現実入門

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334974770

作品紹介・あらすじ

「現実」を怖れ、逃げ続けてきた男が、42歳にして初めて挑む。やるぞ、献血、合コン、部屋探し、そして遂にプロポーズ。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、人生の経験値が極端に低い(!?)、歌人の穂村弘さんが、美人編集者のサクマさんと一緒に、様々な初体験に挑戦する、連作エッセイ集(2005年3月発売)となっております。

    その初体験の内容が、ありきたりであっても、そこはやはり、ほむほむがすると、ウエディングドレスに対する憧れで、峰不二子(そういえばバイク走らせながら着ていた)と、メーテル(黒しか着ない)を連想したり、大相撲観戦で、「あっ、あの、こっこっこっこっこ」と、ニワトリのようになってしまったりで、面白い。

    また、占いでの、「りそな姫」の非現実感の高め方の分析の、あまりの的確さに、うんうん頷いていたら、「サクマさんと私の間にも、本当の恋が生まれたりしないだろうか」なんて、心の中で思ったりして、分かりやすいよね、穂村さんって。

    でも、その後のエピソードを読んでいくうちに、なんだか、お二人のやり取りも馴染んできたように感じられ、私も次第に、この二人が結ばれればいいのになんて、思ってきました。
    まあ、絶対に無いだろうけどね(笑)

    また、面白さだけではなく、ブライダルフェスタで涙が溢れる場面や、24年ぶりに祖母に会いに行く場面等、穂村さんの人間味溢れる、心温まるエピソードも印象的だと思っていたら、最後の初体験と、「あとがきにかえて」を読んで、思わず「ええっ!!」って。

    そ、そんな、これって、もしかして・・・本当だったの?

    ということは、これまで読んできた初体験が全て、穂村さんのかけがえのない、人生の一ページだったってこと?

    ほむらさーーーん!!

    すごいよ、ドラマティック過ぎる。

    なんだか、感慨に浸るというか、呆然自失というか、よく分からない心理状態になりつつ、こんなこともあるんだなあと、改めて、「あとがきにかえて」を読んでみたら、


    「えっ!?」

    よくよく読んでみると・・・これって、どういうこと?

    えっ、えっ、えっ!?

    『ほんとにみんな こんなことを?』

    『現実のなかで生きられない人間も、だからといって死んでしまうわけではない。現実とは少しずれた時空間で、ずれたまま生きていくのだ』

    ということは、一日お父さんでの、ナナちゃんとチイちゃんとの、リアルな会話のやり取りも・・・大人の想像のはるか先を行く、子供の発想力の素晴らしさに感動した私の立場は?

    そういえば、はとバスツアーの最後の行為に、「この人は全く・・」って思いと、「こんなこと本に掲載して、サクマさんは大丈夫なのかなあ」って思いもあったけど・・・そういうことだったのね。


    ほむらさーーーーーーーーーん!!!


    でも、プロポーズのシーン、感動しました。
    おめでとうございます(といっても、2005年の話だけど)。

    • 5552さん
      たださん、111108さん。、こんばんは。

      やったー、ほむほむクイズ正解!
      私も、111108さんとおなじく、読んだのはだいぶ前です...
      たださん、111108さん。、こんばんは。

      やったー、ほむほむクイズ正解!
      私も、111108さんとおなじく、読んだのはだいぶ前です。
      世界音痴、で、やられてしまい、新刊が出ると追いかけていました。
      エッセイ三冊目は見たことのない変化球を放ってきて、みんな受け止めきれない、みたいな感じ。

      「シャボンまみれの~」ではじまる歌も教科書に載ってるんですね。
      私は、そういえば、穂村さんの年齢っていくつだったっけ、と、検索したときに、「穂村 ゼラチン」というワードが出てきて、何だろう、と思って調べたら、中学二年の国語教科書に「ゼラチン」ではじまる穂村さんの歌が掲載されているという情報を得ました。
      シンジケート、に入っている歌だそうですよ。
      2022/10/08
    • 111108さん
      たださん、5552さん、こちらでもこんばんは。

      正解5なんですね〜⁈
      私も5552さんみたいに実は受け止めきれない気持ちになりました。そし...
      たださん、5552さん、こちらでもこんばんは。

      正解5なんですね〜⁈
      私も5552さんみたいに実は受け止めきれない気持ちになりました。そして安心しきれないところにも惹かれてます。

      今シンジケートで「ゼラチンの〜」を探して読みました。これが中二の子の妄想世界・短歌の懐の深さみたいなのの入り口になればいいなぁと思います。「シャボンまみれの〜」は、これから探してみます。
      2022/10/08
    • たださん
      5552さん、111108さん、こんにちは。

      「ゼラチンの~」も、あれこれ考えてしまいますが、この瞬間に、さっと過るものや、ふと気付いたこ...
      5552さん、111108さん、こんにちは。

      「ゼラチンの~」も、あれこれ考えてしまいますが、この瞬間に、さっと過るものや、ふと気付いたこと、思いが溢れ出すものなどが、あるのかもしれませんね。

      ちなみに、「シャボンまみれの~」は、第二歌集の、『ドライ ドライ アイス』に収録されております。
      2022/10/09
  • このまま一生何もせずに終えることはできないー。
    「現実」を怖れ、逃げ続けてきた男が、42歳にして初めて挑む。
    やるぞ、献血、合コン、部屋探し、そして遂にプロポーズ!

