イラクの小さな橋を渡って

  • 光文社 (2003年1月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (88ページ) / ISBN・EAN: 9784334973773

みんなの感想まとめ

戦争の影響を受ける人々の姿を、深い視点で描いた作品です。著者はイラクの現状を、メディアでは伝えられない個々の物語を通じて浮き彫りにしています。短いながらも、池澤さんの繊細な文章と本橋さんの美しい写真が...

感想・レビュー・書評

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  • 「イラクのことを考えて、もしも戦争になった時に、どういう人々の上に爆弾が降るのか、そこが知りたかった。メディアがそれを伝えないのならば自分で行って見てこようと思った。」

    図書館の福袋で。
    今、この本を選んでくれた図書館員さんに感謝したい。
    自国内だけでなく、様々な国の思惑(日本も無関係ではないのだ)で生活を壊されながら、そこで生きている人たちの姿を描いた池澤さんの文章と本橋さんの写真によるこの本は、短いけれど、読んだら読む前の自分のままではいられない。

  • イラクの小さな橋を渡って

    アメリカがまたイラクを空爆というニュースを見て、積読の中から引っ張り出して読みました。
    湾岸戦争後、まだフセイン体制が崩壊していなかった時のイランに遺跡を訪ねた著者は、西側のジャーナリズムとイランの情勢との間のギャップを淡々とレポートしている。写真も同様に、いつアメリカが攻めてくるかわからない状況の中での日常を、淡々と収めている。
    繰り返し出てくる「どうして、この人たちの上に爆弾が落とされなければならないのか?」という言葉。
    地上戦をして、徹底的にインフラを破壊して、政府も解体したところでできた空白の中での覇権争い。それが高じて、人道主義的?立場からの空爆。
    今の日本に住んで、不自由なく暮らしている自分も、そういった責任の一端を担っているのだということを忘れないようにしよう。

    竹蔵

  • 大量破壊兵器を持っているだろうと、ならず者のアメリカがイラクに因縁をつけていた頃に書かれたものだ。筆者によって描写される市井の人々はみな美しく、微塵も邪さを感じさせない。その影で、アメリカに主導された経済制裁によって62万人の子どもが命を落としたという。筆者によるあとがきの日付は2002年12月25日。「まだ戦争は回避できるとぼくは思っている」の一文で閉じられている。本奥付の発行日は2003年1月25日。アメリカがイラクに対する攻撃を始めたのは同年3月20日だった。

  • この本が書かれた当時、私は遠くの戦争より、わが身の進路を考えるので手一杯な視野狭き学生だった。今とて思慮深き大人とは言い難いが。安全圏な外側にいれば好きなことを言えてしまうので、実際に目で見て肌で感じるほうが何倍も有用な情報を得られると思う。そして、いかなる理由があっても、超えてはいけない一線があるということを、改めて考えさせられた。

  • 2001年、国連は経済制裁によるイラクの死者の数を150万人と推定するレポートを発表した。小さな橋を渡ったとき、戦争というものの具体的なイメージがいきなり迫ってきた…。イラクの普通の人々を写真と文章で綴る。
    (2003年)

  • ミサイルを落とされる側の視点。
    普通の生活をしている人達、場所が違うだけで私と同じように本を読んで、楽しいと思うことがあって、笑顔で過ごしてる人達の上に降ってしまうミサイル。
    ミサイルを落とす側はちゃんと理解してるのか。
    イランの人達の生活を教えてくれた本。
    地図の上からは生活してる人たちは見えない。
    ちゃんと、その地に立って、何が違うから擦り合わせていかないといけないか話し合うだけじゃダメなのか。
    戦争の無意味さに改めて衝撃を受けた。

  • 印象的なたくさんの写真とともに語られる、イラク戦争前夜のイラク。あとがきは「まだ戦争は回避できるとぼくは思っている」と結ばれているが、それはわずかでも可能性があるならそこに賭けたい、という意味であって、この頃、歯車が回り始めて止められない感を皆が感じていたと思う。
    壊してしまうと元には戻せない。良いものも、悪いものも。

  • 図書館で。
    湾岸戦争開戦前なんて相当ピリピリしてそうなのに市民の日常はどこもさほど変わらないんだなぁ…という感想。だからこそ街が爆撃されるその後の未来が辛い。結局大量破壊兵器ってなんだったんだ?誰も追求しないのか?

