アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した

制作 : 濱野大道 
  • 光文社
3.51
  • (6)
  • (12)
  • (16)
  • (1)
  • (2)
本棚登録 : 323
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334962272

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • イギリスにおける格差社会、貧困問題を、著者自身が底辺の街に住み、悲惨な職場で働くことを通じてあぶり出すという意欲作。途中、職場とは関係ないやん!というような、ホームレスの話が突然出てきたりするのはご愛嬌。タイトルにある企業をただ批判する本ではないのに好感が持てた。
    それにしても格差社会、貧困問題は完全に日本と同じ・・日本もいずれこうなるのか、足元ではすでにこうなっているのか。若い人たちに、こんな絶望的な社会しか残せないことになんだか悲しくなる。

  • タイトルにはアマゾンやウーバーの事しか書いていないけど、訪問介護やコールセンターも含めた低賃金職場環境のルポルタージュだった

  • イギリスのアマゾンのピッカーの話。東欧移民を最低賃金でゼロ時間契約(雇い主が雇用時間を自由に決められる。解雇したい時は雇用時間をゼロ時間にする事も可能)で雇い体を壊すまで働かせて使い捨てにする(低賃金で労働条件が劣悪なので健康な人もすぐ不健康になる。イギリス産業革命期の労働者みたい。まさに歴史は繰り返す)くだりは、日本の外国人技能実習制度を連想させられた。

    他にもリーマンショック後の景気回復で失業率は減ったけど、その内実はゼロ時間契約の非正規雇用が増えただけという日本でもお馴染みの状況など、とても他人事とは思えない事実のオンパレード。

    日本でも一部意識の高い人たちの間で、雇用流動化の推進とバラ色の未来が吹聴されている(これからは人生100年。複数回の転職は当たり前。老後も働けば年金の心配も不要、など)が、この本で語られるイギリスの様子を見る限りではそんな良いことばかりが起きるとも思えず暗澹たるき気持ちが募った。

  • ・イギリスの炭鉱が閉鎖されてからの仕事のなさ、社会の活気のなさが感じられる。

  • イギリスにおける低賃金労働の現場体験ルポ。
    書名から、IT系企業における人間の労働について書いてあるのかと思ったが、他の仕事についても書かれている。そういう意味で邦題はミスリーディングで、原題「HIRED(雇われる)」の方がしっくりくる。
    著者が体験するのはアマゾンの倉庫、訪問介護、コールセンター、ウーバー運転手。肉体的な過酷さだけでなく、効率優先の厳しい労働者管理が、働く人の心身を削っていく。たとえばアマゾンでは常に作業員を監視し、身体検査まで行うが、かえってモラルの崩壊に繋がっている。介護は人間のケアをする仕事だが、時間に追われるあまり話し相手等の精神的なケアはできず、体のケアも手抜きにならざるを得ない。「在宅介護士の仕事をよりやっかいにするのは、自分たちが受けた仕打ちが、世話を担当する相手にそのまま跳ね返る可能性があるということだった。(第2章、p149)」
    いっぽう著者自身の仕事の話に加えて、その環境で出会ったいわゆる低所得層の人々の体験談も加わる。ディスカウントストアで働く人、ホームレスの男性、貧しさのために家電が買えず高額のレンタルに頼る家庭。ブラックプールの図書館はネット環境を持たない人のネット閲覧場所であり、ホームレスの居場所かつトイレと洗面台の提供場所「20ペンス・ホテル」となっている(p166)。
    「新しい」労働と対比するように、しばしば「古い」産業である炭鉱の話が出てくる。アマゾン倉庫のある町ルージリーはかつて炭鉱で栄え、今はその凋落とともにコミュニティ自体が寂れている。雇用創出を期待してアマゾンを誘致したが、働く人の大半は移民のルーマニア人で、イギリス人の著者は珍しがられるほど。また第3章では、元炭鉱夫の昔話とともに過去の労働争議も含む炭鉱労働の歴史を振り返る。ただし著者は古き良き時代を美化してはおらず、炭鉱労働は死と隣り合わせの危険な労働だったと言い添える。
    非人間的な労働は「新しい」産業特有の問題ではなく、資本主義の下での管理と搾取という昔ながらの構造であることを指摘している。

