに医師であることがばれれば
    即刻殺される危険がある。それが証拠に農村の共同体からは毎日の
    ように兵士によって何人かが森に連れていかれ、二度と帰っては
    来なかった。

    クメール・ルージュのスローガンとは反対に共同体は慢性的に食糧が
    不足し、共同食堂で出されるのは薄い粥だけ。空腹を満たす為に野生
    の食料を隠し持っていれば、それが処罰の原因になる。

    著者も3回、兵士に連行されている。1度目は隠していた食料を見つけ
    られたこと。あとの2回はプノンペンで医師をしていたことの密告が
    原因だった。

    連行された監獄などで著者が目撃した拷問や処刑の描写に吐き気がする。
    生きたまま足元から火と煙で燻される。生爪をペンチではぎ取られる。
    妊婦の腹を裂いて胎児を取り出し、その胎児をまるで戦利品のように
    監獄の軒下に吊るす。

    人間はどこまでも残虐になれる動物なのだなと感じた。

    なんともやり切れない現実だが、救いだったのは著者の妻であるフオイ
    の存在だった。しかし、そのフオイは子供を身ごもりながららも早産の
    為に命を落としてしまう。産婦人科医でありながらも、なす術もなく
    妻と子供を一度に失ってしまうなんて…。

    地獄のようなクメール・ルージュの支配も、長くは続かなかった。僅か
    4年で崩壊の足音が聞こえている。

    タイ国境を目指しての脱出行、難民キャンプでの暮らしを経て、やっと
    アメリカへの亡命が叶い、「キリング・フィールド」へ出演することに
    なった過程、撮影の裏話なども綴られている。

    映画初出演後もいくつかの映画に出演し、人権活動にも携わっていた
    著者だったが、56歳を目前にしてロサンゼルスの自宅近くで強盗に
    よりその生涯を閉じた。

    ヴェトナム戦争でナパーム弾で焼かれた少女は苦難の越えてカナダで
    幸せな暮らしを手にしたのになぁ。

    運命というにはあまりに辛いわ。

  • 少し前から文革・毛沢東・共産主義について知りたくていろいろ本を読んでいます。ポルポトもそんな名称や大殺戮があったことぐらいは知っていますが詳しく知りたくて読んでみました。

    なんというのか。自国の人民を殺すと言うことは自国の国力を削ぐ、と言うことですよね。当然生産性も下がり、健全な文化・文明の発展の妨げとなる。そんなことがどうして分からないのか。いや、分かるような教育を受けていない人間が恐怖のみで支配を行ったからなのか。(多分支配する側もいつ殺されるか分からないという恐怖の元に支配していたのでしょうけれども)
    何故人はかくも愚かになれるのか。そしてその状況に順応してしまえるのか。

    別に差別しているわけではありません。自分だってその場に居たのであればクメール・ルージュ側もしくは反対の新住民になっていたのかも知れないのですから。
    その事実が悲しい。

    本日の朝刊にスターリン時代の粛清の追悼が行われたと言うニュースが載っていました。こんなことは起こってはいけなかったことだし、これからは起きては成らないことだなあと考えています。

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キリング・フィールドからの生還―わがカンボジア「殺戮の地」はこんな本です

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