    日本はどうなんだろう?政府が何とかしてくれる、アメリカが守ってくれるから大丈夫と頼りきっていていいんだろうか?食料自給率が4割以下のこの国で輸入がストップしたらどうなるんだろう?
    まず弱いものから淘汰される事は今までの歴史が証明している。もっと隣国と対話を重ね、仲良くしていけないのだろうか?と今の世界情勢を思うとこの頃のイラクを今の日本は他人事だ…と突き放してみられないのです。

  • 食べるものは充分にあったし、質も申し分ない。
    彼らは歌をうたっていた。ぼくもよく知っている節だ。

  • 2002年11月、 査察直前のイラクに2週間滞在した池澤夏樹と本橋成一が、イラクの普通の人々と出会い、その暮らしを伝える、90頁足らず写文集です。何も付け足すことはありません。結局戦争(戦争といえるのかどうか疑問ですが)は回避できなかった。何もできないけれど、関心があって、イラクこと心配している人に。

  • 湾岸戦争終結後、イラク戦争までの間、わずかに平和な時間があった。

    そのイラクに、飛び込み取材を行った筆者が見たものは、圧政に苦しむ民衆の姿では無く、普通に生活を営むイラクの民衆であった。
    その、平和の後に、アメリカを中心とする有志連合の個別的自衛権を根拠にした攻撃が起こり、そして今のイスイス団に繋がっていく。

    アメリカ軍が、爆弾を落としたその下にいた人達は....

  • ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00012931

  • 以下、『 』の中は本書の著者の記載を引用。

    『新聞は専門家を自称する人たちの業界紙でしかない』ため、『もしも戦争になった時に、どういう人の上に爆弾が降るのか』をきちんと知るために、著者はアメリカが「自国の利益を追求した結果としての侵略戦争を仕掛ける」直前のイラクを赴く。そこにあったのは、『普通の日常生活を送れれば日常生活の中で緊張する必要はない』イラクの人々の、素朴で当たり前で平凡な毎日。

    選挙でフセインへの支持が100%であったことを踏まえ、欧米諸国はイラクには自由がないと断じた。これに対してイラクに住む人は、『アメリカの戦争を控えた時期に指導者は変えられない。普段はフセイン体制を批判している人も、国の誇りを守るため、侵略に反発するため、国の雰囲気として100%支持になるんだ』と説明する。
    この理論と、戦争をすることで人気を取り、自身の政治生命を永らえさせたブッシュや、それに盲従して独断的に戦争を支持した小泉の弄した詭弁とを比べた時、どちらに人としての誠実さという基準での軍配が上がるかは、少しでも常識と良識がある人なら判断できるだろう。
    『世界は着々と戦争の準備をする国がある一方で、黙々と遺跡を修復する国もある』が、たかだか200年程度の歴史しかないアメリカと、文化的な教養と知性がないブッシュは、2000年以上の歴史と教養と知性が根付くイラクが妬ましかったが故に、この戦争を起こしたのではないかとさえ勘ぐってしまう。

    報道は、戦争を数字で伝える。どの地域で何人が死んだかに論点が置かれ、軍の侵略も同様、どの座標にあるどの施設を爆破したかでのみ、是非が判断される。
    しかし、遥か上空から爆弾を落とす『100%無作為のこの一方的な死刑は、100%誤審の結果である』ことを、アメリカ軍は恐らく理解していない。『無関心は冷酷よりも更に冷酷であ』り、そこが狂っているからこそ、アメリカは世界で最初で最後の原爆で人を殺した殺人国家となり、今も敵を探して喧嘩を売り、戦争をすることで「民主主義の正義」を振りかざしているのだろう。