  • イギリス人ジャーナリストが自らイギリスの底辺と呼ばれる地域に住み
    アマゾン倉庫、訪問介護、コールセンター、ウーバードライバーとして
    働いた潜入ルポ。これが先進国と言われる国の現状なのか?と疑いたくなるほど。途中読むのがつらくなる。
    劣悪な労働環境とひとくくりにできない不気味なものを感じる。
    効率や生産性を追求し労働者は機会のように扱われる。
    グローバル企業による「ギグ・エコノミー」という名の搾取。
    イギリスではこんな条件下でも移民は自国の3倍の給料のために働いている、言葉の問題もあり表面化しないとか。
    日本はまだマシかと感じたが果たしてそうか。格差拡大はすでに始まっている。

  • 現代版蟹工船。英国のルポだが、日本に置き換えても何ら違和感が無い内容(タイトルのウーバーは日本には無いとしても)。槍玉に挙げられたアマゾンは率直にこれほど酷い環境とは思わなかった。ユーザーが安価に利便性を享受できる仕組みの一端が、具体的に描写された事は価値ある仕事(アマゾンでの就業経験も含む!)と言える。近年話題になったアップルやユニクロなど、その他超一流企業による労働者搾取は、我々消費者が受ける恩恵と直接繋がっているが、我々は値上げしても良いから彼らの待遇を良くしてほしいと声を上げることは無い。資本主義とはそういうものだから、なのだから。ちなみに自動化が更に進めば、労働者は今の過酷な職場すら失う可能性がある。とはいえ職が無い=食いつめる、というわけでは必ずしもないのが今日の世界でもあり、資本論以来のモノの見方に固執しては、かえって物事が見え難くなる点は認識したいところ。本書は労資における、彼我の立場をさほど公平に扱うスタンスではないので(意図的にだが)、その辺も割り引いて読みたい。

  • アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した。ジェームズ・ブラッドワース先生の著書。先進国に住む多くの人が享受している安くて便利なサービス。でもそれは、そのようなサービスを提供するために低賃金で過酷な労働をしている人がいることの裏返し。自分だけが幸せで楽しければそれで良いという自己中心的な人間にはなりたくない。そう思う人が増えないと現状は変わらない。

  • イギリス人ジャーナリストによる労働者を使い捨てる過酷な労働現場の潜入ルポ。

    著者が雇われた職場はアマゾン倉庫、訪問介護、コールセンター、ウーバードライバー。誰もができる作業ゆえに人の取替が容易。だから、経営側は「クビ」というカードをちらつかせながら、労働者へ無理難題と低賃金を押し付けることができる。アマゾンのような巨大企業が求める効率化にとって、ヒトもモノも扱い方は変わらない。

    移民が多くない今の日本にとって、本書で語られるイギリスは極端かもしれないが、いずれは参考にすべき時が来るだろう。ウーバーは自社ドライバーを個人事業主として業務委託契約するが、実態はアメとムチでドライバーへ労働を強制し、個人事業主に抵抗の手段はない。その光景は日本のコンビニ経営とそっくりだ。

    と、イギリス格差社会の底を突きつけられる本書だが、その情報は主に労働者たちのインタビューによるもの。労働者としての著者による感想や体験は少ないし、採用されたプロセスも語られず。本当に潜入労働していたのか、疑問が残るルポだ。

  • タイトルから想像がつく通りの内容です。イギリス人の著者が、イギリス内でAmazon倉庫のピッカー、大手の訪問看護派遣会社、保険のコールセンター、ウーバーの運転手として実際に働いてみたルポタージュ。日本でもありましたね、ユニクロのやつ。ああいう感じです。ほんのりソフィストケートされたデジタル蟹工船。21世紀のプロレタリア文学です。

    イギリスは産業革命発祥の地、工業で世界を制覇したものの情報革命に乗り遅れ、経済活動も社会制度もてんやわんや。過去の栄光のせいか、周辺の国とはうまくつきあえないし、移民でもめてるし、国民は無駄にプライド高い。格差は広がり、金も人も首都ロンドンに集まって地方が衰退していく。日本に似てますね。負けないぜっ!

全16件中 1 - 10件を表示

アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂したのその他の作品

ジェームズ・ブラッドワースの作品

アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂したを本棚に登録しているひと

ツイートする