    あいかわらずゆるくて笑える。
    でも最後に結婚してしまうとは、おどろいた!
    てっきり編集者のサクマさんと結婚したのかと思いきや、調べたらお相手は別の人らしい。なんだ…
    それにしても、初体験話はどれもおもしろかった。
    私もまだまだ経験値浅いなー。

  • 図書館利用。
    何とか現実と向き合わねばと、藁にもすがる思いで手に取ったが、良い意味で期待を裏切られる。肩の力が抜ける。まあ、気楽にやってこうじゃないの。

  • ほむほむが
    献血してるー笑
    合コンしてるー笑
    「ぼ、ぼくはメモ帳がないとご飯が食べられないんです」って!!笑笑
    おばぁちゃんの病室にお見舞いに行くのは、わたしもいつもどきどきして、なんとも言えないきゅうっとした気持ちになるものだ。いつも饒舌にちょっと違う位相のことを面白く書いている穂村さんが、現実にしか触れていなくてドキッとした。

    そしてオドオドしながら部屋を借り、
    そして、親へ挨拶……!

    妄想と現実の区別がさっぱりつかないのが、
    いつも以上でした。
    まぁそんなことはどうでもいい。
    ほむほむ頑張った。
    ほっこりしたぁ〜。


    私も、自動車教習所に入った時は、
    ほんとにみんなこんなことを?
    と思ったものだ。
    みんなこんなにも面倒くさい過程を経て免許をもっているのかと。
    現実って改めて直視してみると、なかなか大変だーね。

  • エッセイ、なのか?

    あとがきにかえて、の恋文的文章にぎゃふんとなりましたーー
    にやける!

    42歳で人生経験値が低い「私」の現実入門。

    献血、占い、葡萄狩り…

    ただの体験エッセイかと、思いきや?

    別のひとのレビューで、
    花荻窪とゆう地名はないと、書いてありました。

    ないんだ!
    じゃあサクマさんは!
    天使は!
    どこまでがフィクションですか!
    ほむらさん!
    と、混乱。

    でも、天使、にょっ記に出てくるし!
    ほむらさんの仮想世界では花荻窪もあるのだ。
    そこでは、「私」がハーブに水をあげたりしてるんだろう。

    あと「一日お父さん〈夜の部〉」で、
    タイミングをみて高い高いをしちゃうところにきゅんとしてしまいました!

    おじさんがかわいくみえるってすごいなぁーーー

  • 現実からはずれた時空間を生きる男。

    「人生経験値」の低い穂村弘が色んな初めてに挑戦する体験エッセイ。

    私が体験したことがあるのは
    ・占い
    ・アカスリ(健康ランドではなく韓国旅行にて)
    ・相撲観戦(マス席ではなかったので心付けは必要なかった)
    ぐらいだろうか。

    おっかなびっくり、余計な妄想を繰り広げながら初体験に挑戦する
    穂村さんの様子が面白い。

    でも、物件探しで「花荻窪」という地名がでてきて、「あれ?」と思う。
    そんな場所あったっけ?そして結局…。

    不器用な穂村弘に親近感を抱いていたけど
    本当はとても頭の良い遠い存在なのだ。

    地に足をつけてなんでもそつなくこなす人より
    いちいち怖れ、戸惑う人の方が人間らしくて好感が持てる1冊。

  • 筆者のあまりにも少ない社会経験を伸ばそう、企画。
    軽い文体で、さくさく読めるので、何も考えずに読める。

    私もサクマさんのような人とあっちこっち行ってみたいものだ。

  • 彼のインタビュー記事か何かを読んで、共通項を見出して以来、興味があった。
    だいぶ偏屈だけど、大丈夫かも。

  • 妄想のスピードがすごい。ラストに騙された。

  • 現実か妄想か、最後は究極の現実へ!

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著者プロフィール

穂村 弘(ほむら・ひろし):1962年北海道生まれ。歌人。1990年に歌集『シンジケート』でデビュー。短歌にとどまることなく、エッセイや評論、絵本、翻訳など広く活躍中。著書に『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』、『ラインマーカーズ』、『世界音痴』『もうおうちへかえりましょう』『絶叫委員会』『にょっ記』『野良猫を尊敬した日』『短歌のガチャポン』など多数。2008年、短歌評論集『短歌の友人』で伊藤整文学賞、2017年、エッセイ集『鳥肌が』で講談社エッセイ賞、2018年、歌集『水中翼船炎上中』で若山牧水賞を受賞。

「2023年 『彗星交叉点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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