    たかだか80ページほどしかなく、ものの30分もあれば読み終えられるこの本から伝わるメッセージは、ことのほか濃い。脳ミソの代わりに増えるワカメが頭に詰まっているブッシュがこの本を読んだら、何と言うだろうか。きっと、「なんて美しい国と、綺麗な目をした人たちなんだ!こんな素敵な国なら行ってみたい。どこにあるんだ?」とでも言うに違いない。
    難点を敢えて挙げるなら、写真が少ないという点ぐらい。いつか侵略国家がイラクを離れ、イラクの人たちが再び立ち上がってこの国を復興させることができた時、ここに掲載されている写真以外の風景を見に行きたいと思う。

  • 今までステレオタイプなイメージしかなかったイラクの普通な暮らしが見えてきた

  • 著者はもともと遺跡による文明論を連載していて、遺跡をみるためイラク訪問予定だった。でも危険、そういう時期だからこそ、どういう国がミサイルや爆弾の標的とされているのか知りたい、メディアが伝えないならば自分で行って見てこようという思いで入国。そこで感じた思いと写真。イラク人の生活が描かれている。爆弾だけが被害を出すわけじゃない、経済制裁の被害も現れている。

  • 『イラクの小さな橋を渡って』、が書かれたころからかの地の復興も進んだことでしょう。この本を読んでひとりひとりは自分の生活を楽しみ、できることをやるのが大切だとあらためて思いました。中東は役者も多く利害関係も複雑です。目が離せません。今はイラン、シリア、イスラエル。日本ができることは何でしょう。わたしにできることといったら目を離さずにいることしかないのです。

  • イラクで生きる人びとの写真と共に、池澤氏の言葉が静かに心に響きます。

     国連の発表によると、経済制裁によるイラクの死者は155万人、そのうち5歳以下の子供は62万人。
     (イラクの子ども達の写真と共に)「この子たちをアメリカの爆弾が殺す理由は何もない」と著者は書いていますが、本当にその通りだと思います。どんな理由があろうと、何の関係もない人びと、特に子ども達を死に至らしめることは許されるべきことではないと思います。

     「戦争というのは結局、この子供たちの歌声を空襲警報のサイレンが押し殺すことだ。恥ずかしそうな笑みを恐怖の表情に変えることだ。それを正当化する理屈をぼくは知らない」

  • 写真にうつるイラクの人々の笑顔がとても優しい。悲惨な生活を送っていると「西側」に思い込まされていたけど、毎日仕事して、食事して、本も好きで日常を送っている人々。そして戦争になれば「正義」のために爆弾を向けられる人々…。温かみと痛みを感じる本でした。人として忘れてはいけない視線だと思います。

  • 10/10/08 「世界中どこでも人がすることに変わりはない。自分と     家族と隣人たちが安楽に暮らせるように地道に努力する     こと、それ以外に何があるか」(あとがきより)

  • 開戦前に書かれた本。写真が素晴らしい。「まだ戦争は回避できるとぼくは思っている」という後書の言葉がつらい

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著者プロフィール

(いけざわ・なつき)
作家。1945年、北海道帯広市に生まれる。小学校から後は東京育ち。30代の3年をギリシャで、40~50代の10年を沖縄で、60代の5年をフランスで過ごす。ギリシャ時代より、詩と翻訳を起点に執筆活動に入る。1984年、『夏の朝の成層圏』で長篇小説デビュー。1987年発表の『スティル・ライフ』で第98回芥川賞を受賞。その後の作品に『母なる自然のおっぱい』(読売文学賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)、『楽しい終末』(伊藤整文学賞)、『静かな大地』(親鸞賞)、『花を運ぶ妹』(毎日出版文化賞)など。その他、自伝『一九四五年に生まれて――池澤夏樹 語る自伝』(聞き手・文 尾崎真理子)、編著に『池澤夏樹=個人編集 世界文学全集』(全30巻)、『池澤夏樹=個人編集日本文学全集』(全30巻)などがある。

「2026年 『遙かな都』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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