イエスを愛した女 聖書外典・マグダラのマリア

  • 光文社 (1999年4月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (380ページ) / ISBN・EAN: 9784334960902

感想・レビュー・書評

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  • 【 聖書とユダヤ民族の壮大な歴史書! 】   

    小説風な名前がついていて、
    マリアを主軸に描いた
    恋愛小説っぽいタイトルですが、
    中身は真面目で堅い
    「聖書とユダヤ民族の壮大な歴史書」です。


    読了日:2005.10.15
    分 類:長編
    ページ:378P
    値 段:1900円
    発行日:1999年4月発行
    出版社:光文社
    評 定:★★★+

    ●作品データ●
    ----------------------------------
    主人公 : マリア中心
    語り口 : 3人称
    ジャンル : 歴史書
    対 象 : 一般
    雰囲気 : 時代考証的
    翻訳: 柴田都志子・田辺希久子
    ----------------------------------

    ---【100字紹介】-----------------------
    娼婦から聖女へ、劇的な変貌を遂げたマグダラのマリアを中心に、イスラエルの風土を知り尽くした著者が、正典福音書と古代教会が排除した文書、ユダヤ教文献を参考に集大成した、聖書とユダヤ民族の壮大な歴史書。
    --------------------------------------


    タイトルからすると、ばりばり「マグダラのマリア」ばかり描きまくってるのか、と思われるかもしれませんが、そうでもありません。むしろ「歴史書」感が強い感じです。

    邦訳版なので実際の原作の「ノリ」はよく分かりませんが、描き方としては、他の作家でいうと司馬遼太郎に近い雰囲気を感じます。丹念に資料に当たり、単なる想像ではなく根拠ある「推測」によって、人々をとりまく事物を描写し、「役者」が演技をするための「舞台セット」を丁寧に並べていくような。


    ?部「背景」は、プロローグ。独自の「マグダラのマリア考」を展開し、その信念に基づいてこの作品を編み上げたことを高らかに宣言します。

    ?部「宣教」より実際の物語の準備として、まず舞台に「洗礼者ヨハネ」「マグダラのマリア」「大祭司カイアファ」そして「イエス」のための過去、背景、現在の状況といった大道具をセッティング、この部の最終章でようやく、マリアとイエスは出会います。

    ?部「多難」ではイエスが十字架へ向かっていく様を、マリアの付き従うイエスの説教が通奏低音のように流れる中、ガリラヤ領主ヘロデ・アンティパス、ユダヤ大祭司ヨセフ・カイアファ、ローマからやってきたユダヤ総督ポンティオ・ピラトなど権力者たちが次々と舞台に立ち、時に高く時に低く、個々の事情を明かしていくという構造です。

    ?部「審判」はその名の通り、ユダの裏切りやイエスの裁判と処刑の章。ただでさえ高まる緊張感の中、ピラトの妻でありローマ皇帝の孫娘という大変高い身分の女性・クラウディア・プロクラが何とイエスを擁護、それによりますますピラト夫妻の溝が深まるとか、最高法院の議員であるニコデモが単身、イエスの元を訪れ、その教えに共感してカイアファの開いた会議でやはりイエスを擁護、それにより神殿勢力の意見が割れる、といった、?部で踊っていた人々の、それぞれの思惑に対立する勢力が出現して緊張感をさらに高めていきます。そして、雪崩れ込む最後の審判。


    それぞれの場面が本当に丁寧に描かれています。まるでひとつひとつの小道具を、いとおしみながら磨き上げ、他のスタッフの目の前に次々と置いていく小道具係のように、著者は資料の中から拾い上げた古道具を並べ立てていくのです。


    情緒に流されることなく、これだけの物語をきっちり描き上げているのはなかなか素敵なことだなあと思いました。きっと著者は敬虔なキリスト教徒で
    強い信念の元、この物語を作り上げていったのでしょう。

    しかし、キリスト教は、女性蔑視の風潮が強いのですね。あまりよく知りませんでした。それについて、?部、?部「伝承」で、強く訴えているのも本作の特徴。元々歴史的なものも知らなければ、キリスト教自体になじみの少ない菜の花のような者の目から見ると、本作を読めば「何故?」と思ってしまいますが、きっと幼い頃から「こうだよ」と教え込まれてきた敬虔なクリスチャンには幾らこの本に叫ばれたって「これが常識」と一蹴されてしまうのかもしれません。人間って、やっぱり頑なですから。そういえば、前ローマ法王さまの女性観もそういうものだったと亡くなったときのニュースで聞いたような気も致します。とても偉大な方で、人々の尊敬を一身に集めた偉大な法王だったそうですが、それが歴史の重みってものなのでしょうか。



    ●菜の花の独断と偏見による評定●
    ---------------------------------
    文 章 : ★★★
    描 写 : ★★★★
    展 開 : ★★★+
    独自性 : ★★★★
    読後感 : ★★★
    ---------------------------------

    「この子は、イスラエルの多くの人を倒したり立ち上がらせたりするためにと定められています。」 (シメオン)

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