アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した

  • 光文社
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レビュー : 68
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334962272

感想・レビュー・書評

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  • 英国人ジャーナリストによる、新興業種の潜入体験談です。
    アマゾン、訪問介護、コールセンター、ウーバーでの見聞が収録されています。
    現代人の多くが享受している便利なサービスの裏には、どんな仕掛けがあるのか。
    脱線が多めですが、拝金主義に向かいつつある資本主義が一部の人々をどう扱うのかが綴られた一冊。

  • 【搾取沼】
    いまをときめく巨大企業は労働者から搾取行為をしてぼろ儲けをしています!
    ひどい会社です!
    と言いたいのでしょうが、資本主義とはもとからそういうものです。

    残念ながら、資本主義では「資本家側」か「資本家を儲けさせる側」かこの二種類の人しか存在しません。
    しかし、資本主義(資本第一主義)の世界で生まれたにも関わらず、資本家になるための教育はされません。りっぱな 「資本家を儲けさせる側」になるための教育が十数年もかけて行われます。

      「資本家側」と「資本家を儲けさせる側」には大きな(儲けるお金で1000倍以上)開きがありますが、 「資本家を儲けさせる側」 でも給料に2~3倍の開きはあります。
      「資本家を儲けさせる側」の上位でも裕福さはそこそこ程度ですので、その上位の1/3の稼ぎになると生活は苦しくなります。
      
    その名の通りそれが「資本」主義です。

  • イギリスの貧困層/労働者階層(両者の微妙なズレ自体も主題の一つだ)のルポ。原題は HIRED。邦題は煽りすぎのような気もするが、『雇用』では手に取られまい。

    アマゾンのピッカー、派遣介護、保険のコールセンター、ウーバーのドライバー、それらの仕事を実際にやってみて、なにが起きているのかを描き出す。
    「ギグ・エコノミー」と呼べば聞こえはいいが、何も保証されない「ゼロ時間契約」のことである。イノベーションに見えるビジネスも、どこから利益が生まれているのかといえば、最貧困層からの搾取によるものであったりする。
    厳しい冷酷な時代。
    労働組合が力を失う中、どのようにしてこの格差を糾していくことができるだろうか。

  • イギリス最底辺の労働環境の実態をジャーナリストの著者自ら潜入し体験した内容を報告するという内容。

    アマゾンの倉庫、訪問介護、コールセンター、ウーバーのタクシーで働くが、そこから見えてきたのは資本主義が生み出した管理社会の極地。

    豊かな社会が実現したかのように見えるイギリスだが、その豊かさが覆い隠すのは最底辺の環境に苦しむ搾取された労働者の存在であった。

    生産性向上の必要性が叫ばれている日本においても、同じ島国であるイギリスで直面している労働環境に関する問題点は決して他人事ではなく現実として受け入れなければならない事だと感じた。


    以下、特に気になった点。

    ・生産性至上主義のもと、抑圧的な環境で日々監視の目にさらされながらの労働で過度のストレスを感じながらの労働が強いられている。

    ・古い産業にあった労働者同士の連帯感や熟練された技術による仕事の尊厳などが消滅し、高い技術を必要としないルーティーン化された単純労働の増加。

    ・お金に困った従順な移民労働者が雇用を独占し、賃金の低下や更なる労働環境の悪化に向かっている。

    ・“ギグエコノミー”が謳う自由で自律した柔軟な働き方という欺瞞。実情は個人事業主とされたドライバーの仕事への裁量権すらなく、サービスの提供元の責任逃れ、最低限の保証も不安定な労働環境。AI、アルゴリズムによる管理の仕方にルールを設けるなどの改善が必要だと感じる。

  • 当たり前のようにネットで買い物をする人間がいる一方、該当の商品を探して倉庫内を走り回り、そのスピードを常に監視されている人間がいる。アプリで手軽にタクシーを呼ぶ客がいる一方、アルゴリズムによって管理されるタクシー運転手がいる。社会の底辺とも呼ばれる職場に潜入し、その実態を暴くだけでなく、労働者階級の人々の本音を引き出す著者。現在、イギリスでは約20人に1人が最低賃金で生活していると言われる。移民問題、廃れた地域、ゼロ時間契約...。労働者階級の生活を、著者自らの眼で見て、真実を確かめたノンフィクション。

    p7
    現在、イギリスでは約20人に1人が最低賃金で生活している。

    p8
    世界金融危機のあと、自営業者が100万人以上も増えた。その多くが、インターネットなどを通じて単発の仕事を請け負う“ギグ・エコノミー”という働き方を選んだが、彼らに労働者の基本的な権利はほとんど与えられていない。

    p10
    ゼロ時間契約[訳注、zero-hours contract、週当たりの労働時間が決まっていない雇用契約のことで、特に近年のイギリスで大きな社会問題になっている]

    p22
    同僚たちの大半は東欧から来た人々で、そのほとんどがルーマニア人だった。私の存在に気づいたルーマニア人たちはしばしば、なぜイギリス人がこんな卑しい仕事をして自らを貶めているのかと不思議がった。

    p25
    それぞれのピッカーは、商品を棚から集めてトートに入れる速さによって、最上位から最下位までランク付けされた。

    p25
    このようなアルゴリズム管理システムが生み出されたという事実は、将来への警告であると同時に、フレデリック・テイラーが提唱した「科学的管理法」への後退でもあった。1911年、フィラデルフィア在住の裕福な機械エンジニアだったテイラーは、無益な作業と人間の怠け癖をなくすことを目指し、労働活動の科学的な理想像を描いた研究論文を発表した。彼が編み出した科学的管理では、仕事場すべての作業が細かく監視さら、時間計測され、記録されるべきだとされた。労働者は製造のための構成単位であり、作業に使われる機械と同じように生産高が計測され、細部に至るまで指示が出されるべきだとテイラーは主張した。当時の著名な知識人たちと同じように彼は、労働者階級の人々を完全な人間だとはみなしておらず、利益を上げるために利用することのできるリソースだと都合よく考えていた。「(たとえば銑鉄運びは)洗練とはほど遠い、ごく初歩的な作業であるため、ゴリラを訓練すれば人間よりも効率よくこなすにちがいない」。テイラーは労働者のことを、自分たちを支配する原理に対する「理解が足りない」人々だと記した。“経営者階級”はテイラーの理論を嬉々として探り入れようとした。2001年に米国経営学会は、20世紀でもっとも大きな影響を与えた経営管理本にテイラーの『科学的管理法』を選んだ。

    p37
    2016年4月の時点で、ルーマニア国内に住むルーマニア人の手取り月給の平均は413ポンドで、地方での額はさらに低かった。

    p44
    強大かつ不可解な資本主義の力に圧倒された社会では、何故か移民だけが標的にされる。実際にイギリス文化が踏みにじられているのだとすれば、より大きな責を負うべきなのは、東欧から来た果物収穫作業員ではなく、ドナルド・マクドナルドのほうだろう。

    p259
    ギグ・エコノミーとは、フリーランスの単発の仕事によって成り立つ急成長中の労働市場だった。依頼されるのは出来高払いのフレキシブルな業務で、携帯電話のアプリを通して割り振られることが多い。

  • アマゾン、訪問介護、コールセンター、ウーバーといった最低賃金での仕事に潜入し、その就労環境や雇用形態の実態から資本主義や新たなサービスがもたらす分断を克明に語る。
    日本でも都心部のコンビニで働くのはほとんどが外国人だ。その意味で決して日本も他人事ではない。
    今の時代の数多くの(ときに過剰な)サービスが彼らの人権や生活の搾取のもとで成り立っている。

    注文したらすぐに届くアマゾンやウーバー。その便利さを享受できる裏側には、厳しい管理下のもとで1日何十キロも倉庫を走り回るものや、なんの保証も得られない「個人事業主」でありながらスマートフォンからのアルゴリズムに基づく命令に振り回されるドライバーがいる。

    資本主義社会がもたらすこの分断や格差は、いつの時代もまたどの社会にも存在してきた。
    行政は常にその問題意識を持ちつつ、セーフティネットの網がきちんと機能しているのか目を張り、対応し続けていく必要があるが、それもまたいつもうまくいっていない。

  • 産業構造の変化や、2008年後の金融危機で、労働者の環境や雇用の形態が大きく変わり、いわゆる搾取を受ける労働環境で働く現場の状況を報告している本。同時に、英国社会の労働状況の変化についての一般的な情報も伝えている。
    著者は、肉体労働と従業員の管理が半端ないアマゾンの倉庫、接待サービスでありながら顧客の立場をも理容ぜざるを得ないような倫理的苦しみも覚える訪問介護、過去に栄え産業が廃れた地域に建設され、各個人が監視されて働くコールセンター、そして労働者としての権利なく、自営の請負人としてUberの運転手としての仕事。
    これまでの「労働者階級」というくくりではとらえきれない様々な課題の山積する現代社会のひずみを浮き彫りにしている。
    新型コロナウィルス感染症によりさらに産業構造や雇用形態が大きく変化する中で、さらに状況が危ぶまれる。統計的数値のみにとらわれず、具体的な生活の現状をできる限り把握すること、そして、生計を建てる立場にある人々が搾取される構造を進展させてしまわないように、「誰もが人並みの生活」をできる社会のための制度やルール作りに手を打つ必要があると感じた。

  • 原題は「Hired」なので、うまい邦題をつけたなというのが第一の感想。
    筆者が実際に企業に潜入し、そこでの体験や経験、一緒に働く移民の同僚たちの語りを用いて、イギリスでの格差社会や貧困を描き出している。
    本書を読むことで、日本では意識しづらい「階級格差」をリアルに感じることができる。具体的な解決策が明示されていないので、読み終わっても未来への不安な気持ちがぬぐえない。

  • 衝撃的な内容、でも我々は引き返せない

  • イギリス人ジャーナリストによる労働者を使い捨てる過酷な労働現場の潜入ルポ。

    著者が雇われた職場はアマゾン倉庫、訪問介護、コールセンター、ウーバードライバー。誰もができる作業ゆえに人の取替が容易。だから、経営側は「クビ」というカードをちらつかせながら、労働者へ無理難題と低賃金を押し付けることができる。アマゾンのような巨大企業が求める効率化にとって、ヒトもモノも扱い方は変わらない。

    移民が多くない今の日本にとって、本書で語られるイギリスは極端かもしれないが、いずれは参考にすべき時が来るだろう。ウーバーは自社ドライバーを個人事業主として業務委託契約するが、実態はアメとムチでドライバーへ労働を強制し、個人事業主に抵抗の手段はない。その光景は日本のコンビニ経営とそっくりだ。

    と、イギリス格差社会の底を突きつけられる本書だが、その情報は主に労働者たちのインタビューによるもの。労働者としての著者による感想や体験は少ないし、採用されたプロセスも語られず。本当に潜入労働していたのか、疑問が残るルポだ。

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